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★★わかりにくなってきたF-3開発への道:心神からF-3? それとも海外との共同開発?

すでにご紹介したF-22/F-35ハイブリッド機開発はロッキード提案であって、ボーイング、BEAシステムズからの返答が不明のままですね。内容によっては改めて完全自国開発の道がかろうじて残っているということですか。ロッキード案には読者の皆さんは概して懐疑的ですね。ところで、心神の特徴を米国経由でないと知ることができないのは情けないですね。あるいは皆さんは同機の特徴についてこの記事以上の情報をお持ちでしたか?



Revealed: Japan Already Has Its Own Stealth Fighter 

日本にはステルス機がすでにある





 
Sebastien Roblin
April 28, 2018


2016年4月22日、白赤青塗装のほっそりとした機体が名古屋空港誘導路をタキシーし、日本はステルス機開発で世界四番目の国になった。機体は三菱X-2心神だ。


それから二年たち、わずか34回(予定は50回)で心神はテストフライトを終了した。自衛隊は次世代ステルス戦闘機の国内開発か海外調達かの重要な決定に迫られている。新しい報道内容では日本は後者に傾いているようだ。


ラプターが入手できず心神が生まれた


自衛隊とは一般の軍隊と異なり国土防衛任務のみを念頭に装備された組織だ。中国の空軍力整備、中距離弾道ミサイル、海軍力を目の前にして任務は重要さを増している。中国やロシア軍用機の接近のたびに日本の戦闘機は毎年数百回ものスクランブル出撃をしている。日本の杞憂が高まっているのは中国が第五世代ステルス戦闘機J-20を第一線配備し航空自衛隊のF-15やF-2戦闘機の質的優位性を脅かしていることだ。


21世紀に入ろうとする中で日本はF-22ラプターステルス戦闘機導入を真剣に求めていた。最高の航空優勢戦闘機と言われることが多いラプターには優れた性能に応じた価格が付く。ただし、米議会がF-22輸出の途を閉ざし、ラプター生産ラインは早期に閉鎖された。かわりに航空自衛隊(JASDF)はF-35Aの42機導入を決めたが、本来欲しかったラプターと比べると性能が見劣りする。


防衛省技術開発本部がステルス技術を研究しており、米国内テスト施設利用が許されないため、原型機モックアップはレーダー断面積測定をフランスで2005年に行った。それから11年がたち、三菱重工業が高度性能技術実証機AT-Dがを発表し、X-2の別名が付いた。同機には360百万ドルが投じられ、関連企業220社が機体の9割を国内生産した。


超小型のX-2は全長14メートル、翼幅9メートルだ。ここまで小型化できたのはX-2は実証機で兵装搭載の想定がなく、機体重量も10.5トン(最大14.4トン)しかないためだ。軽量と言われるF-16でも空虚重量は18トンある。


通常のレーダー波吸収塗装の代わりに心神では非反射性の炭化ケイ素とセラミックが使われ、風防にも特殊合金の被膜をついた。さらに機体表面はギザギザの処理や不規則曲線を組みあわせレーダー反射を減らした。尾翼は外側へ傾けられている。


日本の防衛関係は心神は「10キロ離れるとカブトムシ程度にしか映らない」とし、この発言は米軍がF-35のレーダー断面積(RCS)をゴルフボール程度、ラプターではマルハナバチ程度と発言しているのに通じる。ただしX-2のRCSはそこまでの実力はなく、むしろ中程度のステルス機中国のJ-20に対しては推力偏向型エンジンで優位になると見る向きもある。


エンジンはIHIのXF5-1低パイパス比ターボファン双発でアフターバーナー付きジェットエンジンとしては国産初で、耐熱セラミック複合物とチタンアルミ合金をベースに製造した。排気口にパドル3枚がつき、推力方向を三次元的に偏向させることでX-2は急角度で操縦が可能だ。量産型ではパドルの代わりに可変式排気ノズルをつけレーダー断面積をさらに減らす。


X-2のエンジンは各5,500ポンド推力しかないが機体が軽量のためマッハ2以上の速力が出せ、アフターバーナーなしで超音速を継続するスーパークルーズが可能だ。


心神には日本開発の各種技術が搭載されていると伝えられる。新型機では油圧制御の代わりに「フライバイワイヤ」が使われるが、三菱はさらに先を行き光ファイバーを採用し電磁攻撃への耐じん性を増している。また「自己修理型」制御系が採用されているともいわれ、水平尾翼や昇降機など制御表面の損傷を探知し自動的に補正制御して飛行を続ける。


実証機から三菱F-3が生まれるのか


心神は技術実証機であり、量産前試作機ではない。非武装機の開発は数千ポンドもの装備を積む実戦用機材よりも簡単である。


日本が目指す国産設計のステルス戦闘機には三菱F-3の名称がつくが、まだコンセプト模索段階だ。防衛省は大型双発ステルス機として長距離空対空ミサイル6本を機内搭載する同機の生産を2027年に開始したいと明示している。百機あればF-15JやF-4EJの後継機になるだろう。


公表済みのコンセプト図が二案あり、ひとつはF-22に類似し、もう一つは無尾翼第六世代機のようでボーイング提案のF-A-XXにも似ている。機体には構成の多機能レーダーを搭載し、接近する機材の探知に加え電磁センサーさらにマイクロ波兵器にもなり敵の電子系統を使用不可にする可能性もある。


ただし2018年4月配信のロイター記事では匿名日本防衛筋の話として日本が純国産開発よりも海外提携先の模索を目指すとある。2018年6月までに予算化されないとF-3は日本の時期五か年防衛計画に盛り込まれなくなる。


その理由にコストとリスクがある。日本の試算では初期費用だけで400億ドルとあり、日本の2018年度防衛予算が460億ドルであるので最大規模の事業となる。


また米国がF-35で新規技術開発に挑戦したが、多くが予想に反する結果となり遅延と費用上昇を招いた事実もある。そのため既存技術に資金を投入したほうが確実であり、他国の予算で既存技術に磨きがかかるのであればなおさら好都合だ。一から新技術開発に向かうリスクよりましだ。


ラプター・ライトニングのハイブリッド案はどうか


日本政府の情報開示要望はBAEシステムズ、ボーイング、ロッキード・マーティンの各社向けで新型ステルス戦闘機の共同開発の可能性がポイントだ。そこで浮上してきた興味深い提案がラプターとF-35ライトニングIIのハイブリッド版の開発だ。


もともと日本がF-22に魅力を感じたのはF-35より優れる航空優勢性能のためであり、JASDFは空対空戦能力を重視している。ただしラプターは1990年代のコンピューターが足かせで、性能改修は巨額費用が必要で機体表面のレーダー波吸収材(RAM)の塗布も高価だ。さらに重要なことに同機の生産が終了している。他方でF-35は経済性に優れたRAMパネルを採用し、センサーやコンピューターも高性能化され、標的情報をネットワークで友軍と共有できる。


したがって日本が目指す新型機はF-35の新機軸とF-22の優秀な飛行性能を加えたものとなる。実現すれば究極のステルス機になるが巨額の費用が必要となるだろう。ペンタゴンによる検討内容がリークされており、F-22生産ライン再開とあわせて旧式装備を近代化する場合、初期費用だけで70から100億ドル、194機生産の場合の単価は210億ドルで総額500億ドルとある。


ここに日本をからませれば費用が一部減るが、初期価格だけ見れば完全新型機開発と大差なく、ただ既存機に手を加えるだけなのでリスクは低くできる。米空軍も運用中のF-22約180機の追加や性能向上となれば前向きになるだろう。ただしF-35予算が流用されれば国防ロビー筋が反対するだろう。


心神原型の完全国産F-3ステルス戦闘機の開発案も代替策になる。日本が国内生産を好ましく思うのは確実でステルス技術も自国で管理できる。ただしJASDFはX-2実証機に多額予算を投入しながら、第五世代ステルス戦闘機を確実かつ費用対効果に優れた形で実現する方法は海外提携先を見つけることと結論付けている。■
Sébastien Roblin holds a master’s degree in conflict resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring.

Image: Wikimedia Commons

コメント

  1. 海外筋では記事を見る限り国内開発に予算面や技術開発リスクから否定的な様に感じます。
    しかし、これは現在トルネード更新に政府がユーロファイタータイフーンを推している様に、自国産業が今後次世代への技術継承、というよりも産業維持が大きな意味がある訳でして。
    私自身共同開発は肯定しますが、アメリカの様にロッキードやボーイングなど戦闘機開発を行える国ど同列に考えるには間違いだと考えております。
    どちらにせよ日本が戦闘機を開発するにあたり、国内の仕様要求を反映する上で日本の航空産業以上に細かく行き届くサプライヤーはいないでしょう。当然今後次世代を踏まえる訳ですから、このF-22- F-35に限らずどの案でも(たとえPCAであろうとも)国内航空産業への寄与を考慮した上で判断される事は必然だと思います。

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  2. 例え性能がF35並みとしても国産化する値打ちはある。国内雇用に貢献するとともに資金も国内に還流して経済効果もある。カタログ上はF22並みとして置けば良い。外国(同盟国にも)に情報を漏らさないのも重要で、「F22並みなのかあ・・・」と思わせるだけでも効果はある。
    開発資金が不足するなら共同開発だが、相手は東南アジア諸国やインド・トルコ辺りで、完成機供給くらいで手を打ちたい。米欧との共同開発は相手によほど技術力が無ければ(金・技術を)吸い上げられるだけだから止めて欲しい。

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  3. 完全自国開発って、射出座席から何から国産と言う事?
    日本主体の国際共同開発なら、従来型の装備を一から開発しなくても済むし、本命は国際共同開発だと思います。

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