金正恩が見え見えの核実験凍結等の発言をしてすぐ反射的に喜んだのは韓国与党勢力でした。韓国の野党や日本は冷たい見方をしていましたが、今や金正恩に核兵器放棄の意図が全くないことが明らかになり、世界はあきれているのが現実です。ただこの記事にあるシリア攻撃が北朝鮮を頑なにさせているとの見方はどうでしょうか。来るべき米朝会談が決裂し、金正恩をなびかせることが出来なくなった米国が北朝鮮を攻撃する可能性が減る可能性はないでしょう。つまり、朝鮮半島の危機は緩和されることはないと見ます。今年上半期の動向が重要です。
Syria: A Preview of What Is to Come in North Korea? シリア空爆は北朝鮮にこれから起こることの予告編だったのか
April 22, 2018
先週の米英仏協調によるシリア国内化学兵器施設三か所への攻撃には明白な目的があった。サリンや塩素ガスを使用したバシャル・アル-アサド政権にはっきりと警告のメッセージを送ることだった。作戦自体は限定的ながら精密に攻撃対象を選び、死傷者は一人も発生していない。作戦完了後にジェイムズ・マティス国防長官は報道陣に今回のミサイル攻撃は「一回限り」でアサド二個例以上の化学兵器使用に向かわせないことを目指したと強調した。
今回はアサドを狙った攻撃だったが、事態の進展を注視していたのはアサドだけではなかった。トランプ大統領が今回の武力行使に踏み切った背景にもっと大きな構図があり、アサドはわき役に過ぎないとの見方がワシントンにある。タカ派の色彩が濃いワシントンのシンクタンクには今回のシリア攻撃にはアサドへの懲罰以上の意味があると指摘する向きがある。国際社会に北朝鮮の金正恩にホワイトハウスの言動に深刻に対応させる意味があることを示したというのだ。
ジョージ・W・ブッシュ政権でスピーチライターだったアメリカンエンタープライズインスティチュートのマーク・ティーッセンMarc Thiessenがワシントンポストに寄稿している。「シリアでの見せ場でトランプには北朝鮮のみならず駐豪へもメッセージを送り金正恩政権にも方向転換を迫り、今回の事例が示すように言葉の脅かしはこけおどしではないと分からせようとした」
残念ながらティーッセンの指摘は最良の場合のシナリオではない。トランプ大統領は北朝鮮指導部の足元にメッセージを送ったが、病的なまで偏執狂の金正恩はワシントンの専門家が期待するような形に受け止めていない。トランプに今後始まる北朝鮮相手の核交渉を有利にさせるのではなく、アサドへの空爆で北朝鮮には核兵器を交渉対象とすべきではないと考えさせたのではないか。シリアの首都近郊にミサイルの雨が降ったことで北朝鮮首脳部は核兵器廃棄を材料に交渉してはまずいと考えたはずだ。シリア首都近郊にミサイルの雨が降ったことで北朝鮮には核兵器および運搬手段がなければさらに危険な立場に追いやられると確信したはずだ。
では北朝鮮がシリア攻撃をどうとらえていたのか確実にわかる方法があるのか。もちろん確実なことはわからない。北朝鮮は難関中の難関で米情報機関もその実態を何十年も把握できないままだ。ただ北朝鮮外務省関係者と金正恩本人から十五年に及ぶ米主導の軍事行動で北朝鮮は核抑止力なくして生き残れないと考えるに至ったことがうかがえる。国家情報局長ダン・コーツが昨年に北朝鮮政府が過去15年に核兵器を保険と考えるようになったと表現したのは全く正しい。とくに同国は地球最強の軍事力を有する相手と対峙しているのだ。
金正恩は核兵器をこれから入手する必要はない。すでに保有しているからだ。トランプがシリアを攻撃したことで、金正恩はますます核廃絶にのりだせなくなっている。核抑止力はそこまで重要であり、金正恩政権が重要であるため米国は月でも星でも差し出しかねない様相だ。つまり、平和条約、韓国からの撤兵、経済生産の完全解除であり、北朝鮮はこれからもすべてての申し出を拒絶できる立場になる。またトランプ政権が求める実証可能な非核化についても同様だ。
端的に言えば、金正恩はサダム・フセインのような裁判にかけられることを避けたいと考え、ムアマル・アル-カダフィのように襲撃され殺害されることも望まず、バシャル・アル-アサドのように米空襲を何度となく受けて都度地下壕に退避する生活も望んでいないのだ。
トランプ大統領は金正恩との会談に高い期待をつないでおり、超大国を代表した交渉役として米国民の利益になるとすれば重要な会談でも途中放棄する構えだ。トランプは心底から金正恩に核兵器放棄を迫れると考えているようで、同時にワシントンが求める韓国、日本との安全保障枠組みをこれまで通り守れると考えているようだ。地政学並びに朝鮮半島を学んだものならここまで楽観視した考え方が笑止千万であることは承知の上だと思う。北朝鮮が国際約束を守ることにかけては見掛け倒しの実績しかないこと、北朝鮮政府の気まぐれな対応、腹黒さの歴史はよく知られている。仮に核兵器処理の交渉が本当に実現するのであれば、トランプ政権の最大の功績として北朝鮮から期待できるのはこれ以上の核開発を凍結し、核兵器のミサイル搭載も止めることだが、実際にこの二つの実現したとしてもその実証は国際的な査察体制がない限り不可能だろう。
だが懲罰行動的な空爆をアサドの化学兵器開発に加えたトランプは北朝鮮対応を自ら困難に変えてしまった。金正恩には自らの核兵器保有を守る理由ができてしまったのだ。■
Daniel R. DePetris, a fellow at Washington-based think tank Defense Priorities. He is a columnist for the National Interest and the American Conservative. Follow him on Twitter at @dandepetris.
Image: A U.S. Air Force B-1B Lancer and crew, being deployed to launch strike as part of the multinational response to Syria's use of chemical weapons, is seen in this image released from Al Udeid Air Base, Doha, Qatar on April 14, 2018. U.S. Air Force/Handout
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