スプートニック人工衛星打ち上げ成功ででソ連に先を越された米国は大きなショックを受け科学技術の総合力を高めようとDARPAが生まれたのですが、いつもDARPA発表のプロジェクトは時代の先を狙い突飛な内容がいっぱいで楽しませてくれます。今回は生物学分野にも研究の焦点があることがわかりましたが内容はよくわかりません。ただ中国がDNAデータベースを全国民対象に構築するのは別の目的がある気がします。人体改造によるスーパー兵士製造の話は前からロシア、中国から聞こえてきますね。倫理上の制約がない両国だからこそ実現してもおかしくない構想です。
DARPA At 60 Still Working To Prevent More ‘Sputnik Moments’ DARPA創立60年、「スプートニクショック」再来の予防に努める
Mar 8, 2018Graham Warwick | Aviation Week & Space Technology
1958年、ロシアがスプートニク人工衛星を打ち上げた余韻の中、米国は先端研究プロジェクト庁を発足させ「技術面での奇襲攻撃」を防止しつつ米国技術の進展を進めることとした。以後60年がたちDARPAの活動する世界では軍事競合国のみならず民生市場からも奇襲攻撃を受ける可能性がある。
民生電子産業、バイオ技術、人工知能(AI)等で開発の進展が早く悪用の可能性があることをDARPAは警戒し、ロシアや中国が極超音速兵器、電子戦、宇宙戦で進展を見せていることも懸念材料だ。
プーチン大統領が発表した新型核兵器・極超音速兵器への防衛手段の開発はDARPAの担当範囲ではない。ミサイル防衛庁(MDA)の担当だとDARPA長官スティーヴ・ウォーカー Steve Walker は語る。だがDARPAも米国で極超音速兵器開発を提唱してMDAにロシアや中国技術の性能情報すべてを提供しているのも事実だ。
「DARPAは極超音速技術を以前から研究している」「昨春に国防副長官に面会し米国の現状を他国との比較で示し国家として極超音速兵器開発の必要を理解させようとした」とウォーカーは述べる。結果として2019年度予算で研究は増額された。「欲しかったすべてではないが第一歩としは妥当」(ウォーカー長官)
宇宙空間が厳しい場所になる中で同庁の関心は衛星を攻撃に強くするべく現在は地球静止軌道(GEO)に機能が集中しているのを低地球周回軌道(LEO)に移動させる。「GEOからLEOへの移動させLEOに多数の衛星を置いて代替させる」(ウォーカー)
DARPAの新規プロジェクト、ブラックジャックの目的は民生産業が得意な安価で小型化技術を利用して衛星を大量製造し常時標的に対応させることだ。「必要なペイロードを乗せた衛星多数が常時上空にあり、耐用年数も2-3年で使い捨てにする」(ウォーカー)
高性能電子技術、バイオ技術、AIの世界で米国がライバルから遅れているとウォーカー長官は見ていないがDARPAが特に関心を持つ技術分野があるという。「生物学が急速に進展中で中国はDNA解読に多大な投資をし自国民のDNAデータベースを構築中です。またバイオ関連で新規起業が多数あります」
DARPAの関心事は本土防衛で攻撃の兆候を迅速探知するバイオ偵察biosurveillance技術で遺伝子操作の予防策を確立しつつ遺伝子を意図的に利用する勢力へ対抗することにある。また疾病への免疫性を短期長期で確立する技術も研究中だ。
電子部門では「後れをとっていないが中国が大規模投資で国内基盤を強化中だ。もっとリードを取る方法が必要だ」とウォーカー長官はいい、DARPAの解決方法は電子産業再興事業Electronics Resurgence Initiative (ERI)で次世代の設計方法と製造技術を確立することだ。「中国は旧式技術で産業基盤を整備する。こちらは次世代レベルをめざす」。
ERIはチップ製造に3D構造設計を導入するのが目的で現状の2Dレイアウトと違いを出す。「三次元設計に挑む」とウォーカーは述べ、パッケージング効率が上がれば劇的なまでの高速処理が消費電力を低いまま実現できる。
人工知能でのDARPAの狙いは「第三の波」のAIだという。「現在は第二の波の中で、AlphaGoのような統計的学習システムが実用化されています。大規模データセットからパターン認識しますがまだ不安定です」といい、これに対し第三の波のAIシステムは「文脈適応」“contextual adaptation”で背景環境を理解し変化から学習していく。
DARPAの説明可能AIでは信頼性高いマシン学習技術で人間の側にシステムによる決定を理解させ信頼させることがねらいだ。「マシン学習が何を考えてどうしてその決定にたどり着いたのかを説明させる」(ウォーカー長官)
プーチンが公開したロシア兵器はスプートニクショックほどではなかったとはいえ発足して60年が経過したDARPAが技術面の奇襲攻撃を防止しつつ自国技術開発を進めるという任務で力を抜けないことを示している。■
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