地政学の本家たるフリードマンが主宰するストラトフォーが日韓で進む空母保有の動きにコメントを出しています。国会では相変わらず空論を論じているようですが、現実の日本は大きく変質しているということで国際社会が認めるのに国内が認めないという奇妙な事態になっているようです。
Japan and South Korea Consider Carrier Options
日韓両国で空母保有の検討が進行中
(MATT CARDY/Getty Images)
Feb 13, 2018 | 09:00 GMT
まとめ
●東アジア二国が艦船を改修しF-35Bステルス戦闘機運用をめざす
●両国とも海軍部隊の規模は比較的小さく改修範囲は限定される
●中国が大型空母整備を進めており、米海軍なみのカタパルト運用を実用化しそうだ
周辺状況があわただしくなり東京とソウルはそれぞれ次の策を検討中だ。中国海軍の拡充から北朝鮮の核戦力整備までの要素で地政学上の流れを加速中だが、日韓両国は空母戦力の整備を検討している。ただし、両国の戦略は限定的になりそうだ。それぞれ国防予算に限りがあり、日本の場合は歴史の点でも制約がある。にもかかわらず両国が海軍力増強を真剣に検討しているのは同地域で海の支配をめぐる競合が過熱していることの裏返しだ。
恐る恐る足を水に入れる
日本はかつて世界最強の空母部隊を運用した。その空母部隊が先鋒となった過去の戦争に懲りた戦後日本は空母保有を求めてこなかった。日本の平和憲法は「攻撃装備」保有を認めず、空母が当てはまるかは議論があるが、海上自衛隊はヘリコプター空母の艦容をほこるひゅうが級、いずも級はヘリコプター護衛艦(駆逐艦)と呼ぶほどだ。
だがすべての状況が変わりつつある。共同通信によれば日本政府はいずも級二隻を完全な空母に転換し部隊運搬以外にF-35Bステルス戦闘機運用を可能にする。まだ構想段階だがこの提案は日本が正常な軍事力を整備する動きから出てきたようだ。北朝鮮ミサイル基地への先制攻撃や中国海軍の急整備に対して無力のままでいいのかという問題意識があり、空母部隊整備構想もそのひとつだ。
遅れてならじと韓国も空母戦力の実現を検討中といわれる。日本同様に韓国もヘリコプター空母独島級でF-35B運用を検討中だ。ソウルの場合は北朝鮮や中国海軍への懸念以外に日本の動向を意識しているようだ。両国間には領土をめぐる長きにわたる紛糾がある。
中国の動向を追う
日韓両国を動かすのが中国の急速な空母建造だ。中国初の国産建造空母001A型が数か月のうちに海上公試に向かいそうだが、一方で002型空母の建造が上海で始まった。ここに就役済みの001艦遼寧を加え中国に空母三隻がそろう可能性がありさらに建造を狙う動きがある。
ここに上海で建造中の075型強襲揚陸艦が加わる日が来る。日韓ともに中国並みの海軍力整備は目指さないが、米艦隊のミニ版にはなりそうだ。それは両国で投入可能な財政資源が限られるためだ。いずも級、独島級で飛行甲板をF-35Bの垂直離着陸の高熱対応にする改装が完了すればF-35Bを12機搭載するだろう。これに対して中国の001型、001A型は戦闘機30機搭載し、002型はさらに多く搭載する。後者で電磁カタパルト発艦方式を採用すれば航空機運用能力が強化され、早期警戒機や給油機の運用も可能となるだろう。
日韓それぞれの空母整備が今後どう進展しても、今回の構想は大きな進展となる。と言うのは改装後の各艦でF-35Bを運用すればともに自国シーレーン防衛に効果を上げながら遠隔地での対地攻撃力があがり、艦隊防空も充実するからだ。総合すると空母改装で両国は各種脅威への対応に選択肢が増える。両国が位置する地域では海上での競合は厳しさをますばかりになりそうだ。■
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