またもやCatoの頭のいいひとが書いたエッセイですのでわかりにくい点があるのですが、要は北朝鮮ICBMが戦力化した事態が日常化するのを覚悟すべきということでしょう。予防戦争でICBMだけ破壊するという都合の良い考えかたは実行にうつすべきではない、ということです。では新「冷戦」がこれから長期化するとして米国が自国防衛を優先して同盟国を後回しにする危険が「拡大抑止」体制のもつあやうさというになります。日本にとっても都合の良いことだけ考える贅沢は許されないとしたら、冷戦体制を数十年続ける覚悟がいるのでしょうか。また日本の核武装もそのうち議題に上ることも考えられますね。
Could North Korea be America's Next Forever War?
アメリカは北朝鮮とも長期戦の覚悟が必要なのか
February 8, 2018
CNAS上級研究員にてポール・ツァイ中国センター(イエール大ロースクール)研究員ミラ・ラップ-ホッパーMira Rapp-Hooperが北朝鮮相手のいわゆる「鼻血」作戦の矛盾を以下論じている。
米国の作戦立案部門が「限定」攻撃がそのまま限定規模に終わると考えるのは理にかなわない。金正恩が反撃してくれば、第二次大戦後で最大に悲惨な米国の軍事作戦になる可能性がある。
鼻血作戦の長所とされる点の大部分は金正恩が報復に踏切らない前提だ。だが、ラップ-ホッパーはこう述べる。
もし金正恩が核兵器やミサイルで合理的な判断を失えばあらゆる点でも冷静さを失うと考えるのが妥当だ。南北朝鮮の再統一を実現できず、米国や国連の制裁がさらに強化されれば金正恩の前提が変わる。いったん非合理的になればあらゆる局面で非合理的な行動に出る。ワシントンは抑止効果をどこで使うかなど考える余裕がなくなる。
米国が他国で軍事力を行使することには、特に相手が核武装した北朝鮮であり反対意見は根強い。朝鮮問題の専門家ヴィクター・チャVictor Chaは次のように疑問を呈している。
金正恩が攻撃を受け自制心を失えば、攻撃をしかけた我々は抑止効果を期待できない。またもし金が予測不可能になれば、衝動や正気を失いかねずエスカレーションが避けられるか。あくまでも相手側が抑止効果やメッセージを理解できる前提に立っているのだ。
本人の結論はこうだ。
米国は軍事オプションの準備を続けるべきだ。北朝鮮が先に攻撃してくれば軍事力で解決する必要があるが、予防攻撃は核戦争につながりかねない。
普通ならこうした議論は世論の中心となる。だが米国人はまだ終わっていない別の戦闘から教訓を得ており、さらに別の戦争を開始することに及び腰だ。ドナルド・トランプはイラク戦争に反対して共和党指名を勝ち取ったが、そもそもイラク戦争は共和当政権が始めたのであり、本人が一貫して反対していたと(虚偽の)主張したのは同様の事態は避けたいと考えている証拠だろう。アフガニスタン戦も同様だ。トランプの選挙戦公約を改めて読み返せば本人のタカ派傾向が浮かび上がるが、有権者の投票ではトランプの対抗馬への反感が強く出ており有権者はクリントン候補の方が実はもっとタカ派だと感じていたのだ。
そうなると国民感情とトランプが時折示す懐疑心を思うと、戦争にならないかもしれない。少なくとも本人が戦争を増やすことにはならないだろう。
ただしあくまでも「正常の」場合だ。悲しいことに今は正常時ではない。ラップ-ホッパーもチャもトランプ大統領に見てもらえる近道のフォックスニュース番組に登場しそうもない。そうなると開戦へ近づくことになる。
ラップ-ホッパーはきれいにまとめているがあえてひとつだけ言っておきたい。本人は国家安全省担当補佐官H・R・マクマスターが北朝鮮のICBM能力整備をトランプ政権がレッドラインと判断していると記している。
そのような宣言で平壌は長距離ミサイルを配備すれば、米国の同盟国向け拡大抑止力の誓約が信頼を失うと見抜く。また米国が本土防衛を優先し、各国は後回しになると見ている。このことに同盟各国は深く憂慮せざるを得ない。
拡大抑止力でこれがいつも問題になる。他国より自国の安全を優先するのは自然なことだ。これを前提に拡大抑止力の実効性を同盟国と敵国に示すべく、米指導層は米国の狭義の権益に関係の及ばない行動を選択する可能性がある。こうした行動は制裁や外交圧力のように実害がない場合もあるが、同盟国のため参戦することも含まれている。
米本土がたとえ一平方インチでも攻撃されれば即座に反撃する姿勢や軍事力にかわりはない。ただヘンリー・キッシンジャーが何年も前に述べたように「軍事技術がもたらす結果が恐ろしいだけに開戦理由がなかなか定義できない。軍事力行使には道義的な正当化が求めらる」のである。冷戦時代の中心的戦略思想家トーマス・シェリングもキッシンジャーの懸念を共有する。「海外での戦闘は軍事行動だが、敵も味方も同様に多大な負担をしてまで外地での戦闘を正当化するには軍事力だけでは十分ではない」と著書 Arms and Influenceで記している。「拡大抑止力には意図を示すことが必要となる。たとえこじつけでも意図を説得力豊かに示して他国の行動を抑える必要がある」とセリングは記している。
端的に言えば、拡大抑止力の信用度を維持することの困難さは軽く見るべきではなく、抑止の対象から発生する付随コストやリスクに目をつぶるべきでもない。そうしたリスクに北朝鮮ICBMが米国都市を狙う事態がまもなく加わりそうだ。■
Christopher Preble is vice president for defense and foreign-policy studies at the Cato Institute and the author of The Power Problem: How American Military Dominance Makes Us Less Safe, Less Prosperous, and Less Free.
Image: Reuters
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