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★ボーイングが極超音速機コンセプトを公表、ロッキードSR-72に対抗

 

ボーイングが積極的に新技術を公開しています。立て続けに発表できるのはそれだけ多くの研究開発が背後にあるからでしょう。特に極超音速技術の開発はピッチが上がってきましたので注目です。まずBusiness Insiderの記事です。



Boeing unveils conceptual hypersonic jet design to replace the SR-71 Blackbird

ボーイングがSR-71ブラックバード後継機となる極超音速機設計案を公開
Boeing hypersonic concept SR-71Boeing
  • ボーイングがSR-71ブラックバード後継機を狙う極超音速機のコンセプトモデルを公開
  • マッハ5以上を狙う
  • この性能の機体はまだ製造実績がない


ボーイングがSR-71ブラックバードの後継機とされる新型極超音速機のコンセプトモデルを公表したとAviation Week Aerospace Dailyが伝えている。
コンセプトモデルはオーランドで開かれたAmerican Institute of Aeronautics and Astronauticsの科学技術フォーラム会場で展示された。
「このコンセプトと関連技術は極超音速ISR/攻撃機を想定しSR-71と同じミッションを想定しました」とボーイング広報サンドラ・アンガースがBusiness Insiderに伝えている。「SR-71後継機を目指しています」
「実証機に至る前のコンセプトモデルですが再利用可能な極超音速機の製造は未踏の分野」とアンガースは述べ、「当社は高度技術分野に常に挑戦し顧客からの発注に備えております」
アンガースは次世代機はマッハ5超となるとも述べている。ボーイングの極超音速分野の主任技術者ケヴィン・ボウカットはAviation Weekに極超音速機設計が着々と進んでいると述べている。
ボーイングは防衛産業最大手の一角であり、米国内で大きな政治影響力を誇る。
SR-71SR-71 Wikimedia Commons
Aviation Weekではボーイングが「F-16程度の大きさの単発実証機のフライトテストではじめ、その後双発でSR-71とほぼ同寸の実用機に移る二段構えの対応を想定している」と述べたと報じている。
ボーイングはすでに極超音速飛行を無人機X-43、X-51で実験を行っている。
このうちX-51は2013年にマッハ5.1を三分間維持し海中に没している。ただし、X-51はB-52母機から投下されブースターで加速してマッハ5.1を記録している。
これに対して今回のコンセプトモデルは自力で離着陸する想定で難易度が高い課題に挑戦する。
ロッキード・マーティンもSR-71後継機をSR-72として開発中で2020年にテスト開始を狙う。■
ではそのAviation Weekの記事を見てみましょう。


Boeing Unveils Hypersonic ‘Son-Of-Blackbird’ Contender

ボーイングが極超音速の「ブラックバード二代目」競合策を公開

Hypersonic vehicle design: Guy Norris


Jan 11, 2018Guy Norris | Aerospace Daily & Defense Report


極超音速技術の研究開発が米国で急速に進展する中、ボーイングが初の再利用可能マッハ5超実証機の設計案を発表し、将来の超高速攻撃偵察機へ道を拓こうとしている。
デルタ翼で後退角が大きなコンセプトモデルは二十年にわたるボーイングのX-43、X-51A極超音速実証機研究の流れをくむ。その他のボーイングの超高速飛行技術の実績も反映しており、マッハ3のXB-70実験爆撃機もそのひとつだ。ロッキード・マーティンが2013年にSR-72と同じくボーイングもSR-71ブラックバード偵察機の後継機を狙う構想を発表している。
「再利用可能極超音速機で一番実現性が高い形態はなにか。そこで独自に研究を開始しこの答えを探しました」とケヴィン・ボウカット(ボーイング極超音速技術主任研究者)は語る。コンセプトから実寸大開発に進めば、ボーイングは二段構えでテストを開始しF-16サイズの単発機をまず製造してから双発実用機に進み、107フィートのSR-71と同様になる。
ボウカットによれば尾翼二枚でウェイブライダー形状の仕様が極超音速機に進展しつつあり、「通常の形で離陸してマッハ1からマッハ5への加速は生半可ではありません。空気取り入れ効率は速度が上がるにつれ低下しますのでマッハ5ならエンジンは相当大きくしなければなりません。しかし空気取り入れ口もノズルも大きくなり、マッハ1突破だけでも困難になります」
だがボウカットは機体と推進系の設計に学際的設計最適化multidisciplinary design optimization (MDO)を取入れ、多様な分野の技術を同時採用することでボーイングは実用的な仕様を実現したと語る。MDOはX-51Aでも採用された。
X-51Aウェイブライダーは空気取り入れ式機で極超音速飛行を始めて持続した機体だ。
ボーイングは自社費用で極超音速飛行研究を開始したが、現在はDarpaの全域高性能エンジンAdvanced Full Range Engine (AFRE)構想と関連したタービンコンバインドサイクルturbine-based combined cycle(TBCC)飛行実証を進める米空軍研究開発本部(AFRL)の下で研究を続けている。ボーイングはエンジンパートナーにオービタルATKを選定し、オービタルは2017年に21.4百万ドルでAFRE研究契約を交付されている。ボーイングは2016年にAFRLのTBCC飛行実証機コンセプト作成を開始し、オービタルATKに作業を委託している。
機体仕様はTBCC推進系により大きく影響を受ける。TBCCでは従来型タービンエンジンにラムジェット/スクラムジェット(DMRJ)を組み合わせる。タービンエンジンでまずある程度のマッハ数にしてからDMRJに移行する。エンジンは空気取り入れ口とノズルを共有し、移行後はタービンは保護カバーに覆い着陸まじかで減速時に再始動する。取入れ口にはXB-70で採用した分離板が採用されているとボウカットは述べており、TBCCは推進方式の候補の一つに過ぎないとする。ノズルも分離されている。
「推進系で機体長が決まります」とトム・スミス(ボーイング極超音速機開発技術研究主任)も言う。ボーイングは設計原案の詳細を明らかにしていないが、取り入れ口が広く、ナセルが機体下についていることからTBCCエンジンのタービンとDMRJは並列搭載されているようだ。
取入れ口が内側を向くのは機首で生まれる衝撃波を吸収する狙いがある。機体前方のチャインが鋭角で大きなデルタ翼に繋がっていることからウェイブライダーとしての極超音速効果とともに離着陸時の低速時の揚力効果を期待する。ウェイブライダーとは衝撃波に波乗りし抗力が減る効果を期待することをさす。「チャインが主翼につながり良好な空気の渦が生まれます。低速時にこの渦に注意が必要です」(スミス)■


さすがAviation Weekは航空力学にも言及していますね。ビジネスマンにはそこまでの情報は必要ないということでしょうか。Business Insiderもコンパクトながら重要な情報はちゃんと伝えていますね。両誌とも今後もフォローしていきます。

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