新年といってうかれているわけにはいきません。現実世界は待ってくれないのです。視野を広げましょう。北朝鮮だけが危険なのではありません。われわれは相互依存の世界に生きていますので遠い地点での危機もわれわれの危機につながりかねません。国境線だけでは安全は守れないのです。
5 Places World War III Could Start in 2018
2018年第三次世界大戦がはじまりそうな場所
December 15, 2017
2017年の世界は大国間の衝突なく対処できた。シリアなど一部で緊張が大きく下がったが、状況が悪化した地方もある。以下2018年に大国間の武力衝突の発生可能性がある場所を見てみよう。
北朝鮮
北朝鮮が最も深刻な外交危機なのは疑いない。弾道ミサイル開発に成功し、トランプ政権が外交に不慣れなことが重なり非常に危険な状況が生まれている。ミサイルと核の実験を繰り返す北朝鮮は米圧力で自ら滅びるつもりはないと表明している。米外交が首尾一貫しないのは政府高官間で矛盾する発言が出ているのも原因だ。
問題を複雑にしているのは北朝鮮と米国ともにいつ先制攻撃してもおかしくない理由があることだ。米国は北朝鮮の通信施設を地上攻撃に先立ち破壊し、北朝鮮は攻撃を受ける前に先に手を出してもおかしくない。このままだと双方が誤った判断をして開戦になってもおかしくなく、日本、中国も巻き込まれる可能性がある。
ここにきて中国の軍部、外交部からそれぞれ乱暴な発言が出ているのはPRC内部で軍事バランスが中国に有利と判断する考えがあるためだろう。この認識は時期尚早であり、中国指導部がすべて同じ見方をしているわけではない。中国は北朝鮮付近での軍事活動を強化しており、同国のその他国境地帯でも同じ傾向がみられる。
米国はこれに対して冷静に対応しており、中国の動きは非難し台湾向け大規模武器販売を発表している。ただしトランプ政権は北朝鮮に対するスタンスで混乱を示し外交上は苦境にあり、中国へ一層の制裁実施を頼む立場だ。予測可能かつ慎重な外交を前提とするべき中で米中両国はむしろ不確実性を受け止める姿勢を示しており、破滅的な衝突が発生しかねない。
ウクライナ
ウクライナ情勢は相変わらず厳しい。東部での停戦はウクライナ政府とロシアが支援する現地武装勢力間の衝突で中断している。首都キエフでもデモや抗議活動から政府の安定度に疑問が生まれている。
紛争は多様な形で生まれそうだ。ウクライナ政府の崩壊はモスクワには有利に働くはずだが一層の混乱と暴力を生むだけかもしれない。ロシアの代理勢力は勇気づけられ、プーチンは領土を獲得するチャンスと見るかもしれない。逆にキエフ政府崩壊で右翼強硬派が権力を握り火にガソリンを注ぐように東部の状況が悪化するかもしれない。
オバマ政権がキエフ支援に動いたのにトランプ政権は継承せず、ロシアがウクライナを軍事侵攻すればヨーロッパや米国もロシアと衝突する事態が生まれかねない。
NATO南部
米国とトルコの関係は昨年崩壊したといってよい。トルコは2015年発生した軍事小競り合いで悪化したロシアとの関係を修復した。トルコがEUや米国から離れる傾向を示しているのはロシア製軍事装備の取得が象徴的で地域内の力のバランスに大変化が生まれるかもしれない。
関係国のトルコ、ロシア、米国はいずれも戦争は解決策にならないと分かっているが、トルコは極めて重要な国で同国が離脱すればシリアイラク、イラン、さらにバルカン諸国やコーカサスの行方にも影響がでる。トルコ外交の方向が変われば予期しがたい波及効果が近隣に現れそうで、とくにクルドの建国志向が試される。また南部ヨーロッパでNATOへの関与を再検討する動きにもなりかねない。この予測不可能な状況でモスクワあるいはワシントンが自らの力のレベルを読み間違える危険も生まれよう。
ペルシア湾岸
中東での武力衝突は大国間の衝突につながる危険性を内包しているが実際に発展することはまれだ。シリア内戦が終了に向かう中で、関心はイランとサウジアラビアの対立に移りつつある。サウジアラビアはいつでも引き金を引きそうで、イランが毎回の事件の背後にあることを突き止めようとしている。イランはイラク、シリア他に自らの影響力を増やそうとしている。
トランプ政権はシリアのアサド政権の勝利をほぼ受け入れており、努力の方向をイランへの対抗に切り替えている。このためサウジアラビアが展開するイエメン他の作戦には白紙小切手を切っており、これがリヤドの自信過剰につながっているといえよう。
リヤド、テヘランが開戦を踏みとどまれるか。湾岸地方の戦乱で世界へ影響が全くない事例は発生していない。だがリヤドは外交軍事同盟でイランに対抗しようと明確に動いており、イスラエルを巻き込むことになりそうだ。ロシアがこの地域で自国の立場を再び主張しはじめており、超大国間の衝突につながる事態は容易に想像できるのが憂鬱だ。
結論
世界は危険な場所だ。トランプ政権の揺れる外交でさらに危険が増え、各地で予測が立てにくくなれば米国にとっても政策意図と能力の展開が困難になる。不確実性から恩恵を受ける国が必ずしも現れるわけではないが、危機状況でも危機でない状況でさえ誤算の可能性は増える。トランプ政権の外交チームには成長と成熟してもらい、外交面で一貫した方向性を示し各種危機状況の緩和を期待したい。■
Robert Farley, a frequent contributor to TNI, is author of The Battleship Book. He serves as a Senior Lecturer at the Patterson School of Diplomacy and International Commerce at the University of Kentucky. His work includes military doctrine, national security, and maritime affairs. He blogs at Lawyers, Guns and Money and Information Dissemination and The Diplomat.
Image: M1A1 Abrams Main Battle Tank during training. Flickr/U.S. Marine Corps/Public domai
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