スキップしてメイン コンテンツに移動

★ロッキードがアエリオンと共同開発する超音速ビジネスジェットは軍用で大きな役割を果たしそう


Lockheed Likely Sees Big Military Applications Potential In

Aerion's Supersonic Bizjet

ロッキードがアエリオンの超音速ビズジェットに軍事転用の可能性を着眼

A jet that can cruise for thousands of miles at mach 1.4 will be just as

enticing to the Pentagon as it is to billionaires


マッハ1.4で遠距離巡航飛行できる同機には裕福層のみならずペンタゴンも注目

.


AERION



  • ロッキード・マーティンアエリオンコーポレーションAerion Corporationと世界初となる超音速ビジネスジェットで共同開発に乗り出すと正式に発表した。実現すれば同社の旅客機製造は30年ぶりとなる。機体はAS2と呼ばれF-104スターファイター戦闘機と727旅客機を混ぜたように見え、プライベート航空運行のみならず商用航空に革命を巻き起こしそうだ。だがまだ話題にのぼっていないが軍用にも転用可能だ。
  • 2017年12月15日、ロッキード・マーティンとアエリオンは共同声明で翌年中に両社提携の大枠を定めると発表し、技術検討と設計作業から試作機製作さらに型式証明取得を目指した製品版までを視野に入れると明らかにした。2017年5月にジェネラルエレクトリックが同様の提携内容を発表しており、同機用エンジン開発中だ。
  • 「提携は超音速時代ルネッサンスに道を開く重大な鍵となる」とアエリオン会長ロバート・バスRobert Bassも報道資料で述べている。「超音速ではロッキード・マーティンの知見が著名であり、伝説とも言える。当社はロッキード・マーティンのめざす高効率民生超音速機の長期開発で一助となりたい」
  • 「当社でアエリオンの空陸特性設計技術を検討し他ところ同社のAS2コンセプトには当社の時間・資金の投資の価値があることがわかった」とオーランド・カルヴァルホOrlando Carvalho(ロッキード・マーティン航空機執行副社長)が声明発表した。「航空宇宙技術の最先端企業として残る決意をしている当社としてもアエリオンとともに航空史の新しい一ページを開くことにわくわくしています」

AERION

  • アエリオンのAS2はエンジン三発で長時間超音速巡航を目指し、目標はマッハ1.4だ。同社は高翼案と低翼案それぞれ発表し、エンジンはそれぞれ後方に配置している。
  • AS2の航続距離はマッハ1.4で4,200カイリ(7,770キロ)の見込み。音速に限りなく近いマッハ0.95では5,400カイリ(1万キロ)となる。
  • 同社は当初はビジネスジェットとして売り込み客室内の意匠もビジネス用途を強く意識していた。客室は小型旅客機にも簡単に転用できる。
  • 2015年にフレックスジェットFlexjetが24億ドルでAS2を20機発注し、機体単価はおよそ120百万ドルとガルフストリーム650のほぼ二倍だった。この価格は上昇するかもしれないが、取得価格は販売の制約になりにくい。というのはこの種の機体では性能と運行コストこそが大切だからだ。
  • ビズジェットを使ったチャーター業界は同機の納入開始を2023年、完全運行開始をその二年後と想定しており、ロッキード・マーティンが正式に加わったことで以前の不安が解消されAS2の開発工程表は十分実現性があると見ている。

AERION

  • 航空業界に民間超音速旅客輸送に対する関心が絶えずあるのは、米空軍の伝説的人物チャック・イエーガーがベルX-1で音速の壁を破った1947年以来のことだ。ただ大きな壁は運行コストであり、騒音問題だ。また超音速飛行によるソニックブームも立ちふさがっている
  • 英仏合作のコンコード超音速旅客機をエールフランスとブリティッシュエアウェイズが1976年から2003年まで運行したが、人口稠密地帯を避けた経路を飛ぶことが多かった。運行には両国政府の補助金が投入されたのが大きい。コンコード以外にはソ連にTu-144があったが、その他の超音速機事業は実現していない。
  • アエリオンは超音速飛行の復活に向け尽力し、2004年には超音速ビジネスジェット(SBJ)構想を発表し、2017年か2018年の飛行開始を想定していた。2014年に発展させたAS2コンセプトを発表したが試作機は製造していない。
  • 同社はNASAと広範な共同研究を行い、その結果をAS2に取り入れた。中でも重要なのは表面上で滑らかかつ連続して気流を流すことで、高速度域では乱気流が発生しやすい環境でもこれは変わらない。
  • 理論上は効率的に飛行しながらソニックブームを緩和する、あるいは消滅させることは可能だ。特に後者が重要で連邦航空局(FAA)は民間超音速機の米本土上空飛行は認めておらず、同様の規制は欧州ほかにもある。

AERION
機内は6フィート2インチ(190センチ)と、高級ビジネスジェット各機より高く軍用装備
搭載にも使えるはずだ。

  • アエリオンによればAS2は複合材を主に使い、マッハ0.95巡航でソニックブームを発生させない。さらにそのままマッハ1.2まで加速可能だが「大気の状況特に気温と風力に大きく影響を受ける」と説明している。
  • この「無ブーム巡航」で超音速飛行は一変すると主張するアエリオンはFAA規制の適用除外を求めているが、道は遠いようだ。
  • アエリオンはエアバス・ディフェンスアンドスペースと機体構造やフライバイワイヤ制御系統を2014年から共同研究してきた。ところがエアバスで汚職が発生しCEOとCOOの辞任につながる事態になり、研究は中止されてしまった。
  • 「エアバスの貢献には感謝しています」とアエリオンの執行会長ブライアン・バレンツBrian Barentsが述べている。「同社がなければ事業はここまで進展できなかっただろう」

AERION


  • GEによればAS2向けエンジンの基本構造が完成したところでこれから基本設計作業を開始するという。FlightGlobalによればGE開発の高圧部をCFM56ターボファンから流用し新設計の低圧部と組み合わせるようだ。
  • 「大きな課題は高高度で稼動する超音速エンジンの取り入れ空気の高温問題です」とGEのビジネス一般航空事業の社長ブラッド・モティエBrad MottierFlightGlobalで説明していた。「簡単に解決できる問題ではなく、できていれば民間超音速飛行はもっと前に実現していたはずだ」
  • そこでロッキード・マーティンが登場する。アエリオンとは別に同社もNASAと共同で静かな超音速技術の実証機を製作しており、QueSSTとして知られる。目標はマッハ1.4、高度55千フィート飛行でソニックブームを地上では「心臓の鼓動」程度にしか聞こえない音にすることだ。

NASA
QueSST

  • NASAはロッキード・マーティンと初期設計案を検討し、機体設計図と風洞試験結果を2017年早々に完成させた。有人実験機として2021年に初飛行する。
  • 超音速飛行に多大な知見を有するロッキード・マーティンにはA-12/SR-71スパイ機、提案に終わったL-2000旅客機、戦闘機各種、極超音速戦闘機材さらに極秘プロジェクト数件もあり、QueSSTの共同事業社として魅力的な企業だ。見返りに同社はで期待したほどの成功が得られなかったL-1011トライスターで1980年代以降放棄してきた民生航空機事業の復活への道をさぐることになる。
  • 両社がAS2を実現させれば、ロッキードには世界初のビジネスジェット機の同社ジェットスター投入時より大きな意味が生まれる。ジェットスターはケリー・ジョンソンの作品のひとつで航空業界に新しい部門を創設することでも似ている。AS2が実現すれば米軍にも魅力あふれる機体になる。

MUSEUMOFAVIATION.ORG
VC-140は民間ジェット移動に新時代を開いたロッキード・ジェットスターの軍用版だ。

  • マッハ1.4で長距離飛行可能なビジネスジェット機が生まれればUSAFに多大な意味が生まれる。長距離移動の時間を大幅に短縮でき、空中給油能力を付与すれば大きな意味が生まれる。
  • VIPや緊急装備など少人数の世界各地展開だけでなく、戦術面で監視偵察や電子戦支援用途にも投入できれば有益だ。AS2にしかできない性能をこうした任務に投入すれば接近阻止領域拒否(A2AD)に直面する米国や同盟国も対応が容易となる。

DOD
ガルフストリームC-37 (GV) とC-20 (GIII/GIV) がペンタゴンの高速庁k慮移動タクシーに使われて
いる。AS2ではより高速な移動手段隣、特殊任務にも有益だろう。

  • 太平洋では主要地点の距離が長く、しかも中国が人工島上の施設整備で米軍の航空機艦船を妨害するなかで難易度が高くなってきた。だがAS2なら高速物資補給や支援用機材として広く活用でき、遠くはなれた地点間を結ぶことは絶対必要なのだ。
  • AS2を電子戦支援に投入しステルス攻撃機の後方を飛行させればスタンドオフジャミング支援やサイバー攻撃用機材として敵防空網の機能を低下できる。最終目標は無害な通行路を作り、脆弱な各機を敵沿岸地方に接近させることにある。
  • 無給油で戦闘半径が2,200マイル(3,500キロ)程度のAS2なら敵防空網の外側から重要な敵の電子情報を吸い上げながら、一体型レーダーで敵領土内部を探知できるだろう。高速ダッシュで進入撤収するため残存性は保証される。
  • つまりF-22ラプターのような超音速準高機能がありながら飛行距離が長大なAS2は戦闘作戦空域を「縮める」効果を生み、戦術・兵站面で新しい可能性を生む。あるいはAS2をもとに「運動性」攻撃手段の母機が生まれる可能性もある。
  • アエリオン公開の画像を見ると機体には機首降着装置から主脚までが兵倉庫にぴったりなようだ。ただし相当小ぶりの兵装扉にするか射出式の兵装搭載にして、時間が貴重な攻撃時の機能を提供するのだろう。小口径爆弾やスタンドオフ兵器一発を搭載すしても迅速攻撃用機材として柔軟かつ容易に運用できるだろう。
  • AS2が生産されれば、ロッキードとアエリオンは販売に苦労することはなさそうだ。裕福なうえに裕福な層や社用族にとって時間が一番貴重な資源であり、アエリオンはタイムマシンを提供するようなものだ。
  • 同機が稼動すればビジネスジェット市場に波乱を呼びそうだ。現在は737改装のボーイングビジネスジェットから757改造はては747-8iまで大型プライベートジェットになっている。確かに潤沢な機内スペースは魅力的だが、目的地に半分の時間で到着できるほうがありがたい。だが軍用用途では時間とは生と死の差でしかない。つまり敵よりわずかでも有利な状況がほしいので、AS2は民間航空同様に軍用用途でも重宝されるはずだ。ここまでを頭に入れた上で、ロッキードのスカンクワークスが軍事転用に関係しても驚かないように。
  • ロッキードとアエリオンがこれまで多くの業者が失敗してきた超音速民間プライベートジェットを市場販売に成功できるかお手並み拝見というところだ。■


Contact the editor: Tyler@thedrive.com

コメント

  1. 低アスペクト比でエンジンが馬鹿でかく、燃料を積む余地が無さそうに見えます。どうなってるんでしょうね。

    返信削除

コメントを投稿

コメントをどうぞ。

このブログの人気の投稿

フィリピンのFA-50がF-22を「撃墜」した最近の米比演習での真実はこうだ......

  Wikimedia Commons フィリピン空軍のかわいい軽戦闘機FA-50が米空軍の獰猛なF-22を演習で仕留めたとの報道が出ていますが、真相は....The Nationa lnterest記事からのご紹介です。 フ ィリピン空軍(PAF)は、7月に行われた空戦演習で、FA-50軽攻撃機の1機が、アメリカの制空権チャンピオンF-22ラプターを想定外のキルに成功したと発表した。この発表は、FA-50のガンカメラが捉えた画像とともに発表されたもので、パイロットが赤外線誘導(ヒートシーキング)ミサイルでステルス機をロックオンした際、フィリピンの戦闘機の照準にラプターが映っていた。  「この事件は、軍事史に重大な展開をもたらした。フィリピンの主力戦闘機は、ルソン島上空でコープ・サンダー演習の一環として行われた模擬空戦で、第5世代戦闘機に勝利した」とPAFの声明には書かれている。  しかし、この快挙は確かにフィリピン空軍にとって祝福に値するが、画像をよく見ると、3800万ドルの練習機から攻撃機になった航空機が、なぜ3億5000万ドル以上のラプターに勝つことができたのか、多くの価値あるヒントが得られる。  そして、ここでネタバレがある: この種の演習ではよくあることだが、F-22は片翼を後ろ手に縛って飛んでいるように見える。  フィリピンとアメリカの戦闘機の模擬交戦は、7月2日から21日にかけてフィリピンで行われた一連の二国間戦闘機訓練と専門家交流であるコープ・サンダー23-2で行われた。米空軍は、F-16とF-22を中心とする15機の航空機と500人以上の航空兵を派遣し、地上攻撃型のFA-50、A-29、AS-211を運用する同数のフィリピン空軍要員とともに訓練に参加した。  しかし、約3週間にわたって何十機もの航空機が何十回もの出撃をしたにもかかわらず、この訓練で世界の注目を集めたのは、空軍のパイロットが無線で「フォックス2!右旋回でラプターを1機撃墜!」と伝え得てきたときだった。 戦闘訓練はフェアな戦いではない コープサンダー23-2のような戦闘演習は、それを報道するメディアによってしばしば誤解される(誤解は報道機関の偏った姿勢に起因することもある)。たとえば、航空機同士の交戦は、あたかも2機のジェット機が単に空中で無差別級ケージマッチを行ったかのように、脈絡な

主張:台湾の軍事力、防衛体制、情報収集能力にはこれだけの欠陥がある。近代化が遅れている台湾軍が共同運営能力を獲得するまで危険な状態が続く。

iStock illustration 台 湾の防衛力強化は、米国にとり急務だ。台湾軍の訓練教官として台湾に配備した人員を、現状の 30 人から 4 倍の 100 人から 200 人にする計画が伝えられている。 議会は 12 月に 2023 年国防権限法を可決し、台湾の兵器調達のために、 5 年間で 100 億ドルの融資と助成を予算化した。 さらに、下院中国特別委員会の委員長であるマイク・ギャラガー議員(ウィスコンシン州選出)は最近、中国の侵略を抑止するため「台湾を徹底的に武装させる」と宣言している。マクマスター前国家安全保障顧問は、台湾への武器供与の加速を推進している。ワシントンでは、台湾の自衛を支援することが急務であることが明らかである。 台湾軍の近代化は大幅に遅れている こうした約束にもかかわらず、台湾は近代的な戦闘力への転換を図るため必要な軍事改革に難色を示したままである。外部からの支援が効果的であるためには、プロ意識、敗北主義、中国のナショナリズムという 3 つの無形でどこにでもある問題に取り組まなければならない。 サミュエル・ P ・ハンチントンは著書『兵士と国家』で、軍のプロフェッショナリズムの定義として、専門性、責任、企業性という 3 つを挙げている。責任感は、 " 暴力の管理はするが、暴力行為そのものはしない " という「特異な技能」と関連する。 台湾の軍事的プロフェッショナリズムを専門知識と技能で低評価になる。例えば、国防部は武器調達の前にシステム分析と運用要件を要求しているが、そのプロセスは決定後の場当たり的なチェックマークにすぎない。その結果、参謀本部は実務の本質を理解し、技術を習得することができない。 国防部には、政策と訓練カリキュラムの更新が切実に必要だ。蔡英文総統の国防大臣数名が、時代遅れの銃剣突撃訓練の復活を提唱した。この技術は 200 年前のフランスで生まれたもので、スタンドオフ精密弾の時代には、効果はごくわずかでしかないだろう。一方、台湾が新たに入手した武器の多くは武器庫や倉庫に保管されたままで、兵士の訓練用具がほとんどない。 かろうじて徴兵期間を 4 カ月から 1 年に延長することは、適切と思われるが、同省は、兵士に直立歩行訓練を義務付けるというわけのわからない計画を立てている。直立歩行は 18 世紀にプロ