The Real-World Air Combat Origins of “Star Wars:
The Last Jedi” 「スターウォーズ/最後のジェダイ」は
現実の航空戦から着想を得ている
By Tom Demerly
Dec 20 2017 - https://theaviationist.com/2017/12/20/the-real-world-air-combat-origins-of-star-wars-the-
事実は小説より奇なり。「最後のジェダイ」の着想には驚かされる。
ご注意 以下には「スターウォーズ 最後のジェダイ」のネタバレが含まれています。映画鑑賞後に読まれることをお勧めします。
敵の巨大要塞装備に向かう主人公パイロットに攻撃チャンスは一回しかない。勝利すれば同胞の命が助かるが失敗すれば惑星全体の破壊につながる。一か八かでありこの攻撃に人類の存続がかかる。
これはライアン・ジョンソンが脚本監督した「スターウォーズ/最後のジェダイ」の一シーンではない。1981年6月7日に実際にあったイスラエルによるオペラ作戦でイラク・オシラクの原子炉と核兵器製造能力を攻撃した事例だ。
新作ハリウッド大作でもこれまでのスターウォーズシリーズと同様に実際の空爆作戦から着想を得ており、宇宙空間での戦いに史実が大きな影響を与えている。また空戦史がお好きなら、「スターウォーズ/最後のジェダイ」のシーンからどこかでみたことがあるとわかるはずだ。
ライアン・ジョンソン監督の「最後のジェダイ」の視覚効果には古典的な航空戦の原則が見られる。攻撃側はおとりミッションを実施し、主力の第二波攻撃の発進前に時間を稼ぐ。この戦術は以前から使われている。
現実世界ではヴィエトナムとイラクでの「ワイルド・ウィーゼル」SAM制圧任務を思い起こすだろう。また1967年1月2日に北ヴィエトナムでのUSAFのロビン・オルズ大佐の「ボロ作戦」が想起される。大佐のF-4ファントム編隊は護衛戦闘機なしの爆撃機のふりをして北ヴィエトナム上空でおとりとなりMiG-21戦闘機を出撃させ罠にかけた。
「最後のジェダイ」では現実世界の戦闘機パイロット装備に着想を得たようだ (Photo: Lucasfilm)
「最後のジェダイ」に見られる戦術でも敵(「ファースト・オーダー」)の防空装備全部を初回のおとり攻撃に振り向けさせセンサーの位置を割り出しながら弾薬を使い果たせてから大規模第二波攻撃隊を発進させるシーンがある。「最後のジェダイ」の冒頭ではXウィング戦闘機の一機が巨大宇宙戦闘艦を引き付けながら進行を遅らせてから攻撃を開始し防御兵力を制圧して攻撃本隊の侵入経路を開いた。
「最後のジェダイ」の視覚効果には各時代の実際の航空戦や航空映画から着想を得たものが見られる。ルーク・スカイウォーカーがデススターを攻撃した第一作のシーンは部分的に「633爆撃隊」のモスキート機映画にヒントを得ている。ミレニアムファルコンのコックピットは第二次大戦時のB-29爆撃機が原型だ。
「最後のジェダイ」の冒頭シーンは第二次大戦時の大型爆撃機のこうした写真がヒントか。 (Photo: Wikipedia)
噂ではジョージ・ルーカスは実際の訓練施設を低空飛行して着想を得たといわれ、ウェールズのマッハループやネリス訓練場そばのデスバレーにあるR-2508施設(現在は軍が「ジェダイ・トランジション」とか「スターウオーズ・キャニオン」と呼ぶ)を見たといわれる。
ライアン・ジョンソンは空戦からヒントを得ており、「最後のジェダイ」では物理法則や現実を自由に制御している。重力は映画中で都合よく使われており、無重力の宇宙で自由落下爆弾が機能し宇宙機が上下に動いているがそもそも宇宙空間には方向はなく、戦闘員は無大気の宇宙から与圧宇宙機内に自由に移動している。
「最後のジェダイ」の登場人物の一部には再訓練が必要だし、司令官の命令を自分勝手に選択して実施しているし、完全に無視することさえある。現実世界ではこのような不服従があれば「トップガン」の主人公のようにお目玉を食らうのは必至だ。現実遊離の例はまだあり、銃のように見える武器が長距離スタンドオフ兵器として使われている。だが厳格かつ正確無比な現実にもとづく筋書きと想像の世界は別物だ。例えばトム・クランシー作品では現実世界より厳しい形で終わることが多い。
ライアン・ジョンソンはF-22ラプターやスホイSu-35の映像をたくさん観たにちがいない。「最後のジェダイ」冒頭の宇宙戦シーンでポー・ダメロン操縦するXウィングがスホイのような水平テールスライドでファーストオーダー戦闘機の攻撃を避けている。
Xウィング戦闘機のコックピットに新技術の高性能兵装画面やサイドスティックと旧式技術のトグルスイッチを使っているのはF-35のタッチスクリーンより劇的な視覚効果があるとみたためだろう。
F-35で高性能状況認識とネットワーク機能が搭載されているがXウィングパイロットのポー・ダメロン機に同乗するBB-8ドロイドが実はF-35の高性能エイビオニクスの象徴で多機能高性能データリンク(MADL)、アクティブ電子スキャンアレイ(AESA)レーダー、分散開口システム(DAS)そのものだ。各システムでパイロットは戦術環境や機体状況を把握しながらコマンドシステム上で交信やシステム作動が円滑に進む。BB-8ドロイドではほとんどすべてを音声認識で行っている。
また「最後のジェダイ」冒頭の戦闘シーンで登場する抵抗軍の爆撃機大編隊には第二次大戦時のドイツ、日本空爆時の爆撃機編隊の記録画像を思い出させるものがある。映画では無防備の爆撃機編隊をXウィング戦闘機が援護するが大損害を受ける。爆撃機にボール状銃座が機体下についているのはB-17空の要塞のようだ。
ボール銃座の射手ペイジ・ティコが「最後のジェダイ」で最初に犠牲的な最期を遂げる。ペイジは自らの生命を犠牲にして最後の瞬間に一機だけ残った爆撃機からファースト・オーダー宇宙機に爆弾投下する。ペイジの姉妹ローズ・ティコがその後はヒーローとして描かれる。
遠隔操作銃座はB-29スーパーフォートレスがヒントだろう(Photo: Lucasfilm)
ファースト・オーダーの巨大戦艦マタドール-IV級にもどこかで見た感がある。「最後のジェダイ」美術監督ケビン・ジェンキンスは巨大戦艦の着想をあちこちから得たが、第二次大戦の日本海軍戦艦大和もその一つと明かしている。巨大戦艦には大型軌道砲二門があり、その他遠隔操作対空砲が24門つく。全長7,669メートルと巨大な艦体だ。
巨大宇宙艦は日本の大和からヒントを得ている(Photo: Lucasfilm)
フィクションの傑作はおしなべて現実世界から着想を得ている。「スターウォーズ/最後のジェダイ」では現実の航空戦の技術、戦術、戦史から観客に興奮感動を与える映像を作った。こうしてみるとこの作品はスターウォーズ各作品含め、過去現在未来の航空戦の叙情詩と言ってよく、現実政界で未来のジェダイ戦士を鼓舞させてくれる。■
Top image credit: Lucasfilm.
スターウォーズ第一作のデススター攻撃は「暁の出撃」Dambustersが元ネタと言われていますが....
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