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UAE向けF-35売却検討の解禁は新たな中東の動きの一環になるか


北朝鮮や南シナ海、中国とともすれば我々の関心は近隣国に偏りがちですが(それだけ緊急性が高いのは当然ですが)中東へも関心を維持していく必要があります。その中でイラン包囲網としてアラブ諸国が仇敵のイスラエルと対立ばかりしてられない状況が生まれつつあるのでしょうか。F-35が販売できればロッキードは大喜びでしょうが、日本としても原油供給しか見ていないUAEの躍進ぶりには十分注意を払ってしかるべきでしょう。


Trump could let the UAE buy F-35 jets

トランプはUAEにF-35売却を許すのか

米空軍F-35AライトニングII。トランプ政権はF-35のUAE売却の検討に入る。 (Master Sgt. John R. Nimmo Sr./U.S. Air Force)

WASHINGTON ― アラブ首長国連邦向け拡大戦略協力の一環でトランプ政権はUAEが求めていたF-35共用打撃戦闘機の購入要請を検討することで合意した。
  1. 正式決定ではないが検討に合意したことでUAE向け機微情報ブリーフィングが可能となり、第五世代戦闘機取得の第一歩となればオバマ前政権の政策から大きな変化となる。オバマ政権は同国からのブリーフィング要請を2011年以来拒絶していたからで、その理由をイスラエルのいわゆる質的軍事優位性Qualitative Military Edge(QME)が脅かされるからとしていた。
  2. 湾岸諸国の専門家、産業界幹部へインタビューするとトランプ政権に対して米議会が求めているQME維持の動きを回避するよう望んでいるのが分かった。QMEではイスラエルが望む武器援助を提供して同国防衛の実現を優先して求めている。同時にワシントンは5月発表の米UAE防衛協力を拡大したいとする。
  3. 「トランプ政権は要請を検討することにした。これは『イエス』でないが、状況が落ち着けば実現するのは間違いない」とペンタゴン前高官がDefense Newsに語ってくれた。発言の裏にはUAE、サウジアラビア、バーレインがカタールと紛糾している事態がある。トランプ新戦略でイランの核・非核両面の脅威に対抗する動きを実行に移す前に解決が求められる問題だ。
  4. 専門家の間にはUAEがF-35にアクセスできる背景に同国が1991年湾岸戦争以降の米主導連合軍に唯一参加したアラブ国家であることを指摘する向きがある。同国は米空軍第380遠征航空団の駐留を受け入れた。
  5. まずイスラエルの紅海の都市エイラートから20キロしか離れていないサウジアラビアと異なりUAEはイスラエルと海上陸上いずれも国境線を共有していない。またサウジや他の湾岸協力協議会加盟国と異なり、UAE空軍はイスラエルとの演習に堂々と参加しているし、米空軍のレッドフラッグ演習にも参加している。
  6. イランの脅威で共通していること、ワシントンとの契約交渉のリードタイムを考えるとイスラエルは今後10年間は中東で唯一のF-35運用の座を守れそうだと関係筋は見ている。
  7. イスラエル国防省はF-35販売制限をUAEに解禁する可能性について論評を拒んでいる。ただしイスラエルはUAE限定で他のGCC加盟国になし崩し的に門戸を開かないのであれば反対しないと見る向きがある。
  8. 「両国に同盟関係はなく、友好国でもありませんが、UAEがイスラエル攻撃にF-35を使うなどと主張する人は現実を見ていないことになります」とワシントンに本拠をおくジューイッシュ政策センター専務理事のショシャナ・ブライエンは言う。
  9. 米UAEビジネス協議会を主宰するダニー・セブライトは米政策で技術移転が制約を受けてUAE政府に不満がたまっているという。「我が国の政策はイスラエル対アラブ各国という構図です。だがUAEはイスラエルには悪意はなく、対戦するつもりもありません。そのためアラブ諸国がイスラエルのQMEにどう影響するかという観点だけで決定が棚上げになっている状況ががまんならないのです」
  10. セブライトは米国政府はUAE要望を長期的提携関係の視点で検討し、UAEを域内安定化に貢献させるべきと主張する。新しく生まれた15年間有効の防衛協力合意は包括的でF-35のみならず最新鋭米装備や共同開発研究の実現に道を開いており、特殊作戦でも協力できその他の二国間事業が可能だと指摘する。
  11. 米UAEビジネス協議会が発表した13ページにわたる報告書でセブライトは対テロ作戦からアフガニスタン再建まで多様な分野を一覧にし、UAEが米安全保障に貢献した事実はアラビア湾を超えた範囲に及ぶと指摘。またUAEは米海外軍事販売の主要顧客であり国防支出で世界上位15カ国に入る。
  12. 「米UAE基地協定、共同訓練、武器販売だけが実績ではない。UAEは安全保障関連の消費国だけでなく湾岸地区中東全域で安全保障の提供国になっています」(セブライト)
  13. にもかかわらず米国が課す制約のためUAEは西側以外の供給先に目をむけるとセブライトは警告する。今年初めにUAEはロシアと第五代戦闘機をMiG-29原型から開発する意向書を取り交わし、モスクワはUAEがスホイSu-35調達に関心を示したと発表している。
  14. 「この事態をどう見るか。UAEが米調達プロセスに不満を感じているからでしょう」(セブライト) セブライトはF-35要望がいまだ実現していないのは特異な事例ではないとする。UAEは中国製UAVを導入したがプレデターが入手できなかったためだ。ワシントンは同機の攻撃能力を理由に要望を拒否したのだ。
  15. 「UAEは米安全保障にも貢献している...非西側サプライヤーからの購入を検討しても米国製装備を優先してくれる...米国による訓練支援を含め二国間安全保障協力を強化していくことが極めて重要だ」と報告書はまとめている。
  16. ワシントンインスティテュートの湾岸エネルギー政策研究をまとめるサイモン・ヘンダーソンからはサウジアラビアが米主導の演習に参加してイスラエルに対する同国の態度への懸念を払しょくする可能性を指摘している。
  17. 「米国はサウジがイスラエルへの脅威でないと判断できればF-35売却を検討するだろう。イスラエルへ脅威でないとなればサウジアラビアとイスラエルが同時に航空演習に参加できるようになる」(ヘンダーソン)■

Opall-Rome is Israel bureau chief for Defense News. She has been covering U.S.-Israel strategic cooperation, Mideast security and missile defense since May 1988. She lives north of Tel Aviv. Visit her website at www.opall-rome.com.

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