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北朝鮮崩壊後のシナリオ、朝鮮半島再統一か北に新体制出現か


さすがにCatoの研究員ですね。日本のチンピラ時事評論家と考えの範囲と規模が違います。どうしたらここまで思考をひろげられるでしょうか。現状維持の方がいいとは思っていないはずですが、やはり統一朝鮮が出現してほしくないという思いが日本にあるのでしょうか。朝鮮半島が面倒だからかかわりたくない、というのはミニ孤立主義みたいですね。むしろ事実を見つめてどうあるべきかを考える(未来はデザインするものです)思考作業が我々には欠けていませんか。


Who Swallows North Korea after Its Collapse?

崩壊後の北朝鮮を飲み込むのはは誰か

November 12, 2017


北朝鮮は世界で最も不安定な国家だ。貧しく孤立した小国だが核兵器、大陸間弾道ミサイルを開発し米国でも核戦争の危険が感じられるようになってきた。
  • 朝鮮民主人民共和国(DPRK)を何とかしなければとほぼ全員が思うものの実際に何をすべきかでコンセンサスがない。軍事行動は破滅的な戦闘に発展し、制裁措置は政権崩壊しか結果を生まない、また交渉で朝鮮半島非核化が実現する見通しが立たない。
  • そうなると現在の危機状況に解決策がないように見える。暗い見通ししかない現状のまま未来が見通せない。予測困難な同国政権は核兵力を保有しており唯一の解決策は64年同様の戦争しかないようだ。
  • 現状の脅威で手一杯とはいえDPRKの隣国は未来を見通す必要がある。もし金正恩政権が倒れ、北朝鮮が内部崩壊し国家として分解すればどうなるのか。
  • よくある考え方は朝鮮半島が再統一され、南朝鮮が北を「飲み込む」ことで拡大版韓国が出現するとの見方だ。この方向を韓国、米国さらに日本も望んでいるはずだが、中国や日本には統一され力をつけた新たな競争相手の出現を望ましくないとする見方が多い。つまり分断状態が理想で、北には別の形で統治機構が残る方がいいという。
  • それでも交渉による再統一が最良の結果であり、外部干渉なしで南北朝鮮が共通の未来を決められれば良い。だが可能性はわずかで筆者が訪朝した際も関係者は「併合される」のは望まないと強調していた。また強権主義の共産体制が自主的に資本主義の南と統合の道を選ぶとは考えにくい。全くの空想の世界だ。
  • だが中華人民共和国がより強硬な制裁措置を躊躇せずに実施したら、北は混乱し動揺するのではないか。可能性の一つとして政権が権力基盤を失い、国家として破たんすることがある。ただその過程は醜悪、高価かつ流血さえ伴う可能性がある。内戦、抗争に加え核兵器流出、経済崩壊と大量飢餓から南北朝鮮からの難民の波が生まれるかもしれない。
  • 最終結果も同様に惨憺たるものになる。南主導の再統一はドイツ再統一のように円滑に進まないだろう。南北の経済政治社会の格差がとんでもなく大きいためで再統一は「征服」の形になるはずと北朝鮮研究者アンドレ・ランコフAndrei Lankovは見る。歴史・民族が共通とはいえ、南北は発展様式が異なる。金正恩の独裁体制から逃れても北朝鮮国民は生まれてからたたき込まれた南は米帝国主義の「傀儡」との教えを払しょくできないだろう。
  • ランコフは言う。「征服されて喜ぶ人民など存在しない。部隊や統治機構が進駐してみんなが狂喜乱舞すると思わないほうがよい。花を贈られる代わりに銃弾を浴びることになるだろう」
  • 最良の場合でも再統一は長期にわたる複雑かつ高価な過程になる。韓国の費用負担は莫大になる。元社会主義の票が加われば韓国の政治地図も変わる。南は南北のあまりにも異なる事情を統一することに忙殺されるだろう。
  • さらに朝鮮再統一が必然との見方では中国を無視している。中華人民共和国(PRC)は鴨緑江の北に構える巨大な傍観者と見ているようなものだ。だが北京は再統一が現実になる日は見たくない。国境の向こうに協力で独立し国家主義傾向を強めた相手は出現してほしくない。朝鮮族が居住する中国国内領の国境線書き換えを主張され、米国との同盟関係を保持する国が出てきては困るのだ。国境近くに基地を構築されれば中国封じ込め効果が実現となり中国にとって悪夢となる。
  • つまりPRCが介入してくる可能性がある。西側には中国に北侵攻で金政権駆逐を期待する向きがあるがこの可能性は限りなく低い。北朝鮮は頑強に抵抗し、交戦は悲惨になる。結局中国はDPRKを占領し再建する嫌な仕事につくことになる。現体制がこの選択を真剣に検討するとは思えない。
  • 逆に北朝鮮の弱体化はPRCの好機となる。金正恩が駆逐されても体制が崩壊しなかったら、中国が介入し親中国派を起用し中国寄り政権を樹立するだろう。北が中国の地方省になる可能性は低い。歴代の金一族は北を周辺国に依存しない体制にしており、北の住民がこのナショナリズムを南と共有するだろう。DPRKは小国だが中国でさえ同国の併合は無理だろう。
  • もっと可能性が高いのがミニPRCの樹立で、北が経済改革を採用しながら核兵器は廃止し中国の安全保障に頼ることだ。この場合はもっと深刻な事態が北に発生する。混乱が悪化すれば国境線を監視する中国は軍事介入で秩序回復し臨時政府樹立を狙うだろう。PRCは緩衝国家を得で国境線は安泰でいられる。
  • これではソウルやワシントンが考える理想は実現せず、北朝鮮崩壊に付け込み介入すれば対立が生まれるだけだ。武装した北朝鮮内勢力、米、中、韓の各軍は一触即発の状態となる。偶発的な衝突が深刻な結果につながる。長期予測は不可能だが北朝鮮が分断されるのと敵意に満ちた中国が生まれるのではないか。
  • それでも北朝鮮が中国の影響下で存続できれば前進といえる。核危機は終わる。南への通常兵器による脅威も終わる。中国の影響力はますます増えるが米国や同盟国への脅威ではない。また新生北朝鮮は今よりリベラルな方向に進み、最終的に南北統一に向かうだろう。
  • にもかかわらず中国の軍事介入の可能性は低く、中国としても最後の手段と見るはずだ。だが予測不可能で常軌を逸した北朝鮮を恐れる理由は多い。最近の出来事を見ると事態は悪化しておりもっと悪化することもありうる。
  • ワシントンとソウルは最低でも中国と北朝鮮事態について対話を試みるべきだ。現政権後の体制は他国に検討してもらいたくない平壌と面倒になるため北京は対話をこれまでは公式に拒絶している。ただし関係国としては危機が進展しようが各軍が交戦し北の領土、兵器、国民を奪い合う事態だけは避けられるようにしたいはずだ。
  • この方法が気に入らなければ韓国と米国は中国介入の可能性を最小限にすべく中国の求める権益に触れるべきだ。つまり再統合後の朝鮮半島と対米関係だ。PRCが1950年に参戦したのは国境に米軍を近づけないためだった。朝鮮半島全土に米軍基地が出現すれば米中戦の場合には有益だろう。つまり再統一後の朝鮮が米国と同盟関係にあればPRCに不利な情勢が生まれる。北京がこれを阻止すべく開戦することはないだろうが、わざわざこの実現を助ける理由もない。
  • 中国の不安を解消するためにも米国は朝鮮再統一が実現すれば米軍撤退を表明すべきだ。中国が統一朝鮮を受け入れるのであれば、米国は軍事基地に使用しないようにすればよい。
  • ソウルは軍事中立性を守ると約束すればよい。(釜山国大のロバート・ケリーRobert Kellyはこれを「フィンランド化」と呼び、冷戦中の対ソ連政策でフィンランドが示した慎重な対応に言及している) 韓国はあらゆる国と貿易をしており、米国との文化・人的つながりは残るだろう。韓国は軍事面で独立意思で動くことを選択しても米外交政策の道具とはなりたくないはずだ。
  • 最良かつ「唯一の道」はカーネギー財団のマイケル・D・スウェインMichael D. Swaineがいうように「中国に隣国への影響力をフルに使える道を残す」ことなのかもしれない。つまり非核化の代償として米国案の安全保障、経済発展、政治統一を押し付けることだ。取引の才能を自慢する大統領としては一世一代の仕事になるのではないか。朝鮮を対象に腕前を見せてもらいたいところだ。
  • これでは次善の解決策かもしれないが反対はないはずだ。韓国の将来について事実上の拒否権をPRCへ与えるのはフェアではない。韓国は不良隣国と暮らしており、敵意を隠さない三大国に囲まれている。地政学上で調和は不可避だ。
  • 再統一後の韓国は米軍の朝鮮半島駐留を求めるべきではない。米韓同盟の存続はソウルの命題だが米国にとって不可欠ではない。現在でも南は通常兵力による自国防衛能力を有している。米国の財政事情からみて米軍は駐留していても防衛上の責務を全部果たす状態にはない。もちろん再統一後の朝鮮半島には中国の存在が目障りになるはずだが、米国の軍事政策はあくまでも自国事情を反映するものであり、他国の慈善事業ではない。韓国には選択肢があり、核抑止力の整備(北核装備をそのまま使えばよい)ことに加え日本やロシアと関係を改善し可能な限りでPRCに対抗することがあるはずだ。
  • 未来で確実なことはないが、北朝鮮ほどこれが当てはまる例はない。米国・韓国は北朝鮮が敵意を隠さず核兵器を拡充している中で独創的に選択肢を模索すべきだ。北を中国に任せるのもその一つで次善の策といえるが、それでも現状よりはるかに良い。■
Doug Bandow is a senior fellow at the Cato Institute. A former special assistant to President Ronald Reagan, he is the author of several books, including Tripwire: Korea and U.S. Foreign Policy in a Changed World (Cato Institute) and The Korean Conundrum: America’s Troubled Relations with North and South Korea (coauthor, Palgrave/MacMillan).
Image: Reuter

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