Bell V-280 Vs. Sikorsky-Boeing SB>1: Who Will Win Future Vertical Lift?
ベルV-280対シコースキー・ボーイングSB>1
FVL次期垂直離着陸機構想で勝つのはどちらか。
The Sikorsky-Boeing SB-1 Defiant concept for the Joint Multi-Role demonstrator, a predecessor to the Future Vertical Lift aircraft.
Bell V-280 Valor Joint Multi-Role Demonstrator (CGI graphic)
AMARILLO, TEX.: 米陸軍の次世代垂直離着陸機事業は現在のヘリコプターに比べ革命的な代替策のt実現を目指しているが、その実現方法は、またそもそもの理由は何なのか。答えは物理原則に基づくヘリコプター速度の壁にある。
- 競い合うベル、シコースキー(ロッキード・マーティン傘下)はそれぞれこの壁を越えた画期的な高速回転翼機の実現を目指すのことでは共通だが、模索する方法が異なっている。ベルV-280ヴァラーは主翼がつき、燃料効率と長距離飛行性能でシコースキー=ボーイングSB>1ディファイアントより優れていることはあきらかだが、両陣営ともそれぞれの機体が機動性で優れていると主張している。
- では軍はどちらの設計案を採用するだろうか。海兵隊は画期的な回転翼機の導入に前向きで、すでにV-22オスプレイ(ベルとボーイングの共同事業)を導入している。空軍と海軍もオスプレイを導入している。だが陸軍は同機を一機も調達しておらず、米国最大のヘリコプター運用者としてUH-60だけでも2,000機超を運用中で後継機探しが課題だ。そこでベル、シコースキーにはともに陸軍の攻略が課題となる。
- そこでワシントンで来週開催される陸軍協会会議に先だちベルが記者を自社工場に招きV-280ヴァラーの利点を説き、SB>1の欠陥を吹き込んだのは驚くに当たらない。記者がシコースキーに対しベルへの反論を聞いてみたところ、同社は上席幹部を24時間もたたないうちに電話口に立たせ説明をしてきたのも驚くに当たらない。
- 両機では相違点もあるが、基本的な売り込み方は速力と航続距離で共通している。現在最速の陸軍ヘリコプターはCH-47Fチヌークで最高170ノットだ。つまり毎時195マイルで戦闘行動半径は200カイリ(230マイル)だ。これ以上の速度と航続距離を求めると根本的に違う設計が必要となる。ベル=ボーイングV-22がその答えで毎時270ノット(310マイル)で428カイリ(490マイル)まで進出できる。(これは空中給油なしの場合) これに対しFVL候補の二機種は初飛行をしていないが、ベルV-250が280ノット(320マイル)、シコースキー=ボーイングSB>1が250ノット(287マイル)を実現する。
- ヘリコプターは飛行せず、単に空中にとどまっているにすぎない。説明してみよう。
- 固定翼機ではジェットであれプロペラであれエンジンで前方へ進む推力がつく。前進で主翼上に気流が生まれ揚力となる。機体全体を前方へ動いて揚力を生むため、長い滑走路が必要となり、飛行中もたえず前方へ移動する必要がある。(速力が低すぎると失速し墜落の危険が生まれる)
- これに対しヘリコプターは主翼を回転させて気流を生み、揚力を得る。このため回転翼機と呼ばれる。推進力は回転ローターを傾けて生まれ、どの方向でも同じだ。このため垂直離着陸が可能となり、前後に移動できホバリングも可能だが水平飛行では高速移動できず燃料消費も劣る。
- 高速ではヘリコプターの回転翼があだとなる。半分は前進に機能するが残る半分が後退作用をもたらす。前進作用のブレードは確かに高速で揚力を生むが、後退ブレードはヘリコプターの速力を減らす効果を生み、揚力効果も少ない。
- 低速では前進後退ブレードの違いはほとんど気にならない。だが速度が上がると前進ブレードの速力は音速に近づき、危険な振動が生まれる。一方で後退ブレードは揚力が足らず失速気味だ。この時点でパイロットには速力を下げるか墜落するに任せるかの二者択一しかない。
- このヘリコプター特有の速力上限を打ち破るには二つの方向がある。ティルトローターと複合推進だ。前者がベルV-280、後者がボーイング=シコースキーSB>1で、単純に言うとティルトローターには主翼がつき、ローターブレイドが角度の変化でヘリコプターのローターまたはプロペラの機能を果たす。複合推進では主翼はなく、ブレードを二基つけ一つを回転翼としもうひとつをプロペラとして利用する。
- V-22の場合は1970年代に実験機XV-15で知見を積み2007年に軍での運用を開始した。ベルはティルトローターで業界をリードし、高速飛行と燃料消費の向上を一気に実現した。ただし欠点は機械系統が複雑で、ティルト機構が重量増につながること、また飛行中にモード変更の必要があることだ。
- シコースキーの複合ヘリコプター実験も1970年代にXH-59実験機で始まり、X2実証機に進化した。(同機はスミソニアン博物館で展示中)S-97レイダーに発展しさらにSB>1になったわけだ。「複合」と呼ぶのはブレード二式があるためで、同軸ローターふたつが反転し、各ローターが生む揚力がバランスを取り、夫々の後退力をうちけすものの高速では過剰振動は消えないが、ローター機構は強固になっており振動制御機構も高性能になっているとシコースキーが説明している。
- 次に高速飛行の実現のため機体後部に推進プロペラを搭載している。複合ヘリコプターがホバリングする際は機体上部の双ローターにエンジン出力の大部分を伝えるので従来型と同様だ。高速前進飛行に入るとエンジンは9割の出力を後部推進プロペラに伝え前方飛行の推力とするので従来型のプロペラ機と同様になる。
- どちらが優れているのか。答えはミッション内容とともに何を重視するかで変わる。
- 複合ヘリコプターは「長距離飛行ではティルトローターより効率がやや劣る」とシコ―スキーのイノベーション担当副社長クリス・ヴァン・ブイテンChris Van Buitenが認めている。「だがミッションは長距離を飛べばよいという単純なものではありません。ティルトローターは確かに巡航時は効率が優れますが目的地近くで苦労することになります」
- 現行ブラックホークの後継機として砲火の下で狭い地点に着陸し、兵員を下ろし手から離陸する必要がある。できれば後退方向へ飛行すれば機体を旋回させる必要がない。アパッチの後継機種には低空飛行とともに低速飛行で地形の陰に隠れ敵の対空装備から逃れつつ臨機応変に姿をあらわし機関銃ミサイルで攻撃する能力が必要だ。ローターが傾くまで待っているような余裕はないはずとヴァン・ブイテンは述べる。
- ベルは当然ながらこれに反論する。V-22から多大な教訓を学んだとV-280事業主査クリス・ゲーラ―は述べており、「低速域での取り回しは大幅に改良された」と報道陣にアマリロ工場で語っている。このためローターの挙動の変更が必要となり、素材面で進展があり機体に対しローターが大型化された。V-280はV-22と同程度の機体だが重量は半減しており、低速度では「V-22比で制御に回せる出力が5割増えた」とゲーラ―は述べ、ブラックホーク、アパッチをしのぐ水準だという。
- 高速域ではティルトローターの利点が生きて複合ヘリコプターより操縦性が高いとゲーラ―は説明する。「現時点の複合同軸ローターでは高速回転がまだ未解決です」という。
- たしかに初歩的な複合ヘリコプターではそれは正しいが自社製品にはあてはまらないとヴァンブイテンは述べる。その理由として反転回転ローター二つの効果が大きいという。「高速飛行時にローターが主翼同様の効果を生み相当の機動性が実現しています」
- では外部専門家はどう見ているのだろうか。「総じてティルトローターでは複合ヘリの機動性敏捷性は期待できません」とTealグループの航空アナリスト、リチャード・アブラフィアは述べる。
- アブラフィアはミッションが異なり運用部隊が違えば機体も異なって当然と記者に述べた。軍としてはティルトローター、複合ヘリコプター、従来型ヘリコプターをそろえるべきという。今のところは陸軍が次世代推力離着陸機事業で中心となっているが、「陸軍回転翼機の圧倒的大部分の任務は輸送で、FVLの利点が生かせません。ただしボーイング=シコースキーのレイダーを偵察攻撃ミッションに投入してはどうでしょう。残存性と攻撃力は十分あるはずです」
- 「V-280には海兵隊向けの設計思想が見えますね」とアブラフィアは指摘する。各種作戦や多様なドメインでの戦闘を口にするものの陸軍が速力と航続距離だけに大金を払う意思があるのか疑問視している。すでにV-22でこれは実現しているではないか。そこで次のように推察している。海兵隊はティルトローターを重視し、陸軍は従来型ヘリコプターの改修を続けながら複合ヘリコプター少数を調達し、ガンシップ兼偵察機に使うのではないか。■
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