ここまで作戦内容が漏れているということは別の構想があるのでしょう。ただし開戦直後で韓国民間人の犠牲発生は防ぎようがないとの評価は冷酷ですが現実なのでしょうね。開戦の事態はないと韓国の皆さんが考えているはずはないので、むしろ「考えたくない」と拒絶しているのでしょう。一方で独自のISR能力がない韓国は米軍の情報に基づいて行動する「下請け」の役目に甘んじるのでしょうか。同じことは航空自衛他についてもいえるわけで、このブログが伝えたいことのひとつ、ISR能力と解析能力の強化が必要ですね。
How South Korea Would Strike North Korea in a War
韓国空軍はこうして北朝鮮を攻撃する
- 2017年9月13日、韓国空軍(ROKAF)がトーラス Taurus 巡航ミサイルを試射したのは北朝鮮弾道ミサイルテストに呼応した動きだった。F-15Kが同ミサイルを発射しており、目標地点の地下に突入して爆発した。
- 長年にわたり韓国軍は国内都市特に首都ソウルが北朝鮮の砲兵隊攻撃、化学兵器、弾道ミサイル攻撃にさらされる前提の対戦に備えてきた。今や核兵器による大量殺戮も加わった。もちろんいかなる代償を支払ってもその可能性は回避すべきだが、開戦となった場合は韓米両軍が北朝鮮の強固なミサイル陣地、砲兵隊を迅速に排除することが死活的な意味を持つ。
- その任務にあたるのが60機あるF-15Kスラムイーグルで、F-15Eストライクイーグルを元に開発し、センサー能力と電子戦能力を強化した機体でバンカーバスター能力のある巡航ミサイルを発射し北朝鮮のミサイルサイロを叩く構想が現実になっている。
- また同兵器は強化防空壕に潜む北朝鮮指導部の斬首作戦にも投入でき韓国軍はこの作戦実施の効果に期待をしている。
- ストライクイーグルはF-15イーグルを戦闘爆撃機に転用し、兵装パイロン、燃料タンク増加、センサーを追加し推力重量比と操縦性が若干犠牲になっている。複座機としてマッハ2.5加速は可能だが23千ポンドという破格の兵装搭載量は第二次大戦中の戦略爆撃機の三倍近くに匹敵する。欠点として大型双発F-15は運航費用が高いが、ターボファンの追加で事故率は低くなった。
- 韓国は三段階のF-X事業の第一フェイズとしてジェット戦闘機部隊の近代化をめざした。ユーロファイター・タイフーンやラファールさらにSu-35をさしおき、F-15を選択しF-15K40機のを2002年に42億ドルで発注した。機体部品のほぼ4割が韓国国内生産で胴体、主翼、エイビオニクスがボーイングのセントルイス工場(ミズーリ州)に持ち込まれ完成された。
- スラムイーグルはF-15Eの供用開始から10年以上後のため、当時の最新性技術が初めから導入された。載標的指示装置でパイロットは頭をその方向に向けるだけで短距離用AIM-9Xの照準をあわせられる。
- スラムイーグルはF110ターボファンエンジンを搭載し推力はF100より1割以上増加している。エンジンノズルの違いで識別できる。
- 2008年に韓国はF-15K第二次発注をF-XフェイズIIとしてF-5Bフリーダムファイター戦闘機の後継として確定した。(発注には2006年に高G飛行で乗員が気絶し機体喪失に至った一機の補充分も含む)各機はスナイパーXR照準ポッドを装備しエンジンはF100PW-229にされKF-16戦闘機とエンジン互換性を確保した。
- F-15KはAAS-42赤外線探知追尾装備を搭載し、短距離なら敵機に気付かれずにレーダーを使わずに追尾可能だ。F-15KではAPG-63 (V)1レーダーの海上捜索標的識別モードを生かし艦船攻撃任務にも使えるとされたが、米空軍はその後F-15EにAPG-82アクティブ電子スキャンアレイ(AESA)レーダーで解像度とステルス性で大きく進展している。APG-63のアンテナはAESA方式にアップグレード可能だが、ROKAFがこの改修をいつ実施するか不明だ。北朝鮮空軍が旧式装備をそろえ、わずか35機のMiG-29が1990年代調達ながらいまだに最新鋭機としてまかりとおっているためもあるのだろう。
- 他方で北朝鮮には近代装備は少数とはいえ相当量の地対空ミサイルもあり、この脅威に対抗すべくF-15Kには軽量ながら強力な戦術電子戦装備が搭載され、ALQ-135M対抗装置は高速処理プロセッサーでSAM複数を同時に妨害でき、ALE-47チャフとフレアディスペンサーでミサイルを混乱させる能力がある。
- F-15Kは大邱基地に第11戦闘機隊として配備され、非武装地帯から170マイル南の後方配備となっているのは長距離ジェット戦闘機は最前線戦術機として迅速展開させず、攻撃や戦略任務に就かせるためだろう。このためF-15Kは3千ポンドの強力な威力を誇るトーラスミサイルを運用する唯一の機種になっている。
- 韓国は同ミサイル170発をドイツ-スウェーデン共同事業体へ発注し納入は2017年に完了した。全長5メートルのジェット推進式ミサイルはKEPD-350Kの名称がつき、音速ぎりぎりの速度で飛翔し、300マイル先の標的を攻撃可能だ。これだけあれば北朝鮮国内のいかなる地点も韓国国内から攻撃できる。
- トーラスは探知を逃れるため地上130フィートを低空飛行し、さらにレーダー探知を逃れるステルス性能と妨害対抗手段を備える。航法に四系統を使い(GPS、慣性、赤外線、地形参照)一つが故障してもコースを維持できる。標的近くまで到達すると三次元イメージのスキャン機能もプログラム可能となり目標捕捉に失敗すると付随被害を発生せずに任務を中止することも可能だ。
- 目標に近づくとトーラスは高度を上げてから急角度で目標への突入を二段式メフィスト弾頭で狙う。まず先行爆発で標的の強化外壁を破壊し内部に突入した爆弾本体を遅発性信管で爆発させる。6メートルまでの厚さのコンクリート壁を突破でき、ミサイルや火砲の強化施設を破壊し、韓国国内への攻撃を事前に防ぐことが期待される。
- 2016年12月に韓国はKEPD-350の追加90発分を発注した。これは平壌のミサイルテスト加速に呼応したものであった。さらに韓国はトーラスミサイルの軽量版にも関心を示しており、射程は250マイルになるが国産FA-50ゴールデンイーグル攻撃機へ搭載を狙う。もちろん北朝鮮との交戦となれば韓国は米空軍や海軍の追加投入を受けいれ爆撃機も到着するはずだ。さらに水上艦船やオハイオ級改造のミサイル潜水艦からのトマホークミサイルにも期待できる。
- ただしこれだけの火力が実現しても北朝鮮が開戦数日間で韓国民間人数千名の死傷者を生むことは防止できず効果を緩和させるのが精いっぱいだ。一部の北朝鮮火砲やミサイルは強固に防御された固定陣地にあるが、残りは移動式で反撃を避けようとするはずだ。米国が前回弾道ミサイル発射機を狩る作戦を展開したのは1991年のスカッドミサイルの事例で結果は惨憺たるもので、戦後の情報分析でスカッド発射機は一つも空爆では破壊できなかったと判明している。その後は戦術技術両面で進展しているが、この種の作戦が困難であることに根本的な変化は生じていない。
- スラムイーグルと米軍機はそのため北朝鮮の攻勢を緩和する効果しか期待できず、開戦直後に脅威を全部排除することは不可能だ。先制攻撃や迅速な反撃構想にだまされるべきでなく、せいぜい人的被害を抑える効果しか期待できないと知るべきだ。だからといってF-15Kの任務が限定されることにはならない。最悪の状況では韓国国民数万名とおそらく米本土の人命の行方は北朝鮮部隊をどれだけ早く除去できるかにかかっているからだ。
- さらに韓国はF-35ライトニング・ステルス戦闘機40機をF-X第三フェーズとして導入する意向で、長年活躍したF-4ファントムを退役させる。ソウルは同時に国産巡航ミサイル200発が実現すれば国産KF-Xジェット戦闘機に搭載したいとする。それまではスラムイーグルが韓国の第一線戦闘機として防衛最前線で極めて重要な存在となる。■
Sébastien Roblin holds a Master’s Degree in Conflict Resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing, and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring.
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