すでにお知らせしている話題をさらに掘り下げた内容です。ソマリア海賊対策は中国が各国と協調せず単独行動しているのですね。とにかく中国は戦略思考で次の手を打ってきますので対抗するためにはこちらも小手先の対応ではなく戦略思考が必要なのです。将棋に関心が集まっているのは良い兆候かもしれません。
Here's What You Should Know About China's New African Base 中国のアフリカ新基地で知っておくべき事項
Chinese forces in Djibouti are just the latest sign that the country wants to expand its military presence abroad. ジブチの中国軍部隊は中国が軍事プレゼンスの海外拡大を願目指す最新のあらわれ
- いかに規模が大きくても自国外で長期間活動できない軍事力は国土防衛の域を越えられない。冷戦終結後の中国人民解放軍は世界規模のプレゼンス拡大に向け努力してきた。中国軍はアフリカの角を回り初の恒久的海外基地を手に入れ、アフリカ各地への展開の拠点にしようとしている。
- 2017年7月12日国営メディア新華社が同国初の「支援基地」があるジブチに向けた隊員装備の第一陣が出発したと報じた。中国は2015年に構想を発表し翌年から首都ジブチシティで施設建設を始めていた。
- 「支援基地は中国部隊によるアデン湾商船護衛任務、人道救難活動他国際責任の執行に役立つ」と新華社は述べ、中国外務省報道官耿爽Geng Shuangの発言内容を伝えた。「さらに同基地はジブチの経済社会的発展を推進し、中国によるアフリカ並びに世界全体での平和安定への貢献の一助となる」
- 確かに上記の機能は実現するだろうが、基地をよく見ると国際的な活動強化を進めるPLAの動きに一致する点が見られる。この基地は中東、欧州さらにその先に展開する中国の拠点になるはずだ。
XINHUA
半潜水式輸送艦東海島で中国軍をジブチ新基地に運ぶ。
中国は何を狙っているのか?
- 中国は同基地の情報に神経質になっており、基地内の装備配備についてほとんど何もわからない。公式ルートでも耿報道官、PLAN司令官Shen Jinlong沈金龍中将のいずれも追加情報を出していない。以前の報道どおりなら約1,000名の中国軍関係者がジブチに駐留しそうだ。
- 公式には同基地の機能は「補給支援」のPLAN部隊への提になっている。中国艦船はアデン湾に2008年以来展開しており、民間商船を海賊他の危険から守っている。中国部隊は多国籍海賊対策部隊には属さず、中国は国連安全保障理事会決議に準拠して独自にミッションを展開している。
- 「支援施設は主に中国軍関係者の休養復旧用に使い、アデン湾やソマリア沖での活動さらに国連平和維持活動や人道救難活動を念頭に置く」と中国国防省はニューヨークタイムズに2017年2月に書面で回答している。だが気になるのは「主に」という言葉だ。
- フォックスニューズは一般公開の衛星画像を2017年7月に入手し、同基地で大規模工事が続いている様子がわかる。目に付くのは建設中の航空施設でヘリコプターあるいは無人機運用に供されそうだ。少なくとも七つの建築物が格納庫に見え、エプロンがつないでおり、駐機、燃料補給、武装搭載に使うのだろう。さらに中央の建物は管制塔並びに指令所になるのだろう。
Satellite images show progress at China's first African base
- 2017年7月4日の衛星画像では工事は未完了で航空機の姿は見えない。ただし施設規模から中国製無人機Wing Loong、Wing LoongIIの運用は可能に見える。ほぼMQ-1プレデターに匹敵し武装、偵察装備が可能で、飛行距離が2,400マイルといわれる。無人機でアデン湾、紅海さらにアラビア海、インド洋に武装偵察を行うことが可能となる。また陸上を飛行させ東アフリカに向かわせれば中国軍が国連平和維持部隊の一部として参加している南スーダンも飛行範囲に入る。ヘリコプターで人員物資を輸送し、傷病兵や避難民を艦船に輸送する拠点にもなる。
Will China deploys UAVs to Djibouti?
- 同基地の支援任務に対する期待を見せたのがPLA部隊第一陣の出港式典で071型井崗山Jingangshan揚陸艦と東海島Donghaidaoの二隻が見られた。後者は2015年就役の半潜水式補給艦で排水量およそ2万トンでコンセプトは米海軍の移動式上陸用拠点艦に近い。
- 東海島のような特殊艦は大型貨物輸送以外に洋上拠点として揚陸活動等を支援する狙いもある。中国は同艦を以前にも公開しており、南シナ海でエアクッション揚陸艇の母艦としていた。PLANの大洋艦隊化の象徴のような艦だ。
AP
中国が本当に求めるものは何か?
- 中国がジブチに恒久基地を求める理由は見せかけに過ぎず真意と違うと疑う証拠はない。1990年代以来中国の軍と警察部隊は国連の平和維持活動の重要な一部になっており、2015年時点でおよそ8千名が国際機関の予備部隊に登録され全体の五分の一を占める存在だ。活動の中心はアフリカだで中国はアフリカ連合の平和維持活動へも積極的に得印しており、1億ドルを拠出している。
- 2016年12月までに南スーダン以外に中国はコンゴ、リベリア、マリ、ダルフール地方へも国連部隊の一環として介入しており、レバノンにも人員を派遣している。中国は各地の活動で最大の貢献をしており、なにより安全保障理事会常任理事国でもある。
- この事とアフリカへの経済連携の強化が完全に一致する。特に資源掘削部門で中国はつながりを強めている。中国陣作業員は各地に展開し、アフリカ連合の新本部ビル建設がエチオピア首都アディス・アベバにはじめると中国は建設費全額2億ドルを拠出し、「アフリカへの中国からの贈り物」として知られるようになった。ソフトパワー外交でアフリカ各国へすりよっているが各国住民には必ずしも歓迎されていない。
AP
ジブチ大統領イスマイル・オマル・ゲレは胡錦涛主席と2012年に北京で会談していた
- アフリカで独裁政権をアメリカが支えているとの非難がよく出るが、北京の専制主義政権にとって人権侵害のような話題は関心外であり長年にわたり「他国の内政に干渉せず」と同様に自国へも他国の干渉を排除している。この姿勢のため圧政的な政権に人気が高い。米国はじめ西側世界が協力を拒むスーダン、エリトリアのような政権だ。ジブチでも国際監視団体、人道団体ならびに反対政治勢力は大統領イスマイル・オマル・ゲレ率いる与党人民進歩党が選挙を不正操作いたり反対勢力を弾圧し、でっち上げの罪状で反対派を投獄していると非難の声を上げている。
- 政治経済でアフリカへの関与を深める中国は危機発生時をにらんだ軍事対応の拠点づくりが必要だった。2011年にリビアで独裁者ムアマ―ル・カダフィが放逐されると中国は国内の自国民35千名の国外脱出の必要に直面した。2014年にも同様の状況が発生しギリシャなど他国の助けを得て実施している。イエメン内戦では600名と規模は小さいが同様の対応に迫られた。
- ソマリア沿岸の海賊を追跡して航行するだけでもPLANの補給活動は困難を極めていた。「中国幹部、乗員向けの糧食燃料の補給が難しくなり、ジブチから数回にわたる支援が提供された」と中国外務省報道官耿爽が2017年7月に謝意を述べている。
AP
南スーダンに向かう中国軍隊員
国際軍事大国としての中国
- ただしこうしたミッションよりもっと大きい構図がある。ジブチ施設は域内安全保障を超えて軍事プレゼンスを海外に広げたい中国の熱望を実現する第一歩だ。ジブチの戦略的な位置はスエズ運河に近く、中国艦隊が自由に使える通過地点になる。また中国に必要なエネルギー・鉱物を中東、アフリカから輸送する商船の護衛にも有益だし、PLAの作戦用燃料他補給物資の集積地にもなる。中国が空母打撃群を遠征させる際にも必要だ。基地が完全運用を開始すれば、中国初の空母遼寧および護衛部隊が定期的に寄港するのは確実に思える。
- 海外基地獲得はPLAの陸上部隊削減と時期があっている。2015年に30万名が削減されており、今回の第一陣出港の前日にPLAはさらなる陸上兵力削減案を発表し兵力は百万名を下回ることとし、残る兵員をPLAN含む別部門に配分し、海外作戦支援体制を整備するとしている。
- 「この改革でロケット軍、海軍、空軍、戦略支援軍(電子戦・通信担当)へ回す資源を増やす。PLAは海外作戦能力を拡充する」と徐光裕Xu Guangyu(政府資金で活動する中国軍事管理軍縮協会China Arms Control and Disarmament Association上級顧問)が環球時報(中国共産党公式新聞)に語っている。「PLAには敵対勢力が12カイリの領海に入る前に数千カイリ先の地点で探知排除する能力が必要だ。中国の海外権益は世界に広がり保護が必要だ。こうなると陸軍の役割を超えた範囲になる」
- そこで中国軍がジブチに向かい、これとは別にPLAN艦船三隻が地中海を「親善航行」中でも驚くにはあたらない。これとは別の小戦隊が地中海でロシアと共同演習に向かっている。共同演習2017は黒海で実施される。両国は2005年以来共同海軍演習を7回実施している。昨年は問題の多い南シナ海で行い、「島しょ占拠ミッション」をはじめて展開した。PLANはアフリカ、中東各国との演習を強化するだろう。それ以外に中国は各地への公式訪問が容易になり存在感を増やすはずだ。
緊張増加の可能性
- PLAが国際舞台で存在感を強めるのを懸念して見つめる国は多い。米国もそのひとつだ。ジブチ基地開設で懸念から緊張が増す。ジブチは小国だがすでに米、仏、英、日の各国軍に拠点を提供している。イランやアラブ首長国連合も外国軍へ基地提供を検討中だ。
- 米軍はジブチを東アフリカ、アラビア半島での作戦拠点としており、キャンプ・レモニエおよびチャベリー飛行場は拡張を続けており、無人機攻撃や特殊部隊の拠点としてソマリアやイエメンをにらんでいる。ここ数年で同地区で米軍への脅威が高まっており、イエメン反乱勢力が巡航ミサイルで米艦船を攻撃したり機雷を敷設している。隣国のソマリアでは極秘対テロ作戦が拡大中でジブチの戦略的意義は今後も増えそうだ。
- 米軍指揮官層には中国軍と共有する空間で機微性の高い作戦を展開することに特に怯える兆候はない。米軍からは「米軍にとって重要で中国軍には実施してもらいたくない事柄への懸念」をゲレ大統領に伝えているとトーマス・ワルドハウザー海兵隊大将(米アフリカ軍司令官)が議会で2017年3月に述べている。
- 「同等の国力のある他国基地はこれまでなかったので、少なくとも今回の用に近接した場所にはなかったので、たくさん経験できることがあり学ぶことも多い」とワルドハウザー大将はBreaking Defenseの取材で語っている。「確かに作戦保安上の懸念は高いですが」
- 同大将はいずれの発言でも懸念の内容を直接述べることはなかったが、ここまで近くに中国軍関係者がいることで双方がスパイ活動に走ることになりそうだ。中国には米軍の活動ぶりを観察する絶好の機会となる。北京がゲレ大統領にさらに圧力をかけて米軍への基地提供条件を変更あるいは無効化する可能性も憂慮する向きもあるが可能性は低い。合意内容は数百万ドルの効果を生み、同時に米軍関係者多数にくわえ支援委託業者が駐留することで経済効果も生まれている。現在の戦略的な意義を急いで反故にする必要も双方にはない。
- 「バブ・アル-マンデブ海峡(イエメン-ジブチ間)は海上交通の要所でエネルギー、海運、安全保障上から重要です」とジェフリー・グレシュ博士(国防大学校准教授・国際安全保障研究学部)は解説する。博士はGulf Security and the U.S. Military: Regime Survival and the Politics of Basingの著者でもあり、記者にEメイルで「ジブチはアフリカ全体の出入り口で重要な地点」と解説してくれた。
- 目的が何であれ中国の基地設置で出入り口がはちょっと混雑しそうだ。■
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