上院の国防支出案の概略は先日お知らせしましたが、詳報で軽空母構想の実現に向けた施策が盛り込まれれていることが判明しましたのでお知らせします。軽空母といっても原型に想定しているアメリカ級でも45千トンという大きさですから往時の主力空母より大きいのですが、ねらいは海兵隊揚陸部隊の航空支援のようです。実現すれば大型空母はもっと大事な任務に専念できるのでしょう。まだ実現が決まったわけではないのですが、CVL呼称が復活するかもしれません。
F-35B ライトニングIIの四機編隊が強襲揚陸艦USSアメリカ(LHA-6)上空を通過している。 Nov. 20, 2016. US Navy Photo
Senate Armed Services Bill Directs Navy to Start a Preliminary Design Effort for a Light Carrier, Pluses Up Shipbuilding Totals Over Trump Budget
上院軍事委員会が海軍に軽空母の予備設計作業開始を求め、トランプ政権予算案規模を上回る建艦目標を提示
June 28, 2017 8:41 PM • Updated: June 28, 2017 9:07 PM
- 上院軍事委員会(SASC)が作成した2018年度国防支出認可法案(NDAA)ではペンタゴン要求を上回る艦船、航空機調達を求め、トランプ政権案より支出規模が200億ドル大きいことが判明した。
- 「6,400億ドル規模の国防予算で即応体制の不備、近代化、軍事優位性の減少といった問題を装備更新、増強で解決したい。今回の法案は近年議会で採択済みの一連の改革法を基礎にしている」と委員長ジョン・マケイン議員(共、アリゾナ)が声明を発表している。
- 「国防総省の組織改革、国防技術の革新、国防調達運用を通じ一連の重要課題に引き続き取り組みNDAAではわが第一線部隊に必要な装備、訓練、資源がゆきわたるよう改善し望ましい結果を得られるようにする」
- 海軍関係だけ見るとSASCは艦艇建造改修関連で50億ドルを上乗せし250億ドルとし、2018年度は13隻を調達するとし、ペンタゴンが提出した要求より5隻多い。アーレイ・バーク級誘導ミサイル駆逐艦一隻(55億ドル)、ヴァージニア級攻撃潜水艦(SSN-774)の事前調達費用(31億ドル)を含む。
- 上院案も下院提案と同様に駆逐艦、攻撃潜水艦を複数年度調達で建造する事業者の資材先行取得用予算を盛り込む。
サンアントニオ級(LPD-17)揚陸艦の12号艦フォート・ローダーデールの想像図 HII Image
- SASC案では10億ドルを揚陸艦一隻の追加調達に計上し、次世代LX(R)ドック型揚陸艦あるいはサンアントニオ級揚陸ドック型艦(LPD-17)のいずれかを想定。その他6.61億ドルで新型遠征海洋基地艦、2.5億ドルでT-ARCケーブル敷設艦一隻、5.09億ドルで揚陸艇8機の整備を求める。揚陸艇は政府要求より5機も多い。
- 発表に見当たらないのが沿海戦闘艦建造の言及だがSASCも大統領府原案と同様に2018年度に一隻の建造を求める方向に収束すると見られる。
- 航空関連ではF/A-18E/Fでのペンタゴン要求を倍増し19億ドルで調達する。SASCはさらにP-8Aを13機23億ドルで海兵隊仕様F-35B24機を29億ドル、海軍向けF-35Cに14億ドルを計上。
- SASC案で一番の特色は海軍向けに30百万ドルを計上し、軽空母の初期設計業務を開始させることだ。
- マケイン議員は130億ドルのフォード級超大型空母を一貫して批判して代替策の検討を求めてきた。軍事委員会が海軍に求めているのは軽空母が実際の戦闘場面で航空機材運用に耐えるのかを検討すること。
- 可能性が高いのはアメリカ級大型揚陸艦にカタパルト二基を加え航空機発艦能力を与えることで実現すれば第二次大戦時の飛行甲板がまっすぐな護衛空母に似てくる。求めるものは揚陸即応部隊にISR機材運用能力を付与し兵力投射効果を向上することだろうとブライアン・クラーク(戦略予算評価センターCBSAで海軍艦艇を専門とする研究員)がUSNI Newsに今年早々に語っていた。海軍も10万トン超の巨大空母の代替策を検討するとは公言していたが実際に真剣に検討している模様はなかった。
- SASCは艦艇、航空機でともに増強を訴えながら別事業で削減を提唱している。ジェラルド・R・フォード級空母三番艦エンタープライズ(CVN-80)建造はそのまま認めながらズムワルト級(DDG-1000)から1億ドル、アーレイ・バーク級(DDG-51)から2.25億ドルからそれぞれ回収するとしている。■
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