Paris Air Show: A Showcase For Defense Competition
パリ航空ショーは防衛メーカーがしのぎを削る場になる
Defense companies vie for attention in a crowded market
防衛メーカーは競合の中で関心をどれだけ集められるか
May 24, 2017 Jen DiMascio, James Drew, Lara Seligman and Tony Osborne | Aviation Week & Space Technology
- F-35をショーでデビューさせるかでなかなか結論が出なかったことに今日の防衛装備市場を取り巻く現状が見える。派手に展示しても調達や世界各地で高まる競争が変わるわけではない。
- 今年のパリ航空ショーでの防衛部門は流動的だろう。国防予算は米国や欧州で増額傾向が始まっている。原油価格が上がらない中でも中東各国は装備調達の大盤振る舞いを続けている。だが世界で防衛産業基盤が強化される中、競争の激化を皆が感じている。
- 世界最大級の武器輸入国インドを見てほしい。過去五年はロシアが武器供給先トップで68%の需要を満たしていた。米国、イスラエルが残り21%を供給していた。だがインドは今や新規供給先として韓国、やスペインを加えている。また同国が進めるメイドインインディア構想で将来は低価格戦闘機、ミサイル、電子製品等の国産化をめざしている。
- 米産業界にとって各地で競争を意味する。「米製装備の品質は比類ないとはいえ、顧客は適正な内容で価格面で有利な製品を検討し、技術移転、納期、対応を吟味しています」と米航空宇宙産業連盟Aerospace Industries Association (AIA)の副会頭レミー・ネイサンは指摘。ドナルド・トランプ大統領により税制改革、インフラ投資促進、規制緩和、国家予算変更が提唱されているので米製装備も価格面で訴求力をつけられるとネイサンは述べる。
- この環境を念頭に各社はパリに集まる各国の防衛大臣48名に焦点を合わせる。公式代表団は300を数え、うち150が87か国の軍部代表だ。ショーの会長エメリック・ダルシモレによれば大統領就任したばかりのエマニュエル・マクロンが首相(6月18日投票予定)をともなって恒例の展示会詣でをするという。関係者は明らかにしないが別の国家元首もショーにやってくる。
F-35Aのパリデビュー
- 今回はロッキード・マーティンもF-35Aを初展示する。
- 3月にフランス航空宇宙産業連盟(GIFAS)関係者が訪米している。二年前にはフランス側は第五世代戦闘機がファンボロ―航空ショーでデビューし、F-35Bが空中ホバリングしてショーで強く印象を集めたことを念頭に、仏側はステルス戦闘機の展示決定が時間切れになることを恐れていた。結局ロッキード・マーティン社パイロットが米空軍所属F-35Aをアクロバット飛行させることになったが発表まで相当の時間がかかった。
- 今回の展示飛行ではロッキードは第五世代戦闘機の操縦性を公開し、F-35では第四世代機の推力と性能に勝てないとの見方を崩す一環にしたいはずだ。JSFに疑問がついたのは模擬空戦でF-16に勝てなかったとの2015年7月のブログ記事がきっかけだった。
- ロッキードは受注増で80百万ドルの大台を割る機体単価を実現しようとしているが新規発注国は少ない。第五世代戦闘機に長距離精密誘導兵器を搭載してロシア脅威に対抗する意向を表明したポーランドが注目される。
- ショー主催者側は今年は盛会になるとみており、シャレ―やホールは昨年10月で売り切れた。45カ国から出展企業団体2,300が集まる。展示機材は150機で毎日飛行展示を2時間程度行うと主催者は述べている。
各国の初展示機材
- 今回パリでデビューする他の機体には三菱航空機のMRJ、川崎P-1があり、ともにヨーロッパ大陸では初のお披露目となる。このうちP-1は英国のロイヤルインターナショナルエアタトゥーで2015年に登場している。エンブラエルはKC-390輸送機を持ち込む予定でこれも昨年のファンボロー航空ショーでデビュー済みだ。
- 今回はロシア軍用機の出展は望み薄だという。実施中の経済制裁のためだがスホイ・スーパージェットはおそらく出展されるという。
- ウクライナのアントノフはサウジアラビアの資金提供を受けたAn-132を展示しそうだ。サウジアラビア空軍が同機を運用する。
- トルコ航空宇宙産業(TAI)はターボプロップ練習機フルクスHurkusおよびT625ヘリコプターのモックアップを展示する。同社はBAEシステムズとTF-X戦闘機の共同開発で合意しており、同国のF-35調達が不透明になる可能性が出てきた。
- 世界規模で開発先が再編される兆しを一番よく示しているのが米空軍のめざすT-X練習機構想で米企業各社が海外提携先と組んでいる。空軍は350機を導入しT-38練習機の後継機としたいとするが、選定に残った企業は最終的に1,000機の需要を見込めるはずだ。今年末までに選定結果が発表される。
- このため競合各社がショーに姿を現すはずだ。ボーイング/SAABのT-X、ロッキード・マーティン/韓国航空宇宙産業のT-50、DRS/レオナルドのT-100の各機だ。TAIもシエラネヴァダ/TAIのフリーダム練習機モックアップを展示しそうだ。
- エアバスはA400M輸送機のヨーロッパ内売り込みで苦労しており、戦術性能の実現がまず必要だ。
- エアバスはX6大型ヘリコプターの開発見直し案を出してくるとみられる。同ヘリは前回2015年のパリ航空ショーで正式に開発開始を発表されていた。同機のコンセプトは2020年代初頭の初飛行をめざし、トラブル続きのH225ヘリコプターに代わるものとなる。フランス陸軍はタイガーHAD攻撃ヘリを展示するだろう。
- 当然ながらダッソーはラファール戦闘機を売り込みたいはずだ。昨年は同機に大きな都市となり、インドが36機、カタールが24機の購入を決めた。
- ボーイングも着々と準備中だ。海外販売の成功でF-15およびF-18戦闘機の生産は2020年代まで継続が決まった。これだけの期間があれば同時に両機種の高性能版の売り込みも可能となる。同時にチヌーク、アパッチ両ヘリコプターの耐用年数延長にも期待する。さらにサウジアラビアがP-8ポセイドン哨戒機導入に関心ありと突然発表し同社を元気づけた。
兵器・中小サプライヤー
- 兵器類も輸出で大きな要素だ。米製ミサイル等の販売はこの五年間で774%と急増して2016年は30億ドル規模になった。2011年は3.47億ドルだった。(デロイトの分析による)ミサイルで強いレイセオンは自社製品を展示するはずだ。
- そしてAIAのネイサン副会頭はサプライヤー企業にも配慮している。「こういった『不可欠な輸出企業』はサプライチェーンで輸出価値の56%を生んでいるにも関わらずその姿が認知されにくいのですが、装備の開発、製造、維持に重要な存在です。主要装備すべてに数千単位の部品やサブシステムがあり、中小企業がサプライチェーン内で活動することで成り立っています。輸出競争力促進は一次契約企業より小企業に大きな役割を認めるべきです」
強化された保安体制と飛行空域の制限
- 今年のパリ航空ショー主催側は保安措置も強化しており、フランス国内でこの2年間で発生した数々のテロ事件を意識している。セキュリティチェックを厳しくし、パリ北方のルブウルジェ空港をヨーロッパ最大の航空宇宙展示会場に変身させる。「トラック攻撃に対する備えも万全です」とダルシモレは述べており、さらにフランス空軍も無人機攻撃に備え会場付近の空域を防御する。
- 保安関係者は1,000名超となり、軍・警察も会期中の会場防御に備える。会期は6月19日から25日まで。
- 保安体制引き上げの背景にはパリで続いた襲撃事件以外にフランス各地での事件が影を落としており、歩行者86名の命を奪ったニースでの車両暴走事件は昨年7月の出来事だった。会場入場者は手荷物携帯品のX線検査を通る必要がある。
- ショーを取り仕切るギル・フルニエによれば飛行展示も難題だという。空域利用で制約が強くなり会場付近の住宅地への配慮がその原因だ。一般公開日にフランス空軍の曲技チームのパトルイユ・ドゥ・フランスが飛行するが、飛行時間が10分短縮、編隊飛行も制約を受ける。見栄えのよい曲技飛行には広い空域が必要だが、今回は利用できないという。■
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