スキップしてメイン コンテンツに移動

パイロットが語るレッドフラッグ演習の実態とF-35投入の意義



筆者はイタリア空軍でトーネードを飛ばしていたパイロットで、3,000時間の経験があるそうです。このたびThe Aviationist執筆陣に加わり今後が楽しみですね。

Red Flag Memories: Combat Pilot Explains How RF Has Evolved And Why The F-35 Is A Real Game Changer In Future Wars

レッドフラッグを回想して:戦闘機パイロットが演習内容の進化とともに将来の戦闘を根本的に変革するF-35の意義を説明
May 31 2017 -
By Alessandro "Gonzo" Olivares

 

  1. レッド・フラッグ(RF)は一部の批判筋が言うような「ジョーク」ではない。進化し続ける演習であり、最新シナリオを再現する場であり、第五世代機が成否のカギを握る。
  2. レッド・フラッグは世界有数の規模の空戦演習である。機材多数が投入される開戦直後10日間を再現している。友軍(青軍)が敵部隊(赤軍)に対決するシナリオでパイロットに実戦経験を与え技能を高める狙いがある。レッド・フラッグのモットーがうまくこれを表している。「戦いに備え訓練せよ、訓練は戦いだ」
  3. 筆者はRFに二回参加している。2002年にネリス空軍基地(ネヴァダ州)の「標準式」のRFと2010年はアラスカに飛び、レッド・フラッグ-アラスカを体験している。
  4. RFにはパイロットを現実シナリオに慣れさせるる効果があり、新戦術が生まれる場であり、テストされる場である。
  5. ネリスAFBから70機超の機体が離陸しているのは鮮明に覚えている。日替わりでテーマが代わり、地対空あるいは空対空、目標もROE交戦規則も変わる。RFは通常の大規模演習とは一線を画している。
  6. RF二回に参加したがシナリオは変化し続けていた。2002年の場合は念入りな準備があり、敵の位置やこちらにどう反応するか、脅威の場所等があらかじめ分かったうえで実施した。2010年には「国境線」シナリオで敵部隊が友軍の位置に混じっている場合や人口稠密地に入り込んだ場合を想定し、CDE(民間人巻き添え損害予測)が極めて重要となり、目標のVID(目視識別)やEOID(電子光学識別)が成否を握った。つまり8年でRFのシナリオが進化し、たえず変化していく「戦闘環境」に適合した形になった。
  7. 最近のRFはさらに変化を示している。
  8. 例としてRF17-1では2チームが戦闘状況ではなく「危機」想定で対峙している。シナリオで最新かつ高性能の脅威を想定しているので戦術面で変更が必要だけでなく、レベルを上げて「戦場情報管理」が重要になっている。これはF-35で実現できるかで論争を呼んだ部分だ。
  9. 今日のRFはパイロット、地上部隊、情報分析部門、サイバー宇宙部門の力を結集したテスト訓練作戦になっており、部隊はネリスからラスベガス北のネバダテスト訓練場にまで広がっている。
  10. 参加人員の目的はひとつ。一緒に作業し敵をFITS(見つけ、識別し、追尾して撃破する)することで多様な戦場状況で敵を攻撃することだ。これは実際に遭遇された場面を元に構築した筋書きで今後も発生するとみられる状況だ。これが最近のRFの中心であり、大きな変化の内容だ。
  11. RFでは敵役を20から25そろえる。機材のみならず地対空装備や移動目標や正体不明の装備もここに入る。これまでの固定的なシナリオが「動的」になりリアルタイムで「戦闘地帯」の調整が必要になっている。
  12. このため近年のRFシナリオの目標は各種戦闘力の融合に置いている。つまり、F-35が強固かつ「不詳の」敵地奥深くに侵入し、戦場の「全般統制」を提供する役目を担う。F-35や同様のセンサー融合機能がある機材は第4世代機を補完しながら情報を「プレイヤー」各機と共有しつつ自機の火力も提供する。
  13. ステルス性能を第五世代機の性能である情報管理能力と組わせるのがRFのミニ作戦演習で勝利を収める条件となる。
  14. 将来戦シナリオでは単一機能あるいは単一機材だけに頼っていては勝利はおぼつかないが、F-35は「戦闘環境」調整役として「戦いのやり方を根本から変える」存在であり、柔軟性、性能を新たに投入する以外に友軍の「残存性」を大幅に上げる存在だ。
  15. 「危機」状況では連合軍部隊は迅速に変化するシナリオに対応する必要がある。情報データを集め、管理し、提供するため RF 17-1 ではF-35が脅威の位置情報を集め、標的とし、必要な武装を(シミュレーションで)選択した。兵装すべてを使い果たしたF-35がそのまま現地にとどまり友軍機にライブで情報をLink-16で伝えた。
  16. ここに第五世代戦闘機の付加価値がある。敵目標を制圧しながら、味方の「旧式」機を助け空と戦場双方を制圧しておけるのだ。
  17. 戦闘機が攻撃任務をしながら戦術戦場統制を兼ねるの簡単な仕事ではない。ROE交戦規則やF-35と組むF-22の役割がどうであれ、20対1の撃墜率をアグレッサー部隊相手にあげたのは実に素晴らしい結果だといえよう。
  18. RF17-1を振り返ると(少なくともベテラン戦闘機パイロットからすれば)F-35が敵脅威上空を飛び、攻撃に成功しながら指揮統制任務をこなしつつ友軍機の攻撃を支援して傷一つなく帰還したのはすごいことだと思う。
  19. 筆者自身が参加した過去のレッドフラッグでは「通常」想定でかつ第五世代機は参加していなかった。ウィングマンとして筆者の役目はリーダーと一緒に目視を絶やさずにリーダーに追尾し空対空戦はリーダーにまかせながら無事TGT(目標)地点につけば、地形を利用して赤軍の探知を逃れることだった。わずか10年足らず前には友軍には高性能対空ミサイル陣地を攻撃できるF-35のような機材はなく、演習では長距離スタンドオフ兵器を装備した重度防衛拠点との交戦をシミュレートするに過ぎなかった。
  20. 新世代機の登場でこれが大きく変化した。第五世代機と飛ぶウィングマンは航空戦管理の役割を担い、戦場を「見る」ことができるが、F-15やF-16ではこれは不可能で、リーダー機がPGM精密誘導弾を地上に投下し、敵機と交戦する。
  21. 2002年には戦闘ではBVR視程外距離から距離を詰めてWVR視程内距離に入るのが大変だった。今日では敵もステルス戦闘機の所在を「推定で」知ることができるが、実際の位置はわからないし、どの方向に距離を詰めて標的に近づいたらいいかもわからないし、交戦にどうもちこむかもわからないのだ。
  22. まとめると第五世代戦闘機の真の付加価値は(RF実戦共に)情報提供能力であり、リアルタイムの戦場統制管理能力であり、動的なFITS(探知、識別、追尾、攻撃)で味方損耗と民間人巻き添え被害を防ぐことにある。■

コメント

このブログの人気の投稿

フィリピンのFA-50がF-22を「撃墜」した最近の米比演習での真実はこうだ......

  Wikimedia Commons フィリピン空軍のかわいい軽戦闘機FA-50が米空軍の獰猛なF-22を演習で仕留めたとの報道が出ていますが、真相は....The Nationa lnterest記事からのご紹介です。 フ ィリピン空軍(PAF)は、7月に行われた空戦演習で、FA-50軽攻撃機の1機が、アメリカの制空権チャンピオンF-22ラプターを想定外のキルに成功したと発表した。この発表は、FA-50のガンカメラが捉えた画像とともに発表されたもので、パイロットが赤外線誘導(ヒートシーキング)ミサイルでステルス機をロックオンした際、フィリピンの戦闘機の照準にラプターが映っていた。  「この事件は、軍事史に重大な展開をもたらした。フィリピンの主力戦闘機は、ルソン島上空でコープ・サンダー演習の一環として行われた模擬空戦で、第5世代戦闘機に勝利した」とPAFの声明には書かれている。  しかし、この快挙は確かにフィリピン空軍にとって祝福に値するが、画像をよく見ると、3800万ドルの練習機から攻撃機になった航空機が、なぜ3億5000万ドル以上のラプターに勝つことができたのか、多くの価値あるヒントが得られる。  そして、ここでネタバレがある: この種の演習ではよくあることだが、F-22は片翼を後ろ手に縛って飛んでいるように見える。  フィリピンとアメリカの戦闘機の模擬交戦は、7月2日から21日にかけてフィリピンで行われた一連の二国間戦闘機訓練と専門家交流であるコープ・サンダー23-2で行われた。米空軍は、F-16とF-22を中心とする15機の航空機と500人以上の航空兵を派遣し、地上攻撃型のFA-50、A-29、AS-211を運用する同数のフィリピン空軍要員とともに訓練に参加した。  しかし、約3週間にわたって何十機もの航空機が何十回もの出撃をしたにもかかわらず、この訓練で世界の注目を集めたのは、空軍のパイロットが無線で「フォックス2!右旋回でラプターを1機撃墜!」と伝え得てきたときだった。 戦闘訓練はフェアな戦いではない コープサンダー23-2のような戦闘演習は、それを報道するメディアによってしばしば誤解される(誤解は報道機関の偏った姿勢に起因することもある)。たとえば、航空機同士の交戦は、あたかも2機のジェット機が単に空中で無差別級ケージマッチを行ったかのように、脈絡な

主張:台湾の軍事力、防衛体制、情報収集能力にはこれだけの欠陥がある。近代化が遅れている台湾軍が共同運営能力を獲得するまで危険な状態が続く。

iStock illustration 台 湾の防衛力強化は、米国にとり急務だ。台湾軍の訓練教官として台湾に配備した人員を、現状の 30 人から 4 倍の 100 人から 200 人にする計画が伝えられている。 議会は 12 月に 2023 年国防権限法を可決し、台湾の兵器調達のために、 5 年間で 100 億ドルの融資と助成を予算化した。 さらに、下院中国特別委員会の委員長であるマイク・ギャラガー議員(ウィスコンシン州選出)は最近、中国の侵略を抑止するため「台湾を徹底的に武装させる」と宣言している。マクマスター前国家安全保障顧問は、台湾への武器供与の加速を推進している。ワシントンでは、台湾の自衛を支援することが急務であることが明らかである。 台湾軍の近代化は大幅に遅れている こうした約束にもかかわらず、台湾は近代的な戦闘力への転換を図るため必要な軍事改革に難色を示したままである。外部からの支援が効果的であるためには、プロ意識、敗北主義、中国のナショナリズムという 3 つの無形でどこにでもある問題に取り組まなければならない。 サミュエル・ P ・ハンチントンは著書『兵士と国家』で、軍のプロフェッショナリズムの定義として、専門性、責任、企業性という 3 つを挙げている。責任感は、 " 暴力の管理はするが、暴力行為そのものはしない " という「特異な技能」と関連する。 台湾の軍事的プロフェッショナリズムを専門知識と技能で低評価になる。例えば、国防部は武器調達の前にシステム分析と運用要件を要求しているが、そのプロセスは決定後の場当たり的なチェックマークにすぎない。その結果、参謀本部は実務の本質を理解し、技術を習得することができない。 国防部には、政策と訓練カリキュラムの更新が切実に必要だ。蔡英文総統の国防大臣数名が、時代遅れの銃剣突撃訓練の復活を提唱した。この技術は 200 年前のフランスで生まれたもので、スタンドオフ精密弾の時代には、効果はごくわずかでしかないだろう。一方、台湾が新たに入手した武器の多くは武器庫や倉庫に保管されたままで、兵士の訓練用具がほとんどない。 かろうじて徴兵期間を 4 カ月から 1 年に延長することは、適切と思われるが、同省は、兵士に直立歩行訓練を義務付けるというわけのわからない計画を立てている。直立歩行は 18 世紀にプロ