ボーイングが民間、軍用、宇宙と多様な製品群を持っているため、ブログもターミナル1、ターミナル2共用記事とします。
Boeing CEO’s $50 Billion Target
ボーイングCEOのめざす500億ドル目標とは
巨大企業の変身
従業員145千名、年間売上1,000億ドルの企業を未来に向けどう率いていったらいいのか。新型機、軍用練習機、戦闘機や前例のないサービス事業がボーイングの最優先事項だ。会長兼社長兼CEOのデニス・ムイレンバーグが同社シカゴの本社でAviation Week編集長ジョー・アンセルモと上席編集者ガイ・ノリスの取材を受けた。
AW&ST:ボーイングが立ちあげたボーイング・グローバル・サービシズは7月1日に業務を開始し、年商500億ドルの目標だ。大規模事業だ
Muilenburg: 今後10年間の航空宇宙事業は7.5兆ドル規模と見ている。そのうち2.5兆ドルがサービス関連だ。当社の機材はセクター別では50パーセントのシェアだが、サービス関連では7-9パーセントしかない。そのため成長の余地があるとみている。当社にしかないOEM関連知識と技術により他にはない価値を顧客に提供できる機会が生まれる。500億ドルは相当の規模であり、大胆な成長目標だが達成の道筋が視野に入っている。
あなたはサウジアラビアからもどったばかりで、ボーイングはチヌークヘリコプター、誘導兵器他P-8哨戒機への関心表明も取り付けている
今後10年間で500億ドルのハードウェア、サービスの発注となる。商用軍用双方にまたがりサウジアラビアと米国で雇用数万名分が生まれる。グローバリゼーションの進め方としては秀逸だと思う。グローバル化すれば米国にも恩恵が生まれる。今回の事例もこの例だ。
商用機部門では日程、コスト両面で目標を達成しているようだ。ボーイングの強みが復活したのか
大変強い勢いを感じている。多くは過去の教訓から得ている。(前CEOの)ジム・マクナーニーと一緒に開発面で優秀事例確立を数年前に始め、その成果が出てきた。787-10は予定より早く完成し飛行性能も極めて良い。737Maxファミリーの引き渡しは想定費用以内かつ日程も若干早くなっている。残念ながら(KC-46A)空中給油機では工程改善が当初うまくいっていなかったので現在は同機が課題になっているが、それでも今後活かせる教訓を得ている。
提案中のNMA(新型中型機)はどうなっているのか
顧客各社との実のある対話から絞り込みつつある。737と787の中間に市場可能性を見ており、この機体は5千カイリを飛び、250席規模と想定している。757より大きく航続距離も長い。だが事業化が意味があるかを吟味する必要がある。開発開始を決定すれば、機体の技術面とともに製造面で大きな変化となる。市場需要があれば新型機開発に乗り出す。就役開始を2024年から25年とみており、時間はある。現在は777X開発が活況だ。新型機はこれと並行して進めることになろう。
双通路型のNMA構想ではコスト課題が難しいと思えるが
機体設計製造のやり方を変革中だ。デジタル設計でスマートイノベーションや自動化を製造工程に組み込んでいく。航空機製造の工数や費用を大幅に下げることができ市場への提供が早まる。
777X開発はうまく行っているのか
エンジン稼働中といったところだ。詳細設計に入っており、部品製造が始まった。エヴァレットにある複合材主翼生産センターを最近訪問した。各部品が工場内を流れウィングボックスになっていた。詳細設計段階から生産開始に移りつつある。2018年のフライトテスト、2020年の引き渡し開始に向かう。事業は順調に進んでいる。着実に成果がうまれつつある。ワイドボディ機の需要で伸びがなくなっているが、これは予想しどおりで、今後は更新需要でワイドボディ9,000機の新規需要が今後10年で生まれると見ている。777Xは787と完璧なタイミングになっている。
イランのエアライン数社向けに200億ドル相当の機材販売をボーイングが商談中だが、米イ間の緊張を考えると販売の可能性はどうなるのか
機材販売は続ける。各段階で政府認可が必要な仕組みになっている。おっしゃる通り政治面を考えると難易度は高いがこのことは最初から承知している。なんといっても商談規模が大きい。販売が成約すれば米国内に大量の仕事が生まれる。特にイランエアは80機発注と大きい。引渡しは2018年から開始したい。米政府の認証手続きは確実に遵守する。
ドナルド・トランプ大統領とのボーイングの関係は昨年12月に次期エアフォースワンで納税者に多大な負担となると大統領が非難したのと比べると改善の観がある
あの一言から対話が生まれ、顔を合わせ中身のある自由な話し合いが多彩な話題で可能となった。トランプ大統領はビジネス界の意見を歓迎する政権を作った。通商政策、税制改革、規制緩和、国防予算の強化安定化などを一緒に考える席に招かれてうれしく思っている。大統領は対話により考えや意見を取り入れるのがうまい。航空宇宙産業は米国最大の貿易黒字およそ900億ドルを稼いでいる。そのうちボーイングが大きな部分を構成している。サウスカロライナでは787-10(の生産ラインに)大規模投資している。大統領が訪問し一般従業員に声をかけてもらったことを名誉に思う。大統領に非常によい反応が返ってきた。
商用機のほぼ四機に一機が中国向けだ。新政権と中国との相互通商関係の重要性を話しているのか
している。対話から非常に意味のある米中関係が生まれている。習(金平)主席が訪米しトランプ大統領と非常に協力的な会話が生まれた。世界全体で今後20年間で新型機39千機が必要となり、そのうち中国向けが6,800機となる。737完成センターをZhoushan浙江省船山に開設し中国向けにもっと多くの機材を供給できる。また737を国内で月産が現在42機なのを今年中に47機へ来年は52機で2019年に57機に増産する。この件は大統領に報告しており、中国と良好な通商関係があれば相互恩恵が生まれると政権関係者にも伝えている。
ボンバルディアがCシリーズの米国販売でダンピングしているとの不服申し立てについて説明してほしい
公表資料によればCシリーズの製造原価は33百万ドルだが(ボンバルディアは)およそ20百万ドルで販売しようとしている。カナダ向けには(デルタエアラインズ向けよりも)高く販売するというので問題視している。古典的なダンピングだ。当社は公平で格差のない貿易条件を支持する。この原則でエアバスが不公平な政府補助金を受けている点を指摘した。将来の航空宇宙産業では競争相手がたくさん出ると見ているが当社は超競争的な環境での運用に備えている。
米空軍のT-X練習機競作に加わるが設計製造は米国内で行うとしている。これが有利に働くと見ているのか
機体での米国内製造比率はサプライチェーンも含め90パーセント超だ。これに対し競合各社は既存機種を外国から導入する案だ。当社のT-X案は完全新型機として設計し次世代の訓練用途を正面から考えているので独特だと自負している。他社は過去の設計を元にした既存機を改修あるいは改造して将来の用途に投入しようとしている。当社では二機が飛行中で非常に良好な成績を示している。選定が最終段階に入るが当社は自制心を保つ。この事業は当社の将来を左右するものではない。あくまでも当社の付加価値を高め、株主にも同様の効果が生まれるように万全を尽くす。
宇宙分野はボーイングの将来にどんな意味があるのか
当社は当初から宇宙ビジネスに携わっており、今後も当社の製品群で重要分野だと見ている。CST-100(ボーイング製有人宇宙輸送カプセル)により国際宇宙ステーションへのアクセスをNASAに提供する。低地球周回軌道は当社にも重要な分野となっており、微重力、ものづくり、宇宙観光に注目している。深宇宙探査向けにはNASAと打ち上げシステムを作成中の他有人宇宙探査で重要部分を担当している。衛星ビジネスでは電気推進方式に投資している。ユナイテッド・ローンチ・アライアンスは打ち上げを119回成功しており当社に極めて重要だ。一方でコスト拡大傾向を打破した宇宙アクセス方法の検討もしており、次世代ロケット開発ではブルーオリジンのような他社提携もいとわない。
ボーイングの有する強力な製造基盤に対して革新的な新企業といてスペースXやブル―オリジンとの提携が最良の選択肢と見ているのか
提携話は多数進行中だ。当社には技術の深みがあり技術力もある。だが重要なのは宇宙アクセスのコスト削減を新しいビジネスモデルで実現することだ。この分野では急速に変化が生まれている。関心度が高くなり、大量の資金が入ってくる。当社もホライゾンX(社内ヴェンチャーキャピタル部門)を立ち上げた。その目的の一つは新規提携先を見つけながら技術モデル、ビジネスモデルで阻害要因を取り除くことだ。今後も競合他社よりもイノベーションで先行する必要がありる。当然新しいビジネスモデルや提携先を求めていく。
今後の航空宇宙分野で最大の阻害要因は何か
製品面、工程面双方でいろいろある。ズナムアエロZunum Aero (ワシントン州カークランド)への共同投資を発表したばかりであるが、同社は小型機の電気推進を開発中だ。この技術がどこまでの大きさの機体に応用できるのかで疑問もあるが電気推進式航空機は実現しそうだ。手の届く運賃での超高速商用飛行を世界各地に二時間以内に移動するのを阻害するのは技術問題であり当社はこの分野にも投資をしている。
低地球周回軌道上の宇宙旅行をあたりまえにするには技術面で課題解決が必要でこの努力は続いている。防衛部門でも障害要因の解決にあたっており、電子製品に重点投資している。だが設計製造段階で課題につきあたることがある。モジュラー化、自動化、オンデマンド個別製造といった方面に努力している。付加製造additive manufacturing(3Dプリンターの利用)や設計から製造までのサプライチェーン全体のデジタル化を目指している。
X-51実験機でボーイングは世界初の極超音速機製造ラインを立ち上げた。それ以降大きな進展がないが、中国やロシアが極超音速飛行に向け大きく進展している
X-51は極超音速飛行技術の実証が目的で実施可能とわかった。超音速、極超音速飛行の事業化に向けて活動中だ。今後も投資を続ける分野であり、顧客向けにはあと一歩まで来たと伝えている。どこかの段階でこの技術は経済的に意味のある水準になる。当社が今後も技術面でリードするため続けている努力の一環だ。■
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