米ロはこれまで苦労して戦略核兵器の抑制を目指し、今や相当の水準まで進んでいるのですが、中国は全く関係ない顔をして核兵器を大幅に拡張する方向に進んでいるわけです。北朝鮮ではあれだけ騒いでおきながら日本を既に照準に収めている中国の核戦力には声を上げないメディアの姿勢もいかがかと思います。現在はまだ小規模なのがこれから拡大するという今だからこそ早く認識すべきと思うのですが。南シナ海、尖閣といい中国が既存秩序を壊そうとする勢力であるのは歴史的に見ても明らかで毅然とした対応が西側に求められています。
The Big China Nuclear Threat No One Is Talking About
だれも口にしていない大規模な中国の核脅威
June 2, 2017
- 中国の軍事政策が大きく変化している。核実験に成功した1964年以来、中国は比較的小規模の核戦力を維持し、敵の人口密集地を標的にしてきた。
- 通常兵器では米国のような一等装備を備えた敵に「戦い勝利する」目標で近代化を図ってきたが中国の核兵力は推定264発と米ロ両国が新START条約で保有する各1,550発よりはるかに小規模だ。
- 小規模核戦力は中国独自の抑止理論に基づくものであり、核の先制使用はしないとの考え方が背景にある。だが技術開発により中国は核兵力増強に向かいそうだ。
- まず核運用の三本柱が中国で初めて確立した。核兵器保有国ながら中国はこれまで単弾頭の陸上発射弾道ミサイルに依存してきた。だだし晋級(094型)原子力弾道ミサイル潜水艦(SSBN)で抑止力を海中に展開できるようになった。中国は晋級潜水艦4隻を就役中で、少なくとももう一隻を建造する。晋級SSBNはミサイル発射管12本にJL-2潜水艦発射式弾道ミサイル(SLBM)を搭載する。射程は7,500キロだ。一部報道ではJL-2は複数独立再突入弾頭(MIRV)を2個から8個搭載するとしており、晋級一隻で核弾頭480個を搭載することになる。
- さらにペンタゴンによれば次世代SSBN096型の配備が2020年代にはじまりJL-3SLBMを搭載するという。報道では096型は発射管24本を搭載するとしている。中国が096型を5隻建造しJL-3がすべて単弾頭型だと想定すれば核弾頭120発が必要となり、中国の推定保有核弾頭の半分に相当する。これに094型の核弾頭も加えると中国の海洋核抑止力は核戦力の75パーセントに上る。
- だが陸上配備弾道ミサイルにも核弾頭は必要だ。中国は陸上配備弾道ミサイルのMIRV化を進めている。今年初めの報道でDF-5CミサイルをMIRV弾頭でテストしている。DF-5Cの保有数は不明だが、ペンタゴンはDF-5A、DF-5Bミサイル合わせて20発と推定している。このうち半数がDF-5Bと仮定し、各ミサイルが弾頭3個を装着すれば計130発で、中国核戦力の半数相当となる。さらに新型ICBMのDF-41開発が進行中で弾頭数は10発に増える。この新型ミサイルが10本製造されすべて10個弾頭を搭載すればさらに100発の弾頭になる。既存のDF-5BやDF-5Cとあわせると230発、つまり87パーセント相当になる。
- たしかに数字には一部誇張がある。中国がミサイルを大量製造しないかもしれないし、ミサイルすべてをMIRV化しないかもしれない。また弾頭の一部はおとりの可能性が高い。それでも技術の進展で中国は今後大幅に核弾頭数を増やしそうだ。
- 核分裂物質の高度濃縮ウラニウムとプルトニウムで核爆弾の中心部を形成するが増産は容易である。中国には高濃度ウラニウムが14-18トン、兵器転用可能プルトニウムが1.2-2.3トンあると推定される。これだけで核爆弾750発から1,600発が製造できる。もっと多いかもしれない。すべては爆弾の設計次第だ。また民生部門の原子力利用で核分裂物質はさらに入手できる。中国の核産業界で知見が高いHui Zhangによれば2020年までに年間に分離作業量(SWU)3百万の濃縮能力が実現するとしており、年間7百個の爆弾に相当する高濃度ウラニウムが核エネルギーを利用しながら入手できることになる。
- とはいえ中国が核戦力規模を一夜にして拡大することではない。歴史通りなら中国は慎重かつ順序を追って核戦力を増強するはずだ。ただ中国の核戦力が今後拡大するのは確実で米国の核政策、核兵器管理戦略はこの点を考慮せざるを得なくなるはずだ。
Zachary Keck is the former managing editor of the National Interest. You can find him on Twitter: @ZacharyKeck.
Image: Soldiers of the People’s Liberation Army of China at Moscow’s 2015 Victory Day parade. Kremlin.ru
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