China Militaryに掲載された写真。太陽光動力無人機CH-T4のがテスト飛行。高度20から30キロに滞空し空中早期警戒偵察任務、災害監視、気象観測、通信中継用途に投入される。5月24日撮影. (Xinhua)
衛星より手軽に運用できる長時間滞空無人機の動力が太陽光になるのは論理的必然でしょう。夜間はバッテリーを使うためその分ペイロードも減ります。ただし、機体が軽量化されていると言えどもペイロードが圧倒的に小さいためISR機材も抜本的に小型化する必要があり、既存のISR機材同様の性能は望めないのでは。(少なくとも当面は) ただし電力では制約がありませんね。当面は中国の脅威のシンボルとして出てくるでしょうが、実用化はまだ先でしょうね。
China Might Have a New Way to Sink U.S. Aircraft Carriers 中国は米空母攻撃の新しい手段を手に入れるのか
June 10, 2017
ペンタゴンが恒例の中国軍事力報告を公表し、中国が米空母を狙っていることに再び警鐘を鳴らしている。時同じくして中国から接近阻止領域拒否(A2/AD)戦略の重要な一部になりそうな装備の発表が出ている。
- 中国国営メディアが今週発表したのはCaihong-T 4 (CH-T4)の名称の太陽光動力の巨大無人機で高度20千メートル飛行に成功したという。その高度では雲がなく、太陽光で飛ぶ無人機の飛行時間が相当長くなることだ。
- どのくらい長くなるのか。China Dailyによれば無限だ。「今後の改良で数か月から数か年の滞空が実現する」
- ブログEastern Arsenalの共著者ジェフリー・リンとP.W.シンガーはCH-T4は大きさと軽量の組み合わせに注目している。同機の翼幅は130フィートとボーイング737より大きいが重量は880ポンドから1,100ポンド(約400キロから500キロ)しかない。737の通常の最小空虚重量は70千ポンドだ。CH-T4がここまで軽いのはカーボンファイバーとプラスチックを多用したためだ。
- 同機の時速は125マイル(200キロ)だが65千フィート(約20千メートル)上空を巡航し広大な地域を監視できるので速度は必要ない。リンとシンガーはこう指摘している。「高高度を活かして見通し線外まで400千平方マイル(約104万平方キロ)の陸地海面を監視可能だ。これはエジプト全土の面積に等しい。ここまでの範囲を収めることで軍事民生共にも優秀なデータ中継手段となる」
- ただしリン、シンガー両名が言及していないのはCH-T4が米空母攻撃に使われる可能性だ。これまでも中国の「空母キラー」DF-21Dが注目を集めているが、ミサイル単体では空母攻撃はできない。高度の「キルチェーン」つまり監視偵察レーダー通信装備一式で標的情報の随時更新があってこそ飛翔中の対艦弾道ミサイルが効力を発揮する。
- 入手可能な資料によれば米国は中国のA2/ADへの対抗策として「キルチェーン」の効力を削ぐことに注力している。2013年に当時の海軍作戦部長ジョナサン・グリナート大将と空軍参謀総長マーク・ウェルシュ大将が共同でForeign Policy誌上にエアシーバトルでA2/ADに対抗する構想を発表していた。まず敵の指揮統制通信コンピュータ情報収集監視偵察能力(C4ISR)を遮断し、その後敵の武器運用能力(航空機、艦船、ミサイル基地)を破壊する、最後に発射された敵兵器を撃破すると述べていた。
- この方式の背景として「こちらを攻撃する前に敵は『キルチェーン』と呼ぶ一連の活動を完了する必要がある。偵察で米軍の位置を把握し、通信ネットワークで標的情報を伝達し、発射装置に入力して米軍に対抗できる。各段階の妨害遮断は容易であり、米軍はチェーンの弱点を狙えばよい」と両大将は述べている。
- CH-4Tが投入されると中国のキルチェーンは冗長性を増す分攻撃側が苦労することになる。もしアメリカが中国衛星を妨害あるいは破壊しても北京はこの無人機で米艦船追尾に必要な情報を得られる。CH-T4にはほかの偵察装備にない長所もある。まず低価格と衛星より柔軟運用が可能だ。また通常の機体や艦船より高高度を飛ぶことも利点だ。このため米側からすればキルチェーンの偵察部分の遮断が困難になるが、代わりに通信ネットワークの破壊に注力するのだろう。
- ただし以上は米軍には承知済みの内容だ。ペンタゴンの最新中国軍事力報告ではCH-T4の名称こそ触れていないが、「長距離無人航空機(UAVs)の開発調達で中国の長距離ISR能力および攻撃作戦両面が増強する」と述べている。
- 幸い米軍には対抗策を考える時間がある。China Dailyでは「設計技術陣が同機を改良し利用事業者に引き渡すのは数年先になる」と報じているためだ。米国におけるこの種の機体の開発期間を目安にすれば、中国はまだ数回の障害に直面するはずだ。NASAの環境調査航空機センサー技術(ERAST)事業はヘリオス試作機を原型に十年以上前から始まっている。同機は2001年に96千フィート(約29千メートル)の高度に達したが、その二年後に墜落している。ヨーロッパでもいわゆる疑似衛星として高高度無人機開発を目指している。■
Zachary Keck is the former managing editor of The National Interest. You can find him on Twitter: @ZacharyKeck.
合わせて中国のChinaMilitary英語版の記事を以下にご紹介しますが、ここでは軍事的色彩は全く見せず、携帯電話中継など民生用用途を前面に出しています。確かにペイロードを考えるとここらが現時点では現実的ですね。
Fly high: Chinese solar drone "Rainbow" reaches near space
BEIJING, June 13 (Xinhua) -- 中国のCaihong (CH)(「虹」)太陽光動力無人機(UAV)が中国初の準宇宙高度到達可能機として高度20km飛行に成功した。
- 中国航天科技集団公司(CAAA)を中心にしたチームから13日にCH UAVが15時間滞空し、無事着陸したと発表があった。
- 準宇宙空間は海面高度20から100キロの範囲で空気は薄く、通常燃料を利用する航空機エンジンの性能は低下する。
- しかしCH UAVをはじめとする太陽光無人機はここでも良好な性能を発揮し、数か月以上の滞空を将来実現すると関係者は述べている。
- CH UAVは全幅45メートルで太陽光パネルを主翼上に敷き詰めている。また太陽光発電の長所を生かして大気汚染は発生させない環境にやさしい機体であるといえる。
- CH UAVの飛行成功により中国は高高度太陽光無人機技術の実現では英国、英国に次ぐ三番目の国となった。米国は「ヘリオス」はじめとする無人太陽光機を開発しており、英国には「ゼファー」UAVがあり2007年に高度15キロを達成している。
- CH UAV開発チームによれば技術上の難関を数回克服している。空力形状、飛行制御、エネルギーの効率利用だ。複雑な気象条件で確実な飛行性能を確保するために一年以上かけたという。その他新素材、高性能太陽光電池、電力貯蔵技術の革新など中国航空工業の進歩に貢献していると関係者は自負。
- プロジェクトではCH UAVに「疑似衛星」機能を期待し、通信中継など一部機能を肩代わりさせる。
- また「空中Wi-Fiハブ」として移動体通信やインターネット接続を遠隔地や島しょ部向けに提供し、通信インフラ建設費用の節約効果も期待できる。その他森林や農地の測量や自然災害発生時のリアルタイム監視手段や緊急時の通信中継手段にもなる。
(Xinhua)
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