歴史上の仮定を論じるのは楽しいのですが、結局答えはわからないものです。そこが楽しいのでしょうが。太平洋が艦隊対決が基本だったのに対して大西洋では大型艦の直接行動が多く、事例も異なっていますね。しかし戦後70有余年で海軍海事に関する一般人の語彙は退化していますね。warshipを戦艦といったり、xxx classを型といったり、一番違和感のあるのが韓国式のxxx号という言い方です。韓国や中国でxx号というのは結構ですが、なぜ日本がまねをする必要があるのですか。戦艦大和であって大和号ではないのです。セウォル号は日本ならセウォルですんだのですがね。
Duel of the Superbattleships:Japan’s ‘Yamato’ versus America’s ‘Iowa.’ Which would win? 超大型戦艦大和対アイオワの直接対決で勝者は?
December 11, 2013 Michael Peck 1
- 究極の戦艦対決になっていたはずだ。一方の日本海軍の大和(排水量65千トン)は世界最大の戦艦だ。対戦相手は第二次大戦当時の米戦艦の花形アイオワ(排水量45千トン)だ。両艦は相まみえていないが対戦していたら結果はどうなっていただろうか。
- その答えを出したのがジョン・パーシャル(歴史家、著作にShattered Sword: The Untold Story of the Battle of Midway )でマニアックな日本帝国海軍に関するサイトCombinedfleet.comで各艦の模擬海戦を想定している。(注 Combined Fleetは連合艦隊のこと)
- パーシャルは大和とアイオワを五つの視点で比較した。主砲、装甲、水面下防御、射撃管制、「戦術要因」(速度、ダメージコントロールなど)である。
主砲
- 大和の18.1インチ砲は最大の戦艦主砲であった。米側の数の威力に対抗すべく、日本海軍は米よりも強力な火砲を各艦に搭載する策を選んだ。大和の18.1インチ砲9門は重量3,200ポンド砲弾を26マイル先まで発射でき、アイオワの16インチ主砲9門は2,700ポンド砲弾を24マイル飛ばした。
- 日本海軍の砲弾は米側より威力が劣ったが、射程距離では大和が優位だった。だが目標にまず命中させることが重要だ。第二次大戦時の射撃管制を考えると時速30マイルで移動する戦艦を25マイル先で命中させる可能性は低かっただろう。
- パーシャルの想定では距離を23マイル未満に縮める操艦をともに両艦がとっている。この距離では大和、アイオワの主砲はそれぞれ相手艦の装甲を貫徹可能。「このため、運が大きな要因となります。アイオワの射撃管制の方が優秀ですが、大和に運があば初弾あるいは二回目射撃でアイオワは撃破されていたのでは」
優位性:互角
装甲
- ここでは大和が有利だ。艦側面の装甲の厚さは16インチあり、アイオワは12インチだった。甲板装甲は大和が9インチ、アイオワが6インチで目を引くのは大和の主砲砲塔の26インチ装甲でアイオワは20インチだった。
- 「大和の建造思想は主砲威力で圧倒しながら英米のいかなる戦艦の攻撃にも分厚い装甲で耐えることだ」とパーシャルはまとめている。「そうなると防御も『力づく』方式になる。装甲は決して最優秀ではないが装甲の量は多いので問題にならない」
- 大和の装甲は各所で分厚いがアイオワの装甲は重要部分でも分厚くない。しかし、パーシャルが指摘するように米側は特殊鋼という軽量かつ強靭な材料で艦体、艦内を建造しており、米戦艦は小型軽量でも大型艦同様の装甲効果がある。
- とはいえ、パーシャルは大和にわずかながら優位性を認める。両艦ともに射撃管制機能を損傷して距離を縮める必要が生まれれば、大和主砲の強靭さにはアイオワ主砲弾でも手に焼いたはずだからだ。
優位性:大和
水面下防御
- 戦艦で水面下の装甲がなぜ重要なのか。戦艦は敵と主砲で応酬するが、魚雷もある。このため戦艦では喫水線下にも大装甲を施す傾向がある。
- この話はドイツ戦艦ビスマルクにすべきだった。同艦は英プリンスオブウェールズの14インチ砲が手前着弾し海中から喫水線下の軽装甲を貫徹したため沈没した。
- 日本海軍は質的優位性をめざし、戦艦で長距離射撃で同様の水面下破壊効果を狙う訓練をしていた。「砲弾による水中効果の可能性は極めて低い」とパーシャルは指摘。「だが主砲から砲弾を一定量発射すれば奇妙な出来事が起こらないとは限らない」
- パーシャルは各国戦艦7隻を比較検証し水面下装甲では大和とアイオワが一番優秀と見る。ただし大和の場合は上部と下部装甲帯のつなぎめが拙劣で、沖縄で米軍機攻撃を受けた際にここから浸水を許している。
優位性:アイオワ
射撃管制
- 目標がフットボール競技場三面分の大きさがあっても25マイル先で移動する間に命中させるのが砲術の腕の見せ所だ。ここにアイオワ最大の優位性がある。日本の射撃管制レーダーは低性能だが米射撃管制用レーダーは当時世界最高性能だった。
- 「1945年のテストで米戦艦ノースカロライナは高速連続450度旋回を中でも一貫して射撃解を得ていた」(パーシャル)
- 「当時の戦艦では突出した性能で、米戦艦は射撃しながら操艦できたが、他国ではどちらか片方しかできなかった」
- だが日本には優秀な測距儀と夜間双眼鏡があり、奇襲攻撃のガダルカナル夜戦で米海軍に大損害を与えた。ただし光学系装備は悪天候や煙幕で効果が減る。
- 「光学装置は方位角を得るのに有用ですが、射程距離の確定は不得意です」とパーシャルは言う。「第二次大戦中のレーダーは射程情報を正しく与えましたが、方位角は話が別です。そこで優秀な光学測定装置とトップクラスのレーダーの組み合わせの方が世界トップクラスの光学装置とがらくたのレーダーの組み合わせより実効性があるのです」
優位性:アイオワ
戦術要因
- パーシャルは他の要素をまとめており、速力、ダメージコントロールもその一環だ。アイオワの33ノットは大和は27ノットで距離を広げる、詰める際に有利だ。大和の排水量はアイオワの三分の一ほどの差があり損害の吸収力で差がつく。
- だがダメージコントロールとなると米海軍は日本他より先を行っていた。
優位性:アイオワ
勝者は …
- ではどちらが勝っただろうか。数字だけでは、アイオワが射撃管制能力で有利だ。だが幸運な一発二発があればレーダーは破壊され、大和の18.1インチ主砲はアイオワに甚大な被害を与えたはずだ。
- 両艦とも相手に一定の優越性をもっているが、差はわずかで主砲や装甲同様に運が大きな意味を持っていたはずだ。
- もちろんこのシナリオは仮定にすぎず、家庭内提督やウォーゲーム愛好家の世界だ。大和とアイオワが主砲でヘビーウェイト級ボクサーのように対決する場面はなかった。巡洋艦、駆逐艦、潜水艦が取り巻いていた。
- 戦艦同士の唯一の海戦事例はビスマルクが巡洋艦プリンツオイゲンを従えて英戦艦プリンスオブウェールズおよび巡洋戦艦フッドと対決したデンマーク海峡海戦だ。
- 大和対アイオワの直接対決の想像は好奇心をそそるものがあるが、空虚だ。1945年当時でも戦艦時代は終わりつつあり、航空機の大群の前に生き残れなかった。大和は沖縄特攻に移動中の1945年4月7日に米艦載機に圧倒され撃沈された。
- アイオワは第二次大戦後も朝鮮戦争を経て1980年代に現役復帰している。陸上へ艦砲射撃は多数行ったが敵戦艦に一発も主砲を開いていない。■
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