スキップしてメイン コンテンツに移動

★歴史に残らなかった機体⑥ 巨大迎撃戦闘機Tu-128フィドラー



The National Interest


Russia's Super-Sized Tu-128 Fighter: The Supersonic B-52 Killer ロシアの巨大戦闘機Tu-128はB-52キラーとして設計されていた

April 1, 2017


  1. ソ連国境線は非常に長く米核爆撃機やスパイ機の侵入にそなえた警戒飛行は困難だった。地対空ミサイルが登場したが全土を覆うのは不可能だった。そこでソ連はお得意の巨大機で対応しようとした。それがツポレフTu-128ジェット戦闘機で、全長30メートル、完全装備で30トンで大型機として知られるF-4ファントムの1.5倍だ。NATOがコード名「フィドラー」のTu-128は最大級の実用戦闘機になった。
  2. つまるところTu-128とはB-52爆撃機迎撃用の専用戦闘機だった。冷戦初期の米ソ両国はそれぞれ特殊用途の迎撃戦闘機を開発し、核爆弾投下を食い止めようとしていた。迎撃機は高速と長距離航続性能で敵爆撃機に接近する構想だった。レーダーと長距離ミサイルにより遠距離からの攻撃も重要な要素だった。一方で敏捷性や格闘戦闘能力は不要とされた。
  3. ソ連はスホイ製高速戦闘機を各型開発したが、いずれも航続距離は400ないし500マイルしかなく、レーダーも搭載していなかった。そこで1955年にソ連は燃料を大量搭載し、強力なレーダーと大型空対空ミサイルを運用する戦闘機仕様をまとめた。三年後、ツポレフ設計局からTu-28迎撃機案が提出される。これは失敗作Tu-98超音速爆撃機試作型を原型にしていた。Tu-28は1961年初飛行で無人標的機の追尾撃墜に威力を実証し、生産型が発注され制式名をTu-128に変えた。
  4. AL-7Fターボジェット双発の同機は合計15トンまでの燃料を搭載し、航続半径1,600マイル、滞空時間を2.5時間とした。航法士がRP-Sスメルチレーダーで31マイル以内を探知したが当時としては優秀だった。ソ連戦闘機では地上レーダー管制センターの指示を受けての迎撃が普通だったが、フィドラーは強力な搭載レーダーにより単独で迎撃できた。
  5. 敵機にロックオンすれば大型R-4ミサイル(NATOコード名 AA-5アッシュ)四発を発射した。R-4は全長5メートル重量1,000ポンドで赤外線誘導、レーダー誘導の二形式があり、有効射程はそれぞれ9マイルと15マイルで、高高度でも運用可能だった。ソ連の運用思想は標的に各型を一発ずつ発射し撃墜可能性を高めるとしていた。
  6. ただしTu-128で敵機に接近しすぎるのは望ましくなかった。R-4の最小射程は1マイルでフィドラーは最大g荷重は2.5でしか旋回できなかった。(今日の空戦戦闘機なら4gでもらくらく操縦できる)敵戦闘機との交戦は想定しないフィドラーは電子対抗装備やレーダー警戒受信機は搭載されていない。
  7. もう一つ問題があった。フィドラーのレーダーとミサイルは低空飛行機に対応できず、米空軍の運用思想は1970年代に入ると高速低空飛行を重視し始めていた。そこでソ連も各機をTu-198M仕様にアップグレードし改良型レーダーとR4Mミサイルで高度800メートルまでの目標に対応させた。機体運用後期にはフィドラーはTu-126AWACSと組んで敵機探知の可能性をあげようとした。
  8. Tu-128の生産数は198機で防空連隊6個に配備された。このうち14機がTu-128UT練習機でコックピットを機首に追加したグロテスクな機体となり、「ペリカン」のあだながついた。フィドラー操縦はベテランパイロットだけが許され最高水準の俸給を受けた。フィドラーは遠隔地前線基地に配備され、SR-71ブラックバードの追尾を試みたが、SR-71の高速についていなかった。
  9. ブラックバードは国際空域にとどまるため、フィドラーも怒りの一発を御見舞できなかった。かわりに乗員は米偵察気球を攻撃してうさ晴らしした。小型円形の気球はロックが困難で、あるTu-128はミサイル四発を全部発射して一機撃墜するのが精々だった。
  10. フィドラーは高信頼性がパイロットに気に入られたようだ。上昇率が高く、高高度性能も高かった。Tu-128はスーパークルーズが可能で超音速飛行をアフターバーナーなしで実現している。今日でもこれができる戦闘機は少ない。欠点としてフィドラーは着陸が難しくパイロットは12マイル先で滑走路に機体を合わせる必要があった。他方で頑丈な構造だったようだ。1978年にTu-128が二機空中衝突したが、一機は主翼が潰れエンジン片方で帰投に成功している。
  11. Tu-128は1990年まで供用され、MiG-31フォックスハウンド迎撃機に後を譲った。同機はマッハ3で新しいレーダー、ミサイルを搭載する。その時点で戦闘機設計の潮流は多用途戦闘機に重点が移り、F-15やSu-27の時代になっていた。にもかかわらずTu-128の機体は流麗といえなかったが、大きな燃料搭載量でソ連遠隔地の領空に目を光らせることができたのである。
Sébastien Roblin holds a master’s degree in conflict resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring.
Image: Tupolev Tu-128, Russian Air Force Museum. Flickr/Creative Commons/Alan Wilson

コメント

このブログの人気の投稿

★★★F-35とF-105の意外な類似性、戦闘爆撃機でドッグファイトは不得手

THE BUZZ America's F-105 Thunderchief Fighter-Bomber: The F-35 of the Vietnam War?
David Axe July 3, 2016 http://nationalinterest.org/blog/the-buzz/americas-f-105-thunderchief-fighter-the-f-35-the-vietnam-war-16839
War Is BoringによればF-35はF-16との模擬空戦で旋回速度が遅すぎて勝てなかったとテストパイロットが語っている。
これからの米空軍で最多の戦闘機材になるF-35が数で優勢なロシアや中国の機体と戦って残存できるのだろうか。 答えは歴史の中にある。50年前にも米空軍は同じ予測をしている。攻撃の主力F-105サンダーチーフは重量級ハイテク地上攻撃機で敵戦闘機も同時に撃退できるはず、とF-35と同様だった。 だが事実はF-105も旋回速度が遅くロシア製MiG-21に太刀打ちできず、空軍はF-105の損失を防ぐ特別な戦法を編み出した。同様の措置はF-35でも必要だろう。 F-35とF-105は驚くほど似ている。「F-105とJSFは大型、単座機、単発の戦闘攻撃機で、その時点で最強力なエンジンを搭載、空虚重量は27千ポンド級で翼幅もほぼ同じ35フィートだ」とオーストラリア航空宇宙専門家カーロ・コップが2004年に指摘していた。 http://www.ausairpower.net/Analysis-JSF-Thud-2004.html © 2005, 2007 Carlo Kopp

「両機種とも機内兵装庫があり機外パイロンで燃料と兵装を運べる」とコップは指摘し、「ともに戦闘半径400カイリクラスを目指し推力重量比、高機動操縦性能で制空戦闘機や迎撃機より劣っていた」 http://www.ausairpower.net/Analysis-JSF-Thud-2004.html

★★★米空軍次期戦闘機はもう戦闘機の形状となることはない---第六戦闘機の用語は駆逐

米空軍は次期戦闘機材の姿を未来から考えていますね。目的は航空優勢の確立であり、ドッグファイトは目的ではないと分析し、宇宙やサイバーも含めた多様なシステム構造の一貫として次期機材を捉えております。また、アジア太平洋での作戦をにらみ足の長い機体となると現在の戦闘機と相当形状が異なってくるとし、現状の姿の延長線上に次期機材を想定する勢力の生み出す結果と全く異なる結果を生み出そうとしています。改めて空軍の構成、運用がシステムで成り立っていることを痛感させられる内容です。 Air Force Prepares to Hash Out Future Fighter RequirementsBy: Valerie Insinna, August 28, 2016 (Photo Credit: Northrop Grumman)http://www.defensenews.com/articles/air-force-future-fighter-jet-penetrating-counter-air-next-generation-air-dominance
WASHINGTON — 一年をかけて将来の制空任務に必要な戦術や技術を検討した米空軍が次期戦闘機を実現する第一歩を踏もうとしている。2017年予定の代替策検討(AOA)に先立ち、空軍は予備作業を開始している。AOAはF-35に続く機体の要求条件、調達戦略に焦点をあてる。空軍は次期戦闘機をNGAD次世代航空優勢とかPCA侵攻制空用機材と呼んでいる。
だがアレクサス・グリンケウィッチ准将はAir Superiority 2030による戦力連携チーム(ECCT)を率い、NGADは従来の戦闘ジェット機と大きな違いが2つあると強調する。ひとつめが調達期間を比較的短くすることだ。
「2020年代末までに何らかの形が必要です」と准将はDefense News取材で発言している。「現実的な日程として2028年頃に中心的な技術分野で大幅な投資があれば侵攻制空性能で初期作戦能力が実現します
第二の相違点に関係するのがこのたびまとめられたAir Superiority 2030研究で将来の米空軍の航空優勢で決め手になるのは単一機種としての第六世代戦闘機のような機体ではなく、統合ネットワーク化された一連のシステムの集合だとする。この組み合わせの中に侵攻能…

★★★F-3事業に参画意欲を見せるボーイング、ロッキード・マーティン

Boeing, Lockheed Martin emerge as early rivals for Japan's fighter contest
Jon Grevatt, Bangkok - IHS Jane's Defence Weekly 19 July 2016 http://www.janes.com/article/62368/boeing-lockheed-martin-emerge-as-early-rivals-for-japan-s-fighter-contest Japan's Mitsubishi F-2 multirole fighter aircraft. Source: Japanese Air Self-Defense Force
航空自衛隊JASDFがめざすF-2多用途戦闘機の後継機種をめぐり、ボーイングとロッキード・マーティンがともに参画の意向を表明した。 IHS Jane’sが両社へ7月19日照会したところ、ともに日本での実績をもとに同事業参入を目指していることがわかった。事業規模は200億ドルといわれる。 防衛省は情報提供要求RfIを発出済みで、2018年4月までに「次期戦闘機」の決断を下すとみられる。 F-2は2000年代に三菱重工業MHIとロッキード・マーティンの共同事業で製造され、2027年ごろまでに全機退役する。 ボーイング広報によれば同社はF-2後継機の要求内容を検討中だという。「日本で当社の存在意義を大きくする方策は常に考えており、日本での安全保障ニーズに応えたい」 ロッキード・マーティン広報は「日本から各社に情報の要求が出ているが、当社もこれまでの日本との関係をさらに強化する今回の機会を活用したい」とし、「F-35事業とF-2でMHIと実績が成果を生んでいることは誇り」とする。 RfIは6月に出ており、各国の戦闘航空機メーカー宛に送付されている。RfIは7月はじめに締め切られており、米二社に加えユーロファイターSaabもプレゼンを8月末に行う見込みだ。 RfIは既存機種での検討の一助にするほか、各社の事業参加への意欲をさぐることのがねらいだ。MoDはF-2後継機を純国産あるいは共同開発ですすめるかの決断を下すが、後者の場合は既存機種を原型にするとみられる。■