何らかの妨害手段が効果を上げたのか、それとも偶然なのか、北朝鮮やイラン当局にも原因がつかめないとしたら米作戦の成功と言えますが、事実ならとんでもない技術が使われていることになります。確かに証拠はないので何とも言えないのですが、それこそが作戦の肝なのかもしれませんね。
Can The U.S. Actively Disrupt North Korean Missile Tests?
Apr 18 2017
By Tom Demerly
- 北朝鮮のミサイル実験失敗に憶測が集まっている。
- 最新事例は4月16日日曜日で潜水艦発射の弾道ミサイルで興味深い疑問を生んでいる。失敗の原因に米国が関与したのではないか。この仮説にはどことなく魅力があり、政治筋も可能性を認めるが、真っ向からこの可能性を否定する米専門家がひとり存在する。
- 米太平洋軍からは参謀総長ケヴィン・シュナイダー空軍少将名で同ミサイル発射を東部標準時土曜日午後5:21に探知されたと発表。監視活動で同ミサイルは発射直後に失敗と判明している。
- 今年4月5日にも同様に発射失敗事例があった。その前が3月5日ですべて飛翔中に問題が発生している。
- CNNやBBC含む報道メディアが米国に遠隔地からミサイル発射を妨害する技術が存在し、実際に使われたと伝えている。
- そこでブルース・エマーソン・ベクトルジュニア博士(アンジェロ大学安全保障学部教授)の意見を聞いてみた。
- ベクトル博士はシンシナティのユニオンインスティチュートで博士号を取得し、2001年に海兵隊幕僚大学校で安全保障論修士号も授与され、その他国際関係論でも修士号をとり、北朝鮮軍事装備にかけては第一人者とされている。博士に米国が北朝鮮ミサイルテストを妨害していたのか聞いてみた。
- 「説の裏付けはありませんね。可能ではあるが、裏づけが皆無です。聞こえてくるのは憶測だけです。メディアはこの種の話が大好きですね」
北朝鮮軍事技術の技術動向や用兵思想に詳しいブルース・E・ベクトルジュニア博士。 (credit: Committee for Human Rights in North Korea)
- ベクトル博士によれば弾道ミサイル開発は数との挑戦だという。「スカッド・ミサイルの例では600発発射しうち150から200発が不発弾だった。これが通常の場合だ。だがハワイを核弾頭で狙えば正確度は不要で、一発だけ命中させれば十分なのです」
- 博士が最近の北朝鮮ミサイルで気づいたのは新型安定板だ。北朝鮮ミサイルの誘導性能については「北朝鮮弾道ミサイルの軌道が正確さに欠けている。正確さの追求は必要ないのだろう」
- 失敗が続くのは北朝鮮ミサイル開発の現実を示している。だが成功事例もあるように米国も弾道ミサイルへの対抗で成功した事例がある。ベクトル博士は裏付けを求める現実的な見方だが直近の失敗事例で米国装備がうまく作動した可能性もある。あるいは北朝鮮が不運に連続遭遇したのかもしれない。米国防関係者は沈黙を保ったままだ。
- 「スタックスネットの可能性はありますが、証拠はありません」スタックスネットは2010年に登場したコンピュータウォームでイラン核開発を妨害した。米国・イスラエル共同開発といわれる。
- そこまでハイテクでない手段が妨害工作だ。ミサイル組立現場や輸送途中、あるいは部品段階で実施できる。北朝鮮ミサイルの開発は外国技術に依存度が高い分、あらゆる開発段階で妨害工作に弱くなっている。
- 現時点の北朝鮮ミサイル技術は中国、ロシア、イランの各国技術の寄せ集めだ。各国技術に外国諜報活動がつけこむ余地があり、米国のみらずイスラエルや英国も関与している。弾道ミサイル技術の実用化に中国は15年かかった。北朝鮮はわずか123日で達成しており、外国技術の利用が明白だ。米中が新しいデタンテの時代に向かう象徴がトランプ大統領と習主席の会談だったが、米中2国間で技術関連のやりとりがすでに実施されているのではないか。そうなら米国の北朝鮮ミサイル妨害効果がさらに高まる。
- 興味深いことにイランも今年1月25日の弾道ミサイル発射に失敗している。匿名米関係者によればイラン中距離弾道ミサイルは飛翔中に爆発した。だがベクトル博士は事実を重視し憶測を戒める。「北朝鮮はスカッドの四発発射に成功しています。失敗したから脅威が減るわけではありません」
- 直近の失敗例は北極星-1潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の可能性が高い。発射装置は海中にあり圧縮空気またはブースターで水面上に送ってから固体燃料に点火して飛翔する。
- 北朝鮮はSLBMを水中発射台並びに潜水艦からそれぞれ発射に成功している。水中発射台発射で始めたのは潜水艦発射が相当危険だからだ。報道では北朝鮮潜水艦がミサイル発射テストで大きく損傷したという。
北朝鮮は北極星-2潜水艦発射弾道ミサイルを軍事パレードで公開したものの直後の発射テストに失敗している。(credit: Official North Korean News Agency)
- 他方で北朝鮮弾道ミサイルの飛翔を妨害する華麗な方法には飛翔の直接妨害がある。
- 直接妨害方法として電子撹乱策でミサイルの誘導装置を制御不能にし分解させる、またはエネルギーを直接ミサイルに収束させる方法がある。いずれもテストの現況はほとんど公表されておらず、高度ジャミング妨害方法が効果があることがわかっている。各技術を秘密のままにしておけば、北朝鮮も対策がうてない。
- 一部報道メディアは北朝鮮装備が「ハッキング」やサイバー攻撃に脆弱だとする。可能性はあるが、サイバー攻撃には「運搬手段」として悪意あるプログラムコードをマイクロチップに埋め込むなんらかの手段が必要だ。スタックスネットの場合はUSBメモリーを装置に挿入しコードを入れた。
- 中国はサイバー戦に多大な努力を投入しているが隣国の北朝鮮に中国がその一部を使用したとは考えにくい。ただし米国に対抗する意味であれば話は別だ。
- 米国もサイバー戦能力の開発に力を入れており、スタクスネットは初期成果にすぎない。水中発射ミサイルの場合は海中段階での妨害の可能性もある。電磁技術専門文献では「電力およびデータの完全移送」技術があるという。この移送は1キロ離れていても有効ですでに2008年時点で非公開の形で検討されている。各技術は前政権時代のもので9年たった今は相当進歩していてもおどろくことにはならないだろう。
- 米国妨害説とは別に北朝鮮の兵器開発テストが相当進展しているのは明らかだ。メディア・政界双方が北朝鮮との軍事対決はこれまでの「もしも」から「いつ」本当に始まるのかへ話題を移しているのが現状だ。■
Top image: (computer generated) image of a North Korean SLBM (Rodong Sinmun via NK News)
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