これまでの米国の動きは北朝鮮が見抜いていたようで挑発行為も瀬戸際で止まっていたのですが、トランプの心の中は読み取れないのではないでしょうか。金正恩も同じで、世界は不安の中でこれから過ごすことになりそうです。
Armageddon: The Devastating Consequences of a Second Korean War 第二次朝鮮戦争の壊滅的効果を予測する
April 14, 2017
- 北朝鮮をマルクスレーニン主義国家、あるいは毛沢東の文化大革命の影響を受けた国家と見れば本質を見誤る。北朝鮮は王朝支配の専制国家であり、半ば神格化された金一族が絶対的な権限をチューダーあるいはシーザーのごとく国民にふりかざす国家だ。
- 北朝鮮国民が指導者へ狂信的に献身信奉する姿はうわべだけではない。北朝鮮へ行き一般国民と話して金一族への献身ぶりがよくわかった。主体思想のためなら命を犠牲にする、偉大なる指導者やその血族のためでも同様だ。北朝鮮は40年近く日本帝国の支配下にある間に、天皇のため命を犠牲にするのを厭わない神風精神を吸収したようだ。
- 北朝鮮はイラクとも異なる。北朝鮮特殊部隊エリート隊員3万人は簡単に粉砕されたサダムの共和国防衛隊とは大違いだ。特殊部隊は地下トンネルから韓国一般市民を奇襲攻撃で狙う。また自称「核大国」の北朝鮮は核弾頭20発を保有している。また化学兵器の備蓄があり、1万発あると言われる火砲で投射できる。DMZ付近に巧みに構築された陣地からソウル首都圏はわずか35マイル先であり、大被害をもたらすはずだ。この大規模化学攻撃態勢はシリアのアサドからすればうらやましいかぎりだろう。ソウルの人口は10百万人超で首都圏全体では25百万人が暮らす。
- 韓国の2016年度版白書では北朝鮮は1980年から化学兵器開発に乗り出し、今や化学兵器2,500トンから5,000トンのを備蓄しており、生物兵器も含め各種にわたり、炭疽菌、天然痘、ペストまであるという。CNNは4月13日に安倍首相が「北朝鮮はサリン神経ガスを搭載したミサイルを発射する能力がある」と公に発言したと報道。
- 金正恩は公然とトランプ大統領を軽蔑し、第六回目の核実験を4月15日の金日成誕生日近辺で実施するようだ。米大統領がレッドラインと警告する中で金正恩は計算づくでトランプはまさか第二次朝鮮戦争に火をつけるはずはないと見ているのだ。
- 祖父金日成は当時の米大統領をなんらちゅうちょせず挑発している。米情報収集艦USSプエブロを国際公海上で拿捕したのは1968年1月のことで、同艦は今日でも返還されず、乗組員82名(一名は襲撃時に死亡)は一年近く抑留された。リンドン・B・ジョンソン大統領はヴィエトナム戦争の泥沼に足を取られており、平壌への報復攻撃を控えた。翌年4月に米偵察機が日本海上空で北朝鮮MiG-21に撃墜され31名の乗員は全員死亡した。これは冷戦時の米航空乗員被害では最大だ。平壌はたくみに計算しヴィエトナム戦争のエスカレーションを恐れワシントンは激しい行動を取らないと見ていた。
- さらに1976年夏に前年のジェラルド・R・フォード大統領のヴィエトナム完全撤兵を受けて、平壌はDMZで米軍を襲撃し、米陸軍将校二名が死亡した。有名な「斧殺人事件」で平壌は戦争に疲れたワシントンがアジアで再び大規模戦に巻き込まれたくないと思っているはずと見たのだ。瀬戸際政策は北朝鮮の普通の戦略方法論なのだ。
- 最近では2010年に韓国海軍艦艇を魚雷攻撃し、46名を死亡させながら同年に韓国離島を砲撃し、韓国海兵隊員2名一般市民2名を殺害している。ここでも平壌は挑発行為をしかけながらたくみに事態を収束させているのは、同盟国の中国が国連による対応を阻止したためだ。
- 金正恩は攻撃を仕掛けるだろうか。直近の脱北高官によれば可能性はあるという。ロンドンで大使次長だったThae Yong-hoが金正恩の心の中を語り「金正恩を過小評価してはいけない」と2月17日CBSで述べている。「アメリカだけでなく韓国や世界に被害を与えようとしている。金正恩はICBMが手に入れば、アメリカは簡単に怖じ気出すと信じている」とBBCに語り、追い詰められればロサンジェルスを核攻撃すると発言した。「自らの権力と一族が追い詰められればボタンを押すはず」
- 現時点で北朝鮮に米本土まで到達可能なICBMはないとみられるが、あと数年で実現する可能性がある。ただし短距離中距離ミサイルは韓国、日本、グアムの米軍基地を射程に入れている。日本政府の懸念は北朝鮮が日本統治時代から続く反日、反帝国主義の主張から日本国内に化学兵器の雨を降らすことだ。
- 在韓米軍は28千名が駐留し開戦となれば即出撃する態勢をとっている。さらに軍属家族が数千名韓国にある。非戦闘員退避作戦で米国や同盟国の民間人数千名を韓国から退避させるが2つの問題が未解決だ。まず、これだけの民間人がソウル首都圏にいる中で突如として化学攻撃を受ければ国外避難が円滑にできるのか。二番目に危機が迫る中でワシントンが米軍属の退避命令を出せば、パニック状況が生まれ大量の市民が朝鮮半島南部へ逃げ出すだろう。空港は言うに及ばず、首都機能は麻痺し、韓国株式市場は大幅安になる。
- もう一つ第二次朝鮮戦争勃発の場合に危惧されるのが国際貿易だ。1950年の東アジアと違い、東アジアは世界経済のエンジンになっている。ミサイルがグアム以遠まで飛び交う太平洋になれば、中国製やその他アジア各国製品がウォルマート店舗から消えるだろう。海上貨物輸送も戦火に巻き込まれるリスクは避ける中で米軍人員物資の輸送が最優先のはずだ。
- 米軍が北朝鮮核施設ミサイル施設をピンポイント空爆することで第二次朝鮮戦争が勃発すれば、また北京が北朝鮮との防衛条約を履行すれば、世界経済は壊滅的影響を受ける。中国は1950年に自国の中核的権益が脅かされていると感じ軍事介入してきた。
- 2000年のペンタゴン資料では当時の米軍死傷者数は33,651名とあり、さらに「その他」として疾病事故死があるとする。朝鮮戦争記念館の死傷者は54,246名と記録している。中国は132千名から400千名を喪失している。英、トルコ、カナダ、オーストラリア、フランス他の連合国で3-4千名が戦死している。韓国一般市民は2百万人が死亡している。戦争により米国では200億ドル、中国は25億ドルの損失が生まれた。
- 第二次朝鮮戦争となれば被害規模はさらにふくれあがる。今回も韓国で2百万人以上が死亡するだろう。米軍は50千人超となりアジア地上戦で一般国民が動員される事態となる。韓国国内のインフラが破壊されれば「漢江の奇跡」は再び振り出しに戻る。米軍の太平地区の基地、韓国、日本の都市部に化学攻撃があるだろう。太平洋地区の株式市場は大幅安となり、世界貿易は壊滅的影響を受ける。中国介入の可能性がある。また恐ろしいのは核兵器が戦闘で初めて投入される可能性だ。
- そうなると次の疑問が生まれる。ピンポイント攻撃を敢行してこれだけのリスクを覚悟できるのだろうか。
Dennis Halpin, a former adviser on Asian issues to the House Foreign Affairs Committee, is currently a visiting scholar at the U.S.-Korea Institute at SAIS (Johns Hopkins) and a consultant at the Poblete Analysis Group.
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