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北朝鮮崩壊後のシナリオを検討せよ



The National Interest

The Real North Korea Problem Isn't Missiles or Nukes (But a Collapse)


March 7, 2017

朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)は究極の大統領の悪夢でパンドラの箱だ。核兵器、化学兵器、生物兵器をミサイルで飛ばし、米本土到達も含む。北朝鮮は核兵器実験を通じ北東アジアを動揺させる方法を熟知しているようだ。
核兵器だけに目を奪われる一方で、世界は大事な可能性を見過ごしている。北朝鮮が崩壊する日が来たらどうなるか。大量蜂起、経済不信あるいは内戦により超大級の悪漢金正恩は数百万の生命を道連れにするだろう。
2013年にRANDコーポレーションがこの問題を真正面から検討した報告書を刊行している。筆者ブルース・ベネットは恐ろしい論旨を淡々と展開し、考えられる事態、米側同盟国の対応策をまとめている。以下同報告書から可能性のある5つの事態を紹介する。

1. どんな崩壊が考えられるか
「どんな状況で金正恩政権は崩壊するか。政権の崩壊と政府の崩壊の2つが考えられる。政権崩壊なら金一族による統治が否定され、新指導者が代わりに現れる。この場合、国家統制の仕組みと組織はほぼ現状どおりとなるが、一時的に最高権力者の追放により混乱は避けられない。新指導者は政府上層部を多数追放し忠誠を誓うものに置き換える」

だが次のシナリオはもっと恐ろしい。
「もう一つは政府機構の崩壊だ。この場合、金一族は機能できず、あるいは放逐され、北朝鮮新体制の再構築は単独人物では不可能だ。派閥が多数形成され、国の支配をめぐり策略するなか全土の統治効果は弱まる可能性がある。中央統治機能は機能しなくなる。
「政権崩壊が国家政府崩壊につながることに注意が必要だ。北朝鮮は政権、政府機能のいずれでも崩壊を経験していないが、崩壊の兆候がすでにあらわれている。金正恩体制は『機能を失いつつある、消滅に向かう独裁体制』と表現するべきだ」
2. 内戦の可能性
「北朝鮮国内でWMDを投入した内戦が発生すれば、韓国も巻き込み甚大な被害が生まれる。内部抗争で韓国を狙う砲兵隊特殊部隊の実効性が大きく下がる。だが絶望的になれば意図的に韓国を攻撃してくるかもしれない。そうなると核、化学・生物兵器で韓国内に相当の死傷者が生まれる。韓国経済・社会にも大きな損害が加わる。韓国は祖国統一の負担に耐えられず、韓国から見て最悪なのは韓国が内戦状態を沈静化できず国内を不安定化させ犯罪と内乱が蔓延する状態だ。
3.中国の介入を招くのが最悪
「さらに中国介入の可能性がある。中国は介入を望んでいるとの見方もある。実施になった場合、中国は統一を阻止するだろう。韓米軍と並んで中国軍も進入し、韓米連合軍対中国軍の戦闘が生まれるかもしれない。中国との戦闘により統一も遠のく。
4. 大飢饉の発生
「現在でも北朝鮮の食料供給は大変である。政府が崩壊すれば北朝鮮は飢饉になる。資金力のあるものは食料を貯めようとするが食料価格は急上昇する。食料が姿を消せば、軍や武器を持つ層が食料を襲う事件が増え、僅かな食料を手に入れようとするはずだ。北朝鮮支援に当たる人道団体も国内治安状態の悪化で支援を減らすはずだ。食料供給が今より下がれば北朝鮮では飢餓線下に追いやらられる国民が多発するだろう」

5. 国土再建・統一費用は韓国に高くつく
「統一費用は非常に高額になる。財政負担は数兆ドルになり、北朝鮮崩壊5年以内に大部分が発生するが、その後数十年間にわたり発生するものもある
「韓国政府の負担は年間2,500億ドルとなるだろう。統一費用を2兆ドル(軍事作戦で5,000億ドル、南北の戦災復興に5,000億ドル、北の経済開発に1兆ドル)とすれば、韓国年間政府予算の約8年分に相当する。統一費用を10年間負担しようとすれば、政府予算は大幅に増額する必要があり、税収を倍増する選択肢も現れる。なお、上記試算には人道援助、保険医療は含まれていない。

これで明らかなように北朝鮮が示す危険は核兵器だけではない。北朝鮮崩壊あるいは何らかの形の統一は米国やアジア内同盟各国にも大きな課題となる。歴史を見れば独裁体制が永遠に続かないのは明らかで、将来どこかの時点で直視せざるを得ない。DPRKが次回核実験を実施した場合は見出しに踊らされず、この記事を再度読み直してもらいたい。■
Harry Kazianis is Director of Defense Studies at the Center for the National Interest and Executive Editor of The National Interest.


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