スキップしてメイン コンテンツに移動

北朝鮮空爆作戦はパンドラの箱を空けることになるのか



The National Interest


Want to Open the Ultimate Pandora's Box? Bomb North Korea


March 24, 2017


レックス・ティラーソン国務長官は対北朝鮮軍事行動は選択肢の一つと公言し波風を立てた。長官はバラク・オバマ前大統領の「戦略的忍耐」の段階は終わったと端的に述べている。長官は軍事行動を検討中と発言していないが爆撃は選択肢だ。米軍は北朝鮮に大きく航空優勢を保っており、海軍も投入可能だが、地上部隊投入は大きなリスクを伴う。
北朝鮮への制裁攻撃措置はここ数年何度となく想定されてきた。北朝鮮が韓国、日本、米国を挑発してきたためだ。軍事行動を招いても仕方ない挑発もあった。1968年には情報収集艦USSプエブロを拿捕し乗組員をほぼ一年解放しなかった。1998年には日本上空を飛行したミサイルを発射した。2010年には韓国コルベット艦を撃沈し、韓国領の島を砲撃し50名を殺した。それでも毎回、米韓日は行動を留保してきた。自制には理由があり、ドナルド・トランプ大統領も行動を制約される可能性がある。
1. ソウルは北朝鮮攻撃にきわめて脆弱
これがおそらく最大の軍事作戦の足かせだ。韓国は北朝鮮の報復攻撃の標的になる。イスラエルがアラブ諸国を攻撃しても報復攻撃を心配しなくてもいいのと大違いだ。ソウル含む京畿道は軍事境界線に近く韓国人口の55%を占め、経済政治の中心地だ。これだけの大都市圏は防衛もままならず逆に容易な標的であり、平壌による反撃は避けられない。
2. トランプは韓国、日本から事前承認を得る必要がある

各国は報復攻撃を受けるはずだ。かりにどちらかの国が承認せず米国が攻撃を強行すれば同盟関係が壊れる。右寄りの安倍政権の日本がリスクを受容するとしても、韓国は今の状態では反応しにくい。韓国左翼勢力は空爆を認めない可能性が濃厚で5月大統領選で勝利をつかむのは確実といわれる。
3. 空爆は短期「外科手術」で終わらず数日あるいは数週間続く可能性がある
そうなると限定行動ではなく本格的戦闘の様相を呈してくるはずだ。北朝鮮は数十年かけて地下トンネル網を構築し軍事力を温存する体制になっているのは朝鮮戦争で米空爆から大損害を経験したためだ。また道路移動式発射装置や潜水艦も重点的に整備している。仮に北朝鮮の核施設ミサイル施設を全部攻撃しようとすると空爆作戦は大規模かつ長期化する。北朝鮮は残る装備を韓国と日本の攻撃に投入するだろう。作戦が長期化すれば北朝鮮の反撃の可能性も高くなる。
4. 北朝鮮が超えてはいけない一線は
朝鮮人民軍(KPA)も独自の交戦計画を持っているはずで攻撃を受けた場合の対応も想定しているだろう。北朝鮮にとっては核・ミサイルが指導部の次に重要なはずで、KPAが黙って攻撃を甘受したままのはずがない。また米航空戦が長期化すれば、全面戦争の様相になるはずで限定戦から離れていく。北朝鮮エリート層は事態打開を求め、限られた国家予算を自由に使えるKPAに国家体制の保護者としての期待が高まり、軍部は強力な反撃を企てるはずだ。そうなるとこれも戦闘規模の拡大につながる要素になる。
5. 北朝鮮が人間の盾作戦をとるのは必至
米航空作戦が短期間で終わらないと、北朝鮮は国内標的に国民を集結させるだろう。北朝鮮上層部は1990年代の飢餓で国民百万から二百万を平気に餓死させており国民の犠牲になんら良心の呵責はない。
6. 米空爆作戦で最重要な対中関係はぎくしゃくし、数年か数十年修復不可能となる
中国が反対したままならば、米国が事前通告して作戦を実施する可能性は少ない。中国は北朝鮮を嫌悪しても崩壊は望まず、米国がアジアで今以上の覇権を手に入れるのを恐れている。米国は北朝鮮問題で中国の支援を必要としながら、対中関係を危険に晒すリスクは望まず、北朝鮮問題を理由に貿易投資、中国のドル保有高、東・南シナ海、気候変動その他を犠牲にしたくないはずだ。
代償や制約があって空爆作戦が実施できないわけではない。確かにハードルは高いが米国が空爆作戦を検討しているのは北朝鮮がここまで危険になっているのを示している。■
Robert Kelly is an associate professor of international relations in the Department of Political Science at Pusan National University. More of his writing can be found at his website. He tweets at @Robert_E_Kelly.


コメント

このブログの人気の投稿

フィリピンのFA-50がF-22を「撃墜」した最近の米比演習での真実はこうだ......

  Wikimedia Commons フィリピン空軍のかわいい軽戦闘機FA-50が米空軍の獰猛なF-22を演習で仕留めたとの報道が出ていますが、真相は....The Nationa lnterest記事からのご紹介です。 フ ィリピン空軍(PAF)は、7月に行われた空戦演習で、FA-50軽攻撃機の1機が、アメリカの制空権チャンピオンF-22ラプターを想定外のキルに成功したと発表した。この発表は、FA-50のガンカメラが捉えた画像とともに発表されたもので、パイロットが赤外線誘導(ヒートシーキング)ミサイルでステルス機をロックオンした際、フィリピンの戦闘機の照準にラプターが映っていた。  「この事件は、軍事史に重大な展開をもたらした。フィリピンの主力戦闘機は、ルソン島上空でコープ・サンダー演習の一環として行われた模擬空戦で、第5世代戦闘機に勝利した」とPAFの声明には書かれている。  しかし、この快挙は確かにフィリピン空軍にとって祝福に値するが、画像をよく見ると、3800万ドルの練習機から攻撃機になった航空機が、なぜ3億5000万ドル以上のラプターに勝つことができたのか、多くの価値あるヒントが得られる。  そして、ここでネタバレがある: この種の演習ではよくあることだが、F-22は片翼を後ろ手に縛って飛んでいるように見える。  フィリピンとアメリカの戦闘機の模擬交戦は、7月2日から21日にかけてフィリピンで行われた一連の二国間戦闘機訓練と専門家交流であるコープ・サンダー23-2で行われた。米空軍は、F-16とF-22を中心とする15機の航空機と500人以上の航空兵を派遣し、地上攻撃型のFA-50、A-29、AS-211を運用する同数のフィリピン空軍要員とともに訓練に参加した。  しかし、約3週間にわたって何十機もの航空機が何十回もの出撃をしたにもかかわらず、この訓練で世界の注目を集めたのは、空軍のパイロットが無線で「フォックス2!右旋回でラプターを1機撃墜!」と伝え得てきたときだった。 戦闘訓練はフェアな戦いではない コープサンダー23-2のような戦闘演習は、それを報道するメディアによってしばしば誤解される(誤解は報道機関の偏った姿勢に起因することもある)。たとえば、航空機同士の交戦は、あたかも2機のジェット機が単に空中で無差別級ケージマッチを行ったかのように、脈絡な

主張:台湾の軍事力、防衛体制、情報収集能力にはこれだけの欠陥がある。近代化が遅れている台湾軍が共同運営能力を獲得するまで危険な状態が続く。

iStock illustration 台 湾の防衛力強化は、米国にとり急務だ。台湾軍の訓練教官として台湾に配備した人員を、現状の 30 人から 4 倍の 100 人から 200 人にする計画が伝えられている。 議会は 12 月に 2023 年国防権限法を可決し、台湾の兵器調達のために、 5 年間で 100 億ドルの融資と助成を予算化した。 さらに、下院中国特別委員会の委員長であるマイク・ギャラガー議員(ウィスコンシン州選出)は最近、中国の侵略を抑止するため「台湾を徹底的に武装させる」と宣言している。マクマスター前国家安全保障顧問は、台湾への武器供与の加速を推進している。ワシントンでは、台湾の自衛を支援することが急務であることが明らかである。 台湾軍の近代化は大幅に遅れている こうした約束にもかかわらず、台湾は近代的な戦闘力への転換を図るため必要な軍事改革に難色を示したままである。外部からの支援が効果的であるためには、プロ意識、敗北主義、中国のナショナリズムという 3 つの無形でどこにでもある問題に取り組まなければならない。 サミュエル・ P ・ハンチントンは著書『兵士と国家』で、軍のプロフェッショナリズムの定義として、専門性、責任、企業性という 3 つを挙げている。責任感は、 " 暴力の管理はするが、暴力行為そのものはしない " という「特異な技能」と関連する。 台湾の軍事的プロフェッショナリズムを専門知識と技能で低評価になる。例えば、国防部は武器調達の前にシステム分析と運用要件を要求しているが、そのプロセスは決定後の場当たり的なチェックマークにすぎない。その結果、参謀本部は実務の本質を理解し、技術を習得することができない。 国防部には、政策と訓練カリキュラムの更新が切実に必要だ。蔡英文総統の国防大臣数名が、時代遅れの銃剣突撃訓練の復活を提唱した。この技術は 200 年前のフランスで生まれたもので、スタンドオフ精密弾の時代には、効果はごくわずかでしかないだろう。一方、台湾が新たに入手した武器の多くは武器庫や倉庫に保管されたままで、兵士の訓練用具がほとんどない。 かろうじて徴兵期間を 4 カ月から 1 年に延長することは、適切と思われるが、同省は、兵士に直立歩行訓練を義務付けるというわけのわからない計画を立てている。直立歩行は 18 世紀にプロ