海軍拡張を主張するトランプ政権も足元がこんな状態ではびっくりするでしょう。オバマ政権に非を求める代わりにビジネスライクな予算編成、執行体制を考えてもらいたいものです。米軍組織は予算確保のために惨状を訴えることが多いとは言え、今回は本当に深刻なようです。これは米国に挑戦しようとする国にとっては願ってもない機会になるでしょう。
Grounded: Nearly two-thirds of US Navy’s strike fighters can’t fly Congress’ inability to pass a budget is hurting the fleet, leaders say
WASHINGTON — 米海軍のF/A-18ホーネット及びスーパーホーネット打撃戦闘機は先頭に立って敵を切り込む機材、空母打撃群の攻撃手段の中心だ。だが機体の三分の二近くが飛行不能状態にある。飛べないのは整備の理由もあるが補給処からの部品を待っているためだ。
- 海軍航空機材の半分以上が飛行できない。主な理由は補修整備の予算がないためだ。
- さらに艦艇の修繕費も不足している中、仕事は増えるばかりだ。大型修理保全活動が先送りされたり見送られている。これでは必要な場面で艦艇が威力を発揮できない。空母には三年にも渡る大規模整備が必要で、潜水艦も四年ほど作戦投入できなくなるのは普通だ。その中でボイシーは潜航証明が撮れず、造船所の作業日程があかないと作戦に投入できない。
- 海軍上層部はもっと予算がないと同じ状況が今年末までに少なくとも潜水艦五隻で発生すると述べている。
- 乗組員や家族の勤務先変更に伴う移転費用が確保できておらず、440百万ドルが足りないとする。また陸上施設の15パーセントが劣悪な状態で、修繕・差し替え・廃棄が必要だとする。
- このような暗い状況を上層部が述べているが、トランプ政権が海軍艦艇を現状の308隻から350隻に増強すると公言するのと対照的だ。とはいえ作戦部長ジョン・リチャードソン大将は355隻構想をねっており、指導的立場の議員連が関心を示している。海軍は高い目標のためなら予算がいくらでも降ってくると期待しているようだ。
- だが現状の予算状態は厳しく、オバマ政権が提唱し議会が認めた予算削減継続の影響をまともに受けているのに加え、議会も軍の要望に応える予算を実現できていない。予算は現場の要望がわかりながら削減されてきた。また海軍も建艦予算を確保するため艦船数を減らす代わりに保守整備や訓練予算を削ってきたため急に予算が増えても成果がすぐに出しにくい。
- 会計年度が始まる10月1日以前に議会が予算を成立出来ない状況がこれで9年間連続になっている。そのため暫定的に予算継続決議(CR)で前年度並の実行予算を手当している。ただしCRでは新規事業に予算計上ができない。該当事業が前年度にないためだ。CR措置でペンタゴンや産業界に混乱が発生することは皆知っているものの、先送りしたりしてコストが結果的に高くなっている。わかっているのに変えられない現状には議会内にもっと合理的な予算編成に変革すべきとの切迫感がないのが原因だろう。
- 現在の継続予算決議は4月28日まで有効であり、1977年以来最長のつなぎ予算措置である。今年が大統領交替の年であるのも背景にある。
- 見出しでは艦艇建造の増加が目立つが、予算管理法(強制削減措置)を議会がいつ撤廃するのか、果たして撤廃する意思があるのかが見えない。このままだと2021年まで予算は制約されたままだ。
- 新政権が予算編成工程に手を加えようとしている状態が浮上してきた。ジェイムズ・マティス国防長官による1月31日付覚書では三段階構想でペンタゴンに2017年度国防予算変更要求を提出させようとしている。要求はホワイトハウスの予算管理室に3月1日まで送付される。2018年度予算要求は完全な形で同室に5月1日までに送られる。
- 三段階目では新しいっ国防戦略構想とともに2019-2023年度国防事業案を作成し、「国防力整備見直し」により「今後の戦力整備の目標を明示」するとマティス長官は述べている。
- 各軍の副参謀総長クラスが2月7日に下院軍事委員会に於いてさらに翌日は上院軍事委員会で即応体制を陳述する。
- 各自はすぐに必要な予算を訴えるものと思われるが、長期的な視点に立った予算手当は二の次となるだろう。議会が2017年度予算を通過させてもすぐに使えるわけではないためだ。
- 「予算が入れば、まず現場に投入したい」と海軍の上位消息筋が2月2日に述べている。「艦艇補修整備、航空機補給処、予備部品補修部品であり、基地を整備し家族含む関係者が赴任できるようにしたい」
- 総計で相当の額になる。「予算がつけば4月に60億から80億ドルの執行ができる。契約が成立すれば直ちに効果が出る」(同上消息筋)
- 予算全体額が増えても海軍上層部に言わせれば緊急に必要なのは補修整備資金であり、新型艦の建造ではないという。2017年度の予算手当が付いていない事業リストが海軍から議会に1月はじめに送られており、保守整備費用が最重要だと強調すべくさらに内容を改訂中だ。
- 「優先するのは即応体制であることは明白で、航空機を飛行させ、艦艇潜水艦を送り出し、乗員を訓練し備えさせること」と海軍関係者は説明。「新規事業は考えてない」
- 海軍の航空運用がここまで切迫しているのは歴然たる事実だ。海軍によれば飛行不能な機材は全体の53パーセントおよそ1,700機とする。通常は三分の一から四分の一の機材は定期整備で使用から外されているものだ。だが53%と言うのは通常の二倍の規模だ。
- 打撃戦闘機の状況はもっと緊急度が高く影響も大きい。もともと艦隊の戦闘航空力の投射すで主役だからだ。F/A-18の62パーセントが飛行できず、27%は大規模整備中で、35%は整備あるいは部品を待っている状態だと海軍はまとめている。
- 訓練や飛行時間が削減されて海軍飛行要員は最小限の飛行資格維持時間の確保にも苦労している。要員のつなぎとめも問題になってきた。2013年当時は飛行士官の17パーセントが幹部任務につくのを拒否している。これが2016年には29パーセントに急増。
- 予算不足のため隊員は新任地に赴任するのにも苦労している。2016年中の引っ越し回数が15千件も減っているという。
- 予算継続決議により艦艇14隻の供用が2018年に先送りされ、うちわけは潜水艦1、巡洋艦1、駆逐艦6、揚陸ドック型艦2、揚陸輸送ドック艦1、掃海艇3だという。2016年度に調達できなかった案件の購入は先送り不可となる。CH-53Kヘリコプター、共用空対地ミサイル、長距離対艦ミサイル、沿海戦闘艦用の兵装モジュールだ。さらに2017年には前年度より調達規模を拡大する予定だった案件が実施できなくなっている。
- 2017年度と言ってもあと5ヶ月しか残っていない中で、予算が4月末に議会を通過したとしても、継続予算決議が一年にわたり適用される可能性がすでに話題に上がっている。だが海軍上層部はこの話題に渋い顔だ。「CRが長期になっても状況は好転しない」という。■
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