大統領選挙というルールあるゲームでの勝者を認めない、というのがよくわかりません。自分が選んだ候補じゃないから認めたくないというのでは話になりません。移行期間が終わり、すでに新政権が始まっていますが、初めての21世紀型大統領に期待できることと失望させられることが混じり合うのではないでしょうか。ひょっとするとレーガン時代が再来するのかもしれません。ここに掲載したのは大西洋協議会という超エリートの観点ですが、現実を受け入れてよく見ようとしていますね。さすがです。
Opinion: Under ‘High-Beta’ Trump Presidency, Anything Could Happen
ドナルド・トランプ政権が国防政策でどんな前兆を見せてくるだろうか。国防予算は増額されるのか。軍の規模、構造、性質を変えるのか。重要な調達事業を取り消すのだろうか。今のところは「そうなるかも」としか言えない。トランプの選挙運動では国防については注意深く政策を検討した効果が出ており、政権移行中も予測のブレを示す兆候はほとんど皆無だった。
新政権から出てくる可能性はきわめて幅広く、予測を試みるのは無謀と言わざるをえない。よくトランプのペンタゴン変革の方向性を聞かれるが、著者は毎回ため息をついて「何が起こっても不思議はない」と答えている。あるいは機関投資家から「トランプの行っていることは『ハイ・ベータ』(ベータとは株式の変動を示す用語で分子生物学や高血圧症でも使う言い得て妙の表現だ)」との発言も耳に入ってくる。
ここまで不確実性がある中で著者は予測を断念し、変化の兆しとなる現象を直視することとした。以下は新政権の方向性を図る意味で著者が今後フォローする指標というべきものである。
国防支出: トランプ政権の提言は総額方式(基本国防予算に『海外緊急作戦(OCO)予算を加える)でオバマ政権と比較するとどうなるのか。2017年分としてオバマ政権は総額5,890億ドル(基本5,240億ドル+OCO650億ドル)を要求した。2018年は基本5,570億ドルと見られ、ここに著者は620億ドルがOCOとなると試算して総額は6,190億ドルに膨れ上がると見ている。新政権は国防支出案を公表すると前政権が残した総額1.208兆ドルの2017年度から2018年度にかけての合計予算が変わるはずでその中で新政権の国防支出の方向性が反映されるだろう。
国防体制: アフガニスタンの米軍部隊はどうなるだろうか。昨夏にオバマ大統領はアフガニスタン駐留部隊を8,400名に再設定した。これは同年で二回目のペンタゴンによるホワイトハウスへの要請でアフガニスタン撤兵のペースを落とすことになったものであり、当初官邸側は「大使館警備」程度の規模にしたいと希望していた。自由の前哨作戦はそれでも依然として米軍の海外展開で最大規模の緊急作戦である。トランプ政権がアフがニスタンにどこまで介入する意図があるかで展開部隊の規模も変わってくる。アフガニスタンでは米軍は約6千名のNATO部隊と共同作戦を展開していることもトランプのアフガニスタンでの決定に影響するだろう。
調達事業: F-35Aで機体単価が低率初期生産ロット10(2018年から90機生産)の交渉でどうなるのだろうか。トランプはツィッターでボーイングとロッキード・マーティンを非難したことが調達方針よりは国防支出を巡る戦いに影響を及ぼしそうだ。トランプは価格を真正面から取り上げ調達事業の変化の争点にした。F-35事業推進室長のクリストファー・ボグデン中将は昨年12月に「ロット10では6%ないし7%は機体価格が下がるのではないか」と発言しロット9と比較していた。つまりロット10では一機95百万ドルを下回る(あるいは上回る)ことになり、そうなれば新大統領の姿勢でペンタゴンの調達事業も本当に変わるきっかけになるかもしれない。
その他まだわからないこともある。ドナルド・トランプは政治駆け引きの才能があるが、公共政策分野は帰納法思考では対処出来ないほど広範囲に及ぶのであり、国防政策の内側にどれだけ近づけるかで生計を立てる筆者含むわれわれとしては風評と事実を区別するためにも意味のある道標がほしいところだ。
Steven Grundman is the principal of Grundman Advisory and Lund Fellow at the Atlantic Council. His views are not necessarily those of Aviation Week.
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