日曜日なので久しぶりにウォーゲームのレビューです。当方は食指を動かされないのですが陸戦がお好きな方にはどうでしょうか。
What If Nazi Germany Had Sacked Moscow during World War II?
December 17, 2016
75年たった今も興味をそそる仮定がある。ドイツ軍が1941年12月にモスクワを占領していたらどうなっていたか。ソ連は崩壊したか、あるいは継戦していただろうか。ロシア軍事力が弱体化すればドイツは兵力を欧州西部へ移動させ英米軍を一掃できただろうか。
- ドイツ軍先遣部隊がモスクワまであと10マイル地点にまで到達したのは事実で、クレムリンも望見できただろう。モスクワが陥落していれば第二次大戦はドイツが勝利したのと同様だったろうが、最低でも第三帝国の敗北条件は確実に下がっていただろう。
- Drive on Moscowはタイフーン作戦の呼称のドイツ攻勢をコンピューターゲームにしたもので、iPadとPC双方で作動する。プレイヤーは2人でドイツ軍、ソ連軍を指揮する。
- マップは南部はブリヤンスクから東部カリーニン、西部クルスクまで、モスクワが北部の端という規模だ。地形は攻守双方が有利に利用でき、戦車隊には平地が有利に、森林部や都市はソ連歩兵隊に格好の陣地となる。さらに河川が攻撃側に障害となる
- ドイツ側がマップ上の全部隊に命令を与えることでゲームは始まる。歩兵部隊50師団に機甲師団、機械化歩兵師団が加わる。ソ連側は兵力が少ない状態で始まるが、増援部隊が次第に加わり、シベリアから移動してくる冬季訓練や装備を受けた部隊も含む。各部隊には兵力として戦闘中に何回の攻撃ができるか、どこまでの損耗に耐えられるかが示される。
- Drive on Moscowの仕組みは単純かつ抽象的だ。プレイヤーはクリックして一回で一つの地域を選択しマウスあるいは画面を触り指定する。これで活動を開始した部隊は移動あるいは戦闘を実施する。移動は歩兵部隊は一単位、機械化部隊は道路あるいは鉄道で二単位でドイツ部隊は輸送路に沿って移動することになる。
- 敵部隊がいる場所に入ると戦闘が始まる。戦闘は短時間で終わるが微妙だ。各ユニットは兵力ポイントに応じた発砲をおこなう。歩兵部隊の命中精度は3割、装甲部隊は4割だ。各部隊は攻撃を敢行するとボーナスが貰える。防御地形や都市部は被弾効果を下げるが被弾すると兵力ポイントが下がり、退却を迫られることもある。
- 装甲部隊は攻撃力に加えて敵陣突破もしやすい。機械化部隊が防御側を一掃すれば、移動し攻撃をくりかえす。火力に加えて電撃攻撃すればボーナスとして火力、攻撃力が加わり戦車部隊はさらに強力になる。
- 兵力ポイントがなくなるとそのユニットは消滅する。ドイツ機械化部隊のポイントは1から3がほとんどだが、ドイツ・ソ連の歩兵隊は5ないし6ポイントある。戦車は打撃力はあるが防御は弱い。戦闘を続けるとドイツ機械化部隊の先鋒は戦力を消耗していく。
- 補給は厳しい。敵支配地に周囲を包囲されると補給はなくなり、ユニットは移動できず援軍とつながらないと攻撃できなくなる。補給を絶たれた部隊は兵力ポイントが減り最終的に消滅する。しかし、ドイツ軍には空からの補給が初期には可能で、孤立した部隊を救援できる。
- Drive on Moscowでは軍事作戦の要となる時間要素をうまく再現している。ターンは一回で72時間から120時間を再現し、プレイヤーは最終的に全部隊を投入する。だがプレイヤーが一度部隊を投入すると最大18時間が消費されたことになり、悪天候や泥道ではもっと長く時間がたつ。この時間経過が終わるとターンが終了し、次のターンへ移る。ということはゲーム初期の好天候下ではドイツ軍には各部隊を投入する時間が十分あるが、悪天候になると移動あるいは交戦可能な部隊は急減少することになる。
- バルバロッサ作戦は1941年6月に唐突に始まり、ドイツ軍はソ連部隊を壊滅させ5ヶ月で5百万人の死者が発生した。1941年12月にドイツ軍が補給切れでモスクワ寸前で作戦は終わっているが、補給品は馬車で運んでおり迅速に前線に搬送されなかった。ソ連の鉄道線が寸断され、自動車輸送の能力不足があった。Drive on Moscowでドイツ機械化部隊の一部が各ターンで動けなくなるのは燃料不足を反映している。さらにソ連には増援部隊が各ターンで加わるが、ドイツの増援は限定的で特に重要な機械化部隊でこの傾向が強い。
- 補給不足に加え、ロシアの冬が近づいてくる。ゲーム開始時の天候は良好だが10月になると泥がふえ、機械化部隊含み移動が遅くなり突破作戦ができなくなる。11月には泥が凍結し、河川移動ではドイツを助ける。12月は降雪でドイツは動きが落ちるがソ連には影響がない。また12月には強力なシベリア部隊が加わるがドイツの最前線部隊は兵力補給品ともに不足気味だ。
- Drive on Moscowは実際のタイフーン作戦同様に時間との戦いだ。ドイツ軍は強力だがその威力は時間経過とともに弱体化する。ドイツは悪天候の前にモスクワを占拠する必要があり、補給品増援部隊で不足が発生してからでは間に合わないし、ソ連の増援部隊が大兵力でやってくる。モスクワを押さえる代わりにオレルやカリーニンと言った都市を複数占領してゲームに勝利することが可能だ。
- ソ連はゲーム開始時こそ劣勢で、組織が混乱し兵力配置がまずいが、持ちこたえれればドイツ軍の進撃はいずれ止まる。赤軍が反攻作戦を12月から1月にシベリアから移動させた戦車歩兵部隊で実施し、消耗したドイツ軍を一掃する。
- Drive on Moscowはコンピュータ相手で一人でもプレイできるが、インターネット経由で人間同士の対戦も可能だ。双方が忍耐力の限界を試される緊張の経験となる。
- 歴史は書き換えられるのか。Drive on Moscowで答えがわかるだろう。
Michael Peck is a frequent contributor to the National Interest and is a regular writer for many outlets like WarIsBoring. He can be found on Twitter and Facebook.
Image: A German Panzer V in Romania. Wikimedia Commons / Bundesarchiv, Bild 101I-244-2321-34 / Waidelich / CC-BY-SA 3.0
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