いくら機体設計が優秀と言っても、機齡60年になる2040年代までF-15の現行機材が何機稼働可能なのでしょうか。であれば、F-35調達を削ってでもボーイングの既存生産ラインを稼働させて新造機を追加するほうがいいのではないでしょうか。ただ2040年代にドッグファイトそのものが存在するのかわかりませんね。
Decision Time: Half of US F-15s Need Overhauls — Or Retirement
- BY MARCUS WEISGERBER
WESTFIELD, Massachusetts — F-15Cイーグルの機体重量は16トンほどだが、推力47千ポンドで離陸するとまるで16オンスのように感じる。
- わずか数秒で時速100マイルに達し、さらにその倍で地面から飛び上がるが、ジェイ・「ファット」・タルバート少佐は水平飛行のまま高度50フィートで加速する。「Gが来ますよ」と少佐は後席の筆者に警告をだして操縦桿を引いた。
- アフターバーナー2つから雷鳴のような響きがニューイングランド上空に広がると機体は垂直飛行を開始する。高度計がストップウォッチのように回るが、タルバート少佐が6,000で止めて機体は左にロールし横滑りしながら水平になった。その後、右にロールし訓練空域に向かい、基本設計が1970年代で1985年製造だが今でも空戦能力があると実証する。
- 数百億ドルを投じてF-15のC型D型を近代化改装し電子装備を向上させるのが良いのか同じ予算なら新型機に使うのがいいのかで米空軍上層部が検討を迫られている。
- 「ミッションがなくなることはない」とピート・グリーン大佐、州軍第104戦闘機隊の副司令は語った。「航空優勢戦闘機の必要性は不変だ」
- 米空軍はF-15のC型D型をあと25年は稼働するとしている。(より新型のF-15Eストライクイーグル派生型はもっと長く供用の予定)だが想定以上の機数を退役させ整備費用を節約した分で新型機を調達するとしている。空軍では空対空戦しかできないF-15を今後どう活用するか検討が始まっている。
- 選択肢として第四世代のF-15を改良すること、第五世代のF-35ライトニングIIの調達を増やす、あるいは未来の軍用機、長距離侵攻型制空機材 Penetrating Counterairに予算をつぎ込む、がある。
- 「予定通りならF-15は2042年ごろまで供用する」とジョン・「ヒード」・マクローリンが航空戦闘軍団でF-15関連を担当する責任者としてラングレー空軍基地で語っている。マクローリンは以前はイーグルのパイロットで現在は同機の改修計画を統括している。
- イーグルはF-22ラプターとチームを組み、航空優勢戦闘機として活用する構想だ。
- 「F-15はF-22と協同運用します。今後の空軍、州軍航空隊双方でこの運用が中心となるでしょう」と語るのはスティーブ・パーカー(ボーイングF-15担当副社長)だ。ボーイングは同機の製造元として改修活動を実施中だ。「同機は2040年代まで航空優勢能力の中心となります」
新型装備で高まる威力
- 1970年代からF-15C/Dは最高の戦闘機と言われてきたが同機を上回るドッグファイト性能がF-22で実現している。
- 第104飛行隊のイーグル各機は1980年代製で搭乗員の大部分が生まれる前に製造されている。
- コックピット内部ではF-15Cはアナログ時代の産物だと一目瞭然だ。大型カラーのタッチスクリーンではなく丸型ダイヤル式計器各種が速度、燃料、方向その他飛行データを表示している。
- 一部ながらハイテク装備も導入している。州軍のパイロットはスナイパー標的探知ポッドを運用している。これは対地攻撃機でよく使われており、数マイル先から対象の機体番号が識別でき、米本土での迎撃任務に有益だと語るのはトラビス・「ビースト」・ヘイゼルタインでフロリダ州ジャクソンビルにある州軍空軍予備役司令部でF-15テストを担当している。
- だがイーグル運用を続けることには課題もある。各部品を製造したメーカー多数がもはや存在しておらず、きれいな外観とは裏腹に内部機構には細心の注意が必要だ。
- タルバート少佐のフライト二日前には外気温が華氏60度から30度まで急に下がり機体が始動できなくなった。また少佐がニューハンプシャー上空の制限空域に移動すると、機体が急に右に傾き慌ててコース修正が必要となった。
- 飛行可能にしておくことは高費用になる。三十有余年にわたり高性能飛行をしたため機材にしわよせがきている。F-15の機体を保持するためには新造の鋼鉄製縦通材が必要だ。イーグルで9年前にミズーリ上空で機体が分解する事故があったのはこの縦通材が折れたためだ。パイロットは生還したが射出脱出時に負傷を負った。
- また主翼も新しくする必要がある。この大規模改修は2020年代中頃を目処に実施する。
- 新型電子装備品では主コンピュータを交換しロシアや中国の地対空ミサイルや新型機に対抗する。
- 「現在の処理能力はコモドア128(旧型家庭向けパソコン)並だ」とマクローリンは語る。「戦闘能力を未だにそれに頼っているのは驚くしかない」ボーイングのパーカーによれば新型ミッションコンピュータは従来より50倍強力だと言う。
- その他にもイーグル・パッシブ・アクティブ警告システムがあり、デジタルの電子戦装備だ。「極めて重要な装備でF-15は厳しい空戦環境でも残存性を高められる」(パーカー)
- だがこの新型装備は60億ドルかかり、搭載はまだ10年先となり、何らかのつなぎが必要だとヘイゼルタインは述べた。
- その他の改修に長波赤外線捜索追尾装備があり、敵脅威を長距離から探知できる。レーダーが妨害されても敵機に照準を合わせる別の手段となる。
- 「この装備はなんとしてもほしい。第四世代機の性能を画期的に変えて、第五世代機にも対抗できるようになるから」とマクローリンは述べる。
- 旧式モノクロ画面やアナログ計器は新型カラー画面に取り替える。
- 「電子戦能力の進歩とミッションコンピュータ交換、ミサイル搭載能力の向上で今後20年以上に渡り相当の威力を保持できます」(パーカー)
- その他にも極秘の改良案が検討されている。「たえず敵より一歩先の性能を維持しておきたい」(マクローリン)
- 推定費用は120億ドルで工期20年と航空戦闘軍団は見ている。ここにはコンフォーマル燃料タンク他の向上策は含まれていない。
- 「イーグルの航続距離は伸ばす必要があります」とパーカーは述べる。「現地上空で待機して相当の兵装を積んだままの想定が米必要になると空軍、州軍は見ています」
- コンフォーマルタンク追加で飛行距離は増え、空中給油の回数が減り、空対空ミサイルを追加搭載できる。
- 「ステルス性は劣りますが大量の兵装をぶら下げて飛べます」とトム・「スリング」・ブレイデン大佐(104飛行隊の作戦指揮官)は述べる。
ボーイング提唱の「F-15 2040C」仕様の構想図ではミサイル16発を搭載している。(Boeing)
機数が足りない
- これまで米空軍が調達したF-15C/D型は400機を超えるが、そのうち現在稼働中なのは単座C型が212機、複座D型が23機のみだ。D型は訓練用途に運用されている。半数以上が州軍の5個航空団に配備され、残りは日本と英国に駐留する第一線飛行隊にある。
- ここマサチューセッツでは18機のF-15が警戒態勢を保ち、必要なら数分以内でロシア爆撃機の接近、ハイジャック事件、小型セスナ機が無線応答しない場合等に対応する。州軍五個航空団は高度警戒態勢にあり、空対空ミサイルを搭載している。各機は24時間体制を365日維持している。
- だが航空団配備の機数がこれだけ少ないとF-15の本来任務であるドッグファイトの訓練が十分できない。
- 「中心任務の四機編隊F-15でもっと多くの敵に対抗させる飛行訓練が難しい」とブレイデンは説明する。「全く新しい方法で四機訓練案を作り直したいが実際には警戒待機中の機体をつかっているのが現状だ」
- 空軍がもっと多くの機材を運用していた頃は機材を借用して別の部隊とチームを組むのは簡単だった。だが機材老朽化と予算不足で空軍は機数削減に走っているのが現状だ。F-16ファルコンをこれまでドッグファイトの相手機に使ってきたが、現在は対地攻撃訓練に軸足を移しイラクやアフガニスタンを想定している。
- 州軍航空隊を統括するスコット・ライス中将は104飛行隊司令を務めた経験があり、飛行隊の機数を増やそうとしておr,F-15の代わりにF-35を配備する方向になりそうだ。
- 「予算不足・人員不足の中で飛行隊の追加は機運が実っていませんが、既存飛行隊の拡充は可能なはず」「3機、6機、9機と予備機材を増やせば人員はそんなに増やさずに稼働機を増やせるはず」
- F-15パイロットは現地展開を通じて技能を磨こうとしている。104飛行隊は今年はじめの六ヶ月をヨーロッパで過ごし、アトランティック・リゾルブ作戦の一環でウクライナに手を出したロシアに対抗した。同隊はNATOの哨戒飛行ミッションとしてアイスランドに展開し、オランダ、エストニア、ブルガリアでの合同訓練に参加した。
- 「制空任務の訓練機会となります」とグリーンも今後の配備を期待している。
第131戦闘飛行隊(マサチューセッツ州バーンズ州軍基地)のF-15Cイーグルと第194飛行隊(フレズノ州軍基地所属 )がレッドフラッグ16-1演習で空中給油の順番を待っている。2016年2月撮影。 (U.S. Air Force)
運用は多忙を極める
- だが104飛行隊がヨーロッパに簡単に行けたわけではない。144隊(カリフォーニア州フレズノ基地)と調整し必要機数を確保している。
- 「パイロット、整備陣は残しておく必要があった。部品等も同様だ」とブレイデンは104隊作戦主任として語った。部隊派遣で改めてロシアがウクライナを侵攻したことで東ヨーロッパでの脅威が痛感された。
- 「エストニアから離陸するとロシアの地対空ミサイル装備が近隣のカリニングラードにあることがわかる」
- また同隊パイロットは国境の反対側を飛ぶロシア機を度々目視している。
- 「平時であることがあらためてありがたかった」とブレイデンは述べている。
- 104隊がブルガリアに到着すると、同国空軍のソ連製MiG-29飛行隊がスクランブル態勢にあるのが目に入った。
- 「F-15が到着したその日にブルガリア空軍はスクランブルを三回行っており、滑走路に常時一機が待機していました」とブレイデンは語る。「ロシアが国境線をしきりに偵察していたためです」
- 米軍機はロシア機との接近遭遇や緊急事態は経験しなかった。
- 「まあ、暴走族がヨーロッパ遠征したようなものでしたが、なにごともなかったわけです」とブレイデンは振り返る。
- ブルガリアでは同戦闘機隊はアメリカ式の待機態勢をとっていた。「戦術レベルですべて一箇所にまとめていました」(ブレイデン)
- ライス中将は今後のヨーロッパ派遣で州軍飛行隊が「大きな役割を果たす」と見ている。
- ニューハンプシャー上空に戻ったタルバート少佐とウィングマンはヨーロッパへの派遣が再びあると覚悟している。■
コメント
コメントを投稿
コメントをどうぞ。