スキップしてメイン コンテンツに移動

歴史に残らなかった機体④ ボーイングX-32


本当にダサい外観の機体ですが、評価基準が違っていれば採用になっていたかもしれない機体です。F-35だってどっこいどっこいですが、採用されていればもう少しはスムーズに配備されていたでしょうか。それともやはり技術開発で手こずり同盟各国への販売で開発費のもとをとる商戦が繰り広げられていたのでしょうか。誰にもわかりません。ボーイングには黒歴史というところでしょうか。

We go to war so you don’t have to

A Boeing X-32 demonstrator. JSF Program Office photo

A Goofy-Looking Plane Could Have Replaced the F-35 Stealth Fighter

Boeing’s X-32 was … hideous

by ROBERT FARLEY
国防総省にはF-35以外の選択肢もあった。1990年代にボーイング、ロッキード・マーティンが戦闘機の大型商談をめぐり争い、空軍、海軍、海兵隊、その他同盟諸国での採用を競った。ボーイング案がX-32、ロッキード案がX-35で、ペンタゴンはF-35を採択した。
別の結果になっていたどうなっていただろうか。ボーイング案のみ、あるいは両機種を採用していたら。
開発の経緯
冷戦終結でペンタゴンは共用戦闘機構想で運用部隊の維持費用含み事業経費切り詰めを図った。
三軍は運用中の第四世代機の後継機種を求めており、F-15、F-16が空軍で、F/A-18およびAV-8Bが海軍、海兵隊で供用中だった。
そのため新型戦闘機には通常離着陸型、STOVL型の双方が必要となった。
DoDの歴史を見ても各軍共通仕様の機体開発にはろくな成果があがっていないが、今回は各軍横断での「共用性」に高度生産技術を組み合わせて慎重に調達活動を展開すれば意味のある機体を各軍に供給できるはずとの期待が高まった。
関係者全員が競作の勝者が各国空軍向けの需要も取り込めることを理解していた。端的に言えば、冷戦後の国防産業で最大規模の商談となるはずだった。
ボーイング、ロッキード・マーテインが実証機の製造契約を受けた。
A Boeing X-32A demonstrator. JSF Program Office photo

性能

同じ諸元から生まれたX-32とF-35は性能面で類似していた。コストを予定通りとするべくボーイングはX-32をデルタ翼を中心に設計し三仕様を実現しようとした。
X-32にはF-35のシャフト式ターボファン揚力はなく、かわりにAV-8ハリヤーと同様に推力方向変更方式を採用した。X-32よりF-35は高度な技術内容だったが、X-32の方が簡易な構造だった。
X-32は最高速度マッハ1.6を想定し、AMRAAM6発あるいはミサイル二発と爆弾二個を機内兵装庫で運ぶ設計だった。
航続距離とステルス性能はF-35と大差なく、F-35同様に高性能電子装備を機内に搭載できた。
A Boeing X-32 demonstrator. JSF Program Office photo

選定

X-32が実に優雅さを欠く外観であったのは確かだ。A-7コルセアを太らせた奇形マナティーのようだった。

F-35とて美観では決してほめられたものでなく、F-22の危険なほどスッキリした外観とは対照的だ。だがX-32と比較すればF-35の方がよほどマシに見える。でもこの点は問題ではない。
ボーイングの戦略方針が商機を逃す結果になったといえる。三軍の仕様を満足させられるところを一機で見せる実証機を製造する代わりに二機を製造し、内一機は通常型超音速機として、もう一機を垂直離着陸機としたのだ。ロッキードの実証機は単一機で両方の機能を示した。
またペンタゴンはF-35のターボリフトの先進性を好んだ。ロッキードはF-22で経験値を積んでおり、別のステルス戦闘機大型案件でも真価を発揮すると期待させるものがあった。
A Boeing X-32 demonstrator during flight tests alongside an F/A-18 Hornet. JSF Program Office photo

結論

2001年にF-35が正式にペンタゴン史上最大規模の調達事業の対象となった。だが同時に最大規模のトラブルにも遭遇する。
X-32はF-35に殆どの分野で劣る評価だったがX-32は十年以上にわたるテストや再設計工程は発生させていない。コストの大幅超過も発生させていない。F-16Aにドッグファイトで勝てなかったと各紙に書き立てられることもなかった。
あの場面で別の結果になっていたら、と言うのは機体競作の結果を回想する際の常であり、X-32がF-35同様に困難な課題に直面していてなかったか断言できない。現代の戦闘機の高度な内容を考えると、「やはり直面してただろう」と言わざるをえない。
だが後知恵といわれようと海兵隊にはVSTOL機の方が理にかなっていたのではないか。これが実現していれば、「共用」事業の一番困難な部分が解決していたはずだ。つまり重要部分を三軍の相当異なる仕様で共通化することが不要になっていたはずだ。
また防衛大手企業各社で経済恩恵がより広く享受できていたはずだ。今ペンタゴンはこの点を上位の優先事項と捕らえている。
もちろんF-35のSTOVLの実績とX-32は当時はまだ提案段階であったことを考えると、この決断は2001年ではなく、1993年にしておくべきだったのだ。■


コメント

  1. x-32も現代の技術で機体構造を再設計とかCMC使用範囲の(1990年代までの既存技術レベルからすると)大幅拡大で最適化・高性能化は見込めると思います。
    まぁ、それを言い出すとF-15やF-22などにも同じ事が言えるわけですが。
    まぁエンジンだけでもCMCを多用した物に換装するだけでも戦闘機としての能力向上は達成出来ますが、拡張性を考慮すると一概に言えないのかもしれませんね。

    返信削除

コメントを投稿

コメントをどうぞ。

このブログの人気の投稿

フィリピンのFA-50がF-22を「撃墜」した最近の米比演習での真実はこうだ......

  Wikimedia Commons フィリピン空軍のかわいい軽戦闘機FA-50が米空軍の獰猛なF-22を演習で仕留めたとの報道が出ていますが、真相は....The Nationa lnterest記事からのご紹介です。 フ ィリピン空軍(PAF)は、7月に行われた空戦演習で、FA-50軽攻撃機の1機が、アメリカの制空権チャンピオンF-22ラプターを想定外のキルに成功したと発表した。この発表は、FA-50のガンカメラが捉えた画像とともに発表されたもので、パイロットが赤外線誘導(ヒートシーキング)ミサイルでステルス機をロックオンした際、フィリピンの戦闘機の照準にラプターが映っていた。  「この事件は、軍事史に重大な展開をもたらした。フィリピンの主力戦闘機は、ルソン島上空でコープ・サンダー演習の一環として行われた模擬空戦で、第5世代戦闘機に勝利した」とPAFの声明には書かれている。  しかし、この快挙は確かにフィリピン空軍にとって祝福に値するが、画像をよく見ると、3800万ドルの練習機から攻撃機になった航空機が、なぜ3億5000万ドル以上のラプターに勝つことができたのか、多くの価値あるヒントが得られる。  そして、ここでネタバレがある: この種の演習ではよくあることだが、F-22は片翼を後ろ手に縛って飛んでいるように見える。  フィリピンとアメリカの戦闘機の模擬交戦は、7月2日から21日にかけてフィリピンで行われた一連の二国間戦闘機訓練と専門家交流であるコープ・サンダー23-2で行われた。米空軍は、F-16とF-22を中心とする15機の航空機と500人以上の航空兵を派遣し、地上攻撃型のFA-50、A-29、AS-211を運用する同数のフィリピン空軍要員とともに訓練に参加した。  しかし、約3週間にわたって何十機もの航空機が何十回もの出撃をしたにもかかわらず、この訓練で世界の注目を集めたのは、空軍のパイロットが無線で「フォックス2!右旋回でラプターを1機撃墜!」と伝え得てきたときだった。 戦闘訓練はフェアな戦いではない コープサンダー23-2のような戦闘演習は、それを報道するメディアによってしばしば誤解される(誤解は報道機関の偏った姿勢に起因することもある)。たとえば、航空機同士の交戦は、あたかも2機のジェット機が単に空中で無差別級ケージマッチを行ったかのように、脈絡な

主張:台湾の軍事力、防衛体制、情報収集能力にはこれだけの欠陥がある。近代化が遅れている台湾軍が共同運営能力を獲得するまで危険な状態が続く。

iStock illustration 台 湾の防衛力強化は、米国にとり急務だ。台湾軍の訓練教官として台湾に配備した人員を、現状の 30 人から 4 倍の 100 人から 200 人にする計画が伝えられている。 議会は 12 月に 2023 年国防権限法を可決し、台湾の兵器調達のために、 5 年間で 100 億ドルの融資と助成を予算化した。 さらに、下院中国特別委員会の委員長であるマイク・ギャラガー議員(ウィスコンシン州選出)は最近、中国の侵略を抑止するため「台湾を徹底的に武装させる」と宣言している。マクマスター前国家安全保障顧問は、台湾への武器供与の加速を推進している。ワシントンでは、台湾の自衛を支援することが急務であることが明らかである。 台湾軍の近代化は大幅に遅れている こうした約束にもかかわらず、台湾は近代的な戦闘力への転換を図るため必要な軍事改革に難色を示したままである。外部からの支援が効果的であるためには、プロ意識、敗北主義、中国のナショナリズムという 3 つの無形でどこにでもある問題に取り組まなければならない。 サミュエル・ P ・ハンチントンは著書『兵士と国家』で、軍のプロフェッショナリズムの定義として、専門性、責任、企業性という 3 つを挙げている。責任感は、 " 暴力の管理はするが、暴力行為そのものはしない " という「特異な技能」と関連する。 台湾の軍事的プロフェッショナリズムを専門知識と技能で低評価になる。例えば、国防部は武器調達の前にシステム分析と運用要件を要求しているが、そのプロセスは決定後の場当たり的なチェックマークにすぎない。その結果、参謀本部は実務の本質を理解し、技術を習得することができない。 国防部には、政策と訓練カリキュラムの更新が切実に必要だ。蔡英文総統の国防大臣数名が、時代遅れの銃剣突撃訓練の復活を提唱した。この技術は 200 年前のフランスで生まれたもので、スタンドオフ精密弾の時代には、効果はごくわずかでしかないだろう。一方、台湾が新たに入手した武器の多くは武器庫や倉庫に保管されたままで、兵士の訓練用具がほとんどない。 かろうじて徴兵期間を 4 カ月から 1 年に延長することは、適切と思われるが、同省は、兵士に直立歩行訓練を義務付けるというわけのわからない計画を立てている。直立歩行は 18 世紀にプロ