自動車で自動運転(自律運転ではありません)が意外に早く実現しそうで、航空機へも波及して装備庁が考えるロードマップは加速化されるのではないでしょうか。ただし、機体やエンジンの技術開発が追いつかないとアンバランスな機体になってしまいますから結局2030年代まで待つ必要があるのかもしれません。
Unmanned Wingmen For Japan’s Piloted Force Planned For 2030s
Japan lays out a plan for pilotless combat aircraft to help fighters
無人ウィングマン構想
- 人工知能には航空戦闘での機体操縦は攻撃任務より難易度が高い。このため自律飛行可能な軍用機開発を目指す各国は対地攻撃任務から着手するのが普通だ。
- だが日本人にとって無人機による攻撃はあまりにも乱暴に聞こえるので、同国の防衛企画部門は一気に空対空の自動化を提案しているのだろう。この課題を実現すべく、有人戦闘機とともに飛行し、支援する高性能無人機の提案が浮上している。パイロットの指示を前提とする。機体は戦闘支援無人機またの名を無人ウィングマンと呼ばれ、まずセンサー搭載機材として前方を飛行し、その後攻撃任務を実施するはずだ。
- 機体はファミリー構成で2030年代に登場するとの技術ロードマップを防衛省の外局である防衛装備庁(ATLA)が発表した。防衛省は以前にも無人ウィングマン構想を検討していたが、今回はさらに前進させている。ロードマップには弾道ミサイル防衛用の機材も2030年代に供用開始するとある。
- 構想では無人機を五種類に分類し、まず二型式が最も簡単な構造で小型で運搬可能な見通し線外の通信用で日本はすでに供用中だ。三番目はまだ完成していないが、衛星通信の中継用の機材で米国にはジェネラルアトミックスMQ-1、MQ-9やノースロップ・グラマンQ-4の各種がこの任務を実施している。その後に控えるのが無人戦闘航空機で最後に長時間飛行用の軽量機や太陽光動力機がある。
- ATLAはこの内第三種と第四種に資源を集中配分するとし、優先順位がミサイル防衛と航空戦闘にあることがわかる。
- 同庁はこのうちBMD用途の無人機が武装するか明らかにしていない。むしろセンサー搭載機として2007年にテスト済みのエアボスシステムから赤外線探知機を派生させるようだ。ATLA作成のロードマップでは高高度長時間運用の機材に典型的な機体構造を示しており、極端に細い主翼とプロペラ推進式双発構造のようで、ボーイングが1980年代末に開発したコンドルに類似している。センサーは機首上部のタレットに搭載している。
- 防衛省技術研究本部(TRDI)が無人ウィングマン構想を検討開始してから少なくとも6年経過している。同本部はその後、2040年代に供用開始で、提国産新型戦闘機F-3の性能向上型と一緒に運用するとしていた。F-3初期型は2030年ごろに供用開始の見込みだ。
- ATLAは「高度自律飛行技術による無人ウィングマンがF-3で利用可能となるのは15年から20年後」と見ているが、2035年より前には実用化にならないだろう。と言うのは同庁が技術実証を2029年から2033年になるとの見込みを出しているからだ。F-3に無人ウィングマンとの共同運用に向けた改修が必要となる。
- 無人ウィングマンの最初の型式はセンサー機だろう。ATLA発表の概念図では戦闘機の前方を飛行し、データリンクを確立するとしている。この実現は15年から20年後だろう。
防衛省が想定する無人ウィングマン編隊は敵ミサイルをおびき出し、敵標的を探知する Source: Japanese Defense Ministry
- 20年以上先に二番目の機種が同じ機体とエンジンを共有し武装運用可能な機体として登場するだろう。また20年後にはセンサー搭載型は敵ミサイルを吸収するスポンジの役目を果たすはずだ。センサー搭載型のウィングマンは敵ミサイルの価格を上回るので、敵ミサイルの命中を受けることは受け入れがたい。ATLAはスポンジ任務で敵攻撃を不調に終わらす構想で機体操縦制御とともに電磁対抗措置を活用する。
- ATLAは無人ウィングマンの構想図を二通り公表している。一つは広胴で主翼が胴体と一体化されており、45度から50度の後退角がつく。もう一つの構想図は全長が細長く、後退角は60度と高速機のようだが、機首近くについたポッドで抗力が大きく、ステルス性は乏しいようだ。レーダー搭載ポッドだろう。これは明らかにセンサー搭載専用機材だ。
- これに対し無人ウィングマンはF-3パイロットが制御しつつ、単独戦術行動が可能となるだろう。パイロットはおそらく一般的な指示で探査あるいは攻撃すべき場所を与えると無人機が自動的に最適行動をとるのだろう。また有人機では不可能な仕事もこなすと防衛装備庁は説明しており、人体が耐えられない高G操縦で敵ミサイル攻撃に対応できる。
- 探査から攻撃、さらに回避行動まで取らせるのは日本国外での無人機の発展と同様で人工知能技術の向上で飛行行動の選択肢の広がりを期待しているのだろう。
弾道ミサイル探知用の無人機は2030年代に実用化されるとみられる。 Source: Japanese Defense Ministry
- Saabは選択式に有人操縦となるグリペンE/Fが現在の高度維持自動機能や自動航法から「基本航空移動性能」や離着陸まで自動化できるように進展するとの技術推移の姿を公表している。その後に同戦闘機は自律運用で基本飛行制御をこなし、編隊長(有人機)から一定の位置を維持したまま飛行できるようになる。この考えは日本が無人ウィングマンにセンサー任務を期待するのと同じだ。
- 次の段階にはSaabはローリングやルーピングのような高等操縦、さらに編隊長に合わせた戦術旋回飛行があるとしている。そして最終段階は最も困難な視程外戦闘で例としてクランキングやパンピングがある。日本も無人機による敵機攻撃や敵ミサイルをおびき寄せ回避する想定で同様の飛行性能を想定しているはずだ。
- 無人ウィングマンの動力、推進系の研究は2019年度(平成31年度)から始まる。日本がねらう技術は高びんしょう性、メタ素材(天然には存在しない特性)によるステルス性、機体の変形技術とバイスタティック方式レーダーだろう。
- このレーダー技術では送信機と受信する機体は別になるが、防衛装備庁は具体的な運用方法を述べていない。可能性としてはセンサー任務のウィングマンが発信し攻撃任務のウィングマンが受信役にまわるのだろう。有人機が受信するか、無人機の後方から安全に発信して無人機に気づかれないように接近させ敵撃墜を狙うことも可能だろう。
- F-3の作戦行動半径は無人ウィングマン機をはるかに上回りそうだ。センサー任務の無人機は大型機になるだろうが、運用上は戦闘空域の近隣で運用させるか、空中発射とすればよい。ATLAは2011年にジェット推進式無人機の開発を完了したと述べており、空中発射式で滑走路に着陸できるとしていた。F-15Jは二機を搭載でき、各機は自重750キロだ。
- 別の方法は空中給油をミッションごとに数回繰り返すことだ。疲労を覚えるパイロットがいないことで無人機は戦闘空域に何回も往復移動して短時間しか戦闘空域に留まれない欠点を補うのだろう。
- F-3構想の最新版は2014年に改定され長距離飛行と大武装を重視する一方で機敏な操縦性は犠牲にしている。
- F-15から発射する無人偵察機は富士重工業が製造し、日本では同社が無人機では主導的なメーカーだ。無人ウィングマンの製造でも同社が有利な立場になるとみられる。対抗する三菱重工業が戦闘機の製造では高い知見を有する。■
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