スキップしてメイン コンテンツに移動

★★日本が2030年代供用開始を狙う無人ウィングマン構想を発表



自動車で自動運転(自律運転ではありません)が意外に早く実現しそうで、航空機へも波及して装備庁が考えるロードマップは加速化されるのではないでしょうか。ただし、機体やエンジンの技術開発が追いつかないとアンバランスな機体になってしまいますから結局2030年代まで待つ必要があるのかもしれません。

Aviation Week & Space Technology

Unmanned Wingmen For Japan’s Piloted Force Planned For 2030s

Japan lays out a plan for pilotless combat aircraft to help fighters
Sep 23, 2016 Bradley Perrett | Aviation Week & Space Technology


無人ウィングマン構想

  1. 人工知能には航空戦闘での機体操縦は攻撃任務より難易度が高い。このため自律飛行可能な軍用機開発を目指す各国は対地攻撃任務から着手するのが普通だ。
  2. だが日本人にとって無人機による攻撃はあまりにも乱暴に聞こえるので、同国の防衛企画部門は一気に空対空の自動化を提案しているのだろう。この課題を実現すべく、有人戦闘機とともに飛行し、支援する高性能無人機の提案が浮上している。パイロットの指示を前提とする。機体は戦闘支援無人機またの名を無人ウィングマンと呼ばれ、まずセンサー搭載機材として前方を飛行し、その後攻撃任務を実施するはずだ。
  3. 機体はファミリー構成で2030年代に登場するとの技術ロードマップを防衛省の外局である防衛装備庁(ATLA)が発表した。防衛省は以前にも無人ウィングマン構想を検討していたが、今回はさらに前進させている。ロードマップには弾道ミサイル防衛用の機材も2030年代に供用開始するとある。
  4. 構想では無人機を五種類に分類し、まず二型式が最も簡単な構造で小型で運搬可能な見通し線外の通信用で日本はすでに供用中だ。三番目はまだ完成していないが、衛星通信の中継用の機材で米国にはジェネラルアトミックスMQ-1、MQ-9やノースロップ・グラマンQ-4の各種がこの任務を実施している。その後に控えるのが無人戦闘航空機で最後に長時間飛行用の軽量機や太陽光動力機がある。
  5. ATLAはこの内第三種と第四種に資源を集中配分するとし、優先順位がミサイル防衛と航空戦闘にあることがわかる。
  6. 同庁はこのうちBMD用途の無人機が武装するか明らかにしていない。むしろセンサー搭載機として2007年にテスト済みのエアボスシステムから赤外線探知機を派生させるようだ。ATLA作成のロードマップでは高高度長時間運用の機材に典型的な機体構造を示しており、極端に細い主翼とプロペラ推進式双発構造のようで、ボーイングが1980年代末に開発したコンドルに類似している。センサーは機首上部のタレットに搭載している。
  7. 防衛省技術研究本部(TRDI)が無人ウィングマン構想を検討開始してから少なくとも6年経過している。同本部はその後、2040年代に供用開始で、提国産新型戦闘機F-3の性能向上型と一緒に運用するとしていた。F-3初期型は2030年ごろに供用開始の見込みだ。
  8. ATLAは「高度自律飛行技術による無人ウィングマンがF-3で利用可能となるのは15年から20年後」と見ているが、2035年より前には実用化にならないだろう。と言うのは同庁が技術実証を2029年から2033年になるとの見込みを出しているからだ。F-3に無人ウィングマンとの共同運用に向けた改修が必要となる。
  9. 無人ウィングマンの最初の型式はセンサー機だろう。ATLA発表の概念図では戦闘機の前方を飛行し、データリンクを確立するとしている。この実現は15年から20年後だろう。
Japanese defense ministry concept of unmanned wingmen aircraft
防衛省が想定する無人ウィングマン編隊は敵ミサイルをおびき出し、敵標的を探知する Source: Japanese Defense Ministry

  1. 20年以上先に二番目の機種が同じ機体とエンジンを共有し武装運用可能な機体として登場するだろう。また20年後にはセンサー搭載型は敵ミサイルを吸収するスポンジの役目を果たすはずだ。センサー搭載型のウィングマンは敵ミサイルの価格を上回るので、敵ミサイルの命中を受けることは受け入れがたい。ATLAはスポンジ任務で敵攻撃を不調に終わらす構想で機体操縦制御とともに電磁対抗措置を活用する。
  2. ATLAは無人ウィングマンの構想図を二通り公表している。一つは広胴で主翼が胴体と一体化されており、45度から50度の後退角がつく。もう一つの構想図は全長が細長く、後退角は60度と高速機のようだが、機首近くについたポッドで抗力が大きく、ステルス性は乏しいようだ。レーダー搭載ポッドだろう。これは明らかにセンサー搭載専用機材だ。
  3. これに対し無人ウィングマンはF-3パイロットが制御しつつ、単独戦術行動が可能となるだろう。パイロットはおそらく一般的な指示で探査あるいは攻撃すべき場所を与えると無人機が自動的に最適行動をとるのだろう。また有人機では不可能な仕事もこなすと防衛装備庁は説明しており、人体が耐えられない高G操縦で敵ミサイル攻撃に対応できる。
  4. 探査から攻撃、さらに回避行動まで取らせるのは日本国外での無人機の発展と同様で人工知能技術の向上で飛行行動の選択肢の広がりを期待しているのだろう。
Japanese defense ministry concept of unmanned aircraft for ballistic missile defense.
弾道ミサイル探知用の無人機は2030年代に実用化されるとみられる。 Source: Japanese Defense Ministry

  1. Saabは選択式に有人操縦となるグリペンE/Fが現在の高度維持自動機能や自動航法から「基本航空移動性能」や離着陸まで自動化できるように進展するとの技術推移の姿を公表している。その後に同戦闘機は自律運用で基本飛行制御をこなし、編隊長(有人機)から一定の位置を維持したまま飛行できるようになる。この考えは日本が無人ウィングマンにセンサー任務を期待するのと同じだ。
  2. 次の段階にはSaabはローリングやルーピングのような高等操縦、さらに編隊長に合わせた戦術旋回飛行があるとしている。そして最終段階は最も困難な視程外戦闘で例としてクランキングやパンピングがある。日本も無人機による敵機攻撃や敵ミサイルをおびき寄せ回避する想定で同様の飛行性能を想定しているはずだ。
  3. 無人ウィングマンの動力、推進系の研究は2019年度(平成31年度)から始まる。日本がねらう技術は高びんしょう性、メタ素材(天然には存在しない特性)によるステルス性、機体の変形技術とバイスタティック方式レーダーだろう。
  4. このレーダー技術では送信機と受信する機体は別になるが、防衛装備庁は具体的な運用方法を述べていない。可能性としてはセンサー任務のウィングマンが発信し攻撃任務のウィングマンが受信役にまわるのだろう。有人機が受信するか、無人機の後方から安全に発信して無人機に気づかれないように接近させ敵撃墜を狙うことも可能だろう。
  5. F-3の作戦行動半径は無人ウィングマン機をはるかに上回りそうだ。センサー任務の無人機は大型機になるだろうが、運用上は戦闘空域の近隣で運用させるか、空中発射とすればよい。ATLAは2011年にジェット推進式無人機の開発を完了したと述べており、空中発射式で滑走路に着陸できるとしていた。F-15Jは二機を搭載でき、各機は自重750キロだ。
  6. 別の方法は空中給油をミッションごとに数回繰り返すことだ。疲労を覚えるパイロットがいないことで無人機は戦闘空域に何回も往復移動して短時間しか戦闘空域に留まれない欠点を補うのだろう。
  7. F-3構想の最新版は2014年に改定され長距離飛行と大武装を重視する一方で機敏な操縦性は犠牲にしている。
  8. F-15から発射する無人偵察機は富士重工業が製造し、日本では同社が無人機では主導的なメーカーだ。無人ウィングマンの製造でも同社が有利な立場になるとみられる。対抗する三菱重工業が戦闘機の製造では高い知見を有する。■


コメント

このブログの人気の投稿

フィリピンのFA-50がF-22を「撃墜」した最近の米比演習での真実はこうだ......

  Wikimedia Commons フィリピン空軍のかわいい軽戦闘機FA-50が米空軍の獰猛なF-22を演習で仕留めたとの報道が出ていますが、真相は....The Nationa lnterest記事からのご紹介です。 フ ィリピン空軍(PAF)は、7月に行われた空戦演習で、FA-50軽攻撃機の1機が、アメリカの制空権チャンピオンF-22ラプターを想定外のキルに成功したと発表した。この発表は、FA-50のガンカメラが捉えた画像とともに発表されたもので、パイロットが赤外線誘導(ヒートシーキング)ミサイルでステルス機をロックオンした際、フィリピンの戦闘機の照準にラプターが映っていた。  「この事件は、軍事史に重大な展開をもたらした。フィリピンの主力戦闘機は、ルソン島上空でコープ・サンダー演習の一環として行われた模擬空戦で、第5世代戦闘機に勝利した」とPAFの声明には書かれている。  しかし、この快挙は確かにフィリピン空軍にとって祝福に値するが、画像をよく見ると、3800万ドルの練習機から攻撃機になった航空機が、なぜ3億5000万ドル以上のラプターに勝つことができたのか、多くの価値あるヒントが得られる。  そして、ここでネタバレがある: この種の演習ではよくあることだが、F-22は片翼を後ろ手に縛って飛んでいるように見える。  フィリピンとアメリカの戦闘機の模擬交戦は、7月2日から21日にかけてフィリピンで行われた一連の二国間戦闘機訓練と専門家交流であるコープ・サンダー23-2で行われた。米空軍は、F-16とF-22を中心とする15機の航空機と500人以上の航空兵を派遣し、地上攻撃型のFA-50、A-29、AS-211を運用する同数のフィリピン空軍要員とともに訓練に参加した。  しかし、約3週間にわたって何十機もの航空機が何十回もの出撃をしたにもかかわらず、この訓練で世界の注目を集めたのは、空軍のパイロットが無線で「フォックス2!右旋回でラプターを1機撃墜!」と伝え得てきたときだった。 戦闘訓練はフェアな戦いではない コープサンダー23-2のような戦闘演習は、それを報道するメディアによってしばしば誤解される(誤解は報道機関の偏った姿勢に起因することもある)。たとえば、航空機同士の交戦は、あたかも2機のジェット機が単に空中で無差別級ケージマッチを行ったかのように、脈絡な

日本の防衛産業が国際市場でプレイヤーになれるか試されている。防衛面の多国間協力を支える産業が真の国際化を迫られている。

  iStock illustration CHIBA, Japan —  インド太平洋地域での中国へのヘッジとして、日米含む多数国が新たな夜明けを迎えており、軍事面で緊密化をめざす防衛協力が進む 言うまでもなく日米両国は第二次世界大戦後、米国が日本に空軍、海軍、海兵隊の基地を設置して以後緊密な関係にある。 しかし、日本は昨年末、自国の防衛でより積極的になることを明記した新文書を発表し、自衛隊予算は今後10年間で10倍になる予想がある。 政府は、新しい軍事技術多数を開発する意向を示し、それを支援するために国内外の請負業者に助けを求める。 日米両国軍はこれまで同盟関係を享受してきたが、両国の防衛産業はそうではない。 在日米国大使館の政治・軍事担当参事官ザッカリー・ハーケンライダーZachary Harkenriderは、最近千葉で開催されたDSEIジャパン展示会で、「国際的防衛企業が日本でパートナーを探すのに適した時期」と述べた。 日本の防衛装備庁の三島茂徳副長官兼最高技術責任者は会議で、日本が米国ならびに「同じ志を持つ同盟国」で協力を模索している分野を挙げた。 防衛省の最優先課題のひとつに、侵略を抑止する防衛システムの開発があり、極超音速機やレイルガンに対抗する統合防空・ミサイル防衛技術があるという。 抑止力に失敗した場合を想定し、日本は攻撃システムのアップグレードを求めており、12式地対艦ミサイルのアップグレード、中距離地対空ミサイル、極超音速兵器、島嶼防衛用の対艦ミサイルなどがある。 また、高エナジーレーザーや高出力マイクロ波放射技術など、ドローン群に対抗する指向性エナジー兵器も求めている。無人システムでは、水中と地上無人装備用のコマンド&コントロール技術を求めている。 新戦略の発表以来、最も注目されている防衛協力プログラムは、第6世代ジェット戦闘機を開発するイギリス、イタリアとの共同作業「グローバル・コンバット・エアー・プログラム」だ。 ハーケンライダー参事官は、日本の新しい国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛予算の増強は、「時代の課題に対応する歴史的な資源と政策の転換」につながると述べた。 しかし、数十年にわたる平和主義的な政策と、安全保障の傘を米国に依存してきた結果、日本の防衛産業はまだ足元を固めらていないと、会議の講演者は述べた。 三菱重工業 、 川崎

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックIIAとSM