レイルガン技術がどこまで進んでいるかはちっともわからないのですが、第三相殺戦略に怯えるのは北朝鮮だけではありません。これまでの投資がパーになるので必死にプロパガンダ攻勢をかけてくるのはTHAADの比ではありません。韓国国内でも当然同調する動きが出るでしょうが、レイルガンは艦艇に搭載できるので(電力に余裕があるズムワルト級がまず第一候補)国防部長官が6時間も住民により移動を封じられるような醜態は避けられるのではないでしょうか。ともかく技術の進歩に注意が必要で、北朝鮮の大言壮語が一晩にして無意味となればそれは愉快なことですね。
How the Third Offset (Think Railguns) Could Nullify North Korea's Missiles
August 26, 2016
- 金正恩が核弾頭つきミサイル配備を急いでいる。移動式ミサイルを陸上海中双方で実用化しようとしている。短距離ミサイルも入れればほぼ毎週発射している状況で、短距離スカッド、中距離ノドン、中間ムスダン、大陸間テポドンの各種がある。
- だが今週水曜日の潜水艦発射式弾道ミサイル(SLBM)は日本に向け300キロ飛翔し、あらためて金がミサイル各種の整備に尽力しているのを示した。SLBM発射を「最大の成功事例」と述べたのは誇張ではない。北朝鮮のミサイル技術の進展は想定以上の速さだ。
- だが成功は失敗への一歩かもしれない。金が危険な妄想でミサイル王になると悲惨な結末になる。一度上がったものは下がらざるをえない。外交態度を変えないと金は悪夢の未来2つにつきすすむ。
- まずミサイル多数配備に勇気づいた金が危険な一線を超え、挑発行為のつもりが誤算あるいは偶発で紛争に火をつけ自らの破滅を招く可能性がある。あるいは貧しい国家財政をすべてミサイルにつぎ込んだあげく、韓国と米国がさらに先に行っている事実に直面する可能性がある。
- 米韓同盟は技術面で先を進み、ミサイル防衛の多重構造をさらに強化しつつある。韓国には韓防空ミサイル防衛(KAMD)システムがあり、多国間で展開中の装備にはTHAAD終末高度広範囲防空システムがある。日本の潜水艦部隊は北朝鮮潜水艦が出港しミサイルを発射する前に全艦を追跡撃破する能力がある。
- だが将来に目を向ければ金がミサイルで世界を恫喝する可能性より北のミサイル装備が米韓の革新的技術で一気に陳腐化される可能性のほうが高い。金一族も一気に無力となる。
- ミサイルや物理的質量に立ちふさがるのがエネルギー兵器で電磁レイルガンはその一種だ。米国で研究で弾みがついており、最先端技術により米国の兵力投射能力は温存されそうだ。
- 国防副長官ロバート・ワークは技術優勢を模索する動きを「第三相殺」と名付けた。この名称は第二次大戦後の米国が技術力で脅威の高まりに対応したことの延長だ。ソ連通常兵力がヨーロッパで示した脅威に核兵器で対応したのが第一の相殺で、ソ連が核兵器で同等の兵力を装備すれば、米国は長距離精密誘導通常兵器でリードを維持したのが第二の相殺だ。
- ワークが以前理事長を務めた新アメリカ安全保障センター(CNAS)は著者がまとめた報告書を今秋発刊し、第三相殺に関与する米韓専門家の寄稿も含める。7月上旬に同じテーマで会合を開催し、北朝鮮外務省の関心を呼んだ。これまで北朝鮮のミサイル実験で失敗が続いた印象を打ち消そうと言うのか、北朝鮮は「米国の戦略を明らかな破綻に向かわせ、『第三戦略』などたわごとにすぎない』との声明を発表した。
- 北朝鮮は大言壮語そのものでプロパガンダ詩人を動員し、技術的な知識が不足し平壌がすすめる極秘事業を知らせないまま情報戦を国内外でしかけている。その結果、技術的に遅れているのを実感させられるのは北朝鮮の方だ。
- 著者の若き同僚Seongwon LeeがCNASでの六ヶ月研究員生活を韓国国際交流財団の支援でこのたび終了するが、電磁レイルガン研究をしてきた。この装備開発だけで北朝鮮のミサイル装備整備は破綻する。
- Leeの説明するようにレイルガンは弾頭を電磁反発力で発射するもので、化学爆発力は使わない。その速度により弾頭自体が通常ミサイル以上の威力を発揮する。弾頭に爆発物を装備する必要が無いためレイルガン技術は安全面、射程距離、費用面で大きな優位性を発揮する
- 長期的に見ればこの新技術により韓国の抑止力は北朝鮮核兵器に対して3つの側面で威力を発揮する。先制攻撃機能による抑止効果、迎撃効果および報復攻撃だ。
- まずレイルガン発射体の速度により誘導ミサイルが緊急発進したF-15から発射されるよりも迅速なタイミングを実現する。同時に高速攻撃手段が現状のキルチェーンに加わる。
- 二番目にミサイルとレイルガンの費用比較は逆転する。KAMDの一部となればレイルガンのコスト効果は現行ペイトリオットやTHAADより高くなる。そうなるとレイルガンはミサイルから王座を奪うだろう。
- 三番目に、レイルガンの有効射程は水上艦主砲の比ではなく、威力が増加し報復攻撃に新たな選択肢を加える。
- 単一技術で歴史が革命的変化することはそんなにあるものではないが、第三相殺には多くの技術が含まれレイルガンのように新技術開発で劇的な変化が生まれる。自動3DコピーやAIによる迅速な探知技術と並びレイルガンは予想外に早く出現するだろう。
- 一旦実用化されれば北朝鮮のミサイル装備の没落は明らかとなる。金は外交的解決の機会を棒に振ったことを後悔するだろうがすでに時遅しとなる。■
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著者パトリック・M・クローニン博士は新アメリカ安全保障センター(CNAS)(ワシントンDC)でアジア太平洋安全保障問題の上級顧問兼上級統括職を務める。
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