ヒラリー・クリントンに人望がないのはなぜかかよく分かる記事ですが、オバマ政権の人気の無さ含め日本では米民主党がよく理解されていないのでこの記事そのものが理解しにくいのかもしれません。特にメール問題がさらに拡大している状況はほとんどの方がご存じないのではないでしょうか。敵失で大統領当選の可能性が高い同候補ですが、改めて安全保障関連での懸念が当選前から論じられるでしょう。
Stale ideas, with a whiff of scandal.
August 8, 2016
ビル、ヒラリーのクリントン夫妻がワシントンに大統領、大統領夫人として登場した1993年、ウォール・ストリート・ジャーナルは二人を攻撃し、ふたりと一緒にアーカンソー流の政治手法、つまり汚職、個人利益の追求が流入し政策決定の一部となると非難したが、夫妻の不誠実さの決定的な証明がないまま一斉に批判を受ける形となった。
- そこに肉牛先物価格スキャンダルが発生し、わずか1千ドルの手持ち資金で始めたヒラリーは98,450ドルの利益を手にし、さらにアーカンソーの巨大企業タイソン・フーズ問題が発生しビル・クリントンは同州知事を務めていた。
- このパターンが続いたヒラリー・クリントンが民主党大統領候補だが各種世論調査では全米の三分の二が本人の誠実さに疑念を抱き、信頼出来ないと回答している。クリントン大統領時代には肉牛先物スキャンダルにつづき「トラベルゲート」「ファイルゲート」さらにホワイトウォーター土地投機スキャンダルが発生し、後者では関連書類一式が行方不明とされていたものがどういう奇跡かホワイトハウス居住部分で見つかっている。ただしコピーでオリジナルは行方不明のままだ。クリントン夫妻はスキャンダルやスキャンダルらしきものにどっぷりとつかっているようで、倫理を疑われない発覚が表に出ないよう必死になってきた。
- はるか前の出来事とはいえ、こういった事例とヒラリー・クリントンの公職での倫理面でのだらしなさが関連して、信頼できない人物、真実を語らない人物との評価を生んでいる。
- これは重要なことなのだろうか。決めるのは有権者だが、投票所での決断には多面的な解明が必要であり、好ましい面とともに好ましくない面も見るべきだ。ヒラリー・クリントンで望ましくない側面が否定的評価を生んでいるようだ。候補者すべてにどこかしら否定的な側面があるものだが、クリントン候補の場合は深刻だ。
- 民主党がこのような人物を候補者としたこと自体が無謀だという向きがあろう。スキャンダルで火だるまになったこと以外に、大統領選挙運動中に問題が浮上しており大統領就任後にも問題は出てくるだろう。FBI長官ジェイムズ・コウミーは電子メールサーバー問題で起訴しなかったものの、本人は「極度に軽率」と「とても機微な高度極秘情報」での取り扱いを評している。FBIは有権者に本人の倫理資質の判断を任せる形となった。
- 無茶な行動ぶりは新しく浮上した問題にも影を落としている。国内か海外か不明のハッカー集団が防護措置のないサーバーから本人の行動の全体像をつかんでいる疑いが出ている。保安専門家によれば中国、ロシアあるいは他国のハッカー集団が本人の電子メール63,000通を入手した可能性が高い。このうち33.000通を本人は私的なメールだったとして廃棄したと主張しているが公務執行中のメールは手つかずで、決定事項や公務中の行動は筒抜けだ。
- もし電子メールに少しでも疑問を呼ぶ証拠が含まれていたら、ウォール・ストリート・ジャーナルのL・ゴードン・クロヴィッツが問題提起しているように大統領に当選した場合、ロシアのプーチン大統領が「好きな時に本人を脅迫できる」ことにならないか。
- 電子メールに疑問を呼ぶどんな行為が隠されているのか。今は知る由もないが、クリントン財団関連が含まれているのを見過ごしては軽率と呼ばれても仕方ないだろう。財団はビル・クリントンが創設した国際親善団体でクリントン夫妻の政治財務力の源であり、ヒラリー・クリントンの取り巻きには実入りの好い場所である。ビル・クリントンが高額な講演料をプールする場所でもあり、大統領退陣後のビルと国務長官退任後のヒラリーは合計542回の講演で105百万ドルを稼いでいるとワシントンポストは報道している。クリントンの取り巻きや友人が政治勢力を形成している。
- 同財団について分かったのは(クリントン夫妻経由ではない)海外の複数政府からの収入が今も入ってきており、ヒラリーの国務長官時代と変わらないという。本人は公職中にはそのような収入は一切なかったと主張しているが。支払元はアルジェリア、クウェート、カタール、サウジアラビアだ。スイスのUBS銀行が50万ドルを寄付したのはクリントン国務長官が内国歳入局が同行をしつこく追及していたのを解決した後のことだ。AP通信は国務省記録で長官時代のクリントンが75回ほどの会合で「長年の政治寄付者、クリントン財団への寄付者、その他企業関係者など外部関係先」と会っていると報道した。
- 見返りの形で汚職が本当にあったのだろうか、それとも単に表面上の腐敗なのかは知る由はないが、33千通の電子メールが答えを握っているのかもしれない。だが肉牛先物事件が最初に暴露したようにクリントン夫妻が公務に関わると大金がどこからとなく出現し、出資した個人や団体が恩恵を受けるようである。
- クリントン財団は寡頭政治へ一歩近づく典型ともいえる。国民大衆から政治権力が事情に通じたエリート層に移行し、政治財政上の利点を手にする現象だ。今年はエリートへの政治面の怒りの声が高まった年であり、ヒラリー・クリントンが怒りの対象であるにもかかわらず大統領当選の可能性が高まっていることに注目すべきだろう。
- ヒラリー・クリントンに逆風となりかねない大きな点がある。多くの評論家が言うようにクリントン政権が発足すればバラク・オバマの三期目と同じだ。オバマ政権で米国は分断された状況になり、退陣が迫る中、オバマの功罪は改めて問われるべきだ。評価は別れるが、この国の行き詰まった状況をオバマが解決できなかったのは否定できない。新しいパラダイムが政府の考え方に必要で行き詰まり状況を打破し、新しい方向へ国を導くべき時にオバマは旧式政治を拡大し、政治的行き詰まり感を逆に長引かせてしまった。
- ヒラリー・クリントンがこの閉塞状況を打破できるとは思えない。クリントンが体現する旧来の政治手法は国が新鮮さを必死に求め、以前の政治の誤りを是正し、新しい政治勢力を結集しアメリカの挑戦に皆を向かわせようとした時の政治手法だ。ヒラリーが大統領となった場合は四年間にわたり手詰まり感がさらに延長されることになりそうだ。民衆の側に怒り、不満、緊張が高まる危機の中ではあまりにも長すぎる四年間になりそうだ。■
Robert W. Merry, longtime Washington, D.C., political journalist and publishing executive, is the author most recently of Where They Stand: The American Presidents in the Eyes of Voters and Historians.
Image: Hillary Clinton speaking. Photo by Gage Skidmore, CC BY-SA 2.0.
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