スキップしてメイン コンテンツに移動

UASの空中空母構想でハイテク飛行船を利用する構想が浮上



航続距離の不足をカバーするため、空中母機構想は過去に各種ありましたが実用化に至ったものは皆無でした。今回は温故知新ではないですが、技術進歩で空中空母を実現しようと言うたくましい企業のお話です。しかし飛行船でなくても太陽電池で分散推進手段を運用する無人長時間滞空機も母艦になりませんか。技術の進歩で今まで不可能と思われた構想が実現性を帯びてきます。それだけに発想力、企画力がもっと必要になりますね。

Aviation Week & Space Technology

Airship Carriers Could Extend Smaller UAS Capabilities

Jul 22, 2016 Graham Warwick | Aviation Week & Space Technology
.
  1. 無人航空システム(UAS)の性能は向上し続けており、ペイロードは小型しつつ威力は増加している。だが欠点がある。航続距離だ。「太平洋地区でどうやって小型UASを運用したらよいでしょうか」とDARPA副長官スティーブ・ウォーカーがワシントンの会合で問いかけている。
  2. DARPAの回答はグレムリン構想で、既存大型機の輸送機や爆撃機から小型UASを多数発進回収し、各UASに航空優勢が確立できない空域に侵入させ協調運用する。
  3. 別の構想がサイエンス・アプリケーションズ・インターナショナルコーポレーション(SAIC)とArcXeonから出たエアステーションAirStation構想で、飛行船をUASの空中空母に利用する。両社は軍事用途以外に物流配送作業にも転用できると説明。
  4. 空飛ぶ空母構想は以前にもあり、米海軍は飛行船USSエイクロン、USSメイコンを1930年代初頭に運用した。全長785フィートのメイコンは三日間飛行を続け、カーティスF9Cスパロウホーク偵察機を3機内部格納庫に搭載した。
  5. 複葉機は飛行船から空中ブランコを展開して発進回収し、飛行船の巡航速度は60ノットで偵察機の失速速度55ノットを僅かに上回る程度だった。二機の偵察機を使いメイコンは165,000平方マイル(約427千平方キロ)に及ぶ海域を探査できたとSAICのロン・ホチステラーは言う。 
  6. エイクロン、メイコンは飛行船と航空機の組み合わせで偵察能力を向上する狙いがあったが、グッドイヤーは1930年代末にもっと大型の空母飛行船構想を発表していた。だが陸上運用偵察機の性能が向上し、費用対効果で対抗できなかったとホチステラーは述べる。
  7. 飛行船を長時間監視手段にする提案がでは米陸軍と空軍がイラク・アフガニスタン戦真っ盛りの時期に企画したが結局キャンセルされている。同じ機能は小型あるいは中型UASの分散型、多機種で各種センサーを使った運用で実現した。
  8. だがUASには支援設備が必要で、「発進する地上拠点や艦船は容易に移動できないし、政治的な理由で運用が不可能な場所や洋上地点がある」とホチステラーは言う。
  9. 「最大限にUASの性能を活用するには移動と地理的制約から自由が必要であり、そのためUAS運用に特化した飛行支援記機材が必要です」
  10. DARPAのグレムリン構想では既存機種を母機とし、おそらくロッキード・マーティンC-130輸送機を使うだろうが、飛行船に比べれば滞空時間は短く、母機自体にも地上支援が必要だ。小型UASと大型ターボプロップ機の速度差も問題だとホチステラーは指摘する。

無人航空機隊を運用するUAS空母飛行船の概念図 Credit: SAIC/ArcXeon


  1. 「専用機材が必要です。小型中型UASの性能をフルに発揮させる機材が必要です。専用のUAS母機はほぼ全空域で活用でき、同時に維持費用は負担可能な範囲です」
  2. 空母飛行船は自動運転でUASを発進、回収、燃料補給し、再発進させる。ロボットアームとコンピュータ画像処理を応用する。飛行船は水平線超え通信中継機になり、UASと地上操作員が連絡しあうことが可能となる。
  3. 飛行船への空中給油も可能だと両社は主張しており、洋上で燃料を詰めた袋を拾い上げる案(1950年代に実証されており1990年代にも実施している)や飛行船にドッキングできる改装航空機による給油案が浮かび上がっている。
  4. 「UAS空母飛行船の傑出した価値は長時間飛行性能でUASを必要な期間に渡り該当空域に展開させることにあります」とホチステラーは説明する。「UAS空母を安全なスタンドオフ位置に待機させることも可能ですが統制、燃料補給、置換できるようUASの活動空域に接近させることも可能でしょう」
小型非硬式飛行船がInstituのスキャンイーグルUAS二機を搭載する運用構想があるCredit: SAIC/ArcXeon

  1. SAICは傘下のレイドスとともにスカイバス30K、80K無人飛行船を開発した経験があり、後者は米陸軍向けに制作しペイロード実証テストで飛行している。
  2. 大型商用飛行船を開発中の企業は数社あり、ロッキード・マーティンや英国のハイブリッド・エアヴィークルスがあるが、エアステーション構想をまとめた両社によれば各社の設計案を利用すればペイロード40トンのUAS空母が実現できるという。
  3. 「大型商用飛行船にUAS発進回収システムズを搭載したUAS空母は開発可能で、運用試験できると思います。その場合、各種UASの軍事用途に加え、民間商用運行も視野に入ってくるでしょう」(ホチステラー)■


コメント

このブログの人気の投稿

フィリピンのFA-50がF-22を「撃墜」した最近の米比演習での真実はこうだ......

  Wikimedia Commons フィリピン空軍のかわいい軽戦闘機FA-50が米空軍の獰猛なF-22を演習で仕留めたとの報道が出ていますが、真相は....The Nationa lnterest記事からのご紹介です。 フ ィリピン空軍(PAF)は、7月に行われた空戦演習で、FA-50軽攻撃機の1機が、アメリカの制空権チャンピオンF-22ラプターを想定外のキルに成功したと発表した。この発表は、FA-50のガンカメラが捉えた画像とともに発表されたもので、パイロットが赤外線誘導(ヒートシーキング)ミサイルでステルス機をロックオンした際、フィリピンの戦闘機の照準にラプターが映っていた。  「この事件は、軍事史に重大な展開をもたらした。フィリピンの主力戦闘機は、ルソン島上空でコープ・サンダー演習の一環として行われた模擬空戦で、第5世代戦闘機に勝利した」とPAFの声明には書かれている。  しかし、この快挙は確かにフィリピン空軍にとって祝福に値するが、画像をよく見ると、3800万ドルの練習機から攻撃機になった航空機が、なぜ3億5000万ドル以上のラプターに勝つことができたのか、多くの価値あるヒントが得られる。  そして、ここでネタバレがある: この種の演習ではよくあることだが、F-22は片翼を後ろ手に縛って飛んでいるように見える。  フィリピンとアメリカの戦闘機の模擬交戦は、7月2日から21日にかけてフィリピンで行われた一連の二国間戦闘機訓練と専門家交流であるコープ・サンダー23-2で行われた。米空軍は、F-16とF-22を中心とする15機の航空機と500人以上の航空兵を派遣し、地上攻撃型のFA-50、A-29、AS-211を運用する同数のフィリピン空軍要員とともに訓練に参加した。  しかし、約3週間にわたって何十機もの航空機が何十回もの出撃をしたにもかかわらず、この訓練で世界の注目を集めたのは、空軍のパイロットが無線で「フォックス2!右旋回でラプターを1機撃墜!」と伝え得てきたときだった。 戦闘訓練はフェアな戦いではない コープサンダー23-2のような戦闘演習は、それを報道するメディアによってしばしば誤解される(誤解は報道機関の偏った姿勢に起因することもある)。たとえば、航空機同士の交戦は、あたかも2機のジェット機が単に空中で無差別級ケージマッチを行ったかのように、脈絡な

主張:台湾の軍事力、防衛体制、情報収集能力にはこれだけの欠陥がある。近代化が遅れている台湾軍が共同運営能力を獲得するまで危険な状態が続く。

iStock illustration 台 湾の防衛力強化は、米国にとり急務だ。台湾軍の訓練教官として台湾に配備した人員を、現状の 30 人から 4 倍の 100 人から 200 人にする計画が伝えられている。 議会は 12 月に 2023 年国防権限法を可決し、台湾の兵器調達のために、 5 年間で 100 億ドルの融資と助成を予算化した。 さらに、下院中国特別委員会の委員長であるマイク・ギャラガー議員(ウィスコンシン州選出)は最近、中国の侵略を抑止するため「台湾を徹底的に武装させる」と宣言している。マクマスター前国家安全保障顧問は、台湾への武器供与の加速を推進している。ワシントンでは、台湾の自衛を支援することが急務であることが明らかである。 台湾軍の近代化は大幅に遅れている こうした約束にもかかわらず、台湾は近代的な戦闘力への転換を図るため必要な軍事改革に難色を示したままである。外部からの支援が効果的であるためには、プロ意識、敗北主義、中国のナショナリズムという 3 つの無形でどこにでもある問題に取り組まなければならない。 サミュエル・ P ・ハンチントンは著書『兵士と国家』で、軍のプロフェッショナリズムの定義として、専門性、責任、企業性という 3 つを挙げている。責任感は、 " 暴力の管理はするが、暴力行為そのものはしない " という「特異な技能」と関連する。 台湾の軍事的プロフェッショナリズムを専門知識と技能で低評価になる。例えば、国防部は武器調達の前にシステム分析と運用要件を要求しているが、そのプロセスは決定後の場当たり的なチェックマークにすぎない。その結果、参謀本部は実務の本質を理解し、技術を習得することができない。 国防部には、政策と訓練カリキュラムの更新が切実に必要だ。蔡英文総統の国防大臣数名が、時代遅れの銃剣突撃訓練の復活を提唱した。この技術は 200 年前のフランスで生まれたもので、スタンドオフ精密弾の時代には、効果はごくわずかでしかないだろう。一方、台湾が新たに入手した武器の多くは武器庫や倉庫に保管されたままで、兵士の訓練用具がほとんどない。 かろうじて徴兵期間を 4 カ月から 1 年に延長することは、適切と思われるが、同省は、兵士に直立歩行訓練を義務付けるというわけのわからない計画を立てている。直立歩行は 18 世紀にプロ