スキップしてメイン コンテンツに移動

★★★空対空性能を重視するF-3、国産開発の可能性が濃厚



選挙戦もたけなわと思いますが、相変わらず安全保障では空理空論が大手を振っているようです。スクランブルの現状などなぜ実態を踏まえた議論にならないのか、都合の悪い事実には目をつぶる傾向が見られるのは本当に残念です。
War Is BoringWe go to war so you don’t have to

For Japan, Air-to-Air Fighters Trump Other Jets

Tokyo requests information from industry for next-gen warplane

by JAMES SIMPSON
F-3はX-2技術実証機を元に生まれるのだろうか。Japanese defense ministry photo
  1. 6月末、防衛省は次世代戦闘機の情報要求を各メーカーに出し、これで三菱重工F-2の後継機「F-3」開発の長い工程が始まった。
  2. だが性能向上が目立つ中国の海空兵力の脅威に対抗する必要を日本政府が感じる中、現在入手可能な機種はいずれも日本のニーズにこたえられない
  3. 日本が本当は欲しいF-22は立法措置で購入がままならず、次善の策が新型ステルス機の国産開発だ。
  4. Aviation Weekは6月24日号でX-2戦闘機技術実証機について評価をし、F-3開発につながると見られる同機から日本が狙うのは「大型双発機で長距離飛行性能があり機体内部に大型空対空ミサイル6発を搭載する」と推定している。
  5. 確かに日本のニーズからこの推定はありうるが、その通りなら日本はF-2の攻撃能力は捨て、高速長距離迎撃性能に重点を置くことになる。つまり対地攻撃ミッションから離れ空対空戦を重視することになる。
  6. Jane’s Defense Weeklyでも今回の情報要求を報じておりF-3は100機生産になるとしている
  7. 原稿執筆時点で日本国内報道を伝えているのはロイターだけで日付は6月30日となっている。その記事によれば防衛省はボーイングとロッキード・マーティンにも参加を呼び掛けている。ロイターは新戦闘機開発の予算は400億ドルと試算している。
百里基地から離陸したF-15とF-2 Japanese Air Self-Defense Force photo

F-2から F-35へ

  1. 日本側は研究成果をF-16に詰め込み三菱F-2が生まれた。機体単価171百万ドルはF-16四機分で安い買い物ではない。日本はF-2を94機保有している。
  2. F-2は多用途戦闘機で、恒例の富士総合火力演習では爆弾投下し、地上部隊を支援する姿が見られる。島国ということもありF-2は対艦攻撃任務もこなす。
  3. だが噂通りF-2後継機が双発ステルス戦闘機になればF-2の任務はどうなるのか。答えはF-35にある。
  4. 日本は2011年にF-35Aを42機導入すると決め長年供用しているF-4ファントムの後継機種とする。まず四機がテキサスとイタリアで生産中で三菱重工の小牧南製作所も参加し、2017年に日本へ到着する。
  5. 航空自衛隊はロッキードF-22導入を希望していたが、2006年に米下院が輸出禁止措置を延長し、日本導入の可能性が消えた。
  6. 日本がF-22を調達できていれば旧式ながら非常に価値の高い双発多用途戦闘機F-4を退役させていたはずだ。代わりに日本は第五世代戦闘機で唯一入手可能な機種として性能は落ちるが単発のF-35に落ち着いた。同機輸出はロッキードが力を入れており、議会も海外販売を後押ししていた。
  7. 双発と単発の違いを論じると多分に学術的になる。双発機の方がエンジンが余分にある分だけ残存性が高いとされるが、現実にはエンジン一基が作動しなくなると墜落する。
  8. 双発機でステルス効果が高いのはエンジンの大きさだけでなく同じ推力なら探知されにくい排気を出すためだ。このためF-22のステルス性能はF-35に勝る。
  9. そうなるとF-35をF-2やF-4の後継機種にすることで意味が出てくるが、わずか42機では90機近くのF-4にとって代わることができないし、日本は戦闘機が不足しているのだ。F-35選定が遅れ、稼働開始が遅れている中で既存各機は限界まで使われている。
  10. 日本にはF-15が150機ほどあり、日本の領空を中国の偵察行為の増加から守っているが、F-15は数次にわたる耐用年数延長改修を受けている。F-2も改修されているとはいえ、F-4が消えた後のギャップは早々に埋まりそうにない。Jane's報道のF-3100機が正しくても日本の戦闘機不足は解消しない。
  11. 今のところ日本は数より質を重視するようだ。Aviation Weekの推測通りならF-3はF-15同様の航空優勢戦闘機となるが、わずか42機のF-35はF-4とF-2の役目もこなせるのか。
  12. この場合のF-35は空対空戦に加え戦闘攻撃機の機能も果たす。日本が求めるのは高速ステルス戦闘機であり、F-35やF-15改修型を補完し、中国の高性能機材へ一対一で対決できる機材だ。

中国問題

  1. なぜ日本が空対空能力を重視するかを理解するためには中国が琉球諸島へ脅威になっていることを知る必要がある。
  2. 冷戦時の日本は北方の守りを固めソ連からの防衛を重視していた。だが冷戦後の状況変化へ対応が遅れた日本はロシアと緊張緩和しても北方重点配備を続けていた。1990年代から2000年代にかけ自衛隊は存続意義の説明に苦慮し、平和維持活動や国際災害救難人道援助活動、さらにテロ対策や中東での民生整備事業に活路を見出すありさまだった。
  3. だが2010年に保守派が懸念していた通りに防衛省は新しい脅威対象を発見する。その年の防衛ガイドラインで中国の海洋進出の野望、接近阻止領域拒否の兵器体系と尖閣諸島占拠の可能性を取り上げた。
  4. 日本の懸念を理解するのは難しくない。
  1. 上図は日本の防空識別圏に侵入した中国航空機へのスクランブル回数を防衛省データでまとめたものだ。2008年に航空自衛隊のスクランブルで中国機は全体の13パーセントだったが、昨年実績では65パーセントに増加している。
  2. 中国の侵犯は年々増加し、今年4月から6月だけで航空自衛隊のスクランブル回数は200回近くと、前年同期の114回から大幅に増えている。
  3. 制空防衛任務が日常的になっている現状で高速長距離迎撃機が航空自衛隊で一番活躍する機材になっている。航空自衛隊の主任務は接近してくる中国機への対応になった。
  4. そこで那覇基地にF-15が40機ほど展開し、2010年の24機から大幅増で同基地は緊急配備部隊の本拠地になったが、基地としては完全とはいいがたく、民間空港と同居して沖縄の空を守っている。政府も尖閣諸島に近い地点に基地開設を検討しているが、現行基地の負担は相当大きい。
  5. 那覇基地のF-15は今や一日一回のスクランブル出撃をしており、離陸後のF-15は255マイル先の尖閣諸島まで20分飛行する。
  6. 中国機は高速化しており、ロシアが北方に飛ばす低速の偵察機とは大違いだ。
  7. 中国が焦点を合わせる外縁島しょ部分には双発長距離戦闘機が日本に最適な存在となる。ただし攻撃能力も完全に除外されているわけではない。IHI製XF-5のような高出力双発エンジンでペイロードが増加すると、F-3を揚陸部隊支援として対地攻撃に充てることも可能だろう。

脅威は第五世代機

  1. 武装した航空機が対峙すると緊張も確実に上がる。航空自衛隊航空支援集団の元司令官が6月17日に中国戦闘機がF-15に敵対行動をとったとオンラインニュースで明らかにした。これに対し防衛省は中国機が「異常な行動」はとっていないと報道を否定している。
  2. だが翌6月18日に河野 克俊統合幕僚長から報道陣に「中国は海空で行動をエスカレートしているようだ」とのコメントが出ている。
  3. このままでは中国機と日本機の遭遇が危険な状態を作った2013年の再来は時間の問題だろう。緊張がここまで高くなると一回のパイロットの行為が国際危機につながりかねない。危機が発生した場合、日本は戦闘に勝ちたいと思うのは当然だ。
  4. そこで中期防衛整備計画(2018年まで)から日本の優先順位が見えてくる。「海上優位性ならびに空中優位性の確保を可能とする能力の整備」で日本政府は実現に全力を挙げている。
  5. その表れとして航空自衛隊はF-2のうち49機に三菱電機製のAAM-4B空対空ミサイルを、また91機に新型J/APG-2レーダーを導入た。改修でF-2はF-15をよりよく支援できるようになった。
  6. F-15も二回に分け性能改修を2004年から受けており、68機で完了している。ただしF-15では老朽化の兆候を示しており、部品落下が特に沖縄で増えている。
  7. F-2が2030年までに退役し、F-15は2040年代まで飛行するが、つなぎ機材のF-35が42機では大変なので第六世代のステルス制空戦闘機が数年のうちにも必要となる。
  8. 問題は日本が欲しい機材が今存在しないことだ。日本は今もF-22調達を希望しているが。
  9. 背景に中国のJ-20、J-31の共に双発ステルス戦闘機の存在があり、2020年代に実戦化すると見られる。中国報道では空母に搭載する案もある。
  10. 実際の性能、特にエンジン性能とは別に中国の利点は数だ。およそ8対1で劣勢な日本の武器は地理条件、練度と技術で強力な隣国に対抗しようとする。.
  11. 現時点の日本は第五世代技術の実証機による技術開発を目指しX-2高度技術実証機を作り、初飛行を2016年に済ませている。同機は縮小型で生産機材とはかけ離れた存在だがテストで得られる技術成果は次の国産機の基礎となるだろう。
  12. 防衛省からの情報要求は既存機材の項中、共同生産、純国産のいずれかの選択を目指す日本政府の既定方針の日程に合致し2018年に最終決定を下す。
  13. ボーイング、ロッキードあるいはヨーロッパ企業が極秘プロジェクトを隠しているのでなければ、Aviation Weekが伝えた予想性能諸元ではF-3が国産開発になる可能性が高い。ただF-2のように機体は高額となり期待通りの結果が得られないかもしれない。.
  14. なお、情報要求の回答締め切りは8月。■


コメント

このブログの人気の投稿

フィリピンのFA-50がF-22を「撃墜」した最近の米比演習での真実はこうだ......

  Wikimedia Commons フィリピン空軍のかわいい軽戦闘機FA-50が米空軍の獰猛なF-22を演習で仕留めたとの報道が出ていますが、真相は....The Nationa lnterest記事からのご紹介です。 フ ィリピン空軍(PAF)は、7月に行われた空戦演習で、FA-50軽攻撃機の1機が、アメリカの制空権チャンピオンF-22ラプターを想定外のキルに成功したと発表した。この発表は、FA-50のガンカメラが捉えた画像とともに発表されたもので、パイロットが赤外線誘導(ヒートシーキング)ミサイルでステルス機をロックオンした際、フィリピンの戦闘機の照準にラプターが映っていた。  「この事件は、軍事史に重大な展開をもたらした。フィリピンの主力戦闘機は、ルソン島上空でコープ・サンダー演習の一環として行われた模擬空戦で、第5世代戦闘機に勝利した」とPAFの声明には書かれている。  しかし、この快挙は確かにフィリピン空軍にとって祝福に値するが、画像をよく見ると、3800万ドルの練習機から攻撃機になった航空機が、なぜ3億5000万ドル以上のラプターに勝つことができたのか、多くの価値あるヒントが得られる。  そして、ここでネタバレがある: この種の演習ではよくあることだが、F-22は片翼を後ろ手に縛って飛んでいるように見える。  フィリピンとアメリカの戦闘機の模擬交戦は、7月2日から21日にかけてフィリピンで行われた一連の二国間戦闘機訓練と専門家交流であるコープ・サンダー23-2で行われた。米空軍は、F-16とF-22を中心とする15機の航空機と500人以上の航空兵を派遣し、地上攻撃型のFA-50、A-29、AS-211を運用する同数のフィリピン空軍要員とともに訓練に参加した。  しかし、約3週間にわたって何十機もの航空機が何十回もの出撃をしたにもかかわらず、この訓練で世界の注目を集めたのは、空軍のパイロットが無線で「フォックス2!右旋回でラプターを1機撃墜!」と伝え得てきたときだった。 戦闘訓練はフェアな戦いではない コープサンダー23-2のような戦闘演習は、それを報道するメディアによってしばしば誤解される(誤解は報道機関の偏った姿勢に起因することもある)。たとえば、航空機同士の交戦は、あたかも2機のジェット機が単に空中で無差別級ケージマッチを行ったかのように、脈絡な

主張:台湾の軍事力、防衛体制、情報収集能力にはこれだけの欠陥がある。近代化が遅れている台湾軍が共同運営能力を獲得するまで危険な状態が続く。

iStock illustration 台 湾の防衛力強化は、米国にとり急務だ。台湾軍の訓練教官として台湾に配備した人員を、現状の 30 人から 4 倍の 100 人から 200 人にする計画が伝えられている。 議会は 12 月に 2023 年国防権限法を可決し、台湾の兵器調達のために、 5 年間で 100 億ドルの融資と助成を予算化した。 さらに、下院中国特別委員会の委員長であるマイク・ギャラガー議員(ウィスコンシン州選出)は最近、中国の侵略を抑止するため「台湾を徹底的に武装させる」と宣言している。マクマスター前国家安全保障顧問は、台湾への武器供与の加速を推進している。ワシントンでは、台湾の自衛を支援することが急務であることが明らかである。 台湾軍の近代化は大幅に遅れている こうした約束にもかかわらず、台湾は近代的な戦闘力への転換を図るため必要な軍事改革に難色を示したままである。外部からの支援が効果的であるためには、プロ意識、敗北主義、中国のナショナリズムという 3 つの無形でどこにでもある問題に取り組まなければならない。 サミュエル・ P ・ハンチントンは著書『兵士と国家』で、軍のプロフェッショナリズムの定義として、専門性、責任、企業性という 3 つを挙げている。責任感は、 " 暴力の管理はするが、暴力行為そのものはしない " という「特異な技能」と関連する。 台湾の軍事的プロフェッショナリズムを専門知識と技能で低評価になる。例えば、国防部は武器調達の前にシステム分析と運用要件を要求しているが、そのプロセスは決定後の場当たり的なチェックマークにすぎない。その結果、参謀本部は実務の本質を理解し、技術を習得することができない。 国防部には、政策と訓練カリキュラムの更新が切実に必要だ。蔡英文総統の国防大臣数名が、時代遅れの銃剣突撃訓練の復活を提唱した。この技術は 200 年前のフランスで生まれたもので、スタンドオフ精密弾の時代には、効果はごくわずかでしかないだろう。一方、台湾が新たに入手した武器の多くは武器庫や倉庫に保管されたままで、兵士の訓練用具がほとんどない。 かろうじて徴兵期間を 4 カ月から 1 年に延長することは、適切と思われるが、同省は、兵士に直立歩行訓練を義務付けるというわけのわからない計画を立てている。直立歩行は 18 世紀にプロ