F-15はまだしっかり現役の機体であり、あと20年近く稼働するのですが、歴史に残ることは確実なのでシリーズに加える事にしました。
Why America's Enemies Still Fear the F-15 Eagle
It’s the ultimate air superiority fighter.
Capt. Matt Bruckner, an F-15 Eagle pilot, flies over Washington, DC. Wikimedia Commons/U.S. Air Force
July 8, 2016
ほぼ三十年にわたりF-15イーグル戦闘機は空の王者とされてきた。後継機F-22ラプターが登場するまで米空軍の第一線航空優勢戦闘機はF-15だった。現時点でも近代化改装を受けたイーグルは強力な機体で、メーカーのボーイングからはさらに耐用年数を延長する提案が出ている。
- F-15のルーツはヴィエトナム戦にあり、当時の米空軍、海軍の主力機が北ヴィエトナム機へ芳しい戦いができなかったことに由来する。大型で強力な推進力を有する米戦闘機が、ずっと小型で推力も小さい敵に翻弄されたのだ。朝鮮戦争では13対1の撃墜被撃墜率がヴィエトナムでは1.5対1のどん底にまで下がってしまった。
- F-4ファントムが当時の最新鋭機だったが、空対空戦ではミサイルが主力でドッグファイトは時代遅れという前提で飛行操縦性や機関銃の必要性が痛感された。米空軍は制空任務を重視した専用機材の開発を決定し、強力なエンジン、レーダーを備え、ミサイル多数に加え機関銃を再度搭載することにした。さらにドッグファイトを勝ち抜く操縦性も重視した。
- 空軍がFX戦闘機の新規提案を求めたは1966年で、六社がこれに応じたが試作機は製造されていない。空軍は1969年にマクダネル・ダグラス(現ボーイング)を採択し、まず107機を発注した
- F-15は強力な機体になった。初期型はプラット&ホイットニーF100-PW-100アフターバーナー付きターボファン双発で通常時14,500ポンド、アフターバーナーで23,500ポンドの推力を出し、推力重量比は1以上になり、垂直上昇で音速以上の飛行速度を初めて実現した。強力な推力で高度65千フィートに122秒で達した。水平飛行ではマッハ2.5まで、巡航速度はマッハ0.9だった。
- 機首に搭載するAN/APG-63レーダーは当時最先端の半導体方式で「ルックダウン・シュートダウン」が可能で有効範囲は200マイルだった。これによりF-15は低空飛行中の標的をクラッターなしで捕捉することができた。また同レーダーはプログラム変更可能なシステムプロセッサーを初めて採用しソフトウェア変更で性能向上が可能となった。
- 当初は長距離交戦にはレーダー誘導式AIM-7スパロウ4発で、短距離には赤外線誘導方式AIM-9サイドワインダー4発で対応する構想だった。だがヴィエトナム戦で米空軍のF-4Cファントムに銃がなく、敵機撃墜の機会を何度も逸していたためF-15はM61ヴァルカン20ミリ機関砲を搭載した。
- F-15では長距離性能も当初から想定された。600ポンド燃料タンク三本で3,000マイル飛行でき、米大陸部からヨーロッパへ空中給油なしで飛べた。ヨーロッパ有事の際に迅速に戦力増強が可能となり、その後実際に空軍は砂漠の嵐作戦でF-15飛行隊をサウジアラビアへ派遣している。
- F-15試作型の初飛行は1972年で量産は1973年に始まった。その後米空軍およびイスラエル、日本、サウジアラビアなど友邦国部隊に配備された。最初の撃墜事例は1979年6月でイスラエルF-15AがシリアのMiG-21を撃ち落としている。イスラエル空軍のエースパイロットのモシェ・メルニクの功績でメルニクはその後4機をF-15AとF-15Cで撃墜し生涯撃墜記録は11機になった。
- メルニクの撃墜記録はF-15による合計104機の連続空対空戦勝利のはじまりとなった。その間F-15の喪失は皆無だ。イスラエル、米国、サウジアラビアによる撃墜には1979年から1982年までだけでもシリアのMiG-25フォックスバット、MiG-21、MiG-23さらに対地攻撃機がある。1991年の湾岸戦争では米・サウジの撃墜実績にはイラクのMiG-29フルクラム、ミラージュF-1およびIl-76中型輸送機がある。F-15EストライクイーグルではイラクのMi-24攻撃ヘリコプターをレーザー誘導爆弾で撃墜した事例が生まれた。
- 生産はその後F-15Cに代わり、新型AN/APG-70合成開口レーダー、新型F100-PW-220を搭載した。最新型はゴールデンイーグルのニックネームで、最も良好な機体状況のF-15Cを178機選び、APG-63V3 アクティブ電子スキャンアレイレーダーや共用ヘルメット搭載目標捕捉システムを採用し赤外線誘導ミサイルを発射できる。
- 1980年代末にF-15Eが開発され、F-111戦闘爆撃機を補完し敵防空網を突破する高速戦術攻撃機としてワルシャワ条約軍と開戦の場合に敵地深くを攻撃する想定だった。E型では機体一体型燃料タンクを搭載し、大量の爆弾を搭載し、APG-63レーダーとLANTRIN全貌監視赤外線レーザー照準ポッドを採用した。F-111の退役でF-15Eストライクイーグルは今も米空軍の戦術戦闘爆撃機の主役の座にある。
- 米空軍向けの最終F-15調達は2001年だが、海外向け販売でボーイングは生産ラインを維持してきた。同社は二度にわたり空軍の関心を買おうとし、まず部分ステルスのサイレントイーグルを2010年に提唱し、2016年にふたたび新型F-15をイーグル2040Cの名称で発表した。イーグル2040CではAIM-120DAMRAAMレーダー誘導ミサイルを16発搭載し当初の4倍ものミサイルとなる。タロンHATEデータリンクでF-22ラプターとのネットワーク形成が可能だ。運用構想はステルスは十分だが軽武装のF-22を敵地に飛ばし、標的情報をイーグル2040Cに送るものでイーグル2040Cは空飛ぶミサイル陣地の役を果たす。
- 米空軍は今も改修済みF-15Cと複座型Dを合計177機、さらにF-15Eストライクイーグル224機を運用中だ。アジア、ヨーロッパで前方配備中で、英国のレイクンハース英空軍基地と沖縄の嘉手納空軍基地が有名だ。日本が運用するF-15Jも沖縄から飛ぶが、今年6月には中国Su-30フランカー編隊と交戦一歩手前までになったと伝えられる。F-15Eはイスラム国攻撃にトルコのインチリック空軍基地から出撃している。
- 世界では第四世代戦闘機がまだ多数の中、老朽化しつつあるとはいえF-15は今も無敵の存在だ。F-22がイーグルの後継機種だが調達機数が足りず、F-15退役が先送りされており、今はF-22を補完する訓練が進んでいる。このため残存するC型E型が退役する2030年代はじめまで有望な後継機種がない。F-15の供用期間が半世紀にわたるのはほぼ確実で米空軍の第一線戦闘機で初の事例になる。■
Kyle Mizokami is a defense and national security writer based in San Francisco who has appeared in the Diplomat, Foreign Policy, War is Boringand the Daily Beast. In 2009 he cofounded the defense and security blogJapan Security Watch. You can follow him on Twitter: @KyleMizokami.
コメント
コメントを投稿
コメントをどうぞ。