先日の海上幕僚長もそうでしたが、米国で見解を発表する方が楽なんでしょうか。国内の言論空間はそんなに窮屈なんでしょうか。もっと国民に現実を知らせる必要があると思いますし、言いたいことはいっぱいあるはずなのに我慢されているのでしょうか。原文は極めて明快に論理を展開されており、英語としても立派なものです。国内でももっと説明してもらいたいですね。
Why the South China Sea Needs Japan's Navy Boosting Tokyo's presence is key to regional security.
Image: Wikipedia/Japan Maritime Self-Defense Force
February 2, 2016
- 冷戦終結後25年になるが、海上自衛隊(JMSDF)は冷戦時の海軍兵力のままだ。米海軍大学校のジェイムズ・ホームズ教授が提起したようにJMSDFは米海軍と連携した隙間戦力でソ連の脅威に対抗する想定で生まれ、対潜戦や掃海作業で傑出した能力を整備してきた。今日のJMSDFは目標を切り替え、新しい安全保障上の役割を域内で世界規模で米国のパートナーとして「積極的平和貢献」を希求すべきではないだろうか。
- 21世紀の変化の中で、安全保障を最も現実的に達成する方法としてJMSDFにはいわゆる「非戦闘作戦」(NCMO)の実施が一層求められており、人道支援災害救助や海賊対策をアジア太平洋で米海軍と協力して進めていくだろう。
- すでに動きが出ている。日米防衛ガイドラインが2015年8月に改訂され日米の安全保障協力は今後強化されていくだろう。日米同盟がアジア太平洋での安全保障の枠組みで中心的存在になっており、今後は日本の役割が一層大きくなってバランスをとるとともに日本は米国側同盟国との協力を強化していくだろう。フィリピンとオーストラリアが例だ。
南シナ海は新しい舞台
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- 米海軍はJMSDFとともにアジア太平洋の海洋安全保障で最前線に立っている。東シナ海(ECS)や南シナ海(SCS)の周辺国に脅威が発生しているが、SCSは中国海軍にとってインド太平洋地区での兵力投射で重要な通過地帯となり、インド太平洋で存在感を増して来た中国は一層自己主張を強めている。
- 中国が国際規範を無視してまで自らの国益を軍事力、経済力を背景に主張するつもりなのか大きな疑問が浮上している。南シナ海では中国が人工島を建設し、領海主張を拡大する中で国際ルールが定める「航行の自由」が問われる典型例となっている。
- 中国は平和的な意図で建設的態度をとっていると当然のように主張する。中国はSCSの定義として「平和、友好、協力の海」で、李克強首相が2015年11月第十八回ASEAN-中国サミットでSCSの平和安定を目指す提案を発表している。興味深いのは同提案では域外国(例 米国)は域内関係国によるSCS内平和安定確保の努力(つまり中国による周辺国へのお膳立てのこと)を尊重し支持すべきだと明確に主張している点だ。.
- 米国と日本はSCS問題に懸念を表明し航路安全をどう確保するのか、埋蔵されている石油ガス鉱脈をどう共有するかの点に触れている。とくに両国は航行の自由が中国により脅かされる可能性を懸念している。域内各国は中国が国益を強硬に追求する事態は歓迎しない。だからこそ中国の行動へ躊躇せず対応する必要があるのであり、艦船商船に公海を通航する権利を保障する海洋ルールは積極的に守る必要があるのだ。
- 一部に日米両国はSCSでは外部勢力であり域内問題に介入すべきでないとの意見もあるが、米国は太平洋海上強国として長年にわたり域内の平和安定を守っている存在であり、日米関係は地域全体の安定の基礎だ。JMSDFは同盟国として米国とアジア太平洋で一層大きな役割を果たす体制を構築すべきである。SCS問題にも日本が新しい切り口で解決策を模索し、JMSDFも対応策を検討すべきだ。日本側は米国は世界の警察官として機能できないとオバマ大統領など米国指導層が発言しているのを真摯に受け止めるべきだ。
軍事力の新しい重要性
- 習近平主席は中国は周辺国へ主導権を発揮すべきと主張している。PLAは装備近代化を続けており、局地戦準備を進めている。
- 国力増大中の中国はアジア太平洋の支配を求めていくだろう。習の「一帯一路」構想では大陸国家としての中国がアジア太平洋を影響圏に収め、域内の政策決定を支配しようとする。日米両国は域内の安全に及ぼす中国の影響力を挑戦ととらえるべきだ。
- 日本はASEAN加盟国とのつながりを強化し、中国の台頭に対してアジア太平洋内の海洋国家との連携で均衡を取ろうとしている。日本はこれまでの厳格な自国領土領海に限定した防衛方針化を大幅に変える必要があり、域内の各国を支援した新しい安全保障での役割を希求すべきだ。
- 必要な対策が実行に移されている。たとえばJSMDFはソマリア沖海賊対策を2009年3月から実施中だ。遠隔地運用によりJMSDFの基本任務でも再考が必要となり、局地防衛から米海軍はじめ同盟各国、協力各国との作戦に完全参画して世界各地の海上交通路を守る重要性を認識するに至った。(アデン湾はヨーロッパとアジアをスエズ運河経由でつなぐ、世界有数の船舶交通路である)
- インド洋と太平洋をつなぐ南シナ海で航行の自由が保障されることが世界経済に不可欠だ。米国は世界各地でのコミットメントもあり、航行の自由を単独で守れないが、ASEAN各国も責任を果たせない。そこで日本が手を差し伸べるべきだ。
- ただし海上自衛隊がこれ以上関与すると歴史問題にぶつかる。過去の軍国主義がASEAN各国に負担を与えた。ただし戦後70年をかけ日本は平和主義により信頼を回復したといえる。今日の日本は戦前の日本と全く異なる国家である。この点を明確に示し、日米同盟は問題が発生する前に行動をとるべきだ。そこで日比両国関係が重要になる。日本の装備をフィリピンから運用し、米軍と共同作戦すればSCSの平和と安定が保てるからであり、米軍機能を補強し、フィリピンによる監視偵察機能の強化につながる。
南シナ海NCMOの利点
- そこでJMSDFは何ができるか。まず非戦闘海洋作戦(NCMO)として情報収集監視偵察があり、平時の南シナ海でカギとなる機能でフィリピン他ASEAN加盟国を支援できる。NCMO任務をJMSDFは米海軍・海兵隊と調整する実力を有しているのは数十年にわたり米軍と相互運用を高い次元で演習しているからだ。日本がSCSでNCMOを実施すれば以下五つの利点がある。
- まず、日本が米国の主要同盟国として「積極的平和貢献」で安全保障での新しい役割を果たせば日米同盟が強化される。
- 次に日本がアジア太平洋でNCMOミッションのような平和的安全保障策を実施すれば積極的安全保障姿勢を示することになる。
- 三番目に域内の平和安定を維持することで国際社会に貢献しながら、現状維持を破る意思はないと示せる。
- 四番目に中国も裨益する。中国と日本には防衛協力で域内の平和と安定を共に守る絶好の機会となる。前提は日本が米国とともに域内の平和安定を積極的に守ることだ。
- そして五番目に日本に大きな恩恵が生まれる。JMSDFはその最新装備を駆使し新しい安全保障モデルを提示するが、NCMOミッションが中心になる。
- 日本が戦後の局地防衛から脱する動きを示していることに懸念を示す向きが多数ある。ただしJMSDFにとってこの変化は積極的かつ責任ある役割に移行する機会であり、日本が有する能力を米国並びにその他アジア太平洋内の同盟国、協力国に提供することにつながる。新しい役割を果たす日本により域内の平和と安定が保証され、二十一世紀に世界経済の中心に躍り出る同地域を支えることになる。
- 三本の矢を束ねれば強靭な一本の矢より強くなるのである。
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