北朝鮮よりはるかに整備された中国の核戦力についてこの国はあまりにも無知かつ安閑としているのは不思議なことです。まさか中国のミサイルが日本へ照準を合わせていることを知らないというのでしょうか。さらに論文にあるように段階式に確実に中国海軍はミサイル原潜運用能力を整備してきますから時限爆弾の上に我々は座っているようなものです。中国が貿易主要相手国の日本を攻撃するわけがないと能天気なことを言うのであれば現実政治が見えていないことになりますね。
The Future of China's Nuclear Missile Submarines: How Worried Should America Be?
Big choices ahead for Beijing.
July 7, 2016
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- 中国の国防外交政策を西側が分析が難しいのは中国が世界の通例と異なる形で行動することが多いためだ。例として中国が重視する海軍力開発では細部へのこだわりに10年以上もかけている。それでも中国が運用中の空母は一隻だけだし、海外拠点はジブチの「支援基地」だけだ。同基地は米国など各国軍の基地に隣接するが侵攻拠点とはいいがたい存在だ。
- 独自方式をとる中国の軍事戦略の中でも核戦略部門ほどその傾向が鮮明な例はない。1960年代70年代通じ「最小抑止力」に中国が自制していたのは事実で、背景に投入資源が相当制約されていたことがある。中国が米ロに相当する大量の核兵器保有を模索していたら今頃は整備が完了していたはずである。その代わりに中国は国内交通体系に投資する賢い選択をし、高速鉄道網などが完成した。その中でも中国が潜水艦搭載核兵器体系を継続して開発していることに関心が集まる。そこで今回は中国の海中配備核兵器の進展について中国の核戦略思想家 Wu Rigiang 呉日強(中国人民大学)の解説が今年初めのModern Ships(現代艦船)(出版元CSIC造船コングロマリット)に掲載されているのでこれを元に論証したい。
- 分析は2015年11月の人民海軍記事で中央軍事委員会が「南海艦隊潜水艦41号艦の乗員」を作戦可能になったと発表したことからはじめている。また2015年4月南海艦隊に実戦に近い長距離パトロール航海の実施の命令が出たことを報じている。その後に続くのが驚くべき内容で「これまで中国の戦略核ミサイル潜水艦が戦略パトロール任務に投入されたことはない」というくだりだ。PLA海軍が潜水艦発射式弾道ミサイル(SLBM(を初めて発射してほぼ30年になるが、深刻な問題があるようだ。
- 呉教授は中国の海洋核戦力への米国の脅威を歯に衣着せぬ言い方で説明している。「もし米SSNが中国の潜水艦基地付近をうろついて中国潜水艦を追跡し、開戦となり命令が下れば米潜水艦は中国潜水艦を攻撃するだろう。これは米国の標準戦術だ」 同教授は中国SSBN部隊整備と米国のABM弾道ミサイル迎撃手段の開発を連関させている。教授はソ連時代の戦略ミサイル潜水艦の展開範囲が限られていたため米ミサイル防衛は北半球に集中させておけばよかったと指摘し、次のように提言している。「中国の戦略ミサイル潜水艦が南太平洋からミサイルを発射すれば米ミサイル防衛体制には面倒なことになるだろう」 そこで教授は日本と共同開発中のSM-3ブロック2Aが中国の潜水艦発射ミサイルの実効性を阻む存在と見ている。
- 同教授の分析で最も興味深いのは中国がロシア同様の方法を採択するのか、あるいはアメリカに似た選択でSSBN整備を進めるのかという点だ。ソ連が冷戦末期に取った考え方は「防御砦」モデルだと呉教授は言い、戦略ミサイル潜水艦の防御に多様な手段を投入できる利点がある。ただこの方式の欠点は防御に多数の装備を当てる分だけ、それら装備の本来ミッションがおろそかになる点だ。これに対しアメリカ方式は「自律運用型」と教授は述べ、米海軍式のSSBN運用には高度のステルス性能、優秀な音響特性が必要だと指摘する。
- 中国沿岸にソ連式の「防御砦」を設定しようとすると渤海は深度が足りず、黄海と東シナ海は深度は潜水艦のステルス性には適するが、敵の侵入は容易だ。そこで南シナ海はどうかというと、深度はいいが音響特性が潜水艦が潜むには不利で残存性も望ましくなく、かつ海域を封鎖することもできない。「もちろん原子力潜水艦の待機海域は国家の極秘情報である」と呉教授は述べるが、PLANの声明文を引用し、配置場所を南海艦隊管轄海域で「長距離パトロール」だと述べている。
- そのほかのSSBN配置方式について同教授は簡潔に「連続海中パトロール」を維持するのかと現在英国で議論になっている点を紹介し、反対派が「費用が高くつく」ことを理由にしていると述べる。さらに米情報機関の報告を引用し、094型SSBN潜水艦四隻が建造ずみで、五番艦も建造中であることから中国は連続パトロール体制を確立するとしている。SSBNに対する指揮命令の伝え方が困難であることから教授は中国も専用の中継通信機材(米海軍のE-6TACAMOに類似)が必要だと主張。
- ただし当面は地上配備核ミサイル部隊を前面に立てるべきと教授は述べる。「移動式地上発射ミサイルの位置を突き止めるのは簡単ではない」 中国には真に威力のあるSSBN部隊整備を急ぐべきとの意見があるが、教授はまだ能力向上が必要な段階だと指摘した。たとえば、JL-3SLBM(射程12,000キロ)が実戦化すれば「中国沿岸部から米国を直接狙うことで各潜水艦の運用が柔軟になる」と説明。t.
- 同論文の結論はいささか予想外だ。「現時点では中国核攻撃潜水艦SSNs整備への要求が戦略ミサイル潜水艦をはるかに上回っている」とし、教授の言いたいことは新世代の静かな中国原子力攻撃型潜水艦の登場で西太平洋の海軍力地図が変わるということなのだろう。また新型潜水艦は東太平洋に進出して米西海岸の海上交通を攻撃する、あるいは陸上攻撃用巡航ミサイルを米本土に向けて発射するかもしれない。だが呉教授の理由付けの中心は静かで威力あるSSN部隊の整備がSSBN部隊の前提だということだ。また「原子力潜水艦の運用経験」を最重要視するが、中国と言えどもこれは一夜にして獲得できない。
- 論文から中国の水中抑止力整備やPLAN一般の目指す方向性で違いが見えてくる。中国の海軍力整備は極めて迅速に進んでいるが、同時に慎重でステップを踏む建造方式も明らかで自制しているようだ。先を見つつ洞察力のある米指導部は米国も自制することで中国が最も機密性が高く威力もある戦力を一定の統制下に置くことになると自覚すべきだ。
著者 ライル・J・ゴールドステインは米海軍大学校の中国海洋研究院で准教授を務める。上記分析は本人の個人的見解によるものであり、米海軍あるいはその他米政府機関による評価ではない。
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