この通りならいよいよ迫ってきた国民投票の結果で中国の目論見が崩れると面白いですね。
僅差で残留が決まると見ていますが。
3 Reasons China Fears Brexit
英国の離脱でEU内経済権益の消失を恐れる中国
June 19, 2016
- 疑いなく米国はBrexitで多くを失う。この数か月で多数の評論家がオバマ政権とともにこの点を強調している。だがその中で中国でも同様と指摘したのは皆無に近い。英国がEU離脱すれば、中国にも経済政治上の打撃は大きいため中国政府は憂慮している。中国は静かだが明確にBrexitに反対姿勢を示し、習近平主席自らが昨年10月の訪英時に伝えている。他国の内政へは不干渉を貫くべきという公式な立場を離れて、中国政府は「中国は繁栄の下でEUが団結していくと希望する」との声明を出しており、真意は明白だ。
- だがなぜ中国がBrexitの可能性を心配するのか。そこで中国が対英関係を重視する理由三つを理解する必要がある。
- まず第一にかつ最重要なのが中国政府が英国との緊密な関係を利用してEUの対中政策に影響力を行使したいと考えていることだ。日米両国の圧力のため、中国はこれまで以上にEUに経済利益の機会を求めており、これが一帯一路構想の原動力になっている。このため中国は英国と経済政治関係を大幅に強化しており、英国を重要なパートナーとしてEU内の代弁者に変えようとしている。中国指導部が英保守党の関心を引こうとしているのは同党が貿易立国をかたくなに信奉しているためだ。中でもジョージ・オズボーン蔵相はデイヴィッド・キャメロン首相の後継者とみなされている。
- 早くもこの戦略が二方面で結果を生みつつある。国内外の反対を押し切るかたちで英国政府は中国の市場経済待遇を受け入れるようEUにロビー活動を展開し、中国製品への反ダンピング課税を軽減することを狙った。英国政府は数十億ドル単位のEU中国自由貿易協定の推進を公に進め、ここでも中国は大きく貿易投資をヨーロッパと拡大させる目論見だった。中国の観点では、貿易拡大など追加効果により米国が進める環太平洋貿易投資連携の実現を一掃難しくさせたい。そこで英国がEU離脱となれば中国が狙うEUへの影響力拡大構想が大きな打撃を受けてしまう。またEUもパートナーとしての経済政治力が低下してしまう。
- 二番目として中国にとって英国は欧州市場への重要な入口となる。規制が比較的緩い英国に中国企業多数が多額の投資をし、巨大だが規制が厳しい5億人の欧州大陸市場への飛び石として利用している。こういった戦略的投資が近年増えており、中国企業がヴァリューチェーンを構築する事例が特にサービス産業で目立っており、米国など安全保障や技術移転のため投資が思い通りに進まない他国と好対照になっている。当然のこととしてBrexitが実現すればEU市場に英国から入る中国の目論見が崩れる。英国に大規模投資をしている大連万達Dalian Wandaの創設者王健林Wang Jianlinは「Brexitは英国にとり賢明な選択ではない。投資する側には余分な障害が生まれる」と警告している。内部関係者によれば中国企業各社は英国との新規取引を中止しており神経を尖らせながら国民投票の結果を待っているという。
- 三番目の理由としてロンドンは中国が進める通貨元の国際化戦略に重要な場所だ。世界有数の金融ハブとしてEU内に位置し、時差の関係から東アジア、欧州、米国をカバーできるロンドンはアジア外で元の利用促進を進めるのに理想的な場所だ。元の国際化は中国政府の大きな目標であることに注意が必要だ。中国は元建て国債を発行し、金融の力を借りた成長が可能となり、外貨依存を減らし、元が安定し自由に取引決済できる通貨になる。また元の国際化で中国は世界の金融秩序を形成できる立場になり真の大国となる。したがってロンドンを元国際化戦略の中心とすることは中国にとって重要事項だ。
- すでにこの戦略が効果を上げている兆候がある。ロンドンは香港に次ぐ世界第二位の元取引高を誇り、北京通貨取引市場は中国中央銀行の下部組織としてロンドン支部を開設すると発表している。もし英国がEUから離れたら、元国際化の野望と世界金融界での地位向上がロンドン通じ実現するか確証が持てなくなる。特にロンドンはヨーロッパの金融サービスの中心地であり、英国に本拠を置く金融企業はEU加盟国すべてで追加登録なしで活動できる「パスポート」機能があるので、これがなくなれば大きな打撃だ。
- ここまでは戦略レベルの大きな理由だが、中国にはこれとは別にBrexitがEUに即効で与える効果にも気をもんでいる。それは中国にはEUが最大の貿易相手であり2015年には5,200億ユーロ相当の財サービスの交易があった。英国がEUから離脱すればEUへの影響は深刻で世界経済にも同様だ。すると翌年から数年間は世界経済が減速しかねない。輸出依存の経済構造の中国はすでに経済不況にも直面しており、さらにこのシナリオが加わると困難な事態になる。
- さらに中国指導部はBrexit国民投票そのものに当惑を隠せない。予想不可能な事態になるかもしれず一度結果が出れば元に戻れない国民投票という賭けにキャメロン首相が出た理由が理解できないのだ。中国専門家のケリー・ブラウンによれば実利を追い求める中国指導部は英国が国家主権だけを理由にEUの恩恵である経済や政治上の利益から背を向ける可能性にショックを受けているという。
- 要約すればBrexitは中国にとって何もいいことがなく、戦略経済的に悪い結果をもたらす。そこで6月23日の国民投票を中国指導部はかたづを飲んで待っている。当然だろう。中国にとっては高くつく結果になるからである。
イヴァン・リダレフはキングスカレッジロンドン校で博士号取得予定で、ブルガリア国民議会で顧問も務める。Diplomat,China Brief, Eurasia Reviewで論文を発表しており、専門は国際関係論とアジア安全保障問題である。記事は著者自身の見解である。
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