本件はほとんど国内報道されていませんが、武器輸出三原則の変更、前向きになった日本の姿勢に対して米国内の保護主義条項がハードルになっていたわけですが、この合意でそれも適用除外にするという大きな意義があるのですね。ただし潜水艦案件で明らかになったように「売ってやる」姿勢では諸外国のマーケットに参入するのはほぼ不可能で、ここは必死に販路を開拓してきた民間企業のDNAを投入する必要があるでしょうね。とはいえ当面は中核部品や特殊分野のパーツの輸出が主になるのではないでしょうか。iPhoneと同様ですか。
US, Japan Sign Arms Trade Pact: Missile Defense Co-Production & More
http://breakingdefense.com/2016/06/us-japan-sign-arms-trade-pact-missile-defense-co-production-more/
SM-3 IB ミサイルを発射する米海軍巡洋艦USSレイクエリー。同ミサイルは日本との共同生産。
日米が両国間で武器貿易を開放した。乗り気ではなかった日本が合意に踏み切ったのは中国の恐怖が日本を第二次大戦後の平和絶対主義から変貌させたことの証だ。アシュ・カーター国防長官と中谷元防衛相がシャングリラ対話に合わせて相互防衛装備調達Reciprocal Defense Procurement(RDP)合意に6月3日署名した。カーター長官は「包括的かつ原理原則に基づく安全保障ネットワーク」で日本のような従来からの同盟国とシンガポールのような新規に加わった協力国を結ぶ構想を提唱している。
今回の調印で日本はアジアで初めてRDPに加盟した。23カ国がすでに加わっており、イスラエル、エジプト、スウェーデン、NATO加盟国の多くがあるが、各国製の防衛装備品はバイアメリカ法やその他貿易保護措置から適用除外となる。このクラブ加盟は安倍晋三首相にとって大きな一歩で、日本を「普通の」国家にして他国と軍事作戦ならびに装備品生産を共同で行える方向を目指す一環だ。わずか二年前までは国内産業に武器製品の海外販売を禁じてきた日本にRDP加盟は大きな成果だ。
「貿易統計を見ると航空宇宙の民生用では日本は主要サプライヤーになっている。でも防衛用途を見るとゼロだ」とTeal Groupアナリストのジョエル・ジョンソンは指摘する。RDPで大きく変わる可能性が出てきた。RDPとはとどのつまり「日本企業を米国国民と同等の待遇を与え、貴国は米国企業を日本国民と同等の待遇を与えること」とジョンソンは説明する。「バイアメリカ条項の適用は繊維製品、靴を除き免除されます」
だからと言って米側が日本の防衛装備を導入することは期待できない。たとえば三菱重工のそうりゅう型潜水艦や川崎重工のP-1哨戒機、新明和工業のUS-2水上機などだ。保護主義の色彩の強い施策は別にしても米軍の要求内容は時として独特で他国装備品がそのまま選定されることは少ない。インドはUS-2の導入に踏み切りそうだが、オーストラリアへの潜水艦売り込みはフランスに敗れている。
逆に日本はすでに米国と同等の装備品をライセンスあるいは共同生産の形で生産している。富士重工のUH-1Jヒューイ、F-16をもとにしたF-2戦闘機などがある。戦略予算評価センターのブライアン・クラークは「日本は中核分野となる潜水艦戦などで米技術を導入し、電子戦、ステルス、攻撃兵器もその例ですが、その逆は発生していません」
だが今回の合意で日本製ハイテク部品の米製兵器への採用が容易になると期待される。
クラークは「外国から装備品を完成形で買うことは米国ではまれですが、外国製の部品やミッションシステムとしての武器、センサー、ジャマーポッド等では米国製より性能がすぐれているものがあります。これまでRDPは外国メーカーからの部品購入の促進に使われており、システムとしての完成は米企業がもっぱら行ってきました」と述べる。
では日本から何を期待できるだろうか。「カメラのようは光学製品はずっと優秀です」とジョンソンは話す。電子製品でも強い。すでにペイトリオットミサイルの一部は日本製であり、スタンダードミサイルSM-3の最新版アップグレードも共同開発している。ともにミサイル防衛関連で北朝鮮を脅威と受け止める日本にはミサイル防衛技術の向上は望ましい方向だ。
ただし攻撃兵器の部品となるといまだに根強い平和絶対主義により微妙な問題になるだろう。特に日本製部品を採用した米国装備が第三国に輸出されれば問題になりかねない。「日本は戦闘が進行中となるとアレルギー反応を示します」とジョンソンは説明。
「日本は事態を整理する意味で荒っぽい修正をしてくるでしょう。日本国内の方が米国より負担感は大きいかもしれません。米国は相互調達方式に慣れています」とジョンソンは説明したが、日本は武器輸出を開始したばかりだ。「今回の措置で日本企業は米軍への装備品売り込みが可能になりましたが、日本はどのハードウェアを販売対象にするかを選択するでしょうし、販売条件も慎重に検討するはずですが、果たして買い手にとって受け入れ可能な内容になるのか疑問ですね」■
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