考えたくないことを考えないのでは備えができません。衛星機能の防御に米軍が真剣になっているのはそれだけ中国の攻撃が発生する可能性が高いからでしょう。日本人の対中観はここにきて大きく揺らいでいますが現実を直視して今のうちから思考を鍛えておく必要がありますね。また沖縄の基地機能がグアムやオーストラリアに再展開しているのはそれだけ沖縄が危険地帯であることの証ですよね。
Exposed: China's Strategy for a Possible Attack on the US
HARRY J. KAZIANIS
1:09 AM
もし戦争が米国と回避できないと中国が判断したらどうなるか。(台湾問題あるいは東シナ海、南シナ海での危機状況を想定)どのように事態は進展するだろうか。
- アジアで米中戦争が勃発する可能性は低いと皆が思っている。二国間貿易は数千億ドル単位に上っており軍事衝突が発生すれば影響はアジアのみならず世界規模に拡大するし、核戦争の可能性もあるがそこまでいけば一気に終末を迎えそうだ。だが二大超大国の間には緊張要素が十分あり、いつ本当の危機に繋がってもおかしくない状態だ。危機は冷静な態度を失えば簡単に拡大するだろう。
- ここで単刀直入に恐ろしい事態を想定する。中国が対米開戦は不可避と判断し、台湾や東シナ海、南シナ海での危機がその背景にあるとと仮定したら戦闘はどう進展するだろうか。中国がアメリカを攻撃するとしたら多様な可能性があり、大部分が非運動エネルギー兵器によるものだろうが、あるいは第三国からのサイバー攻撃も想定され、米国の権益は信じられないほどの被害を受け、同盟国とのネットワークは遮断され、アジアのみならずインド太平洋まで被害が拡大するかもしれない。
- ワシントンで口にされることの多い「旋回軸」「再バランス」の背後には次の命題がある。すなわち中国の軍事近代化による巧妙な対抗策により米国の軍事優勢は今や保証できなくなっている。
- 戦闘の行方を論じる前に基礎的な条件を確認しておこう。中国が物理的な攻撃を巧妙に実施するとする。また中国の目指すのは米軍とその同盟軍による中国への通常攻撃能力を減じることだする。また中国が核兵器の使用をしない決定をしているとし、戦域はアジア太平洋に限定する。この条件で中国はどのように対米開戦に踏み切るだろうか。以下は中国の立場で想定した筋書きだ。
第一段階 アメリカを盲目にする
- 映画カラテキッドのミスターミヤギのセリフ「目が見えない相手は戦うことができない」は近代国家にもあてはまる。アメリカが攻撃を探知する前にその視力を奪えばいいのだ。このあまりにも明快な考え方をほとんどの識者が中国が採用するはずの戦法と見ている。米国は指揮命令(C2)系統を高度のC4ISR能力と結び付けて敵の打破を目指している。1991年の湾岸戦争やその後の紛争を思い出してもらいたい。C2とC4ISRの組み合わせで米軍はかつてないほどの各軍統合運用が可能になった。敵の位置情報を共有し、敵勢力もリアルタイムで各軍並びに同盟軍に流し「スマート爆弾」を標的に投下するなど米国は究極の優位性を確保している。
- 中国が米軍の高性能探知通信能力を破壊あるいは機能低下させて「戦闘の霧」という一番忌避される状態が発生したらどうなるか。もしこれが目的の開戦なら中国はサイバー攻撃から始めるだろう。大規模な中国サイバー攻撃は米軍の指揮命令拠点を狙い全世界規模で展開されるかもしれない。米国は視力を失い戦闘指揮ではリアルタイム情報が途切れ威力が出せなくなる。この種の攻撃は(筆者が中国で担当するなら)第三国から実施するのが良い。(あるいはプロキシサーバーを使う) 米国ではシステムが攻撃を受けていると分かっても実行犯が誰なのか、即座に判断できないだろう。この間は中国が有利になる。
- アメリカが自軍中枢を攻撃しているのはだれかを悟る前に次の攻撃は実施する。今度は中国の仕業だと分かる痕跡をあらゆる面で故意に残す。軌道上の米衛星群を攻撃し、米情報収集能力と通信能力を標的とする。この段階で開戦となり実行犯も断定される。
飽和攻撃:大量ミサイルの一斉発射で「衝撃と恐怖」を期待する中国
- 中国はまず敵の目をつぶす。そのあとハンマーをたたきつける。西側では中国は大量の巡航ミサイル、弾道ミサイルを米国及び同盟国に発射してくると予測する。大部分は精密攻撃用の中距離、長距離兵器で対艦弾道ミサイル別名「空母キラー」も発射されるだろう。
- 中国は米国と同盟国がC2ならびにC4ISRで大混乱しているのを確認したうえで中国版の「衝撃と恐怖」を展開するだろう。筆者が中国側なら巡航ミサイル、弾道ミサイルを大量に地上、海上、空中から発射する。標的は米空軍基地、同盟国の航空基地で多数の高性能機材が地上に残ったまま絶好の目標となる。司令部や太平洋上の米海軍艦船も含む。中国は一回の攻撃で最大限の効果を狙い、米同盟側の貧弱な反撃を誘発しようとするだろう。あるいは反撃は皆無かもしれない。
米軍・同盟国軍は耐えられるか
- 大雑把に言うと、このシナリオ(ここでは時間と行数の関係で大幅に簡略化している)は米および同盟側で少なくとも2000年代から検討されているものだ。作戦概念としてはエアシーバトルの名前で知られており、太平洋各地に戦力を分散配備させ攻撃効果を減らそうとしているが果たして米軍はこのような攻撃を受けて耐えられるだろうか。
ミサイル防衛はどこまで効果があるか
- 長年にわたり筆者はミサイル防衛を信じ、いまでも変わりはない。(想定するのは北朝鮮やイランが一発あるいは少数のミサイルを米国あるいは同盟国に発射した場合) だがここでは事情が異なる。上記シナリオでもミサイル防衛に一定の役割を期待するが、中国が飽和攻撃を仕掛けた場合には全面的な迎撃は不可能で、せいぜい攻撃を遅らせるぐらいだろう。
- 理由は簡単な算数だ。中国が大量ミサイル攻撃を太平洋全域で実施してくれば、迎撃ミサイルが足りないし、迎撃ミサイルが100発100中だとしても対応しきれない。ではもっと迎撃ミサイルを配備すればいいのか。この装備は極めて高価だが中国にとってはもっとミサイルを配備すればことが足りるのであり、問題は悪化するだけだ。
- では次の場合はいかがだろうか。中国はわが海軍艦船だけを標的として独創的な手を打てる。もし中国が旧式ミサイルのみ発射しわが方の海軍艦船を狙えば、こちらの迎撃ミサイルを消耗させる囮攻撃になる。
- 米海上部隊が一定数の防御対策しかもたないところに大量の巡航ミサイル、弾道ミサイルで圧倒されてしまう事態が発生するのではないか。敵が故意に旧式ミサイルから発射して防御側の在庫を消費させた上で高性能ミサイルで正確な照準をあてれば大打撃にならないか。
基地の抗堪性強化は?
- もうひとつ高価だが効果の上がる対策がある。
- 米および同盟側の基地を巨大な掩蔽壕とし中国の大量攻撃を吸収したうえで反撃できないだろうか。これは実施可能だろうか。
- CSBA上席研究員のジョン・スティリオンへ聞いてみたことがある。「ひとつの基地全体を堅牢化するのにいくらかかるのか」 太平洋で大型基地一か所を抗堪性強化工事すると国防総省は「数百億ドル」かかると試算しているとスティリオンは述べた
- 「どこまで抗堪性を持たせるか、ですべて変わります。敵の戦闘爆撃機の有効半径内に収まる基地は攻撃にさらされやすく、弾道ミサイル攻撃では子爆弾も投入されるでしょう。この場合強化壕に入っていない航空機は破壊され、数百万もの鋼鉄破片が滑走路、誘導路をむちゃくちゃにします。こうなると強化壕で生き残った航空機も滑走路をきれいにするまで運用できません。除去は時間ばかりかかる作業で大量の人員投入が必要です。また敵が第二次攻撃を加えるかもしれません。今度は巡航ミサイルや有人機で精密誘導兵器を燃料施設、滑走路、航空機を狙ってくれば基地は当面は運用が期待できなくなります」
結語にかえて
- 今回ご紹介したのは想定シナリオの一つに過ぎないが中国は戦争と平和をはかりにかけ開戦となれば一番効果的な手段を選択するはずだ。
- 今回想定した状況では気分を暗くなるが、米国にも希望を持てる要素がある。まず米国はグローバル超大国であり強力な兵力の展開先は世界各地であり、アジアだけではない。中国が大量ミサイル発射で開戦しても米軍は世界各地から兵力を集め反撃ができる。また次のことは忘れないように。もし中国が先制攻撃すれば各国世論は米国の反撃を支援する有志連合につながるはずだ。
- またスティリオンが以下言うように、中国戦術の効果を下げる方法は可能とはいえ、注意が必要だ。
- 「精密攻撃の脅威に対し効果的な作戦運用のカギは抗堪性、兵力分散、迅速修理能力、積極的防衛(ペイトリオットとかTHAAD)ならびに脅威からの距離を組み合わせ作戦を効率的に持続し出撃態勢を維持することです。特に距離がカギとなるのは脅威対象に近いとそれだけ多量の火力が飛んでくることを覚悟せねばならず、基地の防御がそれだけ厳重かつ困難になるからです。近距離に位置する基地ではどれだけ防御を強化しても作戦の実施はできなくなるでしょう」
- 筆者含め誰も米中の超大国間の戦争は見たくない。その結果は恐怖としかいいようがない。それでも可能性は存在する。今回提示したような思考訓練で最悪の状況を想像すればリスクが明らかにできる。米中両国が対立緩和の方策を見つけるよう祈るばかりだ。
筆者ハリー・J・カジアニスはウェブサイトRealClearDefenseで主筆をつとめ、国益研究所Center for the National Interestで国防政策の上級研究職(非常勤)、 対中政策研究所China Policy Institute でも研究員(非常勤)である。National Interest誌で編集主幹、またThe Diplomat編集長も歴任している。
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