ISIS向けサイバー作戦は相当の効果を出してきたようです。当然相手方も防衛対抗措置を取りますので、当面はいたちごっこでしょうか。でも資金源の遮断が効果を挙げれば活動も低調になっていくはずです。イスラムの教義でまとまった組織というよりも金銭でつながった利益集団と見るほうが正しいのかもしれません。
The Cyber Threat: Cybercom’s War on ISIS
May 2, 2016 5:00 am
アシュトン・カーター国防長官と統合参謀本部議長ジョセフ・F・ダンフォードJr海兵隊大将 / AP
ペンタゴンが秘密のうちに実施中のイスラム国へのサイバー戦で追加情報が浮上した。
- アシュ・カーター国防長官とジョセフ・ダンフォード統合参謀本部議長が米サイバー軍の作戦内容について質問を上院公聴会で28日受けた。
- 「目的はISILの指揮統制機能を妨害し、資金移動を妨害し、地元住民を恐怖で統治するのを妨害し、外部から戦闘員を募集するのを邪魔すること」とカーター長官は述べ「このすべてでサイバーを利用して実施中です」
- ダンフォード議長からは「仮想隔離状態を作り出そうとしています」「地上作戦を補完し、特にISILが外部各地で展開を狙う作戦を対象にしています」と発言。
- カーター長官は米国と有志連合軍の空爆作戦の裏でシリアとイラク国内でサイバー攻撃を行っていると述べた。「感触ですが直接の効果が生まれています。空爆と並行してインターネットを遮断しています」「近代戦では敵打破のために利用できる手段すべてを投入する必要があります」
- 二人とも作戦の詳細には触れなかったが、サイバー攻撃は1月に開始され秘密のベールに覆われたままだ。
- バグダッドでは空軍少将ピーター・ガーステン(対ISIS軍事作戦および情報担当副司令官)が火曜日にサイバー作戦が「戦場に効果を」上げつつあると述べたが「詳細は最高度の機密情報だ」とした。「高度に調整された作戦であるとだけお伝えできます。デーシュへ照準を合わせており、損害を与える能力もこちらにはあります」
- 少将は調整業務の始まりは「特定の標的に対してどんな効果をあげたいのか」を考えて計画立案することだと説明。「各情報機関と作戦部隊など関係者はすべて調整し、図上で作戦を立てます。各方面から内容説明があり、その後で実施に移ります」
- ISISに対してサイバー軍は27個編成した戦闘ミッションチームの一つを選択し、タンパにある中央軍と組ませる。中央軍はイスラム国への軍事作戦を統括している。
- チーム構成は軍人、民間人、契約企業で海外のコンピュータシステムを標的にサイバー諜報活動を行う。アラビア語が達者なものが多数あり、ISISの作戦・通信の理解には不可欠だ。
- サイバー軍の目標はチーム数を133まで増やし、合計6,187名規模にすることで、各チームは45名から60名が配置される。
- サイバー攻撃立案の第一段階は作戦の必要条件を設定することで通常は軍がISISの「重心」と呼ぶ指導層、資金、兵器、そして指揮統制通信が行われるサイバー空間が標的となる。
- イスラム国は携帯装置で通信をしており、有線通信も多用されている。インターネットの利用は減っているが、アルカイダはまだウェブサイトを好んで使っている。
- ISISは人の手を介して重要内容を伝えることもあり、部隊指揮官やそうした文書配達係はサイバー攻撃でも高価値の標的になる。
- 最近入手したISIS内部文書によればフェイスブックやツィッターも多用され戦闘員の移動からシリア入りまでを助けていると判明した。
- サイバー攻撃の標的にはほかに公式、非公式のISIS情報があり、公式発表からビデオ映像まで同集団のテロ活動の支援に使われている。
- ISIS戦闘員の使う主なアプリににテレグラムがあり、データを暗号化している。サイバー作戦ではこのアプリを狙い暗号解読を目指している。テレグラム利用者のフォーラムにはプロパガンダや指示内容が含まれており、例としてオンラインで正体を隠す方法を説明するものがある。
- IS関係者は海外のハッカー集団に金銭で各国政府ウェブサイトから極秘情報を盗ませていることが判明しており、将来のテロ作戦の参考にしている可能性がある。今後は米サイバー部隊がここに着目するはずだ。
- 2014年だけでISISが資金10億ドルを調達している。原油販売、恐喝、身代金、現金押収、ISIS支配地域での徴税や美術品密売でこれだけの金額を作った。
- そこで資金調達を妨害すべく、サイバー攻撃がISISの財務システムに行われている可能性があり、機能停止や妨害、またはなりすましで偽情報を流しているのだろう。
- 軍事問題の専門家によればISIS独特の指揮命令形態はアナリストが「中央統制、分権を組み合わせた実施」と呼ぶ方式で自称カリフのアブ・バカ・アルバグダディを頂点に指導層には中央方式で命令を伝え、実際の実施詳細は現場指揮官に任せる方式だという。
- そこでサイバー攻撃の第一段階では広範囲の情報収集で対象活動の指揮統制の仕組みを解明する。
- サイバー軍司令官マイク・ロジャーズ提督は4月5日、米国からのサイバー攻撃で「ISILは攻撃の立案、実施でイラクあるいはシリア内の拠点から米国を狙うのが一層困難になっており、わが軍将兵による物理的な攻撃は安全に実施できるようになり、最終的にISILを撃滅する」と証言している。
- ISIS自体のサイバー戦実施能力についてロジャーズ大将は懸念はあるが相手方のサイバー攻撃実施能力は限定的であり、むしろサイバー空間を利用した宣伝プロパガンダや、戦闘員勧誘、過激思想の普及、資金集めが中心になっていると述べた。
- サイバー作戦自体が秘密の扉の向こうにあるため、少なくとも2010年代末まで作戦が効果を上げているかは明らかにされないだろう。■
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