おとり捜査で摘発されたのは氷山の一角かも。中国側も今後はより巧妙に動くかもしれません。自力開発より金の力で他人の成果を奪えばよい、という中国式の価値観がここにも見られますが、対象となる製品は日本製でもあり、お金に苦しむ日本人がいつ中国に良心を売るか(売ってしまっているか)わかりませんね。
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Chinese National Arrested for Carbon Fiber Theft Attempt
司法省発表資料によれば、中国国籍フイ・「フランク」・スンは東レのM60JB-3000-50Bカーボンファイバーをおとり捜査官から入手しようとした。国土安全保障省の捜査部門国土保全捜査隊(HSI)がスンを逮捕した。同容疑者は航空宇宙、軍事分野で使われる高品位カーボンファイバー素材を密輸しようとしていた。
- スンはHSIのおとり捜査官にカーボンファイバーを「バナナ」の暗号で連絡するよう指示していた。4月11日に中国からニューヨークに到着し、カーボンファイバー買い付けを図った際にHSI捜査官に用途は中国の軍事装備用だと語った。スンは同時に中国のミサイル開発に関係し、上海にある中国国家航天局の職員であると身元を明かし、軍との関係も深いと述べたと公訴文書にある。
- 「スンは潜入捜査員に現金23千ドルがカーボンファイバー代金として手渡した。さらにカーボンファイバーを中国に非合法輸出するリスク補償として2千ドルが潜入捜査員に支払われた」と政府文書は述べている。
- HSIおとり捜査では偽企業を立ち上げ、オンラインで各種製品販売用の「ショールーム」をオンライン上に開く。今回のおとり企業の正体は不明だが、ニューヨーク市内にあるようだ。
- スンは今回の取引は第三国を介して行うとし、オーストラリア、ベルギー、韓国の名前を挙げている。スンは以前の取引で韓国業者からカーボンファイバーを入手しており、その際は韓国の輸出管理体制を出し抜くため、その韓国業者と共謀してカーボンファイバーを「アクリル繊維」と偽ったという。カーボンファイバーとアクリル繊維は視覚上は区別しにくい。スンは今回の潜入捜査官に「バーコードはすべて消す」よう求め「該当商品の所在を追跡できなくし、生産地をわからなくしろ」と指示したと文書は述べている。
- これ以前のおとり捜査官との連絡でスンは東レの M55JB-6K カーボンファイバーを「米国内の知人」から入手したいとも伝えていた。
- 司法省はスン逮捕を4月13日に公表した。スン事件はHSIの対テロ工作・麻薬・高度不正行為・サイバー犯罪部門が担当している。
- 中国はこれまでも米国内で兵器転用可能なカーボンファイバーの入手を図っている。
- 2013年に連邦裁判所は中国国籍Ming Suan Zhangもカーボンファイバーの国外持ち出しを図り懲役57か月の禁固刑を受けている。この際のおとり捜査はニューヨーク市内で展開した。司法省資料によればZhang被告が米側当局に浮上したのはカーボンファイバー数トンを台湾バイヤーに調達させようとしたためで、東レM60もその一部だった。Zhan被告は「新型戦闘機」に使用するためと述べ、中国北方工業が開発中の機種とした。同社はハイエンド軍事装備製造で知られる。
- 別の中国国籍Lisong Maは2014年に「兵器級」の東レT800-HB12000-50Bカーボンファイバーを中国に持ち込もうとして摘発され46か月の禁固刑判決を受けている。MaはT800を米おとり捜査官からニューヨークで買い付け上海へ送るつもりだった。Ma被告は5トンのファイバーを入手しようとしたと陳述している。
- ワシントンDCに本拠を置く科学国際安全保障研究所の上級政策研究員アンドレア・スティッカーによれば今回のおとり捜査は「ミサイルやミサイル用カーボンファイバーの拡散予防および輸出統制の実効性向上に有益な効果を上げる」意味があるという。スティッカー研究員はさらにT300基準以上のカーボンファイバーのM60(Mファイバー)はガス遠心分離機の回転部分にも使えると指摘する。「今回の事案から中国密輸業者が引き続き政府取り締まりを逃れて活動中であり、中国政府が直接関与しているのも明らかになった」という。■
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