意外に各案件の予算要求が慎ましい規模になのがわかります。つまり概念設計や実証がこの程度でできる基礎技術力があるということなのでしょう。逆に運用を想定した開発ではF-35のように超大規模な予算が必要になるのはどうしたものでしょうか。
--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
Hypersonics Stay High On Darpa’s List For 2017
Feb 22, 2016 Graham Warwick | Aerospace Daily & Defense Report
Tern: Darpa
Darpa国防高等プロジェクト庁の2017年度予算要求を見ると大型実証案件とともに継続案件がわかる。
- 新規事業に高性能全範囲作動エンジンAdvanced Full-Range Engine (AFRE) がある。ターボジェットからラムジェットへ切り替え可能なタービン・コンバインドサイクル (TBCC) 式エンジンだ。Darpaは初期設計に9百万ドルを要求。
- TBCCは将来の極超音速長距離攻撃用手段、高速偵察用再利用可能宇宙往復機の実現のカギを握り、AFREでは既存のタービンエンジンを使用し運転切り替えの地上試験を行う。
- AFREは打ち切りになったモード切替プロジェクトMoTrを引き継ぐようだ。MoTrの前にはFacetコンバインドサイクルエンジン開発事業があり、炭化水素燃料でマッハ3から6のラムジェット・スクラムジェット推進を狙っていた。
- 超高速分野では極超音速空気取り入れ式兵器構想 Hypersonic Air-breathing Weapon Concept (HAWC) の初期設計審査があり、空中発射式長距離攻撃ミサイルの開発を2016年第一四半期中に目指す。
- Darpaは49.5百万ドルでこれの実証飛翔体で重要設計審査critical design review (CDR) を2017年第二四半期に行い、実寸大自由噴流地上テストで炭化水素燃料スクラムジェットエンジンの開発を目指す。
- また22.8百万ドルで戦術推進滑空体 Tactical Boost Glide (TBG) の飛行テストを行う。これは空中発射式のロケット推進極超音速滑空兵器の想定でCDRは2016年第四四半期、飛行実証を2017年とする。TBGは既存の空軍機から空中発射するもので、海軍の垂直ミサイル発射装置と互換性を持たせる。
- HAWCおよびTBGはDarpaと米空軍の共同事業で、空軍研究所が進めてきたボーイングX-51ウェイヴライダー・スクラムジェットエンジン実証事業を引き継ぐ。ボーイング、ロッキード・マーティン、レイセオン各社が競作中だがDarpaは参入希望企業を拒まない姿勢だ。
- 別の飛行実証事業ではXS-1実験宇宙機事業に50.5百万ドルを要求する。この予算でCDRを完了し、小型再利用可能な打ち上げ機の製作をめざす。目標は打ち上げ10回を10日以内に実現することだ。
- さらに52百万ドルで垂直離陸着陸(VTOL)方式のXプレーン事業をめざし、高性能のホバリング、水平飛行を高速かつ実用的なペイロードで実現する。本四半期中に調達先選定をすませ、機体製作は2017年度に行う。
- 新規事業には無人機対抗防御装備Counter Unmanned Air Systems and Force Protection (CFP) もあり9百万ドルを2017年に要求している。CFPでは小型UASやロケット推進手りゅう弾、対戦車兵器他に対抗できる探知、追尾、迎撃手段を研究する。
- 継続案件ではノースロップ・グラマンの全翼機VTOL型UASのTern(アジサシ)事業のCDRと機体組立てに12百万ドルを要求。プレデターとほぼ同寸の機体で駆逐艦など小型艦艇で運用する構想だ。
- グレムリン事業には36百万ドルを要求する。空中で発進・回収し再利用可能な小型UAV多数を輸送機から一斉発進させる構想だ。2017年度予算でPDRを完了し実証機材の製作に向かう。
- その他継続事業に対潜戦連続無人試験艇 Anti-Submarine Warfare Continuous Trial Unmanned Vessel (Actuv)があり、全長132フィートの実艇を海軍研究所に2017年に引き渡す。
- エイリアス事業は乗員による任務を自動化する構想で飛行実証を2016年度に行う。一部技術内容の応用は2017年末の予定。■
コメント
コメントを投稿
コメントをどうぞ。