2015年3月31日火曜日

F-35:2Bソフトウェア完成遅れるが海兵隊はIOCに向け努力中


ボグデン中将は率直な物の言い方をする人のようですね。これだけ大規模なトラブルにある事業を統括し続ける人だけに普通の神経ではないのかもしれません。しかし次から次に話と違う事態がF-35では発生しているようで目が離せません。

‘I Am Not A Salesman For F-35:’ Lt. Gen. Bogdan, F-35 PEO; 2B Software Delayed

By COLIN CLARKon March 25, 2015 at 6:53 PM


Offical Photo : MGen Christopher Bogdan

F-35事業を統括するクリストファー・ボグデン空軍中将が記者を前にF-35に関する正しい報道を行うよう求めた。その際に注目を集めた中将の発言は「自分はF-35のセールスマンではない。またF-35事業の提唱者でもない。最高の事業を運営するのが仕事だ」というもの。
兵器開発に当たる制服組は得てして自らが携わる兵装の信奉者になる。予算の獲得に奔走しながらどれだけうまく事業が推進されるかで昇進にも影響する。F-35取材の中ではロバート・ゲイツ元長官がボグデンの前任者だったデイビッド・ハインツ海兵隊少将を更迭した場面が記憶に新しい。2010年度予算の説明の際にハインツはF-35向け第二エンジン選択を批判し、ゲイツは公の場で自分の意見と対立する人を我慢できなかった。
ボグデンが取り組むのは米国史上最大の通常兵器開発事業だ。その彼が事業の信奉者ではないと公然と発言するのは勇気のいることだ。その同じ人物が当初はJPOとロッキード・マーティンの関係は「ここまでひどいものは見たことがない」と言っていた。つまりボグデンが心のなかを明らかにするのは前例があることになる。
記者も納税者であり、一言言わせてもらえばボグデンの発言を聞いて嬉しくなった。ただしそのままうけとめてはいけない。F-35事業の国際規模を考えると運営には演技力と雄弁ぶりが必要。
そこでボグデンが他にどんなことを行っているのか知りたくなる。
まず2Bソフトウェアは6月までに利用開始できない。この月に海兵隊は初期作戦能力(IOC)獲得を宣言する予定なので微調整が必要だ、とボグデンは発言。ソフトウェアが完成するのは秋の初め頃になりそうだ。
F-35ではデータ融合機能がもてはやされる。数学的にはアルゴリズムとソフトウェアの力で機内の各種センサーのデータを集め、脅威ライブラリーと比較対象して敵の正体を教え、同時に撃破のための最適な手段を示す。この融合機能が補修が必要になっている。
F-35は四機編隊で飛行し各機でデータを共有する設計だ。軍は詳しくこの点を話したくないのだが、編隊は密ではなく、数十ないし数百マイル離れての飛行を想定している。12月の実証実験では融合機能に問題が見つかった。F-35の一機がセンサーを作動して地上目標を探知した際には融合エンジンがうまく作動した。データ共有も2機でうまくいった。だが四機で共有しようとしたら実際は存在しない目標が表示されたほかボグデンが詳細を紹介したがらない異常が発生した。
問題ではあるが、ボグデンによれば海兵隊はIOC宣言を99日以内に実施するという。メーカーのロッキード・マーティンとしては完全作戦性能を実現するソフトウェア三種類(2B,3I,3F)を予定通り完成させないと300百万ドルの報奨金を受け取れず楽しくない状況だ。
海兵隊はボグデンが次善策とよぶ2機ずつ2組の機体でデータ共有する手段を使い、ロッキードがソフトウェア改修をするのを待つという。
また同機の運用・点検システム(ALIS)も大きな課題だとボグデンは言う。
気になる方のために現状での機体価格は以下のとおりだ。順に第六ロット、第7ロット、第8ロットの低率初期生産分の単価を示す。
  • F-35A $117 million; $112 million; $108 million
  • F-35B $145 million; $137 million; $134 million
  • F-35C $134 million; $130 million; $129 million


2015年3月29日日曜日

★中国の新型飛行艇と南シナ海の関係




Seaplane Could Advance Chinese SCS Claims

By Wendell Minnick 12:55 p.m. EDT March 28, 2015
635630566172985247-DFN-China-airshow(Photo: Wendell Minnick/Staff)
TAIPEI — 現地専門家によれば新型飛行艇により中国は南シナ海の領有権主張を強めてくるだろう。
  1. 蛟竜 Jiaolong (Water Dragon) AG600は中航通用飞机有限责任公司 China Aviation Industry General Aircraft (CAIGA)が開発中で中国最大級の飛行艇となる。CAIGAは試作機の機体前部の組み立てが完了したと3月17日に発表している。
  2. 昨年の珠海航空ショーで配布された資料によれば、同機はターボプロップWJ-6を四基搭載し、航続距離は5.500キロあり、南シナ海(SCS)全域を飛行範囲に収める。スプラトリー諸島で中国はヒューズ礁、ジョンソンサウス礁、ゲイブン礁を拡張する工事を実施中だ
  3. 中国はSCSに戦略的な意義を認識し、飛行艇があれば同地域の実効支配を島伝いに広げられると考えている。
  4. 「飛行艇は中国が建設中の人工島への物資補給に最適」と指摘するのはシンガポールの S・ラジャラトナム国際研究所S. Rajaratnam School of International Studiesのリチャード・ビツィンガー Richard Bitzingerだ。「また各島はAG600による海上監視飛行の基地として利用できる」
  5. AG600の政治的意義を説明するのは台湾の中華民国戦略研究会ROC Society for Strategic Studiesの研究員チン・チャンChing Changだ。「領有権を主張するためには実効支配が必要だ」とし、AG600は「漁業活の監視、密漁の取り締まり、汚染予防、捜索救難、緊急医療移送、気象観測、地質調査と南シナ海を舞台に中国の政府による機能拡充に活用されるだろう」
  6. こうした活動の実施により中国がかねてから主張している南シナ海でのEEZ経済的排他水域の実現が近づく。
  7. CAIGA資料ではAG600は四種類のミッションを想定している。捜索救難(SAR)、消防飛行、人員輸送(50名)、海上監視飛行である。また軍用では情報収集、電子偵察にも投入できるはずとS・ラジャラトナム国際研究所のサム・ベイトマン Sam Bateman は見ている。ただし、ベイトマンも同機の登場でSCSの全般状況が一変することはないとみている。
  8. CAIGA資料では軍用用途について触れていないが、これまでの歴史を見れば水上機の商用需要が小さいことは明らかだ。大型飛行艇を製造中なのは日本とロシアだけで、SARや消防用の需要はごく限られている。両国は冷戦時の研究開発を活用しているが、中国が民間需要では多くを望めない機体を新設計し生産ラインを新設した理由は何か。軍事利用が念頭にあることは明らかだとみる筋もある。■

.


2015年3月25日水曜日

インド国防相来日、US-2購入、安全保障枠組みで協議



Parrikar heading to Tokyo with US-2, closer strategic ties on the agenda

Rahul Bedi, New Delhi and James Hardy, London - IHS Jane's Defence Weekly
23 March 2015
  
インド国防相マノハル・パリカル Manohar Parrikar が3月30日に二日間の日程で東京を訪問するとインド政府関係者が明らかにした。二国間戦略防衛関係の強化が目的としている。
パルカル国防相は昨年11月に就任し、これが初の外遊となる。インド新政権はアジア各国との戦略的枠組みの拡大を大きな課題と捉えている。
関係筋によればパルカル国防相はかねてから進行中の新明和工業製US-2水陸両用捜索救難機計12機のインド海軍導入案件の協議をするという。
インドはUS-2iを完成機2機とライセンス生産10機で16.5 億ドルで調達したい意向で正式調印を2016年早々に執り行いたいとしている。■


2015年3月24日火曜日

★主張 南シナ海の平和維持のためインドネシアに国際海上作戦センターを設置すべきだ



インドネシア大統領が訪日していますので、ちょうどいいタイミングでしょう。南シナ海、インド洋を視野に入れた海上交通の安全確保の作戦基地をインドネシアに設置してはどうかという現役米海軍士官の意見です。またインドネシアへのテコ入れも視野に入っているようですが、海洋国家としてのアイデンティティに目覚めようという資源大国(最大のイスラム国家でもあります)のインドネシアを安定させ、中国の危険な動向に対する抑止力に巻き込むという構想にはなかなか面白いものがあります。集団的安全保障の典型例になるかもしれません。注目したいと思います。

Essay: U.S. Should Consider Establishing a South China Sea International Operations Center in Indonesia

March 9, 2015 7:15 AM • Updated: March 8, 2015 11:32 PM

Adm. Harry B. Harris Jr., commander of U.S. Pacific Fleet, walks with Japan Maritime Self-Defense Force Cmdr. Kazutaka Sugimoto on Feb. 6, 2015. US Navy Photo
太平洋艦隊司令官ハリー・B・ハリスジュニア大将が海上自衛隊杉本和孝二佐と基地内を歩くon Feb. 6, 2015. US Navy Photo


米太平洋軍U.S. Pacific Command (PACOM) の司令官に就任するハリー・B・ハリス大将は議会で昨年末証言し、「中国の台頭が軍事的には地域内で、経済的には全世界的に顕著となり、自己主張を全面に出した行動を域内各国に示すことで当方には機会になる一方で慎重な対処が必要だ。我慢強くこの最大課題に取り組む必要がある」と発言。
.
その課題に答えるべく、米海軍は国際海洋作戦センターInternational Maritime Operations Center (IMOC) 司令部をインドネシアに置き、アジア太平洋地区での海軍の責任を示しつつ、南シナ海やインド洋の最新状況を監視し、中国の台頭に対応する新しい仕組みづくりに乗り出すべきだと考える。

人民解放軍海軍The People’s Liberation Army Navy (PLAN) は潜水艦・水上艦建造に注力しており、三隻の空母を運用する計画で、艦船を標的とするDF-21D弾道ミサイルを整備している。とくに潜水艦部隊の増強が接近阻止領域拒否作戦の中心的手段だ。2020年までにPLANはアジア太平洋地区の各国の二倍の規模の潜水艦隊を運用する。単に隻数だけでなく各種任務の内容や作戦の地理的条件も重要な要素だ。

PLANは艦船の作戦範囲をこれまでの中国本土沿岸から広げており、今後も拡大傾向は続くだろう。PLANは2009年以来、艦船の作戦継続能力を誇示しており、海上物資補給をインド洋でも行っている。2013年から14年にかけて、インド洋に原子力・通常型双方の潜水艦を三回派遣している。

インド洋まで活動範囲に収めた中国は同時に南シナ海で商船団の規模を拡大している。国家海洋局 State Oceanic Administration (SOA)は中国共産党傘下の巨大機関でその役割の2つに注視が必要だ。ひとつが領海と主張する範囲での法執行であり、海底探査測量がもうひとつだ。SOAは中国の沿岸警備隊(CCG)他海洋関連機関を司っており、2020年までに500隻の艦船を投入する。SOAは共産党に「先制使用方針」を実現する手段となっている。つまりスカーボロー環礁の例のようにCCGをまず領海主張の手段とし、紛争に発展すればPLANの強力な威力を投入する。法執行の一方でSOA所属艦船は海中探査を行い資源探査とともに潜水艦作戦に適した海中の状況も調査している。

また南シナ海・インド洋で中は別の軍事活動を開始しており、プレゼンスを強めている。PLANはフィアリー・クロス礁(スプラトリー諸島)で浚渫、港湾設備拡張を実施中で、水上艦・潜水艦用の補給拠点とすることをねらっているようだ。さらに滑走路は航空作戦に利用し、兵器を設置し防御、攻撃双方に想定しているようだ。2014年にはPLAN司令官呉勝利提督 Wu Shengli が立ち寄り本人が南シナ艦隊司令官だった2004年当時に打ち上げた構想の実現度合いを視察、習近平国家主席President Xi Jinping が同年にスリランカ訪問した際にはPLANは同国を潜水艦の遠距離補給基地とすることを認めている。PLANにはインド洋では恒久的海軍基地がないが、スリランカ、イエメン、パキスタン等とは経済連携を強めており、海軍部隊の前進配備の支援が出来る体制を整備してきた。

米国政府は戦略的な地域再配備を重点としてきたが、オバマ政権は2015年度版国家安全保障戦略でこれを明記している。新戦略案では中国の軍備近代化と領土恫喝の可能性に着目している。また米国が「力の立場から競合状態を管理下に置くこと」を提言する一方、「中国軍の近代化とアジア内プレゼンス拡大を注意深く監視し、誤解や誤算による不測の事態の発生が起こらないよう努力する」ことを求めている。

Cmdr. Steven Foley, left, commanding officer of the guided-missile destroyer USS Sampson (DDG 102), and Gen. Moeldoko, commander of the Indonesian national defense forces.
Cmdr. Steven Foley, left, commanding officer of the guided-missile destroyer USS Sampson (DDG 102), and Gen. Moeldoko, commander of the Indonesian national defense forces.


再配備戦略の一環として米海軍はIMOCをジャカルタに設置し、インド洋と南シナ海の両方に目を光らせるべきだ。IMOCはインド、インドネシアはじめ東南アジア各国の海軍と協力する作戦センターとなる。この各国海軍が共同して運営する作戦センター構想は前例があり、バーレーンに司令部を置く合同海上部隊が存在する。また英国ノーウッドにはNATOの連合海上司令部が海軍作戦と商船部隊の双方で調整業務を24時間運用している。

IMOCはアジア太平洋の商船通航の保護もできる。2015年度版国家安全保障戦略では米国は「通商航海の自由航行を保証し、緊急時に迅速に対応し敵意ある行動を取るものを阻止すべき」としている。海上交通の重要性は数字の上でも十分明らかだ。世界交易の9割以上が海上で運ばれ、そのうち3割近く、金額で5兆ドル相当が南シナ海を通過している。

中国も南シナ海、インド洋双方の経済的重要性を理解している。中国の必要とするエネルギーの84%がマラッカ海峡を通過する。習主席は海洋力整備を21世紀の海上シルクロード構築ととらえ、港湾、インフラ整備、特別経済地区をセットで東南アジアと北部インド洋に建設する、としている。南シナ海、インド洋での中国の経済開発が加速化している。2014年にはベトナム付近で海上石油掘削施設を稼働させた際にはCCG艦船数隻が近隣を保護の名目で遊弋している。習主席はスリランカ、モルディブ訪問で数十億ドル規模のインフラ投資を行っている。2012年には東アジア地域包括的経済連携 Regional Economic Comprehensive Partnership (RCEP) を提唱し、ASEAN加盟国等を取り込む自由貿易協定体制を目指しているが、米国は参加していない。

Why Indonesia?

International Monetary Fund (IMF) Data Comparing Population and GDP Source: http://www.imf.org/external/datamapper/index.php
International Monetary Fund (IMF) Data Comparing Population and GDP


アジア太平洋地区にはシンガポールのようにIMOC本部設置に適した場所は多いが、インドネシアはユニークな戦略的な特徴を有している。まず、その他アジア太平洋諸国との比較でインドネシア経済は中国、日本、インドに次ぐ第四位の規模を有している。インドネシアの経済影響力を考えると、米政府も同国との二国間貿易改善とともにインドネシアを環太平洋経済連携協定 Trans Pacific Partnershipに組み入れるべきである。域内11ヶ国が参加する同協定はオバマ政権のアジア太平洋での経済政策の要である。

第二に新大統領ジョコ・ウィドドJoko “Jokowi” Widodoの元でインドネシア はを海洋国家として主要メンバー入りを目指している。大統領就任後、「海洋国家としてのインドネシアは世界規模の海洋国として主張を強めるべきだ。その地位が確立できれば域内、国際協力により国民の繁栄が実現する」と発言している。そのためジョコウィ大統領は軍事支出を対GDP比で1.5%まで増加させるとし、さらに5点からなる海洋戦略教義を打ち出し、同国を海洋国家にしようとしている。

ジョコウィ大統領は自国予算が乏しい中、海外投資が構想実現に大きな存在だと認識しており、「投資が必要だ。投資家が必要だ。それで経済が成長路線に入り、港湾が拡大し、空港が建設できる」と発言。バラク・オバマ大統領が任期最後の数年に入る中で意味のある関係をインドネシアとの間に築く戦略的なチャンスが今ある。経済開発が進み、海洋安全保障も実現できる。オバマ大統領はインドネシアと個人的なつながりが強く、自身も幼少期のころに同国に住んだことがあり、実母も20年間以上に渡り同国内で働いていた。オバマ大統領が行動に出ることがジョコウィ大統領の構想実現に不可欠であるが、条件は米国議会がインドネシア経済のテコ入れに賛同することだ。

第三にインドネシアが民主制度の指標となる可能性がある。東南アジアではタイ国のように政治不安が続いているが、インドネシアはインド、米国に次ぐ世界第三位の民主主義大国である。2014年の数字では全国民の50パーセントが30歳以下で、労働人口はこれから2020年までに14.8百万人増加する。このため民主主義の理想追求とともに市場開放経済の効果を発揮できる一大チャンスが到来する。

第四にインドネシアにIMOCが設置されればその立地条件はアジア太平洋の海上作戦で中心的位置になる。米海軍は横須賀の艦隊司令部だけで合計48百万平方カイリ(89百万平方キロ)の地域を統括させ、域内35ヶ国との関係を維持している。これだけ広範な責任を求めるため、域内に数カ所の拠点が必要。インドネシアのIMOCが加わると、海軍は域内各国海軍と共同して各方面の海上範囲を監視できる。

このようにインドネシアでIMOCの戦略的な意味が実現しそうだが、同時にインドネシアにも欠点がある。特に港湾と道路網を指摘したい。世界銀行は昨年にインドネシア経済開発政策の評価を行い、インフラ整備の遅れを指摘している。また国内港湾施設の能力不足は相当深刻と評価し、他のアジア各国と比較しても劣悪とした。さらに道路網整備がこれまで数十年間放置されて、深刻な容量不足、渋滞問題、物流問題を引き起こしているとした。道路網改善に世銀は1,200億ドル規模の投資が必要と試算している。

ジョコウィ大統領はインドネシアのインフラ改善を正しく理解しているようだが、厳しいハードルに直面している。まず労働人口内の技能格差を縮めなければならない。公的・私的市場機能の改善も必要だし、国際テロリズムの脅威にも屈せず、汚職を追放し、およそ220百万人のイスラム教徒の支持を維持し、その他少数派で700もの言語を話す国内各派でも同じだ。2014年のインドネシアは国連に対して人権面での違反事項があったことを報告できなかったため、本当に人権問題解決の姿勢があるのか疑問視された。欠点はあるものの、インドネシアは前例のない歴史的なチャンスにあり、アジア太平洋で急成長する可能性がある。

米国がアジア太平洋へ勢力を再配備するのは困難な挑戦であり、中国の海洋力整備を監視していくのも大変な仕事だ。オバマ大統領は20111年のオーストラリア訪問時に「21世紀のアジア太平洋で米国がすべての局面に関与していくことに疑いをもたれないようにしたい」と発言。もし米国が「すべての局面で」関与するのであれば、中国が南シナ海・インド洋で権益拡大を狙う中で米海軍は議会ならびに政権の支持のもと、一層大きな役割を求めていくべきである。■



米空軍次期練習機T-Xの要求内容 久々の大型案件に各社しのぎをけずる


予算環境がきびしいので練習機として一定の数(350機)を調達しながら、拡張性もあらかじめ確保して練習機以外の用途も想定(仮想敵国部隊用機材とか軽攻撃任務?)したいのが米空軍の虫の良い考え方ですが、はたして都合の良い機材が選定できるのか。また採用後に大幅にコストが上がる要因がそもそも包含されていないのかとても心配です。裏には予算強制削減の影響で単一任務しかこなせない機材は非効率という強迫観念があるのではないかと思われます。なお、スコーピオンが採用になる可能性は低いですが、注目されてしかるべきだと思います

USAF Issues T-X Requirements

By Aaron Mehta12:09 p.m. EDT March 20, 2015

t-38(Photo: Tech. Sgt. Matthew Hannen/US Air Force)
WASHINGTON — 米空軍が次世代練習機T-Xの要求性能を公表した。
  1. 連邦政府ウェブサイトに3月18日掲載された内容から参入を計画中の5社は現行のT-38の後継機種となる高等練習機350機及び関連システムの採用を目指してしのぎをけずることになる。空軍への締め切りは5月10日。
  2. 本事業は「コスト曲線を曲げる」"Bending the Cost Curve" 構想をはじめて現実に移す第一弾となる。これは空軍長官デボラ・リー・ジェイムズDeborah Lee Jamesが進める調達改革の一環で大きな一歩となる。
  3. 文書には要求項目が100点以上あるが、空軍報道内容では重点は3つに絞られる。高G状態の保持、シミュレータ視覚効果の正確度・精度、機体の長期間稼働だ。
  4. その他として空中給油、T-38比較で10%の燃料消費率削減、最小離陸距離として8千フィート、高高度基地からの離陸の場合は追い風10ノットで7,400フィートとされる。
  5. 注目すべきはアグレッサー部隊用の「赤軍」要求はないことだ。空軍関係者は今後の検討課題だという。
  6. とは言え空軍がT-Xの性能拡張を想定していないわけではない。中でも「現設計でどこまで将来の性能改修に対応できるか」等の設問項目が関心を呼んでおり、主翼パイロン、レーダー、データリンク、機体防御で「現設計案で将来のシステム改修の妨げになるものがないか」との質問も関心を集めている。
  7. さる2月には空軍教育訓練軍団司令官のロビン・ランド大将Gen. Robin Randが次期練習機に性能拡張の余地があるかに関心ありと発言していた。「後悔するような買い物は避けたい。要求性能どおりなら新型機はあれこれ他の仕事もこなせるはず。将来の性能拡大の余地も残し、安価に実施すべきだ」
  8. 現行のT-38に代わる新型機をめぐり5社が競争する構図だが、うち2社は完全新型機でボーイング・「Saabチームおよびノースロップ・グラマン主導でBAEシステムズとL-3が参加する。
  9. これに対抗するのが既存機種をベースにした陣営で、ロッキード・マーティンは韓国航空宇宙工業のT-50を、ジェネラル・ダイナミクスとアレニア・アエルマッキはM-346を原型にした案で参画する。
  10. 読めないのがテキストロン・エアランドのスコーピオンだ。ISRと軽攻撃ミッション用の新型機の同機から、練習機型を派生型として作成するという。
  11. 空軍は研究開発費用として2016年度に11.4百万ドルを準備しているが、これは17年度は12.2百万ドル、さらに18年度には107.2百万ドルに跳ね上がり、19年度は262.8百万ドル、20年度は275.9百万ドルになる。
  12. 正式な契約交付は2017年秋の予定。■

2015年3月23日月曜日

★オスプレイ追加調達を日本に期待するベル



なるほど,MV-22だと一機で20名の移動が可能なので、現在は20名x17機=350名程度の輸送規模(最大です)を想定しているわけですね。オスプレイ部隊の輸送能力はコマンド部隊の侵入用途と考えればそんなに不足しているとは思えませんが。もっとも作戦に投入できる機材が全体の3分の一と一気に120名程度に落ちますので、確かに不足といえば不足ですが、きびしい財政状況の中で査定はどうなりますかね。また自衛隊に運用コンセプトから配備機材数を増やす要求を堂々とできるか今後が注目です。


Japan, Australia Could Add To Osprey Order Book

Mar 17, 2015Bradley Perrett Aerospace Daily & Defense Report

V-22: Rupa Haria
ベル・ヘリコプターは日本がMV-22オスプレイを追加調達すると期待している。日本は先行して17機の調達予算を計上している。
  1. オーストラリアも有望と同社は見ている。これはベル副社長(海外軍事営業担当)のリチャード・ハリスの発言。
  2. 日本が同機に期待するのは島嶼部分への兵員物資輸送の高速化だが、領土へ侵攻があった際の対応策という想定なので、17機では不足するはずと同社は見る。
  3. 日本には次期多用途ヘリ調達のUH-X事業があり、双発ヘリコプター150機を整備して島嶼部への輸送を強化するねらいがある。ただし想定する機体は総重量が5ないし6トンでオスプレイに比べるとペイロード、航続距離、飛行速度いずれも見劣りがする。
  4. 日本が想定する島嶼部分を公式に一度も明らかにしていないが、尖閣諸島であるのは明らかだ。
  5. オーストラリアには同種のミッションの想定はないが、業界筋によればMV-22なら同国の特殊部隊の効力を引き上げることが可能という。オーストラリア特殊部隊は同盟国との関係で同国が提供できる貢献の中核部分となる。ベルはオーストラリアの調達機数を10機と想定している。
  6. ただしオーストラリアのシンクタンク、オーストラリア戦略政策研究所は同国がすでにボーイングCH-47チヌークを供用中でアレニア・エアrマッキC-27スパータン軽輸送機を発注中のためオスプレイ導入の理由は薄弱と指摘している。■


2015年3月20日金曜日

★KC-46A 日本も導入か 



これまでKC-46Aの開発難航は対岸の火事だったのですが、本当に日本も同機を調達(KC-767の補完?)する予定になっていれば無関心ではいられなくなりますね。これまでは機内配線が仕様どおりでなかったとのことでしたが別の問題があるのかもしれません。

KC-46A First Flight Facing Delay

By Aaron Mehta5:31 p.m. EDT March 17, 2015
635622068257283888-k-122314-04-highres-2
(Photo: Paul Gordon/Boeing)
WASHINGTON — 開発中のKC-46Aペガサス空中給油機は初飛行予定が4月になっているが、開発責任者は「安心できない」と胸中を語っている。
  1. 同機開発を主管するデューク・リチャードソン准将Brig. Gen. Duke Richardsonは予定を第二四半期中のいつかと6月末までに変更したい意向だ。
  2. 「日程確定を避けています」と准将はクレディスイス・マッカリーズ共催の会合で発言した。「第二四半期中と言っておくのが安全でしょうね」
  3. KC-46Aは179機調達する予定だが、先行18機を2017年までに稼働させる調達契約では大幅な費用超過が発生しても空軍には追加負担が生じない。
  4. エンジニアリング、製造、開発チェック用(EMD)の機材は昨年12月に初飛行している。完全仕様のKC-46Aは4月に初飛行の予定だが遅れる公算が大となってきた。
  5. リチャードソンは日程が各種テストの実施でプレッシャーになっていると認め、EMD機材で確保していた6ヶ月の余裕期間はすでに消費ずみだという。
  6. 「非常に深刻に受け止めています。なんとか日程に余裕が生まれるようにがんばっているのですが」 工程表がきついため、本来なら初飛行も一日も早く実施したいのだが、その場合は給油機としての完成度を無視することになるか、その時点で要求通りの機体になっているかのいずれかだ。
  7. 「一刻も早く飛行させたい。飛行は安全に実施できると思うが、その時点で完全な機体になっていなくてもよい。安全に飛行できる機体であればまず飛ばせて、飛行性能のデータをそれから集めればよい」
  8. これに対して主契約社ボーイングの広報は同社が初飛行実施に向けて毎日努力しているとし、優秀なチームが奮闘している。準備出来しだい初飛行できる、と発言。
  9. ただしリチャードソンは明るい話題にも触れている。事業全体としては「非常に健全」で要求性能水準が変動していないことのメリットが生まれているという。
  10. また海外向け販売の可能性が二国にあると紹介。ひとつは韓国向けの直接販売で日本は有償軍事援助による導入を検討しているという。このうち韓国は5月にも選定に入ると見られ、日本のRFPが4月に出てるとリチャードソンは言う。■


2015年3月19日木曜日

★F/A-18E/F海外受注に最後の望みをかけるボーイングは 米国防航空産業基盤の弱体化の例なのか



かつて日本の産業政策は米国からさんざん攻撃されていましたが、今や国防関連航空産業の基盤を国防総省自らが保護する必要が有るのが現状というのはなんという皮肉でしょうか。スーパーホーネットは米海軍も希望しないのであれば、海外でそのまま販売できるとは思えないのですが。泣いても笑ってもあと数ヶ月で命運が決まるのでしょうね。

USN Hornet Push Reshapes Cost, Export Picture

By Christopher P. Cavas2:24 p.m. EDT March 15, 2015
Super Hornets(Photo: US Navy)
米海軍の需要と無関係に、ボーイングがスーパーホーネット生産を継続するとコスト問題が発生しても海外販売の可能性自体はあるとみられる。
  1. 米海軍関係者はF/A-18を二三十機追加する追加予算要求する想定を先週提示した。
  2. ただし「どこからその予算を確保するのか」と疑問を提示したのはキャピタルアルファパートナーズのバイロン・キャランで、強制削減関連の支出制限が蔓延する中でワシントンには同じ疑問を投げる向きが多い。
  3. 「これはボーイングの生産ラインを維持して共用打撃戦闘機が打ち切りになっても何か残るようにするにはどうしたらいいのか、という疑問への回答だ」と語るのは戦略予算評価センターの国防アナリスト、ジェリー・ヘンドリックスだ。言及しているのは海軍がF-35の680機調達を減らす決定をする可能性のことだが、海軍は激しくこれを否定している。
  4. 海外での戦闘機調達事業にスーパーホーネットが参入する可能性がある。デンマークは今夏にもF-16後継機を決定し、クウェートは数ヶ月以内に戦闘機選定案を公表する見込み。両国ともに調達規模は24機ないし36機程度と見られる。
  5. ベルギーやアラブ首長国連邦も戦闘機選定の初期段階にあり、カナダは現在もF/A-18を供用中だがF-35事業への参画をめぐり議論中だ。
  6. 産業面で見れば、ボーイングのセントルイス事業所で従業員1,200名がジェット戦闘機生産に関係している。またほぼ同数の社員が各地でその他支援業務に従事しているという。これが全国規模になると6万人規模、800社、全米44州に分布するという。
  7. 米海軍はボーイングの視点ではなくあくまでも海軍のニーズで決めるだろうが、ボーイングはあと一二年でもラインを維持したい。そのためボーイングはなんとしても海外案件の受注がほしいところだ。
  8. 米海軍発注の最後のF/A18-E/Fのひきわたしは2016年末以降だが、議会がEA-18G追加発注を認めれば2017年まで生産ラインは維持できる。オーストラリア向けグラウラー12機の生産もあるが、ボーイングは2016年から納入ペースを月3機から2機に落とす。
  9. ライン維持には月産2機がぎりぎりだという。むしろ生産数が上下することを避けたい、というのがボーイングの本音だ。
  10. 今夏中に新規受注機材用のサプライチェーンの取り扱い方針をボーイングは決めねばならない。発注は数ヶ月先行する必要があり、場合によっては一年前に発注する場合もある。
  11. その内で一番リードタイムが長いのがチタン製構造部材で、APG-79AESAレーダー(レイセオン製)も同様だという。
  12. 正式な受注前の機材部品はボーイングが全額費用負担する。グラウラーの場合はノースロップ・グラマン他電子部品メーカーに15機分発注済みだが、米海軍との正式契約は未締結のままだ。
  13. 航空産業の基盤を維持する問題もある。盛況時が過ぎて、メーカーの廃業、統廃合が進んでいる。大手はロッキード・マーティン、ボーイング、ノースロップ・グラマンのみというのが現状だ。
  14. そこで米空軍の長距離戦略爆撃機案件に大きな関心が寄せられているのが現状とヘンドリックスは指摘する。「今後、給油機、爆撃機、戦闘機の受注企業が決まり業界を撤退する企業が出るでしょう。そうなるとペンタゴンが介入して産業基盤保護に出るかもしれません」
  15. 「生き残れない企業が出ると考えると不安に駆られます。航空産業の基盤は海軍向け産業基盤よりも薄くなっています」
  16. ただこの問題に長い時間を掛ける余裕はない。タイミングが問題で、一度閉鎖したら元には戻せない。■


2015年3月18日水曜日

★ステルスの有効性はどこまで減じているのか 新型レーダー、赤外線探知装置の進歩に注意



ステルスの神話が急速に凋落してきた、との報告がこれまでもありましたが今回の記事はなんといっても技術的にその理由を説明しているのがすごいところです。(電子技術に詳しい方の精査をお願いしたいところです。)まさしく矛と盾の関係でしょうか。

New Radars, IRST Strengthen Stealth-Detection Claims

Counterstealth technologies near service worldwide

Mar 16, 2015 Bill Sweetman Aviation Week & Space Technology

ステルスが頼りにする低レーダー断面積(RCS)を中心のステルスへの対抗技術が世界で普及の様相を示してきた。複数の新技術が開発中であり、レーダー装置、赤外線探知追跡装置(IRST)のメーカー各社はステルス対抗技術が実用化の域に達したとし、米海軍はステルス技術そのものが挑戦を受けていることと公言している。
  1. こういった新装備は各種センサーを統合して目標の探知、追尾、識別のデータを自動的に融合し、ステルス機への交戦を実現するのが特徴だ。
NNRTの55Zh6M は複数レーダーを組み合わせ車両で移動が可能。単一ユニットとしての55Zh6UMEにはVHFおよびUHFアンテナを備え、配備される。 

.
  1. ステルスが部分的に超短波(VHF)レーダーで効果を失うのは電子物理の観点で説明できる。機密解除となった1985年のCIA報告書はソ連がステルス対抗技術の第一陣として新型VHFレーダーを開発し長波長の不利を補うと正しく予測していた。波長が長いと、機動性が失われ、解像度も低くなり、クラッター現象が生じやすくなる。ソ連は崩壊したが、ニツニー・ノヴォドロド無線技術研究所Nizhny-Novgorod Research Institute of Radio Engineering (NNIIRT)が開発した55Zh6UE Nebo-Uは1990年代に実戦化されており、ロシア初の三次元VHFレーダーになった。NNIIRTはその後、VHF方式のアクティブ電子スキャンアレイ(AESA)装置を試作している。
  2. VHF方式のAESAは55Zh6M Nebo-Mマルチバンドレーダーとして生産に入り、ロシア空軍向けに100セット以上が調達される。このNebo-M はトラック搭載レーダー3基(すべてAESA)、VHF方式RLM-M、Lバンド(UHF)方式のRLM-D、S(X)バンドのRLM-Sで構成。ロシア文献ではそれぞれ、メートル、デシメートル、センチメートル単位の周波数としている。各レーダーにOrientir 位置割り出し装置がつき、それぞれにGlonass衛星航法受信機を備え、無線あるいは優先で地上制御車両と連結する。
  3. VHFでは走査速度が遅くなる欠点がつきものだったが、RLM-Mは電子走査を機械式走査に重ねるてこれを解決。走査範囲は120度で連続追跡が可能。この範囲だと走査は事実上即座に可能で放射エネルギーを目標上に照射し続けることができる。VHFの利点を保ちながら、中国のDF-15短距離弾道ミサイルのRCSだとXバンドで0.002 m2、VHFだと0.6 m2 になるとNNIRTは説明。
  4. Nebo-Mではレーダー3つのデータを融合して確実に標的を撃破する。初期探知のVHFがUHFレーダーにキューを出すと、つぎにXバンドのRLM-Sにキューが出る。Onetirにより正確なアジマスデータが生まれ三種類の信号をひとつにした標的の姿が浮かび出てくる。
  5. もっと高周波のデータはVHFより正確度が高くなるので標的に集中させれば探知成功の可能性が高くなり、追尾でも同じだ。「停止凝視」モードでアンテナ回転を止め、レーダーを電子的に90度視野で走査させると標的に照射するエネルギー量は連続回転時の4倍になり、有効射程も4割増える。
  6. Saabの新型ジラフGiraffe 4A/8A SバンドレーダーはAESA技術や高性能処理機能で高バンドでも小型標的への対応が可能となった。モジュラー構成によりAESAの利点を最大限に活用し、信号・雑音の区別を可能とする。そのねらいはいかに「純粋度」を高めるか、つまり照射エネルギーを目標周波数に集中させることで極めて小さなドップラー変化でもとらえて移動中の標的を探知することにある。
  7. 処理技術の新動向には「多重仮説」追尾 “multiple hypothesis” trackingがあり、反響が弱くても繰り返し解析して追尾を認識するのか移動パターンから無視するかを峻別することができる。中国もロシアと同様の方法を模索しており、昨年の珠海航空ショーでその一端が明らかになった。大型VHF方式AESA装備JY-27A Skywatch-Vが出展され、ロシアのRLM-Mとほぼ同等とわかった。メーカーは中国電子科技集団公司 China Electronics Technology Corp. (CTEC)。またショーではこれと別のUHF方式AESAが二型式とSバンド方式パッシブ電子スキャンアレイレーダーYLC-2Vも展示されていた。

  1. 出展で中国がアクティブ、パッシブ両面で探知装備の整備を図っていることが判明した。またYLC-20の名称の広範囲指向性ワイドバンドパッシブ受信システムの存在が明らかになった。これはCETC製DWL-002と併用するものと思われる。DWL-002はパッシブ方式コーヒレントロケーション(PCL)方式の三セットをあわせたもので、チェコのERA製 Veraと類似している。これは信号入力の処理で時間差を利用して標的を追尾するものだ。またJY-50「パッシブ・レーダー」の図も展示されていたが、これはVHF帯を利用する。
  2. これまでのPCLは標的の出すアクティブ放射の利用が前提だった。だがPCLを他のパッシブ受信機にアクティブレーダーと組み合わせて接続すると防衛側はバイスタティックあるいはマルチスタティックでの探知が可能となり、低RCSのステルス技術の有効性を減らすことができる。RCS削減技術は通常レーダー(モノスタティック)を想定している。極度の後退角のついた前縁でレーダー信号を偏向させてもマルチスタティックレーダーなら探知可能なスパイクが発生する。
  3. 旧式かつ小型VHFレーダーに改良を加える供給元が少なくとも5社ある。チェコ共和国のレティア Retia 、ハンガリーのアルゼナル Arzenal 、ウクライナのアエロテクニカ Aerotechnicaおよびベラルーシとロシアの数社だ。中国海軍は最新式防空駆逐艦のタイプ52C旅洋II型、52D旅洋III型にVHFレーダーを搭載している。さらに新型のVHFレーダーが今後出現する055型駆逐艦に搭載されない保証はない。
  4. ステルス機が低周波レーダーやその他探知装備で危険にさらされていることは2013年以降、米軍高官なら認識している。米海軍作戦部長ジョナサン・グリナート大将は公の場でステルス機がA2D2に対応できるか疑わしいと発言しており、2014年1月には新しいアメリカの安全保障を考えるセンターが出した報告書で「最近の分析の一つでは低RCS機の探知技術で革命的な進展がある反面、ステルス性能で呼応した向上がない」と指摘していた。
  5. ボーイングはEA-18GグラウラーはVHF帯の妨害ができると宣伝しており、現行のALQ-99低バンドジャミングポッドを指している。さらに次世代ジャマーでは第二次性能向上が予定されている。ただしこの契約交付は2017年の予定で、初期作戦能力獲得は2024年になる。
  6. これと別の脅威は長波長の水平線超えOTHレーダーでオーストラリアが運用中のジンダレーOTHレーダーネットワーク(JORN)が典型例だ。ロシアにはレゾナンスRezonans-NEがあり、中国もOTHを運用中だ。ここでもデータ処理が精度と感度を上げる鍵となる。JORNではフェイズ5で処理能力を向上させようとしている。
  7. OTHの長波長レーダーはもともとステルスに強い。極端に長い波長は標的の物理的サイズに近くなる。通常のレーダー断面積削減技術はこのため無効となる。ジンダレーの設計者はB-2の探知も可能だと1980年代末の時点で公言しており、米空軍はこれを真剣に受け止めた。ただし当時の空軍はOTHの解像度がとても低いため迎撃の段取りは取れないと反論していた。ただし今日では低解像度もネットワーク化レーダー群の活用で緩和され、OTH-Bは高解像度センサー類にキューを出せるようになった。
  8. 米空軍はIRSTを活用しようとしている。先行する米海軍ではスーパーホーネットの中央燃料タンクに搭載するIRSTの初期定率生産が2月に承認された。韓国向けF-15KやシンガポールのF-15SGでも同様の装備が付いている。80年代のF-14D向けに開発されたIRSTが起源のこのサブシステムだ。.
  9. ペンタゴンの作戦テスト技術部門長は海軍装備の追尾性能に批判的だが、空軍もその性能にを素直に認めており、これまでIRSTを無視してきたことと対照的だ。空軍はF-16アグレッサー部隊にIRSTポッドを搭載し運用経験を有する。海軍が調達する第一期分IRSTはわずか60セットでその後改良型を10セット導入する。
  10. 西側でIRSTで知見を豊富に有するのはSelex-ES社でタイフーンのパイレートIRSTの契約企業である。またスカイワード-Gをグリペンに供給している。同社は低RCS標的の探知、追尾にIRSTで成功したと発表している。これは亜音速飛行中に機体表皮の摩擦とエンジンの熱放射や排気噴煙から成功したとする。グリナート提督はこの点を強調した発言を2月にワシントンでしており、「空中を高速度で移動する何かがあれば、大気の分子を乱し、排熱するはずで....探知可能なはずだ」と述べた。
  11. 探知技術が向上したからといってステルスの有効性が即座になくなるわけではない、というのが業界、政府関係者の多数意見だが、それでも将来のステルス技術要素の議論の根底にこの問題が影を落としている。米海軍の艦載無人偵察攻撃機構想ではステルス性をどこまで求めるのかで議論が続いているが、中心はA2ADの進展だ。長い間にわたり一般のみならず専門家にも見られるてきた各種低技術のどれを選択してもステルス性能で大きな差は生じないとの誤解がこれで終止符を打つことになる。■


2015年3月17日火曜日

米海軍の新戦略の概要が明らかになりました


現CNOグリナート提督の置き土産になりそうな海軍新戦略の概要が明らかになりました。全体としては攻撃力を重視する方向のようで、誠に健全な方向に思えます。


Winning The War Of Electrons: Inside The New Maritime Strategy

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on March 13, 2015 at 2:51 PM
WASHINGTON:.米海軍、海兵隊、沿岸警備隊が共同発表した新海洋戦略で強調しているのは危険度がましつつある世界で電子戦に勝利をおさめることの必要性だ。
  1. 「今回発表の文書では攻撃的な論調がめだち、米国の権益がからむ場所へのアクセスを確保する必要を強調している」と海兵隊総司令官ジョセフ・ダンフォード大将Gen. Joseph Dunford,が戦略国際問題研究所Center for Strategic and International Studiesで講演した。ただし対戦相手は従来を上回る高度装備を有しているはずで、これまで米軍が優位性を確保できていたサイバー空間や電子電磁の世界での優位性確保で真剣にならざるを得ない。
  2. 戦略案の表題は「21世紀のシーパワー確立のための協調的戦略」 “A Cooperative Strategy for 21st Century Seapower” と無難なものになっているが、明らかな違いが組み込まれている。2007年版と比較してみると、前回は脅威となりうる国名を明記していなかったが、今回は中国、ロシア、北朝鮮、イランを名指ししている。また伝統的な海軍の基本政策から脱却し、従来の艦隊任務(抑止、制海、兵力投射、海上保安)に加え、5番めの「全方位アクセス」 “all-domain access” を加えているのが特徴だ。
  3. 冷戦終結後の米軍各部隊は世界のあらゆる場所に移動することを当たり前にしてきた。だが潜在敵国のロシアや中国のみならずテロリスト集団さえも高度技術を入手しており、これが安全理に実施できなくなった。「接近阻止領域拒否(A2/AD)」への対抗手段の議論が続く中、新戦略構想ではこの課題を核抑止力とほぼ同等の重要問題に位置づけている。
  4. 「兵力投射が抑止のためにも必要だが、進出したい場所に移動ができなくなっている。洋上、水中、宇宙空間に加えサイバー含むすべての空間で効果をあげにくくなっている」と海軍作戦部長ジョナサン・グリナート大将も同じ講演で持論を述べている。「アクセスが確保できないと任務実施は不可能だ」
  5. 全方位アクセスを5番目の中核的ミッションに追加することは単なる言葉上のあやではない。「中核的任務はなにか」とウィリアム・マキキン少将Rear Adm. William McQuilkin が戦略案紹介の記者会見で発言している。「人員確保、訓練、装備の3つは法律の上でも軍の基本機能と定義付けられている」 全方位アクセスをここに加えることは「従来からの中核的機能と同等に扱うことになる」と少将は言う。
  6. ただしグリナート大将は2017年度予算案提出時点で現職にはとどまれず、今年末で作戦部長(CNO)の任期が切れ本人は退役するはずだ。だが、戦略案はグリナートが3年の任期中一貫して求めてきた構想、特に電子サイバー戦の拡充を形にして残すものだ。
  7. 「今回の戦略案でグリナート提督がCNOとして求めてきた方向性が制度化される。そこに新戦略の意義がある」と解説するのはブライアン・クラーク(退役海軍士官でグリナートの補佐を努め、戦略案作成に関与)だ。グリナートは「電子戦をその他従来の海軍作戦と同じ位置づけに引き上げようと骨を折った。統合EMスペクトラム作戦構想 Joint Concept for EM Spectrum Operations (JCEMSO)として国防総省の研究がはじまったことで機運が高まっており、EWやC4ISRも予算減少の中で重要性を高めている。だがなんといってもCNO本人がその先導役だ」
  8. 「この文書は本人の功績として記憶されるだろう」とランディ・フォーブス下院議員Rep. Randy Forbes(下院軍事委員会シーパワー小委員会委員長)も見る。「本人は主張だけにとどまらず、これから必要な兵装の検討に身を入れてきた。その一つが電子戦分野だ」
  9. 高性能装備を有する敵の打破が中心になれば、戦略案は高性能装備の整備に走ることになる。フォーブス議員は記者に戦略案では空母から運用するUCLASS無人機には戦闘能力が必要と語った。単なる偵察機にはさせないという。予算強制削減をめぐり、「歳入委員会がこの戦略案をこの週末に読み終えるとは思えない」というものの「この文書で関係者はなぜ今までの方向性を変える必要があるのか理解するはず」という。
  10. ただしクラークは議会への影響度に懐疑的だ。「この戦略案では高度装備中心を強調し、ロシア、中国と地政学的争いに勝てると主張しているが、地政学的傾向と構想上の必要点、装備能力が組み合わさっていない。これでは決定権を持つ人達にはどれを優先順位で高くしたらいいのか見えてこない。議会関係者は全体像を理解されていないままだ。『中国あるいはロシアがXをするから、当方にはYあるいはZの能力が必要だ』と説明しないと議会も優先順位がつけにくい」と解説する。
  11. 新戦略中の重要事項のでも最大のものは全方位アクセスの確保で海、空、宇宙、サイバー空間、電子電磁空間のすべてで行動の自由を確保する新構想だ。クラークによれば全方位アクセスこそ中核的任務の中心に位置すべき存在だという。
  12. 「海軍がいおうとしているのはアクセスこそ海軍機能の中心だということだ」
  13. 「海軍の戦略方針も大きく変化する」とクラークは続ける。「アクセス確保はこれまでも海軍の役割だったが、ここまで明確にまとめた例はない」 さらにソ連崩壊後はアクセスはわざわざ戦わなくても確保できると考えられてきた。しかし、今や「新戦略案で再びアクセス確保が中心に返り咲いた」という。
  14. 全方位アクセスの本質は何なのか。公文書の常として戦略案の記述は課題の列挙に終わっている。「全方位アクセスの実現には非常に多くの要素がからみあっているようだ」とクラークも認める。ただし各要素をつなぐのは電子だ。
  15. 戦略案では全方位アクセスを5つの観点で包括しており、すべてでサイバーあるいは電子戦が関係している。
Battlespace awareness 戦闘空間認識には「常時監視偵察」が物理的な空間だけでなくサイバー空間や電磁スペクトルでも必要だ。
Assured command and control 指揮命令機能の確保には米軍通信ネットワークが安全かつ高い信頼性で機能することが必要で敵の妨害やハッキングに対抗する必要がある。ダンフォード大将は海軍・海兵隊の使っている通信ネットワークでは分散作戦 dispersed operations の統合調整に適していないため新たな整備が必要と発言している。
Cyberspace operations サイバー空間内の作戦には攻撃、防衛両面の対処を含む。
Electromagnetic Maneuver Warfare 電子電磁操作戦とは海軍の新しいコンセプトで友軍の発信を隠し、敵を欺瞞あるいは妨害することだ。
Integrated fires 統合火器運用では高価だが在庫が限定されるミサイルを発射する代わりにジャミング、ハッキング、レーザー発射やレイルガンの使用で対応する
  1. 新兵器や新戦術の説明はあえて省かれているが、「今回の戦略案には非公開の付属文書が2ないし3つあり、世界的規模での作戦対応方針を述べている」とグリナートが発言している。非公表の戦略案について講演の席上で記者が質問してみたところ、グリナートは「まだコンセプト段階だが、これまでエアシーバトル構想で展開してきた内容を引き継いでいる」と答えてくれた。
  2. エアシーバトルが物議を呼んだのはハイテク、高密度長距離戦を空軍と海軍が高度な防衛体制を持つ敵国対象に実施する内容だったからだ。その後、海兵隊と陸軍も加わり、コンセプト名称はグローバルコモンズへのアクセス、作戦展開構想Joint Concept for Access and Maneuver in the Global Commonsと変更されている。ただし、その中心的問題提起は米軍に空、海、サイバー空間のいずれでも米国に挑戦できる能力を有する敵と戦うというもので、今回の新戦略でもこれを重視している。■