米海軍の構想はネットワーク技術で艦船、航空機を結び、さらに米海軍所属部隊以外に同盟国部隊も接続していくというものです。さらに訓練も仮想空間含め多様な環境を再現し、実効性を高めていくというもののようです。このあたりは人体改造などというキワモノとはちがい、健全な精神を感じさせるものがあり、読者のみなさんも不快感なく目をとおせるのではないでしょうか。
Reach & Punch: RADM Manazir On The Future Of Naval Airpower
By Robbin Laird and Ed Timperlake on December 20, 2015 at 8:00 AM
米軍部隊にとって海と空は一層危険な場所になりつつある。ヒズボラやイスラム国と言ったテロリスト集団は対艦ミサイルや対空ミサイルを手に入れられる位置にあり、ロシアや中国と言った大国もある。だが米海軍・海兵隊は「接近阻止領域拒否」への対応を部隊再編で臨もうとしている。今回、当誌は海軍航空戦部長のマイケル・マナジル少将とこの問題を論じる機会を得た。
マナジル少将の視点ははるかに広範囲で、空母航空戦力の改変や新型フォード級空母の編入と言った話題を超えている。米軍が他国と連携する前提で海洋関連各部隊をどのように改変させていくのかという点が中心だ。国防関連の議論で特定装備に関心が集まりがちであるが、新型装備が軍事力全般をどのように変えていくのかを論じることはあまりない。
Rear Adm. Mike Manazir
ネットワーク化戦に対応したネットワーク化演習を
この統合軍は演習からはじめるべきだ。海軍打撃航空戦センター(NSAWC)(ネヴァダ州ファロン)を訪ねた本誌が目にしたのは米海軍が戦術訓練の世界の中心になっている事実だった。展開中の空母打撃群がこのNSAWC指導官からほぼリアルタイムで戦術改良の助言を受けることができる。反対にファロンで訓練中の航空隊は各地に展開中の航空隊からのフィードバックをリアルタイムで受けて次の空母配備にそなえることができる。
米国の兵力投射を支える高度戦闘訓練部隊にはファロンのほかに海兵隊航空兵器戦術航空隊(MAWTS-1) がユマにあり、米空軍のウェポンスクールがネリスにあり、それぞれ新技術の応用を他軍並びに同盟各国の部隊と緊密に行うことを強調している。米国は同盟諸国と共同でLVCT(ライヴ仮想擬制的訓練)施設を建設中で、完成すれば敵勢力への訓練を距離を超越して実施し、現実に近い緊迫した環境で再現できる。例えばオーストラリアのリッチモンド空軍基地を訪問すると、オーストラリア空軍が米空軍、カナダ空軍と音声画像リンクでリッチモンドとネリスを接続しLVCTを実施していた。
「LVCTにより訓練環境が安定する。これまでの演習場は地理的な制約もあり、ハイエンド脅威環境は完全に再現できなかったのと好対照だ」とマナジルは言う。「LVCTにより各装備の性能をフルに発揮し、各種環境を再現しつつ、訓練の様子を敵勢力はまったくわからない」
LHA-6, the USS America
空母・強襲揚陸艦は海上のネットワークハブになる
マナジル少将にとって新型艦で世界規模のネットワークに接続し前方展開部隊が他の海軍部隊、他軍、同盟国軍あるいは米国内関連機関へアクセスできるようになる事が重要と見る。
特に揚陸艦はこれまでの揚陸即応部隊の機能を超えた進化を示している。LHA-6アメリカのような新型艦とF-35B共用打撃戦闘機の組み合わせは強力かつ持続可能なプレゼンスとなり、これまでより広範囲の任務を実施できる。
「海兵隊は単なる海軍の歩兵部隊の存在から今やハイエンドでネットワーク化され強固かつ弾力的な能力を有する存在へと変身しており、その活用方法でいろいろな選択肢が可能になった」とマナジルは評している。「海上配備そのものは戦闘の実施で戦略的な意義がある。陸上基地使用で他国の許可を取る必要が無い」
新型大型空母フォード級もある。マナジル少将はUSSフォードは戦闘空間の拡大効果を生む点で従来からの空母打撃群以上の存在になるという。
「USSフォードは21世紀の海軍主要艦で、航空隊の変革を可能にする。海軍航空関連の全ての点で進歩を進める存在だ」とマナジルは述べ、空母運用を巡る発想の変革を解説してくれた。もはや航空機を運用する飛行甲板の域を脱し、広範な打撃手段の移動ハブであり、空軍や同盟各国とも共同で仕事をこなす存在になる。
「空母の意義はネット能力の移動中心として各軍や各国と連携する機能にある。何機搭載するかは重要ではないし、将来登場する機体の発艦場所でもない」とマナジルは述べた。「現在進行中の統合部隊、同盟国部隊の中でこれからの航空部隊をどう運用するかにかかってくる」
「戦力構成に弾力性をもたせ、それぞれがネット接続した拡大戦闘空間を実現することをめざす」とし、「単独部隊として運用できるし、一体型部隊にもなる。接続するか止めるかで変わる。相互運用も統合運用も独立運用も時と状況、それに任務により変更することができる」
将来の航空隊は空のネットワークの一部になる
「フォード級、共用打撃戦闘機、今後登場する無人機で実現するのは情報を自由に利用し、友軍がこれまで以上に活動範囲を広げる中心になることだ」とマナジルは語る。データを各艦船や各国が運用する同型機に配信する能力があるF-35は単なる新型戦闘攻撃機ではない。海軍部隊が統合された拡大戦闘空間で活動する様相を根本的に変える存在だ。
「ベイズ理論そのものを実施しています、つまり情報量を増やすことで目標とする真実つまり戦闘状況に近づけるというわけです。戦場の不確定要因は何が起こっているのかがもっとわかれば減少すると言えるでしょう。それで良い結果が生まれるはずです」とマナジルは述べ、「したがってF-35で実現する技術は戦闘に極めて重要なのです」
「第5世代機が搭載するセンサー類とデータ融合があれば従来機よりはるかに広い戦闘空間の状況を見ることができます。そして無人機をF-35に組み合わせる方法を模索していけば、たった一個の戦闘単位に相当広い戦闘空間を任せることができます」「つまり飛躍的な拡大が担当空域海域で実現し、戦闘状況を知ることができるようになり、目標情報が今より確実になれば交戦規則をいじらなくても今より効果的な攻撃が可能になります」
「ブロック3Fソフトウェアが搭載されればデータ融合が可能となり、データの情報を知識に変えて戦闘状況に賢く対応できるようになります」「F-35機内のプロセッサーはデータ融合を十分に行い各艦船がネットワーク下で高い性能を発揮して航空部隊と共同でこれまでより長距離から移動する敵に照準を合わつづけておくことが可能になります」
The new carrier USS Ford is afloat but still unfinished.
緊密ネット接続部隊の実用化
海軍部隊は全体として有効距離を伸ばし、リモートセンシングや精密攻撃能力を拡大している。これはネットワークで蜂の巣状態にそれぞれを接続した各部隊が空、海、宇宙、陸上にそれぞれ捕捉した目標に対応できることを意味する。
”
「蜂の巣状態で接続された遠征打撃群がどれだけ遠くから攻撃できるかではF-35が鍵となりますが、戦闘空間の拡大はそれだけでは実現できません」
海軍部隊の進歩で、これから10年間はこれまでの15年間の焼き直しではなくなるだろう。新技術と戦術訓練により部隊を投入し個別特有の目標を実現すること、拡大戦闘空間内で活動すること、同盟各国や合同部隊と行動をともにすること、世界いかなる場所でいかなる戦闘状態でも勝利をおさめることが可能になる。■
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