お伝えしたようにF-35は日本国内生産も始まり、これから各国向けに普及が始まる段階ですが、一方で技術陣はその次の「第六世代」機の検討を始めています。ビーム兵器やおそらく電子戦装備でこれまでとはちがう性能を発揮することが期待されているのでしょう。また中露の数で勝る装備に対してこれらハイテクで技術的に優位に立つ第三相殺戦略の重要な一部となるはずです。今回はそのうちノースロップ・グラマンの最新動向をお伝えしましょう。
Northrop Grumman Studies Technologies for F-22, F/A-18 Replacement
Dec 12, 2015 Guy Norris and Jen DiMascio | Aerospace Daily & Defense Report
http://aviationweek.com/defense/northrop-grumman-studies-technologies-f-22-fa-18-replacement
Northrop Grumman
PALMDALE -- 米空軍、米海軍が第六世代戦闘航空機材へ関心を高める中、ノースロップ・グラマンは指向性エネルギー兵器と熱管理を将来の中核技術として研究を加速中。
- 同社はかつてYF-23で制空戦闘機参入しようとしたが、ロッキード・マーティンのF-22の前に敗れた。今回、同社は高性能戦術戦闘機案として任意有人操縦可能な無尾翼機の構想図を発表し、ラプターやボーイングF/A-18E/Fの後継機を目指す。次世代制空戦闘機next generation air dominance (NGAD)では不明な点が多々あると同社も認めつつ、熱負荷対策技術がカギになるという。
- 熱負荷は搭載兵装の高性能化とくに機内搭載レーザーや強力な電子装置、センサー類、推進系から発生する。この問題はF-35の初期テスト段階でも認識されており、今後登場するNGAD案ではもっと深刻な課題になると見られている。ノースロップはNGADとして空軍向けF-X(今やF-22に加え、F-15Cの後継機との位置づけ)、海軍向けF/A-XXの双方を開発する意向。
- これまでの制空戦闘機と根本的にちがうのは指向性エネルギー兵器の搭載だ。「NGADでは機体と兵装を一体化し、これまでにない形になる」とトム・ヴァイス(ノースロップ・グラマン航空宇宙システムズ社長)は言う。レーザー技術で小型化が進み、大掛かりな化学反応装置が半導体電子レーザーに代わりつつあるが、ヴァイスは熱管理が依然としてカギであるという。
- 「現在最高性能のレーザーでも効率は33%にすぎない。もし100kW級のレーザーで200kW級に匹敵する性能を発揮させたらとてつもない熱が発生する。これが2メガワットならどうなるか。機体が発光するのを防げるだろうか」とし、この課題を解決できるものがNGADで勝ち残れるという。「熱力学が勝敗を決定するでしょう」
- 熱管理の課題への答えの一つが米空軍の統合機体エネルギー技術Integrated Vehicle Energy Technology (Invent) でボーイングが開発中の適応型スマート機内発電システムだ。ノースロップの研究技術高度設計部門の上級副社長クリス・ヘルナンデスは「ある会社の研究内容は業界で共有できる。その機会を待っている」と語る。
- だがノースロップも自社で独自の熱制御技術を開発中だ。「待っている余裕がありません」とヘルナンデスは言う。「当社にはレーザー関係の研究に必要な設備がすべて使える実験室があります」
- ヴァイスもこう述べる。「他社に依存していられないので、自社で新しい発明をめざし、厖大な発熱への対応策を考えている」 ヴァイスは詳細を語らないが、Inventで構想する蓄電装置とは違うという。
- 「蓄熱してもある段階で放出する必要があります。だが『発射』も必要となります」とし、レーザーの発射回数について述べている。「当社の考え方はレーザーを搭載する場合、無制限の発射回数を確保するため、連射間隔、有効射程で制約があってはならないでしょう。そこで熱力学の問題に戻ると『こっちの蓄熱装置はいっぱいだから熱を放出しなくちゃ』と次の発射が可能となるまで敵にこちらに来ないでとは言えないでしょう。蓄熱装置だと思考が制約されてしまう。、わが社は自由に創造思考したい」
- 兵装類や電子装置が放出する熱は熱交換器を適応型エンジンの「第三の風流」内に設置して排出できる。このエンジンも空軍研究所が取り組んでいる。「エンジン技術はVaate(多用途低価格高性能タービンエンジン)事業により性能が向上するが、まだエンジンの姿は見えてこない」とヘルナンデスも言う。「Vaateで進歩するエンジン技術はこれから必要となる技術の核として応用可能だろう」
- ヘルナンデスによればNGAD設計では相当の空間を確保している。「今の段階で判明している技術とこれから出てくる技術があり、航続距離、速度、兵装類、残存性、操縦性の要求水準はまだ不明ですからね」
- その答えの代わりにノースロップの高度技術設計部門はScaled Composites社の元トップ、ケヴィン・ミッキーが率いており、「モデリングとシミュレーションを強化し、同じ問題に異なる解決方法を試している」という。
- ただし、一機で需要すべてをこなそうとしたF-35の経験は各軍や業界でまだ鮮明で、今の中心は価格にも置かれている。「なんでもうまくやろうとすると高くなる。そこで重点を技術、設計、性能で解を求めるが、すべからく費用と相談することとしている」とヘルナンデスは言う。
- 航続距離も設計で重要な要素だが、今回はいささか理由が違っている。「将来は海外基地が減るだろう」とヘルナンデスは見る。「飛行距離が重要なら搭載兵装量は少なくなる。また敵側は防空体制を強化していることが分かっている。そのため残存性が極めて重要になる。そのため機体の形状はB-2を小型化したように見えるでしょう。ノースロップの強みなんですよ」という。■
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