USAF's Secret Bomber: What We Do And Don’t Know
Air Force hints at a solid plan to procure a new stealthy bomber, but details remain shrouded in secrecy
総額800億ドルともいわれる新型爆撃機の選定結果発表が近づく中で知らされていることが知らされていないことより少ないのはやむを得ないのだろうか。
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長距離打撃爆撃機(LRSB)と呼ばれる同機に要求される航続距離、ペイロード、最高速度については知らされていない。また同機が軍の他装備とネットワークでどこまで結ばれるのかも知らされていない。エンジンの数も知らされていない。また重量30,000-lb.の大型貫通爆弾を運用できるのかも知らされていない。なお、B-2はこの運用が可能だ。こういった点が設計を決定してくる。つまり同機がどんな外観になるのか誰もわからないままで、わかっているのはステルス性の機体となり、B-2に似た三角翼になるのか、もっと変わった形になるのかもしれないという点だけだ。
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わかっているのは新型ステルス技術が応用され、F-35を超えたステルス性能、残存性、生産のしやすさ、保守点検の容易さが実現することだ。また最新鋭の推進力、防御能力、通信技術に加え製造技術でも全米から最良の部分が集められることだ。
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空軍によるブリーフィング(9月1日)では内容が慎重に統制されていたため、結局のところ同機の調達手順でわかったことはごくわずかだ。というよりも空軍が開示したい情報だけだ。関係者からは迅速戦力実現室(RCO)が関与し、通常の調達部門ではないとの説明は出ていた。ただし空軍によるブリーフィングではRCOの活用は従来型の調達部門を低く見ていることではないとの説明があった。鍵となる技術(その内容はまだ公開されていない)の選定、開発、統合のなため必要なのだという。
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RCOは2ワシントンの防空体制を向上させることを目的に003年に発足した。RCOでは指揮命令系統も従来と異なり、室長は参謀総長、空軍長官、調達部門長含む委員会の直属となる。ただし委員会を束ねるのは調達トップのケンドール副長官だ。つまり長官官房(OSD)が同機事業に異例の影響力を与えていることになる。
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RCOは極秘技術の理解度が高く、迅速に技術を実用化する経験も豊富だ。業務内容は多くが秘匿内容だが、LRSBの統括部門として最適だとブリーフィングで空軍関係者も述べている。業績にはX-37宇宙機がある。同機は極秘ペイロードを宇宙空間にすでに運搬するミッションを実施している。
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ただしRCOの指名はひとつ妥協のだったのかもしれない。2010年に次世代爆撃機事業が取り止めになり、ロバート・ゲイツ国防長官(当時)が2011年に秘密メモを配信して始まったのがLRSB事業だ。ゲイツ長官は空軍がKC-135、HH-60Gでともに後継機種選定につまづいているのを不満に思い、イラク・アフガニスタンで情報収集機材の配備が遅れていることにも苛立っていた。新型爆撃機を成功させるためにもこんな結果しか出せない従来の仕組みに頼るのはいやだとRCOが生まれた。OSDが後ろから支えてLRSBのフライアウェイ価格を2010年ドル価格で550百万ドルと設定したのは前例のない話だ。
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空軍はノースロップ・グラマン、ボーイング=ロッキード・マーティンの双方に資金を提供してリスク低減策として推進手段の統合、アンテナ設計を始めさせた。ステルス機では通信アンテナを機外に装着できない。両チームとも初期設計審査段階を終えたか、実施中と見られ、これまで考えられていたより先行している。空軍からは具体的な発表がないが、言わんとするメッセージは明白だ。空軍は新型爆撃機調達の過程は順調で、B-2やF-35の轍は踏まないと言おうとしてる。国防支出で不信感を抱く議会に爆撃機案件を売り込もうというわけだ。
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ここまではぼんやりとわかってきたが、LRSBの大きな謎はその機体形状だ。ペンタゴンは一貫して同機を秘密扱いとしてきたが、同じペンタゴン内部に、安上がりな機体でいいのではとの声がある。次世代爆撃機では対照的に高価で高い水準を希求していたが、敵防空網を突破すれば独立して動く発想で、機体は非常に複雑かつリスクが高くなった。LRSBの最終選定発表を控えたペンタゴンは現実に合わせていく必要がある。
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高度に防衛体制が整った目標の攻撃を世界上いかなる場所でも行うためにLRSBは必要だと関係者は言う。ステルス巡航ミサイルでも目標を狙えるが、て防空網施設や地下深くに構築された指揮命令所や核関連施設の破壊は頭の痛い課題だ。これらの攻撃には高度に精密な貫徹兵器が必要だが、打ちっぱなしミサイルでは難しい。また1980年代の技術製品であるB-2も20機弱しかなく、敵の防空体制が比較にならないほど強力になった今では見劣りがする。
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9月1日のブリーフィングで調達業務の一端が垣間見られたが空軍が言うように健全な管理だといえる。最終選考後には経費プラス報奨金方式の契約とし、政府が一部リスクを負担するものの報奨金により契約企業が具体的な成果を上げないのに利益をむさぼることを防ぐ。空軍は初期の5ロットは固定価格制で19機から21機を調達する。うち4ロットは固定価格で打第5ロットは上限価格以内とする。その後第六ロット以降を再交渉する。この方式だと選定に残った企業にはコストダウンのプレッシャーが大きくなる。超過分は自社負担となるためだ。
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ただし選考の重点項目は何なのか発表はされていない。
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開発段階ではテスト機材(機数未公表)を通例どおり導入する。通常兵器運用から開始するのは核兵器運用には配線、機体強度が必要となるためだ。ただし空軍としては核兵器の初期作戦能力獲得を遅らせるわけにも行かず、2020年代中ごろを目標に時間をかけて核運用の認証を目指す。このため規模は不明だがLRSBの一部が第一線からはずされ核運用テストにまわされる。
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戦略軍団司令官セシル・ヘイニー海軍大将Adm. Cecil Haneyは核運用型は2030年までにほしいとする。「LRSBには期待している。特に核運用ではLRSBを念頭に置いた運用コンセプトを作成中だ」と語っている。
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選定結果次第で米航空宇宙産業に大きな地殻変動が発生すると見るアナリストが多い中、ノースロップが敗れた場合は企業存続のため大幅なリストラ策で分社にいたるのではないかと見る向きもある。
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もっと可能性があるのが、敗退してもペンタゴンの大手受注企業として残ることで、まだ大口案件は残っているからだ。たとえばT-38高速ジェット練習機の後継機調達や新型偵察機の案件がある。「一時的に影響はあるでしょうが、もともと愛国的な企業が多いので敗退した側にも企業経営上は打撃は最小にとどまるでしょう」と見るのはレベッカ・グラント(爆撃機事業を支持するIRIS独立研究所の社長)だ。
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ロッキード・マーティンもボーイングも単独で爆撃機事業に手を上げることもできたはずだが、二社が手を結んだのはこれまでのライバルを超えて何とかしてノースロップに勝とうという意向が働いたためだろう。
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カリフォーニアで成立した立法措置により新型爆撃機の大部分は同州内で製造されることになる。ノースロップ・グラマンは早速政界に働きかけどちらが受注しても同じ内容の税制優遇策を得られるよう手を回している。同州法案が成立し、パームデールで生産するロッキードが有利になるよう420百万ドルを同州が拠出する内容とわかってノースロップは驚かされた。これだけの規模の優遇策があれば結果は明白だからだ。だが土壇場になってどちらが受注しても同じ条件になることとなり、ノースロップも自社パームデール施設がロッキードから滑走路を挟んだ位置にあるので安心できるようになった。
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落とし穴がないわけではない。空軍は最近やっと同機を10年間運用した場合の費用規模を知ったようだ。議会にはこれまで331億ドルとこの二年間いい続けていた。だがこの積算は二重に間違っていたという。最新の見積もりは584億ドルとしてから417億ドルといい始めた。「まことに遺憾ながら人的ミスで誤った見積もりを発表してしまった。内部で数字を誤ったことと手順面でもミスがあった」とジェイムズ長官が8月24日の記者会見で述べている。「事業管理では外部からのチェックとバランスをはかり、金額を点検しているが、この種類の事業ではよくあること」
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この誤りで新型爆撃機に対する疑問が一気に増えている。「『チェックとバランス』で86億ドルも増えるとは。この違いは単なる誤差なのか、あるいは実際の性能に影響が出るのか。そもそも空軍はコスト上昇に備えてりいるのか。開発を始めるためには予算全額を確保する必要があり86億ドルは決して小額ではない。ただし空軍からはこうした疑問への回答はまだない。
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ゲイツ長官が決めた単価550百万ドルの生産型での上限は前例がなく、逆に言えば空軍が自信をもっていることのあらわれだ。目標の実現に失敗するぞ、と見る向きもあるが、前出グラントは「正しく管理すれば、それ以下でも実現可能」と見ている。「下手をすれば単価は三倍になるが、それ以下でも実施可能でしょう」
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これから10年間の米国核戦力整備で同機が最大規模の事業になりそうだ。核兵器の運用には米政府支出の55%が費やされており、その規模は2,980億ドルにのぼる。これはエネルギー省の予算も含み、核体系の維持管理と改修費用も含む、と会計検査院がまとめている。250億ドルがB-52とB-2の性能改修に、350億ドルがオハイオ級潜水艦の後継艦建造に回る。それでもLRSBはこれをはるかにうわまわる420億ドルが10年間に投じられる。
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ペンタゴンは爆撃機が必須と考える。議会で反対票を投じそうな動きがあり、ジョン・マケイン議員(共、アリゾナ)(上院軍事委員会委員長)とジャック・リード議員(民、ロード・アイランド)は空軍から出た費用試算の誤りの説明を求めている。そのほかにも異議を唱える向きがあるが、空軍は反論を準備した。RAND研究所が開戦後20日すると「敵陣突破するステルス爆撃機のコストは消耗品のミサイルより安くなり」これが以後30日間続くとの分析結果を出している。
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現時点の爆撃機の機材構成は1950年代設計のB-52が76機、70年代のB-1が66機、80年代のB-2が20機ある。
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このうちB-2が防空体制で守りを固める各国へ圧力をかける切り札で、想定はイラン、北朝鮮、ロシア、中国だ。だが機数が足りないと爆撃機推進派が主張する。「B-2は高性能だが、戦闘計画の想定に対して不足している」とグラントは言う。「B-2の規模ではアジア、ヨーロッパ他での緊急事態へは抑止力効果が足りない」とグラントは述べ、新型爆撃機の必要を主張する。さらに設計案の絞込みが遅れていることを憂慮する。「新型爆撃機の生産を数年前からはじめているべきだったのです。遅れるだけリスクがましています」 会計検査院は2015年から20年までにB-52は敵防空網の突破能力を失い、スタンドオフ巡航ミサイルの発射しかできなくなると評価している。
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空軍が選考結果を発表すれば、敗退した側が異議を唱え、数ヶ月にわたる選考手順が審査されることになり、新型機の設計工程が待たされる可能瀬が大いにある。■
長距離打撃爆撃機(LRSB)と呼ばれる同機に要求される航続距離、ペイロード、最高速度については知らされていない。また同機が軍の他装備とネットワークでどこまで結ばれるのかも知らされていない。エンジンの数も知らされていない。また重量30,000-lb.の大型貫通爆弾を運用できるのかも知らされていない。なお、B-2はこの運用が可能だ。こういった点が設計を決定してくる。つまり同機がどんな外観になるのか誰もわからないままで、わかっているのはステルス性の機体となり、B-2に似た三角翼になるのか、もっと変わった形になるのかもしれないという点だけだ。
わかっているのは新型ステルス技術が応用され、F-35を超えたステルス性能、残存性、生産のしやすさ、保守点検の容易さが実現することだ。また最新鋭の推進力、防御能力、通信技術に加え製造技術でも全米から最良の部分が集められることだ。
空軍によるブリーフィング(9月1日)では内容が慎重に統制されていたため、結局のところ同機の調達手順でわかったことはごくわずかだ。というよりも空軍が開示したい情報だけだ。関係者からは迅速戦力実現室(RCO)が関与し、通常の調達部門ではないとの説明は出ていた。ただし空軍によるブリーフィングではRCOの活用は従来型の調達部門を低く見ていることではないとの説明があった。鍵となる技術(その内容はまだ公開されていない)の選定、開発、統合のなため必要なのだという。
RCOは2ワシントンの防空体制を向上させることを目的に003年に発足した。RCOでは指揮命令系統も従来と異なり、室長は参謀総長、空軍長官、調達部門長含む委員会の直属となる。ただし委員会を束ねるのは調達トップのケンドール副長官だ。つまり長官官房(OSD)が同機事業に異例の影響力を与えていることになる。
RCOは極秘技術の理解度が高く、迅速に技術を実用化する経験も豊富だ。業務内容は多くが秘匿内容だが、LRSBの統括部門として最適だとブリーフィングで空軍関係者も述べている。業績にはX-37宇宙機がある。同機は極秘ペイロードを宇宙空間にすでに運搬するミッションを実施している。
ただしRCOの指名はひとつ妥協のだったのかもしれない。2010年に次世代爆撃機事業が取り止めになり、ロバート・ゲイツ国防長官(当時)が2011年に秘密メモを配信して始まったのがLRSB事業だ。ゲイツ長官は空軍がKC-135、HH-60Gでともに後継機種選定につまづいているのを不満に思い、イラク・アフガニスタンで情報収集機材の配備が遅れていることにも苛立っていた。新型爆撃機を成功させるためにもこんな結果しか出せない従来の仕組みに頼るのはいやだとRCOが生まれた。OSDが後ろから支えてLRSBのフライアウェイ価格を2010年ドル価格で550百万ドルと設定したのは前例のない話だ。
空軍はノースロップ・グラマン、ボーイング=ロッキード・マーティンの双方に資金を提供してリスク低減策として推進手段の統合、アンテナ設計を始めさせた。ステルス機では通信アンテナを機外に装着できない。両チームとも初期設計審査段階を終えたか、実施中と見られ、これまで考えられていたより先行している。空軍からは具体的な発表がないが、言わんとするメッセージは明白だ。空軍は新型爆撃機調達の過程は順調で、B-2やF-35の轍は踏まないと言おうとしてる。国防支出で不信感を抱く議会に爆撃機案件を売り込もうというわけだ。
ここまではぼんやりとわかってきたが、LRSBの大きな謎はその機体形状だ。ペンタゴンは一貫して同機を秘密扱いとしてきたが、同じペンタゴン内部に、安上がりな機体でいいのではとの声がある。次世代爆撃機では対照的に高価で高い水準を希求していたが、敵防空網を突破すれば独立して動く発想で、機体は非常に複雑かつリスクが高くなった。LRSBの最終選定発表を控えたペンタゴンは現実に合わせていく必要がある。
高度に防衛体制が整った目標の攻撃を世界上いかなる場所でも行うためにLRSBは必要だと関係者は言う。ステルス巡航ミサイルでも目標を狙えるが、て防空網施設や地下深くに構築された指揮命令所や核関連施設の破壊は頭の痛い課題だ。これらの攻撃には高度に精密な貫徹兵器が必要だが、打ちっぱなしミサイルでは難しい。また1980年代の技術製品であるB-2も20機弱しかなく、敵の防空体制が比較にならないほど強力になった今では見劣りがする。
9月1日のブリーフィングで調達業務の一端が垣間見られたが空軍が言うように健全な管理だといえる。最終選考後には経費プラス報奨金方式の契約とし、政府が一部リスクを負担するものの報奨金により契約企業が具体的な成果を上げないのに利益をむさぼることを防ぐ。空軍は初期の5ロットは固定価格制で19機から21機を調達する。うち4ロットは固定価格で打第5ロットは上限価格以内とする。その後第六ロット以降を再交渉する。この方式だと選定に残った企業にはコストダウンのプレッシャーが大きくなる。超過分は自社負担となるためだ。
ただし選考の重点項目は何なのか発表はされていない。
開発段階ではテスト機材(機数未公表)を通例どおり導入する。通常兵器運用から開始するのは核兵器運用には配線、機体強度が必要となるためだ。ただし空軍としては核兵器の初期作戦能力獲得を遅らせるわけにも行かず、2020年代中ごろを目標に時間をかけて核運用の認証を目指す。このため規模は不明だがLRSBの一部が第一線からはずされ核運用テストにまわされる。
戦略軍団司令官セシル・ヘイニー海軍大将Adm. Cecil Haneyは核運用型は2030年までにほしいとする。「LRSBには期待している。特に核運用ではLRSBを念頭に置いた運用コンセプトを作成中だ」と語っている。
選定結果次第で米航空宇宙産業に大きな地殻変動が発生すると見るアナリストが多い中、ノースロップが敗れた場合は企業存続のため大幅なリストラ策で分社にいたるのではないかと見る向きもある。
もっと可能性があるのが、敗退してもペンタゴンの大手受注企業として残ることで、まだ大口案件は残っているからだ。たとえばT-38高速ジェット練習機の後継機調達や新型偵察機の案件がある。「一時的に影響はあるでしょうが、もともと愛国的な企業が多いので敗退した側にも企業経営上は打撃は最小にとどまるでしょう」と見るのはレベッカ・グラント(爆撃機事業を支持するIRIS独立研究所の社長)だ。
ロッキード・マーティンもボーイングも単独で爆撃機事業に手を上げることもできたはずだが、二社が手を結んだのはこれまでのライバルを超えて何とかしてノースロップに勝とうという意向が働いたためだろう。
カリフォーニアで成立した立法措置により新型爆撃機の大部分は同州内で製造されることになる。ノースロップ・グラマンは早速政界に働きかけどちらが受注しても同じ内容の税制優遇策を得られるよう手を回している。同州法案が成立し、パームデールで生産するロッキードが有利になるよう420百万ドルを同州が拠出する内容とわかってノースロップは驚かされた。これだけの規模の優遇策があれば結果は明白だからだ。だが土壇場になってどちらが受注しても同じ条件になることとなり、ノースロップも自社パームデール施設がロッキードから滑走路を挟んだ位置にあるので安心できるようになった。
落とし穴がないわけではない。空軍は最近やっと同機を10年間運用した場合の費用規模を知ったようだ。議会にはこれまで331億ドルとこの二年間いい続けていた。だがこの積算は二重に間違っていたという。最新の見積もりは584億ドルとしてから417億ドルといい始めた。「まことに遺憾ながら人的ミスで誤った見積もりを発表してしまった。内部で数字を誤ったことと手順面でもミスがあった」とジェイムズ長官が8月24日の記者会見で述べている。「事業管理では外部からのチェックとバランスをはかり、金額を点検しているが、この種類の事業ではよくあること」
この誤りで新型爆撃機に対する疑問が一気に増えている。「『チェックとバランス』で86億ドルも増えるとは。この違いは単なる誤差なのか、あるいは実際の性能に影響が出るのか。そもそも空軍はコスト上昇に備えてりいるのか。開発を始めるためには予算全額を確保する必要があり86億ドルは決して小額ではない。ただし空軍からはこうした疑問への回答はまだない。
ゲイツ長官が決めた単価550百万ドルの生産型での上限は前例がなく、逆に言えば空軍が自信をもっていることのあらわれだ。目標の実現に失敗するぞ、と見る向きもあるが、前出グラントは「正しく管理すれば、それ以下でも実現可能」と見ている。「下手をすれば単価は三倍になるが、それ以下でも実施可能でしょう」
これから10年間の米国核戦力整備で同機が最大規模の事業になりそうだ。核兵器の運用には米政府支出の55%が費やされており、その規模は2,980億ドルにのぼる。これはエネルギー省の予算も含み、核体系の維持管理と改修費用も含む、と会計検査院がまとめている。250億ドルがB-52とB-2の性能改修に、350億ドルがオハイオ級潜水艦の後継艦建造に回る。それでもLRSBはこれをはるかにうわまわる420億ドルが10年間に投じられる。
ペンタゴンは爆撃機が必須と考える。議会で反対票を投じそうな動きがあり、ジョン・マケイン議員(共、アリゾナ)(上院軍事委員会委員長)とジャック・リード議員(民、ロード・アイランド)は空軍から出た費用試算の誤りの説明を求めている。そのほかにも異議を唱える向きがあるが、空軍は反論を準備した。RAND研究所が開戦後20日すると「敵陣突破するステルス爆撃機のコストは消耗品のミサイルより安くなり」これが以後30日間続くとの分析結果を出している。
現時点の爆撃機の機材構成は1950年代設計のB-52が76機、70年代のB-1が66機、80年代のB-2が20機ある。
このうちB-2が防空体制で守りを固める各国へ圧力をかける切り札で、想定はイラン、北朝鮮、ロシア、中国だ。だが機数が足りないと爆撃機推進派が主張する。「B-2は高性能だが、戦闘計画の想定に対して不足している」とグラントは言う。「B-2の規模ではアジア、ヨーロッパ他での緊急事態へは抑止力効果が足りない」とグラントは述べ、新型爆撃機の必要を主張する。さらに設計案の絞込みが遅れていることを憂慮する。「新型爆撃機の生産を数年前からはじめているべきだったのです。遅れるだけリスクがましています」 会計検査院は2015年から20年までにB-52は敵防空網の突破能力を失い、スタンドオフ巡航ミサイルの発射しかできなくなると評価している。
空軍が選考結果を発表すれば、敗退した側が異議を唱え、数ヶ月にわたる選考手順が審査されることになり、新型機の設計工程が待たされる可能瀬が大いにある。■
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