U-2と限りなく近い形状の機体でステルス性が発揮できるのかわかりませんが、下に出てくるオースティン部長はLO(低視認性)技術の専門家とのことなので、考えがロッキードにあるのでしょう。スカンクワークスがもう一度仕事ぶりを発揮することになりそうです。
Skunk Works Studies Stealthy U-2 Replacement
ロッキード・マーティンのスカンクワークスがU-2の後継スパイ機の検討をしている。伝説的なU-2のうち最良の部分を無人機ノースロップ・グラマンRQ-4Bグローバルホークの良いところを合わせた機体を目指している。
- U-2はこまめな改良を経て2050年までの寿命が残っているが、米空軍は2019年までに退役させる予定で、RQ-4Bが任務を引き受ける予定だ。ただし、ロッキードによればRQ-4Bは敵領空を戦時には飛行できないとし、次世代のU-2がその「穴」を埋めるISR機材になれるという。
- 「U-2、RQ-4Bはともに平時に高高度飛行でISR任務を実施する想定です」とロッキード・マーティンでU-2戦略開発事業を率いるスコット・ウィンステッドは言う。「空軍予算が削減されている中で、戦時用の機材を調達するのは困難で平時用の機材といえども多数を保有するのが難しくなっている。そこで検討しているのはその両方をこなせる機材です。グローバルホークとU-2から最良の部分をつなぎあわせて新しい機体にする。ステルス型のU-2といったところです」
- 新型機は有人操縦に切り替えが可能となる。運用地まではパイロットがフェリーして、平時は有人飛行、無人操縦でもっと危険な空域を長時間飛行させることが可能となる。機体案はとりあえずRQ-Xの名称で、無人型U-2用にスカンクワークスが検討してきた技術を盛り込む。無人型U-2の提案は直近では2014年にあり、胴体と主翼を延長し燃料搭載を増やし、無人機に必要なサーボモーター他すべてを搭載する案だった。
- ロッキードによればこの案で将来の長期間偵察任務で柔軟な対応を可能にし、同社が提案中の極超音速SR-72構想と共通部分があるという。
- 現行のU-2は非ステルスの機体のまま1955年初飛行時から大きく替わることなく今日に至っているが、次世代機には「低視認ステルス機の性能を盛り込む」とウィンステッドが言う。ロッキードによればこれまでもU-2のシグネーチャーを減らすべくレーダー吸収塗料材で、現行機は黒色に塗色されているが現在は特別な扱いは受けていないという。
- 開発費用を削るため設計案ではジェネラル・エレクトリックF118ターボファン(U-2/TSR-1で換装エンジンとして採用)を使用する。「大変高性能かつ比較的新しい。エンジンを替えないのはコストもあるが、90,000フィート飛行の要求が出てきたら別エンジンに変えれば良い。その際はその他にも再設計が必要になるでしょうがね」(ウィンステッド)
- 設計案では実用速度もU-2の 475 mph (マッハ0.58)近くとする。「今の段階ではこれ以上のスピードは不要との解析がありますが、高高度では速度があがります。空気が薄いですから」(ウィンステッド) 現実的な選択肢として「大型エンジン搭載で高度80,000フィートまでの上昇が可能となり、地上速度より50から60マイル早く飛行できます。スピードや後退翼を選ぶことも可能ですが、コストが増える効果があります」
- もうひとつコスト削減につながるのが現行U-2と同じセンサー一式を搭載することだ。「グローバルホークの多機種共通レーダー技術導入プログラム(MP-RTIP)を搭載する可能性はあります。強力で高性能なレーダーですから」とウィンステッドは言う。RQ-4BのレーダーはU-2搭載が最近認められたレイセオンの高性能合成開口レーダーシステム(ASARS-2B) に匹敵するという。「どちらが優れているか知りたいので使って見るわけです」 新型機は米空軍のオープンミッションシステム(OMS)機体構造標準で作る。
- 機体寸法、重量、出力で現行U-2から大きく外れることはないだろう。「機内発電容量は45kVA以上とし最適規模を検討します。その容量はU-2と同等ですがステルス機体で主翼を延長し、滞空時間を伸ばし、グローバルホークと同等にする他、燃料搭載量を増やします」(ウィンステッド) 具体的な寸法は示されていないが、現行機の翼幅103フィート、全長63フィートが参考になろう。
- U-2後継機の開発大日程案は全く不明だが、ロッキードによれば開発工程の重要部分は機体設計で要求内容を実現することだという。「U-2で実現されている最良の部分とグローバルホークが優れている点を合わせた設計になります」とウィンステッドはいい、さらにロッキードは「ノースロップ・グラマン、ボーイング、ジェネラルアトミクスと競合すると予想しており、当社より優れた設計が他社から出てくるか見ものだ」という。
- ロッキードはU-2を1950年代に迅速に設計して「スカンクワークス」は困難な事業を短期間かつ極端に低予算で実施できると定評が立った。「初号機を作るのが簡単だった理由として簡潔かつ明瞭な要求内容があり、途中で変更されなかったことがあります」とU-2事業部長メラニ・オースティンは語る。「当社は自由にやらせてもらい、予算はここにあるから短期でどこまでできるかやってみろといわれたわけです。同じ環境ができれば、また要求内容を明確にしてもらえば、また途中変更がなければ、開発は迅速に完了し費用対効果が高くできます」■
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